AIエージェント導入支援とは?自社でやる範囲と頼む範囲、支援会社を選ぶ5つの条件

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AIエージェントの導入は、まず支援会社を探して任せるのが早いと考えられがちです。しかし、頼む範囲を決めないまま相談を始めて、見積もりを比べる段階で検討が止まってしまう会社は少なくありません。AIエージェント導入支援とは、任せる業務の選定から現場への展開、運用の見直しまでの工程のうち、自社だけでは進めにくい部分を外部の専門家が受け持つ支援のことです。製品の候補にはAgentforceのように、CRMの中で動くものもあります。ただ、どの製品で組むかより先に決めておくべきなのは、自社でやる範囲と頼む範囲の線のほうではないでしょうか。

そこで本記事では、AIエージェント導入のどこまでを自社で進め、どこからを支援会社に頼むかを決める手順と、頼む会社の選び方を解説します。製品名がまだ決まっていない段階でも使える内容にしていますので、自社の状況に重ねながら読み進めてみてください。なお、ツールの利用料の単価は変わりやすいため、本記事は2026年9月時点で確認できた情報にもとづいています。

AIエージェント導入で支援を頼める5つの工程

AIエージェント導入の工程は、製品を選んで設定するところだけを指すと思われがちです。実際には、任せる業務を選ぶ段階から、使われ方を見て直す段階までが一続きになっています。今回は、地域で倉庫の運営と配送を請け負う物流会社のケースも交えて進めていきます。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。

この物流会社の従業員は260名で、そのうちカスタマーサービスが10名、営業が8名、情報システムの担当は2名でした。荷主の情報は、以前から導入していたSalesforceで管理してきました。

荷主からの配送状況の問い合わせは月1,800件にのぼり、1件の対応に6分かかっていました。月にすると180時間を、カスタマーサービスが問い合わせの対応に使っていた計算です。

この物流会社が掲げた目的は「配送状況の問い合わせへの一次回答を任せ、カスタマーサービスの時間を例外対応へ回すこと」でしたが、どの工程を自社で持ち、どこを外部に頼むかは決まっていませんでした。問い合わせへの一次回答を任せるときに、どこで人へ渡すかの線の引き方は、カスタマーサポートのAIエージェントの記事で扱っています。そこでここでは、AIエージェント導入で支援を頼める5つの工程を、進める順に整理します。

工程①任せる業務を1つ選ぶ

最初の工程は、AIエージェントに任せる業務を1つに絞る作業です。ここで選んだ業務が、その後に続く4つの工程の中身をほぼ決めてしまいます。候補を複数抱えたまま次の工程へ進むと、データの準備も試験の設計も、業務の数だけ必要になるからです。そうなると、どの業務の準備も中途半端なまま、時間だけが過ぎていきます。

この物流会社では実際に、配送状況の問い合わせ、在庫の照会、請求書の再発行といった業務が候補に挙がっていました。情報システムの担当は当初、それらをまとめて1つのエージェントで受ける計画でした。業務ごとに参照するデータも回答の基準も違うと分かったのは試験の準備に入ってからで、計画はそこで組み直しになりました。

件数の多さと手順のそろい方で候補を比べる考え方は、任せる業務の選び方として別に整理しています。支援を頼む場合も、業務を1つに絞る段階から一緒に考えてもらえるかどうかが、最初に確かめておきたい点になります。

工程②データと権限を整える

業務が決まったら、次はAIエージェントが回答に使うデータと、誰に何を見せてよいかという権限を整えます。配送状況なら出荷の記録、在庫なら倉庫の管理データというように、業務ごとに参照先は変わります。そのため、どこに何が置かれているかを確かめる作業は省けません。

この物流会社の場合、荷主の情報はSalesforceにある一方で、出荷の記録は倉庫の管理システムに残っていました。両方を参照するには、2つのシステムをつなぐ設計が別に必要になります。さらに、荷主ごとに見せてよい情報の範囲は契約で決まっていました。ある荷主からの問い合わせに、別の荷主の出荷記録を返さない設定も求められていたのです。

データの置き場所と見せてよい範囲の2つは、社内の事情を知っている担当者でなければ答えられない内容です。支援を頼む場合でも、この工程は自社の側で用意する部分が多くなります。

工程③小さく組んで試す

データの準備ができたら、対象を狭く絞ったうえで実際に組み、限られた範囲で試していきます。この工程で大切なのは、動くかどうかより、試す前に何を測るかを決めておくことです。測る項目が決まっていないと、試験の結果を、広げるかどうかの判断に使えません。

先ほどの物流会社では、情報システムの担当が他の業務と兼ねながら試験導入を始めていました。画面の上では回答が返ってくるところまで進んでおり、動かすことはできていたのです。ところが、どの問い合わせを任せる対象にするのか、1件あたりの時間をどう測るのかが決まっていませんでした。そのため試した結果を誰も評価できず、検討はそこで止まってしまいました。

組む作業は外部に頼みやすい工程ですが、測る項目を決める作業まで引き受けるかどうかは、支援会社によって分かれます。見積もりを受け取る段階で、測る項目の決め方が含まれているかを確かめておきましょう。

工程④現場へ広げる

試した結果を数字で確かめられたら、次は実際に使う担当者の業務へ組み込んでいきます。この工程で問われるのは設定の出来よりも、担当者の手順のどこでAIエージェントを使うのかを決めることです。手順に組み込まれていなければ、試した担当者以外はほとんど使わないまま終わってしまいます。

たとえば、この物流会社のカスタマーサービスでは、問い合わせを受けてから荷主へ返すまでの手順が、担当者ごとに少しずつ違っていました。AIエージェントに一次回答を任せるには、どの問い合わせを任せ、どれを担当者が引き取るかという分け目が要ります。その分け目を、全員が同じ基準で持っている必要があったのです。

