Agentforce活用事例7選|成果が出た営業組織に共通する3つの特徴

読了時間 8

「他社はAgentforceをどう使って成果を出しているのか」という質問を、営業部門の責任者から受けることがよくあります。ところが公開されている事例は、導入した事実と効果の大きさだけが語られ、どの業務を任せて何がどう変わったのかまでは読み取れないものが少なくありません。なお、製品名や料金は変わりやすいため、本記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。

そこで本記事では、産業用計測機器を扱う中堅メーカー(営業40名)がAgentforceを導入したケースを通して、ソリューション営業での活用事例7選と、成果を出す組織に共通する特徴、費用対効果の計算方法までを解説します。

目次
  1. ソリューション営業でのAgentforce活用事例7選
    1. 事例①商談前:顧客の類似案件をAIが抽出して仮説を自動生成した
    2. 事例②商談後:議事録・要約メールをAIが生成しフォロー漏れをゼロにした
    3. 事例③提案設計:ヒアリングメモを入れると提案書の骨子をAIが構成した
    4. 事例④IS(インサイドセールス):SDRがリード対応を24時間自動化した
    5. 事例⑤スキル開発:Sales Coachで入社1年目が3ヶ月で商談通過率を上げた
    6. 事例⑥引き継ぎ:担当変更時の顧客情報をAIが自動整理して属人化を解消した
    7. 事例⑦CS(カスタマーサクセス):問い合わせ初期対応をAIが対応し解決率30%を達成した
  2. Agentforce活用事例に共通する成果指標3つ
    1. 指標①工数削減(議事録作成・CRM入力時間の短縮)
    2. 指標②成約率・商談通過率の変化
    3. 指標③現場の定着率(30日後・90日後の利用継続率)
  3. 成果が出た事例に共通する組織の特徴3つ
    1. 特徴①ユースケースより先にナレッジ設計を決めていた
    2. 特徴②現場担当者が要件設計の起点になっていた
    3. 特徴③PoC完了後も改善サイクルを止めなかった
  4. Agentforce活用が止まった事例に共通するパターン3選
    1. パターン①管理者が要件を決めて現場に渡した
    2. パターン②ナレッジ整備なしにエージェントだけ設定した
    3. パターン③PoCで成功したが本番運用への移行設計がなかった
  5. 業種別・Agentforceが最も効果を発揮するユースケース
    1. 業種①SaaS・IT(SDRとSales Coachの組み合わせが最速)
    2. 業種②製造業・商社(商談前後の情報整理と引き継ぎ支援)
    3. 業種③コンサルティング・専門サービス(提案書骨子の自動生成)
  6. Agentforce活用の費用対効果を計算する方法
    1. 計算①削減できる工数×人件費で算出する
    2. 計算②成約率向上の経済価値で算出する
    3. 計算③Flex Creditsの消費量から月額コストを逆算する
  7. 自社でAgentforce活用を進めるための3ステップ
    1. ステップ①最も工数が高い業務から1ユースケースを選ぶ
    2. ステップ②そのユースケースに必要なナレッジを先に整備する
    3. ステップ③現場担当者を設計に巻き込んで小さく動かし検証する
  8. 【一問一答】Agentforce活用事例に関するよくある質問
    1. 質問① Agentforceの活用事例は中小企業でも参考になるか
    2. 質問② Agentforce活用の効果測定はどの指標で見るか
    3. 質問③ Agentforce活用に必要な最低限のSalesforceデータ量はどのくらいか
    4. 質問④ Agentforce活用事例はSalesforce公式以外でも調べられるか
  9. 成果が出たAgentforce事例に共通するのはユースケースより先にナレッジ設計を決めていたことだ
合同会社クロスコムのAgentforce導入・定着支援サービスのご案内

当社はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、 ソリューション営業に特化したAgentforce導入・定着支援を 行っています。

  • どのユースケースから始めればいいか分からない
  • 設定は完了したが現場に定着しない
  • ナレッジ設計から一緒に考えてほしい

というお悩みがあればお気軽にご相談ください。 1ユースケース×3ヶ月のスモールスタートプランから対応しています。

Agentforce導入・定着支援はこちら
BtoB マーケティング無料相談はこちら

本田正憲

合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援を提供している。

ソリューション営業でのAgentforce活用事例7選

今回例に挙げる計測機器メーカーは、商談準備の負担と若手の育成、担当変更時の引き継ぎに課題を抱え、Agentforceを1業務ずつ広げていきました。そこでここでは、この会社が成果を出したAgentforce活用事例7選を、営業プロセスの流れに沿って紹介します。

