Agentforceのトピックとは、届いた依頼をどの業務として扱うかを決める単位のことです。呼び分けが安定しないときは指示文を書き直すのが定石とされていますが、書き直しても、同じ質問に返ってくる答えが日によって変わる状態は止まりません。設定の画面はトピックを追加するところまで案内してくれますが、どの業務をどこまで1つのトピックに入れるかは、どこにも書かれていないためです。Agentforceで最初に効いてくるのは、指示文の書き方より、業務をどの単位で割るかという分け方のほうだと考えます。
そこで本記事では、トピックを分けないまま組み始めたときに何が起きるかから、業務から起こす4つの手順、1つのトピックに収める範囲を決める条件、重なりを見つけて直す手順、そして1業務から組むステップまでを解説します。設定の操作ではなく、分け方の基準として整理していますので、自社の状況に合わせて参考にしてください。なお、トピックやアクションの上限は変わることがあるため、本記事は2026年9月時点で確認できた情報にもとづいています。
Agentforceのトピックを分けずに組んで起きる3症状
医療機器の販売を手がける企業では、従業員210名のうちカスタマーサポートが9名、情報システムの担当が2名という体制でSalesforceを使ってきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。代理店から届く問い合わせは月480件あり、当初の目的は「代理店からの問い合わせを、サポート担当の手を借りずに返せる状態にすること」でした。ところが1体のエージェントに在庫・納期・保守・書類の4種類をまとめて入れたため、呼び分けが安定しない状態が続いています。そこでここでは、この会社を例に、トピックを分けないまま組み始めて起きる3つの症状を整理します。
症状①同じ質問なのに、返ってくる答えが日によって変わる
同じ依頼に対して答えが揺れる原因は、モデルの精度よりも、その依頼を受け取れるトピックが1つに定まっていないことのほうにあります。トピックとは、届いた依頼をどこで処理するかを決める入れものです。似た説明文のトピックが2つ並んでいると、同じ文面でも選ばれる先が変わり、参照する記録も変わってしまいます。
この医療機器の会社でも、代理店から「在庫はいつ入りますか」という文面が届いたとき、在庫を扱うトピックと納期を扱うトピックのどちらが選ばれるかが定まりませんでした。在庫側が選ばれた日は倉庫の残数だけが返り、納期側が選ばれた日は入荷予定日が返っています。担当者から見ると同じ質問に見えるため、エージェントが不安定だという評価につながりました。
同じ文面が2つのトピックの説明文に当てはまる状態が1組でも残っていれば、指示文をどれだけ直しても答えの揺れは止まりません。
症状②想定していない業務まで拾って、見当違いの回答を返す
1つのトピックが広く作られていると、そのトピックが本来受け持たない依頼まで拾ってしまいます。範囲を広く取るほど多くの依頼を処理できるように思えますが、実際には判断に使う材料が混ざり、外れたときの原因も追えなくなります。
たとえば、この会社では在庫を扱うトピックの説明文に「製品に関する問い合わせ全般」と書いていました。その結果、保守部品の型番を尋ねる依頼や、取扱説明書の送付を求める依頼まで在庫のトピックへ渡り、倉庫の残数を検索して「該当なし」と返す動きになっています。代理店から見れば、質問と関係のない答えが返ってきたことになります。
広く書けば見落としが減るという考え方はトピックには当てはまらず、受け持つ範囲を言葉で広げるほど、外れる依頼の種類も一緒に増えていきます。
症状③直したい箇所が見つからず、直すたびに別の業務が壊れる
トピックが分かれていないと、直したい業務だけを取り出して直すことができません。1つのトピックに複数の業務が入っている状態では、片方に合わせて説明文や指示を書き換えると、もう片方の判断まで変わってしまうためです。
この会社の担当者は、保守の受付だけ回答の形を変えようとして、在庫と納期を含む同じトピックの指示を書き換えました。その結果、保守の回答は整った一方で、在庫の照会に対して入荷予定まで添える回答が返るようになり、代理店から「聞いていないことが書かれている」という連絡が入っています。直す単位と業務の単位がずれていたわけです。
以上が、トピックを分けないまま組み始めたときに起きる3つの症状でした。いずれも原因は設定の巧拙にはなく、業務をどの単位で割るかのほうにあります。
部署で切れる?トピックの切り方が外れる理由3つ
前章では、トピックを分けないまま組んだときに起きる3つの症状を整理しました。では、どう分ければよいのかと考えたとき、多くの担当者が最初に手を伸ばすのが、機能の名前や部署の名前で切る方法です。ところがこの2つの単位は、実際に届く依頼とずれています。そこでここでは、Agentforceのトピックを機能や部署の単位で切ると外れる3つの理由を解説します。
理由①機能の名前は、依頼する側の言葉になっていないから
1つ目の理由は、機能の名前が社内の管理上の呼び方であり、依頼する側が使う言葉ではないからです。トピックが選ばれるかどうかは、届いた文面と説明文の意味が近いかどうかで決まります。管理上の呼び方で説明文を書くと、実際の文面とは重ならなくなります。
この医療機器の会社では、当初「在庫管理」「受注管理」という名前でトピックを2つ置いていました。ところが代理店から届く文面は「いま何台ありますか」「今週中に着きますか」といった言い方で、管理という語はほとんど出てきません。届いた480件の文面を読み直したところ、管理という語を含むものは3件だけでした。
トピックの名前と説明文は、社内でその業務をどう呼んでいるかではなく、依頼する側がどう書いてくるかに合わせて決める必要があります。
理由②部署の境目と、依頼が発生する境目は一致しないから