広げる工程は、社内の担当者と外部の側が一緒に進めなければ、分け目の基準が決まらない工程と言えるでしょう。現場の手順を知っているのは社内の担当者で、設計の組み方を知っているのは外部の側だからです。

工程⑤使われ方を見て直す

最後の工程は、運用に入った後の使われ方を見ながら、回答の内容や任せる範囲を直していく作業です。業務の中身も荷主の要望も変わり続けるため、導入した時点で正しかった設定が、その先も正しいとは限りません。

この物流会社では、一次回答を返せなかった問い合わせの記録を、定期的に見直す運用を考えていました。回答の元になる出荷のステータスが足りていない箇所を見つけ、そのつど補っていく形です。ただ、この直す作業を誰が担うのかが決まっていないと、支援が終わった時点で設定を変えられる人がいなくなり、回答の精度は少しずつ下がっていきます。

以上が、AIエージェント導入で支援を頼める5つの工程でした。5つの工程のうち外部に頼みやすいのは組んで試す工程で、業務を選ぶ工程と使われ方を見て直す工程は、自社が持ち続ける前提で頼む範囲を決める必要があります。

自社でできる?AIエージェント導入を内製できる3条件

前章では、AIエージェント導入で支援を頼める工程を、5つに分けて見てきました。工程ごとに頼めるとはいえ、すべてを外部に任せる必要はありません。条件がそろっていれば、自社だけで進めたほうが早く、直す力も社内に残ります。そもそもAIエージェントは、人の指示を待たずに、決められた手順を実行する仕組みです。そのため、画面の設定よりも、任せる手順を決める作業のほうに時間がかかります。そこでここでは、AIエージェント導入を自社で進められるかどうかを見分ける3つの条件を解説します。

条件①業務と設定の両方が分かる担当がいる

1つ目の条件は「業務と設定の両方が分かる担当がいる」ことです。任せる手順を決めるには業務の知識が、その手順を画面で組むには設定の知識が必要になります。どちらか一方しか持たない担当者だけで進めると、決めた手順と組んだ設定のあいだに食い違いが生まれます。

この物流会社の情報システムの担当は、Salesforceの設定には慣れていました。一方で、カスタマーサービスが問い合わせにどう答えているかまでは把握していませんでした。試験導入で組んだ回答を、実際に問い合わせを受けている担当者に見せたところ、指摘が続いています。答える順番が違う、荷主ごとの言い回しが違うという指摘で、いずれも業務を知る側でなければ気づけない内容でした。

業務を知る担当者と設定を知る担当者が別々でも、両者が同じ場で手順を決められる体制なら、この条件は満たせると考えます。

条件②試す業務を1つに絞れている

2つ目の条件は、試す業務がすでに1つに絞れているかどうかです。業務が絞れていれば、参照するデータも測る項目も1通りで済むため、少ない人数でも最後まで進められます。

逆に、候補を複数抱えたまま自社で進めようとすると、どの業務から始めるかを決める議論だけで時間が過ぎていきます。先ほどの物流会社でも、在庫の照会と請求書の再発行を同時に試す計画が、しばらく残っていました。その計画があったために、配送状況の問い合わせだけに集中できない時期が続いています。社内の打ち合わせでは毎回、どの業務を先にするかという話に戻り、試す内容の中身まで進めませんでした。

業務を1つに絞る判断を下す人が社内で決まっていない場合は、絞る作業から外部に頼むほうが、試す内容の検討へ先に進めます。

条件③止めたときに元の手順へ戻せる

3つ目の条件は「止めたときに元の手順へ戻せる」ことです。自社で進める場合は試行錯誤が前提になるため、うまくいかなかったときに業務ごと止まる設計は避ける必要があります。

この物流会社の場合は、AIエージェントが一次回答を返せなかった問い合わせを、そのまま担当者へ引き継ぐ形を残していました。AIエージェントを止めても、問い合わせは従来どおりカスタマーサービスの担当者が受けられます。そのため、試している途中で回答の誤りが見つかっても、荷主への対応が途切れることはありません。

3つの条件がそろっている会社であれば、AIエージェント導入を自社で進め、判断に迷う箇所だけを外部に確かめる形でも十分に進められます。

AIエージェント導入支援に頼むべき3つの状況

AIエージェント導入を自社だけで進められる3つの条件を挙げましたが、条件が欠けたまま自社だけで続けると、時間をかけても前へ進まない状態に陥ることがあります。先ほどの物流会社も、試験導入を始めた時点では、自社だけで進められると考えていました。ところが振り返ってみると、3つの条件のうちいくつかが欠けた状態で始めていたのです。そこでここでは、AIエージェント導入支援に頼むべき3つの状況を、この物流会社の経緯とあわせて解説していきます。

状況①試験導入のまま3か月以上止まっている

1つ目は、試験導入を始めたものの、3か月以上たっても本番の運用へ進めていない状況です。止まっている期間が長くなるほど、試した担当者の関心も薄れていきます。再開するときには、最初の設計から説明し直す手間も発生します。

この物流会社の試験導入では、回答が返ってくるところまでは早い段階で確かめられていました。それにもかかわらず、始めてから3か月のあいだ、本番へ進める判断は一度も下されていません。止まっていた理由を洗い出してみると、任せる問い合わせの範囲が決まっていないことと、結果を測る項目が無いことの2点に集約されました。

止まっている理由が設定の不具合よりも判断の不足にあるなら、自社で時間をかけても解消しにくいため、外部に頼むべき状況にあたります。

状況②担当が1名で他の業務と兼ねている

2つ目は、導入を進める担当が1名しかおらず、しかも他の業務と兼ねている状況です。兼務の担当者は日常の業務を優先せざるを得ず、AIエージェントの作業は空いた時間に後回しにされます。その結果、試験導入の進み方は、週ごとに大きく変わってしまいます。