成果につながったのは、判断を任せた事例ではなく、判断のための準備や情報整理をエージェントに任せた事例でした。

事例任せた業務生まれた変化
①商談前類似案件の抽出と仮説づくり準備40分→12分
②商談後議事録とフォローメールフォロー漏れ月15件→2件
③提案設計提案書の骨子生成骨子作成90分→25分
④ISリード一次対応の自動化初回接触が翌営業日→5分以内
⑤スキル開発AIロールプレイ新人の通過率+15pt
⑥引き継ぎ顧客情報の自動整理準備3週間→1週間
⑦CS問い合わせ一次対応自動解決率30%

事例①商談前:顧客の類似案件をAIが抽出して仮説を自動生成した

1つ目の事例は「商談前に顧客の類似案件をAIが抽出して仮説を自動生成する」使い方です。これまで営業担当者が一件ずつCRM(顧客管理システム)を検索して確認していた作業を、エージェントが数十秒で代行します。抽出の対象は、同じ業種・同じ課題で受注した過去3年分の商談と、そこで使った提案資料に絞りました。

渡す情報を絞り込むほど、返ってくる仮説は具体的になります。反対に全案件を対象にすると、関係の薄い商談まで一覧に混ざり、担当者が読み飛ばす結果になりました。ビジネスの狙いは準備時間の短縮ではありません。商談で顧客の課題を解決に近づけることです。

たとえば、この計測機器メーカーでは、商談直前に顧客名を入力するだけで、過去の近い案件と受注につながった提案の切り口が一覧で返る運用を組みました。対象は商談準備を担う営業10名で、1人あたり月26件の商談を抱えており、1件40分かかっていた準備が12分ほどに短縮されたのです。経験の浅い担当者ほど、この準備の差は大きく成果に表れました。準備にかける時間が20分を切っているかどうかが、この使い方が機能しているかを見分ける目安になります。

事例②商談後:議事録・要約メールをAIが生成しフォロー漏れをゼロにした

商談後に効いたのが、議事録の作成とフォローメールの下書きをエージェントに任せる使い方です。商談直後の慌ただしい時間帯でも、要点を整理した文面が数分で用意されます。フォロー漏れが起きていたのは、1日に3件以上の商談が続き、移動の合間にメモを残せなかった日で、月15件のうち9件がそうした日に集中していました。

返信が翌日以降にずれ込むと、次のアポイントの取りやすさが変わります。振り返ってみると、この会社では商談から24時間以内に送ったメールとそれ以降に送ったメールで、次回面談の設定率に2倍近い差がありました。そこで担当者の記憶に頼る前提をやめ、商談メモを起点に文面が生成される形へ変えたのです。

この会社では実際に、商談メモを貼り付けるだけで、要約・ネクストアクション・顧客向けメール案がまとめて生成される運用にしました。担当者は内容を確認して送るだけになり、月に15件ほど発生していたフォロー漏れが2件まで減っています。ただし送信前の確認を省くと誤った条件が顧客に届くため、金額と納期を含む文面だけは上長が目を通す手順を残しました。

事例③提案設計:ヒアリングメモを入れると提案書の骨子をAIが構成した

3つ目に挙げるのは「ヒアリングメモを入れると提案書の骨子をAIが構成する」使い方です。白紙の状態から構成を考える負担は大きく、提案準備の最初の段階でつまずく組織は少なくありません。骨子に入れる要素は、顧客の課題整理・解決の方向性・期待効果・想定スケジュールの4つに固定しています。

何を、どの順番で、どんな根拠とともに伝えるのかをあらかじめ決めておくと、担当者ごとの出来のばらつきも小さくなります。たたき台を早く手にできれば、担当者は中身の検討に時間を使えました。準備の速さは、月に出せる提案の数にもつながります。

先ほどのメーカーを例にとると、面談メモを入力すると、課題整理・解決の方向性・期待効果という流れで骨子が返る運用を用意しました。ゼロから書き起こすと90分ほどかかっていた提案書のたたき台が25分ほどで用意できるようになり、月の提案件数は12件から18件へ増えています。逆にいえば、ヒアリングメモが箇条書き3行しかない商談では骨子の精度が上がらないため、この使い方は入力の量を確保できる案件に絞るのが現実的です。