部署で切る方法も、一見すると業務の実態に近いように思えます。しかし1つの依頼が複数の部署にまたがることは珍しくなく、逆に同じ部署の中に性質のまったく違う依頼が混ざっていることもあります。
具体例でいうと、この会社のカスタマーサポート9名は、在庫の確認も保守の受付も書類の送付も、問い合わせ対応の同じ窓口で受けていました。部署で切れば1つのトピックにまとまりますが、在庫は倉庫の記録を見るのに対し、保守は契約と点検履歴を見るため、答えを出すまでに見る記録がまったく違います。同じ部署だからという理由で1つにまとめると、症状②で挙げた状態がそのまま起こります。
部署は人の所属を表す単位であり、依頼の性質を表す単位ではないため、分ける根拠として使うと、業務の中身とずれた線が引かれます。
理由③単位が大きいほど、判断に使う材料が混ざるから
最後の理由は、トピックの範囲が広いほど、どの記録を見て答えるかが定まらなくなるからです。エージェントは、選ばれたトピックに配線された処理を使って答えを組み立てます。1つのトピックに性質の違う処理が並んでいると、どれを使うかの判断が依頼ごとに揺れます。
先ほどの会社の例をとると、在庫・納期・保守・書類を1つのトピックに入れていた時期は、意図したトピックへ渡った割合が54%にとどまっていました。4種類の処理が同じトピックに並んでいたため、担当者が説明文を読んでも、どの依頼にどの処理が使われるのかを事前に言い当てられませんでした。
このように、機能でも部署でもなく、答えを出すために見る記録が同じかどうかで線を引くと、判断に使う材料が混ざりません。
Agentforceのトピックを業務から起こす4手順
前章では、機能や部署で切ると外れる理由を3つ挙げました。ここからは、実際に届いている依頼から線を引き直す手順に進みます。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合に、最初に取り組むのがこの工程です。そこでここでは、Agentforceのトピックを業務から起こす手順を、4つに分けて解説します。
手順①担当者が受け取っている依頼を、口に出す形のまま書き出す
最初に取りかかるのは、いま担当者のもとに届いている依頼を、届いた言葉のまま書き出すことです。要約したり分類名を付けたりすると、その時点で書いた人の解釈が入り、実際の文面から離れてしまいます。2週間から1か月ぶんを、件名や本文の一部ごと写すのが確実です。
この医療機器の会社では、代理店から届いた月480件の問い合わせを、文面を短くせずにそのまま一覧へ書き出しました。書き出してみると、在庫の確認が210件、納期の照会が130件、保守の受付が90件、書類の依頼が50件という内訳が見えています。担当者が事前に立てていた見込みでは保守がいちばん多いはずでしたが、実際には在庫が半分近くを占めていました。
分ける作業を始める前に、何がどれだけ届いているかを数えておくと、あとの判断が推測に頼らずに済みます。
手順②依頼を、答えるために見る記録の種類で束ねる
依頼が並んだら、次はそれぞれに答えるためにどの記録を見ているかを書き添え、同じ記録を見るものどうしで束ねます。依頼の言い方は人によって変わりますが、見る記録は業務ごとに決まっているため、束ね方が安定します。
この会社の場合、在庫の確認は倉庫の残数、納期の照会は発注と入荷の予定、保守の受付は契約と点検の履歴、書類の依頼は製品ごとの文書という具合に、見る記録がきれいに分かれました。一方で「いま何台ありますか、いつ届きますか」と2つをまとめて聞く文面が44件あり、この分は倉庫の残数と入荷予定の両方を見ています。
見る記録で束ねると、分類名を先に決めてから当てはめる方法と比べて、依頼の言い回しが変わっても後から崩れにくい束ができます。
手順③束ごとに、答えを出すまでの判断を1文で書く
束ができたら、その束に届いた依頼へ答えるまでに、担当者がどんな判断をしているかを1文で書きます。この1文が、そのままトピックの説明文の中身になります。長く書く必要はなく、何を見て何を返すかが1文に収まるかどうかが要点です。
たとえば、この会社の在庫の束は「代理店から製品名か型番で残数を聞かれたら、倉庫の記録から在庫のある拠点と台数を返す」と書けました。保守の束は「点検や修理の依頼が届いたら、契約の有無と直近の点検日を確認して、受付できるかを返す」と書いており、どちらも見る記録と返す内容が1文に収まっています。
判断が1文で書けない束は、まだ複数の業務が混ざっている状態で、この段階で気づけば設定を始める前に割り直せます。
手順④判断が2つ以上入った束を割る
最後に、1文に収まらなかった束を割りますが、その基準は、見る記録が違うか、返す内容の形が違うか、外れたときの直し方が違うか、のいずれかに当てはまるかどうかです。1つでも当てはまるなら、別のトピックにしたほうが後の運用が軽くなります。
先ほどの在庫と納期をまとめて聞く44件は、倉庫の残数と入荷予定という2つの記録を見ていたため、この会社では在庫と納期の2つのトピックへ割り、両方を呼ぶ形にしました。割ったあとも、依頼の文面をどちらのトピックが受けるかは決めておく必要があり、この会社では残数の質問が先に来る文面は在庫側で受けると決めています。
この4つはいずれも設定の画面を開かずに終わる作業で、紙の上で割り方が決まってから設定に入ると、作り直しが起きません。以上が、トピックを業務から起こす4つの手順でした。具体的な設定の操作は設定の手順で解説していますので、あわせて参考にしてもらえると嬉しいです。
1つのトピックに収める範囲を決める3つの条件
前章では、業務から束を作って割るところまで進めました。ただし実務では、割るかまとめるかで迷う束が残るのではないでしょうか。そこで判断を機械的に下せるよう、どこまでを1つに収めるかという粒度の条件を先に決めておきます。そこでここでは、1つのトピックに収める範囲を決める3つの条件を解説します。