先ほどの物流会社で試験導入を受け持っていたのは、情報システムの担当2名のうちの1名でした。この担当者は社内のパソコンの管理や基幹システムの問い合わせ対応と兼ねており、月末の締めの時期には、試験導入の作業がまったく進まない週もありました。カスタマーサービスとの打ち合わせも、担当者の予定が空いたときにしか開けていません。

兼務の担当者しかいない状況で外部に頼む目的は、作業の代行よりも、進み方を一定に保つことのほうにあります。決めるべきことを期日つきで並べてもらうだけでも、兼務の担当者が迷わずに次の作業へ進めるようになります。

状況③複数の部署にまたがる業務を任せたい

3つ目は、任せたい業務が1つの部署の中で完結せず、複数の部署の手順にまたがっている状況です。部署をまたぐ業務では、どこまでをAIエージェントが答え、どこから人が引き取るかを、部署間で合意する必要が出てきます。

この物流会社の配送状況の問い合わせも、回答するのはカスタマーサービスでした。ところが、出荷の記録を持っているのは倉庫の現場で、遅延の理由を判断するのは配送の手配を担う部署です。1つの問い合わせに3つの部署が関わるため、どの状態なら自動で答えてよいかを決める場には、それぞれの責任者を集める必要がありました。

部署間の合意を社内の担当者だけで取りまとめるのは、負担が大きい作業です。利害を持たない外部の立場から論点を整理してもらうほうが、話はまとまりやすくなります。

支援会社の3タイプ|設定型・設計型・伴走型

ここまで、自社で進められる条件と、外部に頼むべき状況を見てきました。頼むと決めた場合でも、支援会社によって受け持つ工程の範囲はかなり違い、名前の似たサービスどうしでも中身が同じとは限りません。先ほどの5つの工程のどこを受け持つかで分けると、支援会社はおおむね3つのタイプに整理できます。この物流会社が相談した3社も、この3つのタイプに1社ずつ当てはまりました。そこでここでは、AIエージェント導入の支援会社を、設定型・設計型・伴走型の3タイプに分けて整理します。

タイプ頼める工程向く状況残るもの
設定型工程③の組む作業任せる範囲が決まっている動く設定
設計型工程①から③何を任せるか決まっていない業務の分け方と設定
伴走型工程①から⑤広げて使い続けたい直す手順と社内の担当

タイプ①設定を代わりに行う会社

1つ目のタイプは、決まった内容をもとに設定を代わりに行う会社で、5つの工程のうち主に組んで試す工程を受け持ちます。任せる業務と回答の範囲がすでに社内で決まっていれば、設定を短い期間で終えられる点が、このタイプの利点です。

一方で、何を任せるかが決まっていない状態で頼むと、支援会社は受け取った情報だけで組み始めるしかありません。この物流会社が相談した3社のうち、このタイプにあたる会社からは、「配送状況の問い合わせに答えるエージェントを、どの範囲で組むかは決まっている前提でお見積もりします」という返事が届きました。

範囲を決める作業が自社で済んでいるかどうかが、設定型の会社を選んでよいかを見分ける判断材料になります。

タイプ②業務の設計から入る会社

2つ目のタイプは業務の設計から入る会社で、任せる業務を選ぶ工程から、データと権限を整える工程、組んで試す工程までを受け持ちます。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合はこのタイプが候補になり、見分けるときは、設定の前に業務の手順を聞き取る時間が見積もりに含まれているかどうかを見ます。

3社のうち設計型にあたる会社は、最初の打ち合わせで設定の話を一切しませんでした。代わりに尋ねてきたのは、配送状況の問い合わせが何種類に分かれるか、どの種類なら出荷の記録だけで答えられるかです。問い合わせを種類ごとに分ける作業は、試験導入のあいだ社内で進んでいなかった部分でした。この会社との打ち合わせで、初めてその一覧ができあがっています。

設計型の会社を選ぶ場合は、設計の結果を自社の言葉で文書に残してもらえるかも確かめておきましょう。文書が残っていれば、後の工程で担当者が代わっても迷わずに済みます。

タイプ③伴走型の会社

3つ目のタイプは伴走型と呼べる会社で、設計と試験に加えて、現場へ広げる工程と使われ方を見て直す工程までを受け持ちます。導入した後も業務や要望は変わり続けるため、運用に入ってから直す作業まで含めて頼みたい会社に向いています。

ただし、伴走型の会社に頼めば、直す作業をずっと外部に任せられるわけでもありません。先ほどの物流会社が最終的に選んだのもこのタイプでしたが、契約の前に、支援の期間中に社内の担当者が直し方を覚え、期間が終わった後は自社で直せる状態にする進め方で合意しています。

支援会社のタイプは、サービスの名前よりも、5つの工程のどこまでを受け持ち、支援が終わったときに社内に何を残すかで見分けると比べやすくなります。

頼む前に何を?支援会社に渡す4つの材料

前章では、AIエージェント導入の支援会社を、受け持つ工程で3つのタイプに分けました。どのタイプに頼む場合でも、相談の最初に渡せる材料がそろっていなければ、支援会社は一般的な提案を返すしかなく、その提案がいくつ並んでも自社に合う会社を選ぶ材料にはなりません。この物流会社が3社へ相談したときも、事前に4つの材料をそろえたことで、各社の提案を同じ条件で並べられるようになりました。そこでここでは、AIエージェント導入支援を頼む前に、支援会社へ渡しておきたい4つの材料を解説します。