事例④IS(インサイドセールス):SDRがリード対応を24時間自動化した

インサイドセールスの現場では、リードへの一次対応をエージェントに任せました。この機能は提供開始時に「Agentforce SDR」と呼ばれていましたが、Summer ’26で「Agentforce Lead Nurturing」へ名称が変わっています。営業時間外に届いた問い合わせにも、担当者を待たせずに反応できます。

この会社に届く問い合わせは月120件で、そのうち4割が夜間と休日に集中していました。見込み顧客の関心は時間とともに下がるため、初回接触までの速さがそのまま商談化の確率を左右します。翌営業日の朝にまとめて対応していた頃は、返信する前に他社と商談が決まっていた案件も月に数件ありました。

具体的には、この会社では、フォームから入ったリードに対して、内容に応じた返信や日程調整をエージェントが自動で進めるようにしました。翌営業日になっていた初回接触が5分以内に早まり、インサイドセールスからの商談化率は8ポイントほど上がっています。夜間・休日の問い合わせが全体の3割を超えるなら、この使い方を最初の候補に置いてよいでしょう。

※参考記事はこちら

事例⑤スキル開発:Sales Coachで入社1年目が3ヶ月で商談通過率を上げた

5つ目に挙げるのは「Sales Coachで入社1年目の通過率を上げる」使い方です。Sales Coach(商談ロールプレイと評価を行うエージェント機能)を使えば、先輩の時間を取らずに何度でも練習できます。評価が返る観点は、課題のヒアリング量・提案と課題のつながり・価格の伝え方の3つに設定しました。

人によるロールプレイは先輩の予定を押さえる必要があり、月に数回が限度でした。エージェント相手なら、移動の合間でも1日に何度でも繰り返せます。毎回同じ基準で採点されるため、どこを直すべきかも担当者本人が判断できます。

この計測機器メーカーの場合は、入社して間もない担当者6名がAI相手のロールプレイを3か月で1人あたり40回ほど重ね、商談の通過率を15ポイントほど伸ばしました。伸びが大きかったのは価格の伝え方で、当初は3点満点で1.2だった評価が2.6まで上がっています。反対にヒアリング量の評価は当初から2.4と高く、伸び幅は0.3にとどまりました。週3回・1回15分を3か月続けるあたりが、変化が数字に表れはじめる目安です。

事例⑥引き継ぎ:担当変更時の顧客情報をAIが自動整理して属人化を解消した

担当者の異動や退職にともなう引き継ぎでも、エージェントが顧客情報を整理しました。どの提案がどこまで進み、何が保留になっているかを、後任がすぐに読み取れる形にまとめられます。この会社では担当変更が年に12件発生しており、前任者が引き継ぎ資料の作成に費やす時間は1件およそ20時間、年間では240時間にのぼっていました。

過去のやり取りが個人の記憶にしかなければ、担当が変わった時点で蓄積はゼロに戻ってしまいます。一方で、商談履歴と要望が同じ形式で残っていれば、後任は初回訪問から前任者と同じ前提で話を続けられました。引き継ぎの直後に取引が減った案件を調べたところ、いずれも顧客の要望が資料に残っていない案件だったのです。

実際に、この会社では、対象の顧客を指定すると商談履歴・要望・懸念点が要約されて後任へ渡る運用にしました。3週間かかっていた引き継ぎ準備が1週間ほどに縮まり、顧客から見ても対応の連続性が保たれています。後任が最初の訪問までに読む資料も、1件あたり5ページ程度に収まりました。年に10件以上の担当変更があるかどうかが、この使い方に投資すべきかを判断する目安になります。

事例⑦CS(カスタマーサクセス):問い合わせ初期対応をAIが対応し解決率30%を達成した

7つ目の事例は「問い合わせの初期対応をAIが担う」使い方です。よくある質問への回答を自動化すると、担当者は複雑な案件に集中できます。この会社に届く問い合わせは月300件で、そのうち製品の仕様確認と設定手順の質問が6割を占め、残りは設置環境や測定条件によって回答が変わる技術相談でした。

同じ質問に人が何度も答える状態が続けば、対応にかかる人件費は増える一方です。定型的な質問の割合が半分を超えている部署ほど、一次対応を任せる効果は大きくなります。反対に、一件ごとに条件が違う技術相談が中心の部署では、自動化できる範囲は限られました。