| 条件 | 確かめること | 外れたときの扱い |
|---|---|---|
| ①見る記録 | 言い方が変わっても同じ記録か | 別のトピックへ割る |
| ②答えの形 | 数値・可否・文書のどれか | 形ごとにトピックを分ける |
| ③直し方 | 直す場所と担当が同じか | 担当が違うなら分ける |
条件①依頼の言い方が変わっても、見る記録が同じか
1つ目の条件は「依頼の言い方が変わっても、見る記録が同じか」です。同じ記録を見て答えられる依頼は、文面がどれだけ違っても1つのトピックに収めて問題ありません。逆に、言い方が似ていても見る記録が違うなら、別のトピックにします。
この会社の在庫の束には「何台ありますか」「在庫はありますか」「すぐ出せますか」という3通りの言い方が混ざっていました。どれも倉庫の残数を見れば答えられるため、1つのトピックにまとめています。一方で「いつ入荷しますか」は言い方が近いものの、見る記録が発注と入荷の予定に変わるため、別のトピックにしました。
言い方の近さで判断するとこの2つは同じ束に入りますが、見る記録で判断すれば正しく分かれます。
条件②答えの形が同じか
2つ目の条件は、返す答えの形が同じかどうかです。数値を返すのか、可否を返すのか、文書を返すのかによって、必要な処理も、外れたときの確かめ方も変わります。形の違う答えを1つのトピックに入れると、どちらの形で返すかの判断が依頼ごとに揺れます。
この医療機器の会社では、在庫の照会に対しては拠点名と台数という数値の組み合わせを返し、保守の受付に対しては受付できるかどうかという可否を返す形にしました。書類の依頼は文書のリンクを返すため、さらに別の形になります。3つを1つのトピックに入れていた時期は、保守の受付に対して台数が添えられる回答が出ていました。
答えの形は読み手である代理店が受け取るものであり、形が違えば、代理店から見て別の業務だということになります。
条件③外れたときの直し方が同じか
3つ目の条件は、答えが外れたときに直す場所が同じかどうかです。説明文を直せば済むのか、参照する記録の整備が要るのか、配線する処理を足すのかによって、直す担当も期間も変わります。直し方が違うものを同じトピックに入れると、片方を直すたびにもう片方を確かめ直す必要が出ます。
先ほどの会社では、在庫の照会が外れたときは倉庫の記録の更新頻度を確かめるだけで済んだのに対し、保守の受付が外れたときは契約データの不足を埋める作業が必要でした。前者は情報システムの担当が当日中に対応でき、後者は営業部門への確認を挟むため1週間ほどかかっています。
3つの条件のうち1つでも外れる束は、まとめずに割ったほうが、あとの直しにかかる時間が短く収まります。
トピックかエージェントか、どちらで分ける?3つの線引き
ここまでは、1体のエージェントの中でどう割るかを見てきました。ところが実際には、そもそもエージェント自体を分けたほうがよい場面もあるのではないでしょうか。この2つの分け方を混同すると、必要のない体数を増やして管理が重くなります。そこでここでは、トピックで分けるか、エージェントごと分けるかの線引きを3つに整理します。
線引き①依頼する人が同じならトピックで分ける
1つ目は「依頼する人が同じならトピックで分ける」です。同じ相手から届く依頼であれば、受け取る窓口は1つにしておいたほうが、依頼する側が使い分けを覚える必要がありません。中身の違いは、窓口の内側でトピックとして分ければ足ります。
この医療機器の会社に届く在庫・納期・保守・書類の4種類は、いずれも代理店の担当者から同じ窓口へ届いていました。そのため4つのトピックに分けたうえで、エージェントは1体のままにしています。代理店から見れば、これまでどおり1つの宛先へ書くだけで済みます。なお、1つのSalesforce組織で有効にできるエージェントは20体までとされているため、窓口を分ける設計は上限にも近づいていきます。(2026年9月時点の情報にもとづく)※参考記事はこちら
依頼する人が同じかどうかは分け方を決めるときに最初に確かめる点で、ここを見ないまま体数を増やすと、代理店に宛先の使い分けを求めることになります。
線引き②扱う記録の権限が違うならエージェントを分ける
2つ目は、扱う記録の参照権限が違う場合です。トピックは同じエージェントの中に並ぶため、そのエージェントに与えた権限は全トピックへ及びます。見せてよい範囲が業務ごとに違うなら、トピックの分け方では制御できません。
先ほどの会社では、代理店向けの4つの業務とは別に、社内の営業担当が使う仕入価格の照会を検討していました。仕入価格は代理店に見せない情報にあたるため、同じエージェントにトピックとして足すのではなく、社内向けのエージェントを別に立てる形にしています。同じ窓口に置けば、権限の設定だけで見せ分けることはできません。
権限で分ける判断は、後から直すと参照権限の設定と業務の両方に影響が及ぶため、設計の段階で決めておくほうが安全です。
線引き③直す担当が違うならエージェントを分ける
3つ目は、直す担当が業務ごとに分かれている場合です。1体のエージェントに複数の担当者が同時に手を入れると、片方の変更がもう片方の動きを変えてしまい、原因を追うのに時間がかかります。
この会社では、4つのトピックをすべて情報システムの担当2名が見る体制にしたため、1体のままで問題ありませんでした。仮に保守の受付をサービス部門の担当が直す体制であれば、変更のたびに在庫側の動きを確かめる必要が出ていたはずです。実際、分ける前の時期に保守の指示を書き換えて在庫の回答が変わった経緯があります。
エージェントを分けるかどうかは、依頼する人・記録の権限・直す担当という3つで決まり、業務の数では決まりません。エージェント自体を分ける場合の基準は、エージェントごと分けるときの条件として別に整理していますので、あわせて参考にしてください。
重なったら?Agentforceのトピックを直す4手順