材料①任せたい業務の一覧

1つ目の材料は「任せたい業務の一覧」です。候補を1つに絞り切れていない段階でも、候補の業務を並べてそれぞれの件数と1件あたりの時間を添えておくだけで、支援会社はどの業務から始めるべきかを具体的に提案できます。

この物流会社では、カスタマーサービスと倉庫の現場に聞き取りをして、7つの業務を一覧にまとめました。そのなかで件数が最も多かったのは、月1,800件の配送状況の問い合わせでした。在庫の照会のように件数の記録が残っていない業務は、倉庫の現場の担当者に聞き取って件数の欄を埋めました。1件6分という時間も、ほかの業務と同じ単位で比べられる形になっています。

一覧は完成度よりも、件数と時間という同じ単位で並んでいることを優先して作ると、相談の場でそのまま使えます。

材料②データの置き場所

2つ目は、AIエージェントが参照するデータがどこに置かれているかを示す材料です。データの置き場所が分からないまま相談すると、支援会社は調査の工数を見積もりに上乗せせざるを得ず、提案の金額も期間もその分だけ増えていきます。

先ほどの物流会社を例にとると、荷主の情報と問い合わせの履歴はSalesforceに保存されていました。一方で、出荷の記録と配送のステータスは、倉庫の管理システムのほうに分かれて入っています。この2つのシステムの名前と、どの項目に何が入っているかを、1枚の表にまとめて渡しました。すると支援会社の側からは、つなぐ方法の候補と、その場合の作業の範囲が具体的に返ってきています。

データの置き場所は、社内の担当者であれば短い時間で書き出せる情報です。書き出すのはシステムの名前と項目の対応までで足り、データの中身を相談の前に渡す必要はありません。

材料③判断する人の名前

3つ目の材料は「判断する人の名前」で、任せる範囲や本番へ進めるかどうかを、社内の誰が最終的に決めるのかを先に伝えておきます。判断する人が決まっていないと、支援会社が出した設計案が社内で回覧されるだけで、誰も承認しないまま時間が過ぎていくからです。

この物流会社の試験導入が止まっていた背景にも、判断する人の不在がありました。情報システムの担当は設定を進められても、どの問い合わせを任せるかを、カスタマーサービスに代わって決める立場にはありません。カスタマーサービスの責任者のほうも、設定の中身が分からないため判断を保留していたのです。

そこで相談を始める前に、判断する人を役割ごとに決めることにしました。任せる範囲を決めるのはカスタマーサービスの責任者、本番へ進めるかを決めるのは物流部門の部長で、支援会社にもその形で伝えています。

材料④試す期間と予算の上限

4つ目の材料は、試す期間と予算の上限を先に示しておくことです。上限が示されていない相談では、支援会社がそれぞれ考える理想の範囲で提案を組むことになります。その結果、各社の提案の規模がばらばらになり、比べる基準がなくなってしまいます。

この物流会社は、支援を受ける期間を3か月、予算は社内で承認を得られる範囲までと先に決めてから相談しました。期間を区切ったことで、3か月で何を終え、4か月目から何を自社で引き取るのかについて、各社が同じ前提で提案してくる形になっています。

期間と予算の上限を先に示すと交渉の余地を狭めるように見えますが、狭まるのは各社が自由に広げられる提案の範囲のほうです。頼む前に渡す4つの材料がそろっていると、支援会社の提案の違いを、価格の差ではなく受け持つ工程の差として読めるようになります。

条件別5パターン|AIエージェント導入支援の選び方

AIエージェント導入支援を頼む前に渡しておく4つの材料を整理しましたが、材料がそろったら、次は自社に合う支援会社を選ぶ段階に入ります。どの会社が合うかは、会社の規模や知名度よりも、自社がどんな条件で支援を求めているかによって変わるものです。Agentforceで組むと決めた後の比べ方は導入支援会社の選び方で詳しく扱っているため、本章では製品を決める前でも使える見方に絞っています。そこでここでは、AIエージェント導入支援の選び方を、よくある5つの条件に分けて解説していきます。

パターン①定着まで伴走してほしい場合

定着まで伴走してほしい場合は、支援の範囲に、現場へ広げる工程と使われ方を見て直す工程が含まれているかを最初に確かめます。導入の時点で動いていても、担当者の手順に組み込まれるまでには時間がかかるものです。そのため、設定を終えた時点で支援が終わる契約では、この条件を満たせません。

見るべきポイントは、運用に入った後に何を測り、どの頻度で直すのかが、提案の段階で具体的に書かれているかどうかです。この物流会社が伴走型の会社を選んだ決め手も、提案書の書き方にありました。一次回答で返せなかった問い合わせを毎週見直し、回答の元になる情報を足していく手順が、最初から書き込まれていたのです。

定着まで頼むかどうかは、支援が終わる時点で、使われ方を見て直す手順が社内に残るかどうかで判断すると外れません。該当するのは表で整理した伴走型の会社で、設計型の会社でも、運用の見直しを追加の範囲として受けているところがあります。

パターン②小さく始めたい場合

小さく始めたい場合は、1つの業務だけを対象にした契約の形を受けているかどうかで選びます。複数の業務をまとめて設計する提案は、1業務あたりの単価が下がるように見えるかもしれません。ただ、最初の業務で結果を確かめる前に全体の費用が確定してしまうため、この条件には合いません。

見るべきポイントは、最初の業務で結果が出なかった場合に、範囲を狭めるか止めるかを判断する時点が、契約の中に置かれているかどうかです。この物流会社も、7つの候補のうち配送状況の問い合わせだけを対象にしました。その中でも、出荷の記録だけで答えられる一次回答に範囲を絞ってから、相談を始めています。