先ほどの計測機器メーカーでは、ナレッジを整えたうえで一次対応をエージェントに任せ、問い合わせの30%ほどがエージェントだけで解決するようになりました。自動で解決した月90件のうち、担当者への再質問につながったのは6件です。初回応答までの平均4時間が即時に変わり、残った難しい案件には担当者が時間をかけられています。以上が、この計測機器メーカーが成果を出した7つの事例でした。

Agentforce活用事例に共通する成果指標3つ

事例を並べると印象的に見えますが、Agentforceの導入判断には「何が、どれだけ良くなったか」を測る視点が欠かせません。そこでここでは、Agentforceの活用事例で共通して使われる3つの成果指標を整理します。

活用の成否は、工数・成果・定着の3つの指標がそろって動いているかで判断します。

指標何を見るか測り方の例
①工数削減業務にかかる時間の短縮議事録作成・CRM入力の所要時間
②成果の変化商談・成約への影響商談通過率・成約率の推移
③定着率使われ続けているか30日後・90日後の利用継続率

指標①工数削減(議事録作成・CRM入力時間の短縮)

1つ目の指標は「工数削減」です。議事録の作成やCRMへの入力といった定型作業は、業務にかかる時間の変化が数字で見えやすい領域になります。測るのは作業1件あたりの所要時間と、1か月の発生件数の2つです。

3つの指標のうち、最初に確認すべきなのはこの工数削減です。なぜなら、商談前後の事務作業は毎日発生するため、1件あたり数十分の短縮でも1か月では数十時間の差になり、導入の1か月目から結果を読めるからです。逆に月へ数回しか発生しない業務を選ぶと、削減時間が誤差に埋もれて判断できません。

この会社が最初に測ったのは、商談準備にかかる時間でした。40分から12分への短縮を、対象10名それぞれの営業日数と件数に掛け合わせ、月260件・およそ120時間という削減量を出しました。削減量は担当者単位で分け、ばらつきの大きい担当者は後の改善対象にしています。集計には、エージェントの利用ログよりも担当者が記録した所要時間を使いました。比較の起点を導入前の1か月分に固定し、繁忙期と閑散期をまたがない期間で見ることが、数字を正しく読む条件になります。

指標②成約率・商談通過率の変化

次に見たいのが、商談の通過率や成約率といった成果の変化です。工数が減った先に、売上がどれだけ動いたかを確かめる指標になります。見る単位は、提案から次の段階へ進んだ商談の割合と、受注に至った割合の2つです。

この指標を工数削減より後に置くのには、時間の条件があります。変化が表れるまでには商談サイクル2〜3回分が必要で、この会社の商談は平均6か月かかるため、最初の判断ができたのは活用開始から1年後でした。それまでの期間は、提案書の提出件数と一次面談の設定率という手前の数字で代用しています。

活用を始めた前後で、この会社は通過率と成約率を比較し、入社1年目の担当者6名で通過率が15ポイント伸びたことを確認しました。比べるときは、対象者の人数と担当エリアを変えないことが条件になります。この会社でも比較の2期目に大口案件が1件入ったため、成約率だけは前後の比較から外して評価しました。通過率だけで見ると、若手6名の平均は32%から47%へ動いています。短期で結論を出さず、四半期ごとの推移で追うことが大切です。

指標③現場の定着率(30日後・90日後の利用継続率)

3つ目の指標は「定着率」です。エージェントが現場で使われ続けているかを、30日後・90日後の利用継続率で追います。数えるのは、起動回数よりも週に1回以上使った担当者の人数です。

では、なぜ工数と成果に加えて定着率まで見るのでしょうか。それは、使われなくなったエージェントの成果はゼロになり、初月に出た削減時間が翌月も残るとは限らないからです。利用しなくなる理由の多くは出力精度よりも、業務の流れのなかでエージェントを開く場面が決まっていないことにあります。

毎月の確認では、対象10名のうち何人が週1回以上使っているかを数えました。30日後は10名全員が使っていましたが、90日目には9名まで減り、継続率は90%でした。使わなくなった1名は担当エリアが変わり、担当する商談準備の件数が減っていたことが分かっています。利用が落ちた担当者の業務内容を確かめるまでは、設定の変更に手をつける必要はありません。90日後に7割を下回っていれば、機能よりも業務の選び方を見直す段階だと判断できます。ここまでが、活用の成否を測る3つの指標です。