前章までで、分ける単位の決め方はそろいました。ところが運用を始めると、設計の段階では見えなかった重なりが必ず出てくるものです。重なりを放置すると、症状①で挙げた答えの揺れが再び起こります。そこでここでは、トピックの重なりを見つけて直す手順を4つに分けて解説します。
手順①呼ばれたトピックの記録を、依頼の文面ごと残す
最初にやることは、どの依頼がどのトピックへ渡ったかを、文面とセットで残すことです。渡った先だけを数えても、なぜそちらへ渡ったのかが分かりません。文面が一緒に残っていれば、説明文のどの語が効いたのかを後から読み解けます。
この医療機器の会社では、運用を始めて最初の2週間、届いた文面と渡った先のトピック名を一覧に残しました。件数にして214件ぶんになり、この記録が後の直しをすべて支えています。記録を取らずに説明文だけを書き直していた最初の1週間は、どの語が効いて渡り先が変わったのかを担当者が説明できないまま終わっています。
呼ばれ方の記録をどう集めて可視化するかは、呼ばれ方を記録する仕組みの側で整理しています。
手順②同じ依頼が別のトピックへ渡っている件数を数える
記録がそろったら、次は似た文面が別々のトピックへ渡っている組み合わせを数えます。ここで見るのは割合ではなく件数で、多い順に並べれば、直す優先順位がそのまま決まります。
この会社の214件を数えたところ、在庫のトピックと納期のトピックが同じ文面を取り合っていた件数が44件で最多となり、次が保守と書類の12件、それ以外は数件ずつでした。上位1組で全体の2割を占めていたため、まずこの1組だけを直す判断になっています。
すべての重なりを同時に直そうとすると、どの変更が効いたのかが分からなくなります。件数の多い1組から順に手を付けるのが確実です。
手順③重なっている部分を、どちらか一方へ寄せる
重なりが特定できたら、その部分をどちらのトピックが受けるかを決めて、片方の説明文から外します。両方に書いたまま優先順位だけを指示で伝える方法は依頼の文面が変わると崩れるため、説明文から外すほうが安定します。
先ほどの44件は、いずれも残数と入荷時期の両方を尋ねる文面でした。この会社では、残数を先に返してから入荷予定を添える形が代理店にとって自然だと判断し、在庫のトピックで受けると決めています。納期のトピックの説明文からは、残数に関する記述を削りました。
寄せる先は、依頼する側にとってどちらの答えが先に必要かで決めると迷いません。
手順④寄せた側の判断を1文へ書き直す
最後に、受けると決めたトピックの判断を1文へ書き直します。手順③で範囲が広がっているため、元の1文のままでは実態と合っていません。書き直した1文が長くなりすぎる場合は、寄せる判断のほうを見直します。
この会社の在庫のトピックは「代理店から残数を聞かれたら、倉庫の記録から在庫のある拠点と台数を返す」から「代理店から残数を聞かれたら、倉庫の記録から在庫のある拠点と台数を返し、在庫が無い場合は入荷予定日も添える」へ書き直しました。1文に収まったため、割り直しはせずに済んでいます。
以上が、トピックの重なりを見つけて直す4つの手順でした。この会社では3週間かけて4つのトピックへ分け直し、意図したトピックへ渡った割合は54%から87%へ変わっています。
トピックを1業務から組む4つのステップ
ここまでの手順は、すでに動いているエージェントを直す前提で書いてきました。これから作る場合は、最初から4つを同時に組む必要はありません。小さく始めたい場合は、件数の多い1つだけで運用に入るほうが早く安定します。そこでここでは、トピックを1業務から組む4つのステップを解説します。
ステップ①件数の多い依頼を1つ選ぶ
まず選ぶのは、いちばん多く届いている依頼です。件数が多いほど、記録が短期間でたまり、外れた依頼の傾向もすぐ見えてきます。珍しい依頼から始めると、判断の材料がそろうまでに数か月かかります。
この医療機器の会社では、月480件のうち210件を占めていた在庫の確認を最初の1つに選びました。1日あたり10件前後が届くため、運用を始めて4営業日で40件ぶんの記録が集まっています。仮に月50件の書類の依頼から始めていれば、同じ件数を集めるのに1か月近くかかっていたはずです。
最初の1つを選ぶ基準は業務の重要度ではなく件数で、重要な業務ほど慎重に組みたくなりますが、材料が集まらないと直せません。
ステップ②その依頼だけでトピックを1つ作る
次に、選んだ依頼だけを受けるトピックを1つ作ります。この段階で他の業務の説明を書き足したくなりますが、足すと範囲が広がって外れた原因が追えなくなるため、1つだけで動かして外れ方を見る段階だと考えます。
この会社は、在庫の確認だけを受けるトピックを作り、他の3種類は従来どおりサポート担当が処理する体制のまま残しました。トピックが1つしかないため、外れた依頼はすべて「在庫のトピックが受けるべきでなかった依頼」として整理でき、判断が単純になっています。
範囲を狭く始めると、外れた件数がそのまま直す材料になります。
ステップ③外れた依頼を記録して、範囲を狭める
運用を始めたら、そのトピックが受けるべきでなかった依頼を記録し、説明文から該当する語を外していきます。範囲は広げずに狭めていく方向で調整すると、渡る依頼の性質がそろいます。
先ほどの会社では、最初の週に在庫のトピックへ渡った依頼のうち、31件が本来は納期や保守の依頼でした。説明文から「製品に関する」という広い表現を外し、残数という語を中心に書き直したところ、翌週の同じ件数は6件まで減っています。
説明文を長くする方向では、この数字は動きませんでした。逆に、語を削ったあとで渡らない依頼が増えたときは狭めすぎているため、そこで調整を止めます。
ステップ④安定してから隣の依頼を足す
最後に、1つ目のトピックが安定してから、次に件数の多い依頼を足します。安定の目安は、外れた依頼が週に数件まで減り、その理由を担当者が説明できる状態です。まだ理由を説明できない段階で足すと、どちらのトピックの問題かが分からなくなります。