該当するのは、1ユースケースからのスモールスタートを受けている設計型か伴走型の会社です。中堅・中小企業の支援を手がけている会社であれば、この形の契約を用意しているかどうかを最初の打ち合わせで尋ねておくと、後から契約の形で迷いません。

パターン③ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合

この条件で選ぶ場合は、最初の打ち合わせで支援会社が何を尋ねてくるかを見ます。設定の画面や機能の説明から話を始める会社は、任せる業務がすでに決まっている前提で動くことが多いからです。その前提のまま進むと、業務を分ける作業が社内に残ったままになります。

見るべきポイントは、提案の前に業務の聞き取りの時間が組まれているかどうかです。あわせて、聞き取りの結果が、任せる手順と人が引き取る手順の分け目として文書で返ってくるかも確かめます。先ほどの物流会社が相談した3社のうち、問い合わせを種類ごとに分けるところから始めたいと申し出たのは、設計型と伴走型にあたる会社でした。

該当するのは設計型と伴走型の会社で、どちらも業務の聞き取りを提案の前に置いています。設定型の会社を選ぶ場合は、業務の分け方を自社で終えてから依頼する順番にすると、この条件の不足を補えます。

パターン④自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合

自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合は、前章までに挙げた内製の3条件がそろっていることが前提になります。設定を社内で進められる会社にとって、外部の役割は作業の代行よりも、判断に迷う箇所で設計の妥当性を確かめることにあります。組む作業まで含む契約では、自社でできる作業にまで費用を払うことになるからです。

見るべきポイントは、時間単位や回数単位で相談を受けているかどうかです。あわせて、自社が組んだ設計の資料を読み込んだうえで、指摘を返してくれるかも確かめます。仮にこの物流会社の情報システムに、業務と設定の両方が分かる担当がいたなら、この形を選べていたはずです。任せる範囲の決め方と権限の設計だけを確かめてもらう形で、支援の費用を大きく抑えられていたでしょう。

該当するのは、設計型の会社のうちアドバイザリーの形でも契約を受けているところです。提案を依頼する段階で「組む作業は自社で行う」と伝えておくと、話が早く進みます。

パターン⑤ソリューション営業に特化した支援がほしい場合

ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、支援する側が営業の業務プロセスを知っているかどうかで選びます。顧客の課題を聞き取って提案を組み立てる営業では、商談の準備や記録のどこを任せ、どこを担当者が持つかの線引きが難しくなります。その線を引くときに、営業の実務を知っているかどうかで結果が分かれるのです。

見るべきポイントは、打ち合わせのなかで設定の話より先に、商談の進め方や提案の作り方についての質問が出てくるかどうかです。この物流会社が最初に任せたのは、カスタマーサービスの業務でした。ただ、同じ会社で営業の商談準備を次の対象に考える場合は、営業の手順を分けて考えられる支援会社かどうかが選ぶ基準に変わります。営業の仕事のうちどれを任せてよいかは、営業AIエージェントの記事で整理しています。

該当するのは、営業の業務設計を専門にする設計型や伴走型の会社です。当社も、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援を提供しており、任せる業務の選び方から無料相談を受け付けています。

いくらかかる?AIエージェント導入支援の費用3内訳

条件別の5つのパターンを見てきましたが、候補が絞れたら、次に比べるのは費用です。AIエージェント導入支援の費用は、総額だけを見ても比べられません。何にかかる費用なのかを内訳に分けて読まないと、安く見える提案の中身を見誤ります。なお、支援の費用相場や期間の相場について、出典を確かめられる公開の統計は見当たりません。そのため本記事では金額の目安を示さず、内訳の読み方に絞ります。そこでここでは、AIエージェント導入支援にかかる費用を3つの内訳に分けて整理します。

内訳①業務の設計にかかる工数

1つ目の内訳は、任せる業務を選び、手順を分け、データと権限の設計を決めるまでにかかる工数です。見積もりの上では「要件定義」や「設計」と書かれることが多い部分にあたります。この部分が小さく見積もられている提案は、業務を聞き取る時間が含まれていない可能性があります。

この物流会社が受け取った3社の提案を並べてみると、設計にかける工数の差が最も大きく出ました。設定型の会社の提案には、この内訳がほとんど含まれていません。業務を分ける作業を自社で終えている前提の見積もりだったためで、総額だけを比べていれば、最も安い提案に見えていたはずです。

設計の工数は自社でどこまで終えてから頼むかで増減するため、総額が最も安い提案ほど、どの作業を自社に残す前提なのかを先に確かめる必要があります。

内訳②組んで試す期間の工数

2つ目は、実際に組んで限られた範囲で試し、結果を測るまでの期間にかかる工数です。試す期間が長くなるほど工数は増えますが、短すぎると結果を測る前に支援が終わってしまいます。そのため、期間の長さと測る項目がセットで提案されているかどうかを見ます。

先ほどの物流会社では、支援を受ける期間を3か月に区切って合意しました。最初の月を設計にあて、残りの期間を組んで試す作業と結果の測定にあてる形です。測る項目は、任せる対象にした問い合わせの1件あたりの対応時間に絞っていました。試す期間の終わりに、その数字で本番へ進めるかを判断する段取りも、最初に組んでいます。

試す期間の工数は、何を測って何を判断するかが決まっていれば、提案ごとの差を同じ条件で比べられる内訳になります。

内訳③ツールの利用料

3つ目の内訳はツールの利用料で、支援会社に払う費用とは別に、AIエージェントを動かす製品に対して発生します。課金の形は製品によって異なり、Agentforceの場合は、利用者ごとに発生する課金、会話1件ごとに発生する課金、処理を実行するたびに発生する課金が用意されています。※参考記事はこちら