成果が出た事例に共通する組織の特徴3つ

ここまで、活用の成果を測る3つの指標を見てきました。ところが同じAgentforceを導入し、同じ指標で測っても、成果が出る組織と出ない組織に分かれます。そこでここでは、Agentforce活用がうまくいった組織に共通する3つの特徴を整理します。

成果を出した組織は、エージェントを設定する前に、どんなナレッジを誰のために整えるかを先に決めていました。

特徴①ユースケースより先にナレッジ設計を決めていた

1つ目の特徴は「ユースケースより先にナレッジ設計を決めていた」ことです。エージェントの回答精度は参照する資料の正確さと新しさで決まっており、整っていない情報をどれだけ高度なエージェントに渡しても、返ってくるのは的外れな回答だけでした。

整備の対象は、その業務で実際に開く資料に限ります。この会社が棚卸ししたのは、過去案件の議事録・提案テンプレート・製品FAQの3種類で、合計120件でした。対象に含めるかどうかの判断には、直近1年で誰かが開いた記録が残っているかを使っています。開いた記録がない資料は、その時点で対象から外しました。

今回のメーカーでは、この120件のうち3割が生産終了した型番の情報を含んでおり、削除と更新を終えてからエージェントを組み立てました。除外した資料は参照先から外すだけにとどめ、必要になったときに戻せる状態で残しています。整備前は返ってくる仮説の4割が的外れでしたが、整備後は1割まで下がりました。参照する資料が100件を超えるなら、全件をそろえるより先に、対象業務で開く資料だけを整えるほうが現実的です。

特徴②現場担当者が要件設計の起点になっていた

二つ目の特徴は、何をエージェントに任せるかを決める起点が、現場の担当者にあったことです。推進部門が仕様を先に固める進め方をとらず、使う担当者が挙げた作業から設計が始まっていました。踏んだ順番は、作業の洗い出し、発生頻度による絞り込み、エージェントの設定という3段階です。

要件の起点を現場に置くべき理由は、はっきりしています。なぜなら、外から見て効率化できそうな作業と、担当者が毎日面倒に感じている作業は一致しないことが多く、後者を外したエージェントは使われないからです。ヒアリングの質問も「直近1週間でいちばん時間がかかった作業は何ですか」の1つに絞っています。

設計の初期に、この会社は営業10名へ1人30分ずつヒアリングし、負担の重い作業を24件洗い出しました。最も多く挙がったのは過去案件の検索で、10名のうち8名が同じ作業を挙げています。そのうち週に3回以上発生する6件に絞って設計したところ、公開の翌週には対象者の8割が自分から使い始めました。洗い出した作業が20件を超えるときは、発生頻度で並べ替えて上位から手をつけるのが確実です。

特徴③PoC完了後も改善サイクルを止めなかった

3つ目の特徴は「PoC完了後も改善サイクルを止めなかった」ことです。PoC(概念実証)で結果が出たあとも、回答の内容と参照先を運用しながら調整し続けていました。この会社ではPoCの終了と同時に、改善を担当する2名と、月次の振り返り日を第3水曜に決めています。

調整の内容は、大きく3つに分かれます。

①回答の見直し・・・的外れだった質問を記録し、参照先の資料を追加する ②アクションの整理・・・使われなかったアクションを削除する ③ナレッジの更新・・・新製品の追加や価格改定に合わせて資料を差し替える

成果が続いているこの会社では、月次で利用状況を振り返り、担当者から挙がった要望を一つずつ設定に反映しています。開始から6か月で反映した修正は38件にのぼり、内訳は参照先の追加が21件、アクションの削除が9件、ナレッジの更新が8件でした。この間に仮説の的外れは1割から5%まで下がっています。改善の頻度は月1回を下回らないことが、精度を保つうえでの最低ラインです。成果を出した組織に共通していた特徴は、以上の3つでした。

Agentforce活用が止まった事例に共通するパターン3選

成果が出る組織がある一方で、Agentforceの活用が途中で止まってしまった組織もあります。失敗には決まったパターンがあり、先に知っておけば回避できます。そこでここでは、Agentforceの活用が止まった事例に共通する3つのパターンを整理します。

活用が止まった組織の多くは、現場の担当者に相談しないまま、エージェントの設定だけを先に進めていました。

パターン何が起きたか見分ける兆候
①管理者が要件を決定現場の実務とずれた公開1か月で利用が半減
②ナレッジ整備なし回答の精度が上がらない的外れな回答が4割
③本番移行の設計なしPoC後に運用が止まる運用担当が未定のまま