この会社では、在庫のトピックが週6件まで下がったところで納期のトピックを足し、その2週間後に保守を足すという順番で進めました。3つ目を足す時点でも、意図したトピックへ渡った割合は下がっていません。
1つの業務に絞って組めば、着手から運用開始までは数週間で収まります。以上が、トピックを1業務から組む4つのステップでした。
トピックの設計でつまずく3つの落とし穴
前章では、1つの業務から組み立てる順番を確認しました。ここからは、その過程で実際に起きやすい失敗を挙げます。いずれも、設定の知識が足りないから起きるわけではありません。そこでここでは、Agentforceのトピック設計でつまずく3つの落とし穴を解説します。
落とし穴①最初から業務を網羅しようとして数が増える
1つ目は「最初から業務を網羅しようとして数が増える」ことです。届いている依頼を書き出すと、細かい種類まで見えてくるため、すべてに対応するトピックを用意したくなります。ところが数が増えるほど説明文どうしが近づき、選ばれ方が不安定になります。
この医療機器の会社でも、最初の設計案では依頼の種類を11に分ける計画がありました。書き出した内訳を件数の多い順に並べ直したところ、上位4つで全体の98%を占めており、残る7種類は月に合計10件ほどでした。7種類はサポート担当が処理する形のまま残し、トピックは4つにとどめています。
なお、1体のエージェントが扱えるトピックには上限があり、公開されている情報では15とされています。数を増やす方向で設計すると、上限に達する前に呼び分けが不安定になります。(2026年9月時点の情報にもとづく)※参考記事はこちら
落とし穴②説明文を長く書けば呼び分けが直ると考える
2つ目は、呼び分けが安定しないときに説明文を書き足してしまうことです。説明が足りないから選ばれないという考え方は自然に見えますが、実際に効くのは長さではなく、他のトピックと重ならない語が入っているかどうかです。
この会社の担当者は、在庫のトピックの説明文を2倍の長さまで書き足しました。それでも意図したトピックへ渡った割合は54%から58%までしか動いていません。その後、他のトピックと重なる語を削って短くしたところ、同じ週の割合が70%台まで上がっています。書き足した時期に増えたのは、納期のトピックとも重なる語でした。
説明文で調整できるのは他と重ならない語をどれだけ持てるかまでで、長さで解決しようとすると、重なりが増えて逆の結果になります。
落とし穴③呼ばれなかった依頼の記録を見ない
3つ目は、どのトピックにも渡らなかった依頼を確かめないことです。渡った依頼の正しさだけを見ていると、設計から漏れている業務に気づけません。漏れた依頼は担当者の手作業へ戻るため、件数が減らない原因になります。
先ほどの会社では、運用開始から3か月のあいだに、どのトピックにも渡らなかった依頼が週31件から6件まで減りました。この6件を読み直したところ、返品の相談という新しい種類が含まれており、設計時には1件も届いていなかった依頼でした。渡った側だけを見ていれば、この種類には気づけていません。
渡らなかった依頼は、次に足すトピックの候補がそのまま並んだ一覧にあたり、運用の中でいちばん材料になる記録だと考えます。
トピックが機能しているかをフェーズごとに測る
前章では、進め方の失敗を3つ挙げました。こうした失敗に早く気づくには、時期ごとに見る数字を変えておく必要があります。同じ指標を最初から最後まで追うと、いま何を直すべきかが分からなくなるためです。そこでここでは、トピックが機能しているかをフェーズごとに測る方法を解説します。
段階①組んだ直後|意図したトピックへ渡った割合
組んだ直後に見るのは、届いた依頼が意図したトピックへ渡った割合です。この時期は件数が少ないため、割合で見ないと変化が読み取れません。分母は届いた依頼の総数、分子は担当者が「そこで正しい」と判断した件数になります。
この医療機器の会社では、4つを1つにまとめていた時期が54%、4つのトピックへ分け直した後が87%でした。数字が動いた要因は説明文の長さにはなく、4つの業務へ割り直したことのほうにあります。判断は担当者が1件ずつ目で確かめており、2週間ぶんで214件を見ています。
なお、この割合は7割を超えたあたりから伸びが緩やかになります。最初の1か月で100%を目指すと、狭めすぎて渡らない依頼が増えます。
段階②広げる時期|どのトピックにも渡らなかった依頼の件数
トピックを増やしていく時期に見るのは、どこにも渡らなかった依頼の件数です。この時期は割合よりも、漏れている業務の種類を見つけることが目的になります。件数で見れば、足すべきトピックの優先順位がそのまま並びます。
先ほどの会社では、週31件から始まり、納期と保守を足した後に週6件まで下がりました。残った6件のうち4件が返品の相談で、残る2件は代理店の担当者が個人的に近況を書いてきたものです。前者は次に足す候補になり、後者はトピックを作る対象になりません。
件数を0に近づけること自体は目的にせず、人が処理したほうが早い依頼は残しておくほうが、全体としては軽く収まります。
段階③続ける時期|使われていないトピックの数
運用が続く時期に見るのは、作ったのに呼ばれていないトピックの数です。呼ばれないトピックは、他のトピックと重なる語を持ち続けるため、置いておくだけで呼び分けを不安定にします。
この会社では、運用から3か月後に書類の依頼を扱うトピックが月8件まで減っていました。設計時は月50件でしたが、代理店向けの文書を一覧で公開したため、問い合わせ自体が減っています。担当者はこのトピックを残すか外すかを検討し、他のトピックとの重なりが少ないことを確認したうえで残す判断をしました。
呼ばれていないトピックは、件数だけで外すのではなく、他のトピックと重なる語を持っているかどうかで判断します。
人がトピックの割り当てを確かめるべき3つの場面