処理のたびに発生する分はFlex Creditsで数え、10万クレジットが500ドル、標準的なアクション1回で20クレジット(0.10ドル)を消費するのが目安です(2026年9月時点)。※参考記事はこちら

この物流会社は、任せる対象を配送状況の一次回答の月600件に絞っていました。そのため、処理の回数を問い合わせの件数から読むことができ、利用料の規模を試す前に見積もれています。課金の仕組みについては利用料の考え方として整理していますので、製品を決める段階であわせて参考にしてください。

契約前に支援会社へ投げる3つの問い

前章では、AIエージェント導入支援の費用を、3つの内訳に分けて読む方法を整理しました。内訳を比べて候補が絞れたら、契約の前に、提案書には書かれていない進め方を確かめておく段階に入ります。この物流会社も、最後に残った候補の会社へ同じ3つの問いを投げ、返ってきた答え方の違いを見比べました。契約する会社を決めたのは、提案書の金額よりも、この問いへの答え方のほうだったのです。そこでここでは、契約前に支援会社へ投げておきたい3つの問いを解説します。

問い①最初の1業務を一緒に選ぶか

1つ目の問いは「最初の1業務を一緒に選ぶか」で、支援の範囲を見分けるときに最初に投げておきたい問いです。提案書に任せる業務が書かれていても、その業務をどう選んだのかまでは書かれていません。支援会社と一緒に選んだ結果なのか、相談した側の希望を写したものなのかは、読んだだけでは分からないのです。

この物流会社がこの問いを投げたところ、ある会社は「候補の一覧をいただければ、件数と手順のそろい方で優先順位をつけます」と答え、その場で7つの候補のうち配送状況の問い合わせを最優先に挙げました。別の会社の答えは「ご希望の業務で組みます」で、前者は選ぶ作業を支援の範囲に含め、後者はその作業を相談した側に残す前提だったことが、この1つの問いで分かっています。

問い②支援が終わった後に誰が直すか

次に、支援の期間が終わった後に設定や回答の内容を誰が直すのかを尋ねます。この問いへの答えは、支援が終わった後の費用にも関わります。直す作業を外部に残せば保守の費用が続き、社内で引き取れば担当者の時間が必要になるからです。

先ほどの物流会社が選んだ会社は、支援の3か月のあいだに情報システムの担当が直し方を覚え、4か月目からは自社で引き取る前提で、そのための手順書を支援の成果物に含めると答えました。もう一方の会社は、支援が終わった後も保守の契約で直す作業を受け持つと答えており、社内に直せる人が残らない形でした。

どちらを選ぶかは会社の方針によって変わるため、どちらが正しいとは一概に言えません。自社で直せる状態を残したいのであれば、成果物に手順書が含まれるかどうかを確かめておくと判断を誤りません。

問い③途中でやめたときに何が残るか

最後に投げるのは、支援を途中でやめた場合に自社に何が残るのかを確かめる問いです。試した結果が思わしくなく、範囲を狭めたり止めたりする判断は、十分に起こりえます。やめたときの扱いを契約の前に確かめておかないと、それまでの費用に見合うものが自社に何も残らないことになります。

この物流会社が確かめたのは、途中でやめた場合でも、3つのものが自社に渡るかどうかでした。業務の分け方をまとめた資料、組んだ設定、試した期間の測定結果の3つです。選んだ会社は3つとも渡すと答えており、仮に本番へ進まなかったとしても、別の支援会社や社内の担当者が続きから再開できる状態を確保できています。

契約前の3つの問いは、支援が順調に進んだ場合よりも、うまくいかなかった場合に自社に何が残るかを確かめるための問いです。

AIエージェント導入支援のよくある3つの誤解

契約の前に投げる3つの問いを整理しましたが、投げる側に誤った前提があると、返ってきた答えの良し悪しを正しく判断できません。そのため、ここで支援を頼む側が持ちやすい前提を確かめておきます。いずれも、支援を頼んだ後に「思っていた結果と違う」となる原因として、相談の場面でよく出てくるものです。先ほどの物流会社でも、試験導入の段階では、カスタマーサービスの責任者がそのうちの1つを前提にしていました。そこでここでは、AIエージェント導入支援のよくある3つの誤解を解説していきます。

誤解①支援を頼めば定着まで進む

1つ目は、「支援を頼めば定着まで進む」と考えてしまう誤解です。支援会社が受け持てるのは、設計や設定、使われ方の分析までにとどまります。担当者が毎日の手順の中でAIエージェントを使い続けるかどうかは、社内の運用の決め方に左右されるのです。

この物流会社でも、カスタマーサービスの責任者は当初、「支援会社が入れば担当者は使うようになる」と考えていました。ところが試験の段階で、一次回答を確かめずに荷主へ送ってよいのか、担当者が一度目を通すのかが決まっていませんでした。その違いが、使う担当者と使わない担当者の差として表れています。支援会社が出したのは確認の手順の案までで、どちらにするかを最終的に決めたのはカスタマーサービスの責任者でした。

運用に入った後に使われ続ける状態を作るには、確認の手順のような社内の決めごとを誰が決めるのかを、支援会社が案を出す前に割り当てておくと、案が出てから社内の検討が止まる事態を避けられます。

誤解②大きな会社ほど任せて安心できる

2つ目の誤解は、規模の大きい支援会社を選べば任せて安心できると考えることです。規模が大きいほど体制は整っていますが、1つの業務にどれだけ時間をかけて聞き取りをしてくれるかは、会社の規模とは別の問題になります。

先ほどの物流会社が相談した3社のなかにも、実績の多さを強調する規模の大きい会社がありました。ところが提案の中身は他社の事例をもとにした標準の構成で、配送状況の問い合わせを種類ごとに分ける作業は含まれていません。一方で、最終的に選んだ会社は規模こそ小さかったものの、最初の打ち合わせで問い合わせの種類と件数を細かく尋ねてきています。