パターン①管理者が要件を決めて現場に渡した

1つ目のパターンは「管理者が要件を決めて現場に渡した」ことです。管理者や推進担当だけで要件を決め、できあがったエージェントを現場に渡すと、良かれと思って用意したものが使われません。

担当者が使わないのは、現場の実務とのずれが生まれるからです。日々の業務でどこに手間がかかっているかは、その作業をしている担当者にしか分かりません。管理者が想定した「よくある質問」と、実際に届いた質問の上位10件は、半分も重なっていませんでした。

この計測機器メーカーも、最初から順調だったわけではありません。営業部門より先に着手したカスタマーサクセス部門では、推進担当2名だけで要件を決め、問い合わせ対応エージェントを公開しました。その結果、公開直後は週30件あった利用が1か月後には週4件まで減り、いったん運用を止めることになったのです。担当者から挙がった意見で最も多かったのは、回答を確認する手間が自分で調べる時間と変わらないという内容でした。逆にいえば、公開から4週間の利用件数が半分以下になった時点で、要件の決め方から見直す必要があります。

パターン②ナレッジ整備なしにエージェントだけ設定した

二つ目は、参照させるナレッジを整えないまま、エージェントの設定だけを進めてしまうパターンです。画面上は動いていても、回答の精度が上がりません。設定の作業自体は1日で終わるため、先に手をつけたくなる工程でもあります。

エージェントの回答は参照するデータに強く影響されるため、古い情報や矛盾した資料が混ざっていれば、それをもとにした答えがそのまま返ります。精度が出ないまま使われ続けると、担当者は回答を確認する手間を嫌い、元の手作業へ戻ってしまいました。一度戻った担当者にもう一度使ってもらうには、最初に使ってもらうとき以上の労力がかかります。

同じ時期に、このカスタマーサクセス部門は手元のマニュアルとFAQを200件そのまま登録していました。内容の重複と旧仕様の記載を残したため、回答の4割が的外れになり、2か月で利用が離れています。登録前に重複を除くだけでも、200件は130件まで減らせたはずでした。登録した資料のうち、更新日が1年以上前のものが3割を超えているなら、設定より先に整理する段階だと判断しましょう。

パターン③PoCで成功したが本番運用への移行設計がなかった

3つ目のパターンは「PoCで成功したが本番運用への移行設計がなかった」ことです。PoC(概念実証)では良い結果が出たのに、本番運用への移行を設計していませんでした。PoCは範囲も参加者も限られ、うまくいくように条件を整えた状態での検証にすぎません。

移行の設計で決めておく項目は、次の3つです。

①運用担当・・・エージェントの設定を誰が変更するのかを決める ②改善の頻度・・・利用状況をいつ振り返り、いつ反映するのかを決める ③展開の範囲・・・どの部署まで、どの順番で広げるのかを決める

フィールドサービス部門では、4週間のPoCで訪問報告の作成時間が半分になったにもかかわらず、運用担当も改善の頻度も決めないまま解散しました。3か月後に利用状況を確認したところ、月の起動回数はゼロになっていたのです。引き継ぎ先を探した時点で、PoCに参加した3名のうち2名は別の案件へ移っていました。PoCの終了時点で運用担当の名前が決まっていなければ、本番移行はまだ設計できていないと考えてよいでしょう。活用が止まった3つのパターンは、以上のとおりです。

業種別・Agentforceが最も効果を発揮するユースケース

ここまでは、成果が出た組織と止まった組織の違いを見てきました。もっとも、Agentforceの効果が出やすい使い方は、営業のスタイルや扱う情報の性質によって業種ごとに変わります。そこでここでは、代表的な3つの業種で効果を発揮しやすいAgentforceのユースケースを整理します。

自社と同じ業種で成果が出ている使い方から始めると、最初の1件を選ぶ時間を短縮できます。

業種効果が出やすい使い方効果が出る場面
①SaaS・ITリード育成とロールプレイ大量リードと若手育成
②製造業・商社商談前後の情報整理・引き継ぎ長い商談サイクル
③コンサル・専門サービス提案書骨子の自動生成提案準備の初期段階

業種①SaaS・IT(SDRとSales Coachの組み合わせが最速)

1つ目の業種は「SaaS・IT」です。リード育成を担うAgentforce Lead Nurturing(旧Agentforce SDR)とSales Coachを組み合わせると、リードの量が多く若手の比率も高い環境で最も早く効果につながります。