前章では、時期ごとに見る数字を分けました。とはいえ、数字がそろっていても人が目で確かめたほうがよい場面は残ります。自動で測れるのは渡った先までで、渡ってよかったかどうかは業務を知っている人にしか判断できないためです。そこでここでは、人がトピックの割り当てを確かめるべき3つの場面を解説します。
場面①新しい業務を足した直後
最初の場面は、トピックを1つ足した直後です。足したトピックは新しい語を持ち込むため、既存のトピックが受けていた依頼を引き取ってしまうことがあります。足した側だけを見ていると、既存側の割合が下がっていることに気づけません。
この医療機器の会社では、納期のトピックを足した週に、それまで在庫のトピックが受けていた依頼のうち9件が納期側へ渡りました。担当者が両方の記録を並べて確かめた結果、9件のうち6件は納期側で正しく、3件は在庫側で受けるべき依頼だと判断しています。この3件をもとに、納期側の説明文から残数に関する語を削りました。
足した直後の1週間は、足したトピックと既存のトピックの両方を並べて見ます。
場面②担当者の言い回しが変わったとき
2つ目は、依頼する側の言い方が変わったときです。製品名の呼び方が変わる、社内の様式が変わるといった変化は、届く文面をまとめて変えます。説明文は変えていなくても、意味が近い語が入れ替わるため、渡る先が動きます。
この会社では、代理店向けの発注画面が更新され、型番の表記が英数字の並びから製品の通称に変わった時期がありました。その週から在庫のトピックへ渡る割合が下がり、担当者が文面を読み直して原因に気づいています。説明文へ通称の表記を加えたところ、翌週には元の水準へ戻りました。
代理店や社内で様式が変わったと聞いた週は、説明文を見直す時期だと考えて、渡り先の記録を前の週と並べて確かめます。
場面③外部の仕組みへ渡す処理が含まれるとき
3つ目は、そのトピックが社外へ届く処理や、他の仕組みへ書き込む処理を含む場合です。渡る先を誤ったときに取り消せない処理は、割り当ての精度が上がるまで人が確かめる対象にします。
先ほどの会社では、書類の依頼を扱うトピックが代理店へ直接ファイルを送る形を検討していましたが、送り先を誤ると回収できないため、当面はリンクを返すだけにとどめています。実際に運用を始めてから3か月間で、送り先の判断が外れた依頼が2件あり、ファイルを送る形にしていればこの2件は取り消せていませんでした。
一任するか承認を挟むかの線引きは、人が承認する場面の考え方として別に整理していますので、あわせて参考にしてください。
トピックを細かく分けるべき企業の3つの条件
ここまでは、分け方と直し方を順に見てきました。ただし、どの会社にも同じ細かさが必要なわけではありません。分ける数は、業務の複雑さよりも社内の体制で決まる部分が大きいためです。そこでここでは、トピックを細かく分けるべき企業の3つの条件を解説します。
条件①同じ窓口に、性質の違う依頼が混ざって届く
1つ目の条件は「同じ窓口に、性質の違う依頼が混ざって届く」です。窓口が1つに集約されているほど、届く依頼の種類は増えます。種類が多いまま1つのトピックで受けると、答えを出すために見る記録が定まりません。
この医療機器の会社は、代理店からの連絡をすべてカスタマーサポートの共通の宛先で受けていました。そのため在庫・納期・保守・書類という見る記録の違う4種類が同じ窓口へ届き、月480件の内訳が最初は誰にも見えていません。窓口が業務ごとに分かれている会社であれば、宛先の時点で分かれているため、トピックも少なくて済みます。
この会社のように4種類が1つの宛先へ届いているなら、その4種類がそのままトピックの数の見積もりになります。
条件②業務ごとに見る記録の権限が分かれている
2つ目は、業務ごとに参照できる記録の範囲が分かれている場合です。権限が分かれているということは、その業務が別の管理下にあるということでもあります。1つのトピックにまとめると、権限の設計と業務の設計が食い違います。
先ほどの会社では、保守の受付が契約と点検の履歴を参照する一方、在庫の確認は倉庫の記録しか使いません。契約データはサービス部門が管理しており、更新の頻度も担当者も違います。この違いを無視して1つにまとめていた時期は、契約データの不足が在庫の回答にも影響していました。
見る記録の管理者が業務ごとに違うなら、トピックを分けたうえで、説明文の見直しをその管理者へ頼める形にしておきます。
条件③直す担当を業務ごとに置ける
3つ目は、直す担当を業務ごとに置ける体制があるかどうかです。分けたトピックは、それぞれ説明文の見直しと記録の整備が必要になります。担当を置けるなら細かく分けたほうが精度は上がりますが、置けないなら分けた数だけ放置されるトピックが増えます。
この会社は情報システムの担当が2名おり、4つのトピックを2名で分担できる範囲だと判断して分けました。仮に1名であれば、件数の多い在庫と納期の2つにとどめ、残りは人が処理する形を続けていたはずです。実際、書類のトピックは月8件まで減った後、見直しの頻度が下がっています。
分ける数は業務の種類の数ではなく、直し続けられる担当を何人置けるかで決まります。
トピックを細かく分けなくてよい企業の3つの条件
前章では、細かく分けたほうがよい条件を3つ挙げました。一方で、分けないほうが早く安定する会社もあります。分ける作業には設計と検証の時間がかかるため、必要がなければ他の工程へ時間を回したほうが合理的です。そこでここでは、トピックを細かく分けなくてよい企業の3つの条件を解説します。
条件①届く依頼の種類が数えられる範囲に収まっている
1つ目の条件は、届く依頼の種類が2つか3つに収まっている場合です。種類が少なければ、1つのトピックで受けても見る記録が混ざらないため、分ける作業自体が不要になります。