会社の規模で比べるより、前章の3つの問いへの答え方で比べるほうが、選んだ後に外れにくくなります。

誤解③ツールを決めてから支援会社を探す

3つ目は、「ツールを決めてから支援会社を探す」順番を正しいとみなす誤解です。ツールを先に決めると、任せる業務に合っているかどうかを確かめる前に、支援会社の候補がそのツールを扱える会社に限られてしまいます。

この物流会社はSalesforceを使っていたことから、当初は同じ製品群の中で組むことを前提にしていました。結果として同じ製品で組むことになりましたが、それは任せる業務と参照するデータを先に整理したうえでの判断です。荷主の情報がすでにSalesforceにあることを確かめてから選んだため、製品を選んだ理由を社内に説明できる形が整っています。

AIエージェント導入では、ツールより先に任せる業務と参照するデータを決め、その結果として製品と支援会社を選ぶ順番のほうが、選んだ理由を社内に説明できる導入になります。

Agentforceで組む場合の3つの違い

前章では、ツールを先に決める順番の誤解を取り上げました。任せる業務とデータを整理した結果として、Agentforceで組む選択肢が候補に上がる会社もあります。この物流会社のように、取引先の情報がすでにSalesforceに集まっている会社です。本記事は製品を決める前の段階に向けた内容ですが、比べる材料として、CRMの中で動く製品で組むと何が変わるのかも押さえておきましょう。Agentforceで業務をどの単位に分けて持たせるかは、トピックの設計で整理しています。そこでここでは、AIエージェント導入をAgentforceで組む場合の3つの違いを整理します。

違い①CRMの記録をそのまま参照できる

1つ目の違いは、CRMに蓄えてきた顧客や取引の記録を、別の場所へ移さずにそのまま参照できる点です。CRMの外で動くAIエージェントを使う場合は、参照させるデータを取り出して渡す仕組みを別に作る必要があります。その設計と保守の工数が、導入の費用に上乗せされることになります。

この物流会社の場合は、荷主の情報と問い合わせの履歴が、すでにSalesforceで管理されていました。そのため、どの荷主からの問い合わせかを特定する部分は、データを移す作業を挟まずに組めています。つなぐ設計が必要になったのは倉庫の管理システムにある出荷の記録だけで、設計の工数を1つのシステムとの接続に絞れました。

CRMの記録がどれだけ整っているかによって、この違いが費用の差として表れる大きさも変わってきます。

違い②既存の権限設定で見える範囲を分けられる

2つ目は、CRMですでに運用している権限の仕組みを使って、AIエージェントに見せてよい情報の範囲を管理できる点です。AIエージェントを入れるたびに見せてよい範囲を一から設計し直すと、既存の設定との食い違いが起きやすくなります。食い違いが残れば、見えてはいけない相手に情報が届くおそれもあります。

先ほどの物流会社では、工程②で触れた荷主ごとの見せてよい範囲に合わせて、Salesforceの側でも閲覧の設定を分けて運用していました。この設定をAIエージェントの側でも同じ前提として使う形にしたことで、ある荷主からの問い合わせに別の荷主の出荷記録を返さない条件を、新しい仕組みを作らずに満たせました。

利用者やエージェントごとに見える範囲を分ける設定の考え方は、手順とあわせて製品の記事のなかで整理しています。

違い③Salesforceの画面の中で使える

3つ目の違いは、担当者が普段使っているSalesforceの画面の中で、AIエージェントを使える点です。別の画面や別のツールを開く手間が増えないことは、現場へ広げる工程で大きな差になります。新しいツールを開く手順が1つ増えるだけでも、問い合わせが集中する時間帯には使われなくなりやすいためです。

この物流会社のカスタマーサービスは、問い合わせを受けるたびに、Salesforceの画面で荷主の情報を確認していました。同じ画面の中でAIエージェントの一次回答を確かめられる形は、担当者の手順をほとんど変えずに済んでいます。ただし、担当者の手順が変わらないことは、費用に見合う結果が出るかを稟議で説明する材料にはなりません。稟議で問われる論点は、費用対効果の示し方として整理しています。

3つの違いはいずれもCRMの記録と権限と画面がすでに社内で使われていることを前提にしているため、CRMをまだ使っていない会社は、CRMを整える費用とAIエージェントの費用を分けて見積もると、どちらに費用がかかっているかを稟議の場で説明できます。

導入支援を急がなくてよい3つの状況

Agentforceで組む場合の3つの違いまで見てきたところで、この物流会社のその後を振り返っておきます。当初の目的は「配送状況の問い合わせへの一次回答を任せ、カスタマーサービスの時間を例外対応へ回すこと」でした。この物流会社は、任せる対象を月1,800件のうち、出荷の記録だけで答えられる月600件に絞っています。

その結果、対象分の対応は1件6分から2分へと4分短くなりました。月にすると40時間を、カスタマーサービスが例外対応へ使えるようになった計算です。

支援を受けた3か月の後、4か月目からは情報システムの担当が、直す作業を自社で引き取っています。ただし、どの会社にとっても、今すぐ支援を頼むのが正しいとは限りません。頼む時期を待ったほうが、同じ費用でも結果につながる場合があります。そこでここでは、AIエージェント導入支援を急がなくてよい3つの状況を解説します。

状況①試す業務の担当者が協力できない時期にある

1つ目は、任せたい業務を受け持つ担当者が、繁忙期や組織の変更などで、しばらく協力できない時期にある状況です。業務の手順を聞き取り、試した結果を確かめる作業には、担当者の時間が欠かせません。支援会社がどれだけ経験を積んでいても、この時間を代わりに用意することはできないのです。