月に届くリードが数百件になると、担当者が優先順位をつけて返信するだけで1日が終わります。若手が多い組織ではさらに、返信の質を保ちながら件数をこなすことが難しくなりました。返信する順番を決める作業だけで、1日30分から1時間が費やされていたのです。

従業員90名のSaaS企業では、月500件のリードに対して一次返信を自動化し、平均6時間かかっていた初回返信を10分まで縮めました。あわせて入社1年目の4名が週2回のロールプレイを続けた結果、返信件数は担当者1名あたり月90件から180件へ増え、商談化率も6ポイント改善しています。ロールプレイの評価は週次で上長へ共有し、面談の議題に載せました。月のリードが300件を下回る組織なら、一次対応の自動化より先にロールプレイから始めるほうが、効果を確認しやすくなります。

業種②製造業・商社(商談前後の情報整理と引き継ぎ支援)

製造業や商社では、商談前後の情報整理と、担当変更時の引き継ぎ支援が効果を発揮します。今回の計測機器メーカーがまさにこの形で、商談サイクルが長く、関係者も多いことが背景にあります。

長期の商談ほど、経緯の蓄積が成否を分けます。何か月も続く案件では、過去のやり取りを正確に把握しているかどうかが、提案の精度に直結するからです。とくに設備投資をともなう商談では、初回の仕様確認から最終見積もりまでのあいだに担当者が入れ替わることも珍しくありません。関係者が3名を超えると、口頭での申し送りだけでは抜けが生じます。

製造業の例に戻ると、この会社は商談前の情報収集と引き継ぎ時の自動整理を組み合わせ、平均6か月かかる案件でも対応の連続性を保てるようにしました。属人化しやすい業種であるほど情報を仕組みで残した効果は大きく、引き継ぎ準備は3週間から1週間へ縮んでいます。商談の途中で担当が変わった案件でも、失注率は担当変更のなかった案件と同じ水準を保てました。商談サイクルが3か月を超え、1案件に関わる担当者が3名以上いるなら、この組み合わせから始める価値があります。

業種③コンサルティング・専門サービス(提案書骨子の自動生成)

3つ目の業種は「コンサルティング・専門サービス」です。提案の質が受注を左右し、その準備に多くの時間がかかるため、提案書の骨子を自動生成する使い方が向いています。1つの案件で作る提案書は1本に限られる一方、その1本の完成度が受注を決めます。

白紙の状態から構成を考える負担を減らせれば、専門家は中身の検討に時間を割けます。ただし骨子をそのまま提出できるものではありません。エージェントが返す骨子の完成度は7割ほどで、残りの3割に専門家の判断が入ります。

従業員35名のコンサルティング会社では、ヒアリング内容から課題整理と解決の方向性をたたき台として得る運用を用意しました。1本あたり3時間かかっていた骨子づくりが50分ほどに縮まり、月に出せる提案は8本から13本へ増えています。増えた5本のうち2本が受注につながり、顧客との対話に充てる時間も1本あたり1時間増えました。もっとも、提案の構成が案件ごとに大きく変わる領域では、骨子の作り直しが増えて短縮の幅は小さくなります。代表的な3業種で効果が出やすい使い方は、以上の3つでした。

Agentforce活用の費用対効果を計算する方法

業種ごとに効果の出やすい使い方を見てきましたが、導入を社内で通すには、効果を金額で示せると説得力が増します。感覚的な「便利になった」だけでは、投資判断の材料になりません。そこでここでは、Agentforce活用の費用対効果を見積もる3つの計算方法を整理します。

費用対効果は、削減できる工数の金額換算と成約率向上の経済価値を足し、Flex Creditsの想定コストと比べて判断します。

計算①削減できる工数×人件費で算出する

1つ目の計算は「削減できる工数×人件費」です。式は次のとおりです。

削減額=1件あたりの短縮時間×月間の発生件数×対象人数×時間単価

4つの数字はいずれもCRMの記録と勤怠から取り出せるため、追加の調査は必要ありません。なかでも社内で議論になりやすいのが時間単価で、人件費に賞与と社会保険料を含めるかどうかで金額が2割ほど変わります。経理が使っている基準に合わせておくと、あとから前提を問われずに済みました。もう1つ注意したいのが発生件数で、繁忙期の実績を年間に引き延ばすと効果を大きく見せてしまいます。