たとえば、代理店を持たず自社の営業だけで販売している会社であれば、社内から届く依頼は在庫の確認に集中します。この医療機器の会社のように4種類が同じ窓口へ届く状態とは、前提が違います。種類が少ない段階で細かく分けると、説明文どうしが近づいて呼び分けが不安定になるだけです。
依頼の種類を数えた結果が3つ以下なら、分けない判断のほうが合理的だと考えます。
条件②見る記録が1つにまとまっている
2つ目は、答えを出すために見る記録が1つにまとまっている場合です。参照先が同じであれば、依頼の言い方がどれだけ違っても処理の中身は変わらないため、トピックを分ける理由が生まれません。
具体例でいうと、Salesforceの中で受注も在庫も同じレコードで管理している会社では、在庫の確認も納期の照会も同じ記録を見て答えられます。先ほどの会社は倉庫の記録と発注の予定が別の仕組みに分かれていたため分ける必要がありましたが、記録が1つならその必要はありません。
参照する記録が1つに収まっているあいだは、依頼の種類が3つに増えてもトピックを増やさずに運用できます。
条件③直す担当が1人しかいない
3つ目は設定を直す担当が1人しかいない場合で、トピックを分けるほど見直す対象は増えます。1人で複数のトピックを抱えると、件数の少ないトピックから手が回らなくなり、放置された説明文が呼び分けを乱します。
この医療機器の会社でも、担当が2名だったからこそ4つに分けられました。1名の体制であれば、在庫の1つだけで運用を続け、他の3種類は人が処理するほうが、全体の対応時間は短く収まったはずです。分けた数だけ運用の手間が増えることは、設計の段階では見えにくい部分にあたります。
分けない判断は、後回しにしたのではなく選んだ結果であり、件数が増えた時点で分ければ間に合います。
既存のエージェントにトピックを足すか統合するかの4つの判断
ここまでは、これから設計する場合を中心に整理してきました。すでに動いているエージェントに手を入れる場合、先に来るのは足すか統合するかの判断です。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合も、この判断を外部と一緒に確かめる形になります。そこでここでは、既存のエージェントにトピックを足すか統合するかの判断を4つに分けて解説します。
判断①足す前に、いまのトピックで拾えていない依頼を数える
最初に確かめるのは、いまどの依頼が拾えていないかです。足したい業務が決まっていても、実際に届いている件数を数えないまま足すと、呼ばれないトピックが1つ増えるだけになります。
この医療機器の会社では、保守のトピックを足す前に、どこにも渡らなかった依頼を1週間ぶん読み直しました。31件のうち保守に関するものが18件あり、件数として足す根拠になっています。同じ一覧に返品の相談も4件ありましたが、この時点では足さず、次の候補として記録に残しました。
足す根拠は、業務として大事かどうかではなく、届いている件数で確かめます。
判断②似た説明文のトピックが2つあるなら統合を先にする
2つ目は、足す前に統合すべき組み合わせが残っていないかを見ることです。似た説明文のトピックが並んでいる状態で新しいトピックを足すと、重なる語がさらに増えて、呼び分けの不安定さが広がります。
先ほどの会社では、保守を足す前の時点で、在庫と納期の説明文に残数に関する語が両方に入っていました。この重なりを先に片づけ、割合が87%まで戻ったことを確認してから保守を足しています。順番を逆にしていれば、割合が下がった原因が保守の追加なのか既存の重なりなのかを切り分けられませんでした。
既存の重なりを片づけてから足すと、割合が動いた原因を1つに絞れます。
判断③足すトピックの依頼が月に何回来るかを確かめる
3つ目は足そうとしている依頼の頻度で、頻度が低いトピックは記録がたまらないため、説明文を直す材料も集まりません。人が処理を続けたほうが、結果として対応時間は短く収まります。頻度は費用にも効いてきます。目安として、Flex Creditsは10万クレジットあたり500ドルで、標準的なアクションは1回あたり20クレジット、金額にして0.10ドルを消費します。(2026年9月時点の目安)※参考記事はこちら
この会社では、月8件まで減っていた書類の依頼について、トピックとして残すかどうかを検討しました。月8件では外れた依頼の傾向が見えないため、本来なら外す判断になります。ただし他のトピックと重なる語が少なく、呼び分けを乱していないことを確認できたため、残す結論にしています。
頻度が低い業務は、足さない判断も、残さない判断も、どちらも選択肢に入ります。
判断④足したあとに呼び分けが崩れていないかを測り直す
最後は足した後の測り直しで、新しいトピックは新しい語を持ち込むため、既存のトピックの渡り先が動きます。足す前の数字と比べられる形で記録を残しておくと、崩れに早く気づけます。
先ほどの会社は、保守を足した翌週に、在庫と納期の割合を足す前と並べて確認しました。在庫は変わらず、納期が3ポイント下がっていたため、保守の説明文から納品に関する語を削っています。この確認をしていなければ、納期側の低下は次の月次の集計まで見つかりませんでした。
以上が、既存のエージェントにトピックを足すか統合するかの4つの判断でした。トピックの下に配線するアクションをどう選ぶかは、この4つとは別の判断になります。
トピック設計に外部支援を使う4つの判断軸
前章までで、自社で進める場合の判断はひととおりそろいました。とはいえ、届いている依頼の書き出しから分け方の検証まで、社内の担当者だけで進めるには時間がかかるのではないでしょうか。外部の支援を使う場合に何を見るべきかを、最後に整理します。そこでここでは、トピック設計に外部支援を使う4つの判断軸を解説します。
判断軸①依頼の書き出しから一緒にやるか
1つ目は、届いている依頼を書き出す工程から一緒に入るかどうかです。この工程は地味な作業ですが、分け方の精度はここでほぼ決まります。設定の画面から入る支援では、社内の担当者が書き出した分類をそのまま前提にすることになります。