この物流会社でも、年末の繁忙期にはカスタマーサービスの担当者が問い合わせの対応で打ち合わせの時間を取れなくなるため、支援の開始時期を、あえて繁忙期が明けた後にずらしていました。仮に繁忙期のさなかに始めていれば、聞き取りの打ち合わせが開けず、支援の期間の一部が何も進まないまま過ぎていたはずです。

支援の開始日は、試す業務の担当者の繁忙期を先に確かめ、聞き取りの打ち合わせを入れられる週から逆算して決めると確実です。

状況②生成AIの社内規程が決まっていない

2つ目は、生成AIを業務で使うときの社内規程が、まだ決まっていない状況です。どの情報をAIに読ませてよいか、出力をそのまま社外へ出してよいかといった規程が無いまま設計を進めたとします。その場合、途中で規程が決まった時点で、設計のやり直しが発生することがあります。

先ほどの物流会社では、支援を頼む前に、法務と情報システムの担当が確認を済ませていました。荷主の情報をAIエージェントに参照させてよいかについて、荷主との契約の範囲内で参照する形を社内規程として定めていたのです。この確認が先に終わっていたため、設計の段階で、参照してよいデータの範囲を迷わずに決められています。

規程づくりは社内でしか決められない事柄で、支援を頼む前に済ませておくほうが、支援の期間をそのまま設計の作業に使えます。

状況③基幹システムの入れ替えが先に控えている

3つ目の状況は、基幹システムの入れ替えが近いうちに予定されている場合です。AIエージェントが参照するデータの置き場所や項目が入れ替えで変わると、先に組んだ接続の設計が使えなくなってしまいます。入れ替えの後に、接続の設計を一から組み直すことにもなりかねません。

この物流会社の場合は、倉庫の管理システムを入れ替える計画が当面ありませんでした。そのため、出荷の記録との接続を、入れ替えの時期を気にせずに設計できています。仮に入れ替えが控えていれば、倉庫のデータを参照する業務は後回しにし、CRMの中で完結する業務から試す順番を選んでいたでしょう。

急がなくてよい状況とは、支援会社の力では用意できない社内の時間・規程・データの置き場所が、まだそろっていない状況だと言えます。

【一問一答】AIエージェント導入支援に関するよくある質問

ここまで、AIエージェント導入支援を頼む範囲の決め方から、支援会社の選び方、契約前の問い、急がなくてよい状況までを見てきました。最後に、相談の場面でよく尋ねられる疑問を、この物流会社の例とあわせて整理しておきます。いずれも、支援会社へ連絡する前に社内で答えを持っておくと、相談の時間を設計の話に使えるようになる質問です。そこでここでは、AIエージェント導入支援に関するよくある質問を5つ取り上げます。

質問①AIエージェント導入支援はどのくらいの期間がかかるのか

この記事の例では、支援を受けた期間は3か月で、4か月目から自社で直す作業を引き取りました。期間は任せる業務の数と試す期間に何を測るかで決まるため、業務を1つに絞り、測る項目を1つに決めておくほど短く収まります。

質問②AIエージェント導入は自社だけでもできるのか

業務と設定の両方が分かる担当がいて、試す業務を1つに絞れており、止めたときに元の手順へ戻せるなら、自社だけでも進められます。この物流会社は条件が欠けていたために、試験導入が3か月止まっていました。

質問③AIエージェント導入支援と開発の外注は何が違うのか

開発の外注は決まった仕様を組む作業を頼むもので、導入支援は任せる業務を選ぶ段階から、使われ方を見て直す段階までを対象にします。この物流会社が支援に求めたのも、問い合わせを種類ごとに分けて、任せる対象を月600件に絞る作業からでした。

質問④AIエージェント導入支援の費用は何で決まるのか

業務の設計にかかる工数、組んで試す期間の工数、ツールの利用料の3つで決まります。利用料は製品によって異なり、Agentforceであれば標準的なアクション1回が20クレジットで、0.10ドルに当たります(2026年9月時点)。この物流会社は対象を月600件に絞っていたため、処理の回数を件数から読めました。※参考記事はこちら

質問⑤AIエージェント導入支援は従業員の少ない会社でも頼めるのか

従業員の少ない会社でも頼めますが、結果を左右するのは会社の規模よりも、判断する人の名前と試す業務を1つに決められるかどうかです。この物流会社も情報システムの担当は2名でしたが、4つの材料をそろえてから相談したことで、各社の提案を同じ条件で比べられました。

AIエージェント導入支援は、自社でやる範囲を先に決めた会社ほど外れない

AIエージェント導入支援は、頼めば導入が進むサービスではありません。任せる業務を選ぶ工程から使われ方を見て直す工程までのうち、自社で持つ部分と外部に頼む部分を先に分けておく必要があります。その線を引いておくことで、はじめて支援会社の提案を同じ条件で比べられるようになるのです。この物流会社が「配送状況の問い合わせへの一次回答を任せ、カスタマーサービスの時間を例外対応へ回すこと」という当初の目的を達成できたのは、試験導入が止まっていた理由を判断の不足だと見きわめ、渡す材料をそろえてから支援会社を選んだからでした。対象の一次回答は1件6分から2分になり、月40時間をカスタマーサービスが例外対応へ使えています。

本記事では、5つの工程、内製の3条件、支援会社の3タイプ、頼む前の4つの材料、契約前の3つの問いを整理しました。いずれも、製品や支援会社を決める前に、社内で確かめておける内容です。自社でやる範囲を決め、頼む範囲の材料をそろえてから相談することが、支援の費用に見合う結果を得るための順番になるでしょう。本記事の整理が、支援会社へ連絡する前の社内の打ち合わせで少しでもお役に立てれば幸いです。