この医療機器の会社では、月480件の文面を書き出す作業に2週間かかりました。要約せずに写す必要があるため、業務を知っている人と一緒でないと進みません。書き出した内訳が事前の見込みと違っていたことは、この工程を踏んだから分かった部分にあたります。
提案を受け取ったら、見積の工程に依頼の書き出しが入っているかどうかを先に確かめます。
判断軸②分ける基準を先に示すか
2つ目は、どの基準で分けるかを先に示してくれるかどうかです。基準を示さずに分類案だけが出てくると、後から自社で見直すときに、どういう考えで分かれているのかをたどれません。
先ほどの会社では、見る記録・答えの形・直し方という3つの条件を先に共有したうえで、4つの分け方を決めました。条件が言葉になっているため、返品の相談が増えた時点で、担当者だけで足すかどうかを判断できています。分類案だけを受け取っていれば、同じ判断のたびに外部へ確認することになっていました。
分類案を受け取る前に「どの軸で分けますか」と聞いて、答えが返ってくるかどうかで見分けられます。
判断軸③重なりの直し方まで決めるか
3つ目は、運用が始まった後の重なりをどう直すかまで決めるかどうかです。設計した直後は整っていても、依頼の言い方は変わり続けるものです。直し方が決まっていないと、割合が下がったときに手が止まります。定着まで伴走してほしい場合は、この部分を含む範囲かどうかを確かめます。
この会社では、呼ばれた記録を残す、件数の多い組み合わせから直す、片方の説明文から語を外す、という手順を運用の形として決めました。3か月後に代理店の表記が変わったときも、担当者がこの手順どおりに対応しています。手順が決まっていなければ、原因を探すところから始めることになっていました。
設計だけを受け取るのか、直し方まで受け取るのかで、後の運用の重さが変わります。
判断軸④自社の担当が引き取れる形で残すか
4つ目は、支援が終わった後に自社で続けられる形が残るかどうかです。トピックの一覧と、それぞれが受け持つ依頼の判断が自社の言葉で残っていれば、担当が代わっても続けられます。外部支援を選ぶときに見るのは設計の巧拙よりも、分ける基準と直す手順が自社の言葉で残るかどうかです。
支援先を比べる観点をより広く持ちたい場合は、導入支援会社の選び方で7つの見極め方を整理しています。なお当社では、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援を提供しており、トピックの分け方についても無料相談を受け付けています。
【一問一答】Agentforceのトピック設計に関するよくある質問
ここまで、トピックの分け方と直し方を順に見てきました。最後に、実際の検討でよく出てくる疑問をまとめます。そこでここでは、Agentforceのトピック設計に関するよくある質問を5つ取り上げます。
質問①トピックはいくつまで作れるのか
公開されている情報では、1体のエージェントが扱えるトピックは15、1つのトピックに組み込めるアクションは15までとされています。ただし上限に達する前に呼び分けが不安定になるほうが先です。この医療機器の会社は11に分ける計画から4つへ絞り、上限とは別の理由で数を決めました。(2026年9月時点の情報にもとづく)※参考記事はこちら
質問②トピックの説明文はどのくらい書けばよいのか
長さではなく、他のトピックと重ならない語が入っているかで決めます。この会社では説明文を2倍に書き足しても割合は54%から58%までしか動かず、重なる語を削って短くしたときに70%台まで上がりました。書き足す前に、他のトピックの説明文と読み比べるほうが早く効きます。
質問③トピックとアクションはどちらから決めるのか
トピックが先です。トピックは届いた依頼をどこで処理するかを決める単位で、アクションはその中で実行する処理にあたります。この会社も、在庫の確認だけを受けるトピックを作ってから、倉庫の記録を検索する処理を配線しました。逆の順番で進めると、処理はあるのに呼ばれないという状態になります。
質問④呼ばれるトピックが安定しないときはどうするか
まず、似た説明文のトピックが並んでいないかを確かめます。この会社では在庫と納期の説明文に残数に関する語が両方入っており、同じ文面を44件取り合っていました。片方から語を削ったところ、意図したトピックへ渡った割合は54%から87%へ変わっています。指示文を書き足すより先に、重なりを探すほうが効きます。
質問⑤トピックの設計は誰が担当するのがよいのか
依頼を書き出して束ねる部分は業務を知っている人が担い、説明文の調整と設定は情報システムの担当が担うという分担が現実的です。この医療機器の会社では情報システムが2名でしたが、月480件の文面を書き出す作業はカスタマーサポート9名と一緒に進めています。
Agentforceのトピックは、担当者が受け取る依頼の単位で分けたときに安定する
この医療機器の会社が当初の目的として置いたのは「代理店からの問い合わせを、サポート担当の手を借りずに返せる状態にすること」でした。4種類を1体のエージェントへまとめていた時期に54%だった意図したトピックへ渡った割合は、3週間かけて4つへ割り直したあとに87%へ変わっています。動いた理由は説明文の長さではなく、担当者が受け取る依頼の単位まで下りて線を引き直したことのほうにありました。
Agentforceのトピック設計で最初にやることは、設定の画面を開くことではありません。届いている依頼を言葉のまま書き出し、答えるために見る記録が同じものどうしで束ね、判断を1文で書き、収まらない束を割るところまでは、紙の上で終わります。呼び分けが安定しないまま説明文を書き足している状態であれば、まず1週間ぶんの依頼を数えるところから確かめてみてはいかがでしょうか。本記事の内容が、自社の検討の材料として少しでもお役に立てれば幸いです。