先に触れた商談準備でいうと、営業10名で1件28分の短縮が生まれ、月260件でおよそ120時間の削減につながりました。時間単価3,000円で換算すると月36万円、年間では430万円ほどになります。同じ式を議事録作成に当てはめると、削減額は年間120万円ほどにとどまり、2つを合わせた年間550万円を稟議に載せています。この計算だけで想定する投資額を上回るなら、成果側の試算を待たずに稟議へ進めてよいでしょう。

計算②成約率向上の経済価値で算出する

二つ目は、成約率や商談通過率の向上を金額に換算する方法です。通過率の改善幅に、年間の商談数・受注率・平均受注単価を掛けて求めます。工数削減が「減った費用」を示すのに対して、こちらは「増えた売上」を示す計算になります。

工数削減だけで判断を終わらせないほうがよい理由があります。なぜなら、準備やフォローの質が上がって成約率がわずかでも改善すれば、その経済価値は工数削減額を上回ることがあるからです。ただし効果が出るまでに時間がかかる点は、試算の前提に織り込む必要があります。

この会社の場合は、入社1年目6名の年間商談240件に通過率15ポイントを掛け、通過する商談が36件増えると見積もりました。そのうち3割が受注し、平均受注単価を300万円とすると、年間およそ3,200万円の売上増になる計算です。ただし通過率が伸びた要因には市況の回復も含まれるため、社内ではエージェントの貢献分を半分と見て1,600万円で説明しています。受注率や単価の前提に社内で最も低い実績値を置くと、稟議での指摘を受けにくくなります。

計算③Flex Creditsの消費量から月額コストを逆算する

3つ目の計算は「Flex Creditsの消費量からの逆算」です。Agentforceの従量課金では、標準的なアクション1回につき20クレジットを消費し、10万クレジットあたり500ドルで購入します。1アクションおよそ0.10ドルという単価から、想定する処理件数で月額を逆算できます。

消費量は、エージェントの設計と利用頻度で変わります。1件の依頼で参照・要約・記録と3回のアクションが動く設計なら、消費は単純な問い合わせの3倍になるため、業務ごとにアクション数を数えてから見積もりました。

商談準備を例に見積もると、月260件に1件3アクションを掛けて月780アクション、消費量は1万5,600クレジットでした。Enterprise Edition以上ならSalesforce Foundationsで10万クレジットを無償で利用できるため、この規模なら追加費用なしで検証を始められます。無償枠の10万クレジットを月間の想定アクション数で割れば、何か月ぶんの検証期間を確保できるかも計算できます。費用対効果を見積もる計算は、以上の3つでそろいます。

※参考記事はこちら

自社でAgentforce活用を進めるための3ステップ

ここまでの事例と考え方を、実際の進め方に落とし込みます。いきなり全社展開を狙わず、小さく始めて確実に成果を出す順番が大切です。そこでここでは、自社でAgentforce活用を立ち上げる3つのステップを具体化します。

最初に取り組むのは、最も工数のかかる業務を1つだけ選び、そこに必要なナレッジを先に整えることです。

ステップ①最も工数が高い業務から1ユースケースを選ぶ

最初に取り組むのは、対象を欲張らず、最も工数のかかっている業務を1つだけ選ぶことです。候補を並べるときは、1件あたりの所要時間と月間の発生件数を掛けた合計時間で比べます。

対象を1つに絞ると、効果検証と改善を短い間隔で繰り返せます。範囲が狭ければ、何がうまくいき、どこでつまずいたかも数字で切り分けられました。同時に2つ以上を動かすと、出力精度の問題か業務の選び方の問題かを切り分けられなくなります。

最初の1業務として、この会社が選んだのは商談準備でした。候補に挙がった議事録作成が月80時間だったのに対し、商談準備は月173時間と倍以上あり、削減の余地が大きいと判断しています。合計時間が2番手の2倍を超える業務があるなら、迷わずそこから始めてよいでしょう。会社選びや進め方をさらに詳しく知りたい場合は、ほか記事「Agentforce導入支援会社の選び方」にて解説していますので、ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。

ステップ②そのユースケースに必要なナレッジを先に整備する

次に取り組むのは、選んだ業務でエージェントが参照するナレッジを、設定より先に整えることです。成果を出した組織の特徴①を、自社で実践する工程になります。ここを飛ばして設定から入ると、パターン②と同じ結果になりました。

整備の範囲は、選んだ1業務で日常的に開く資料だけに限ります。全社の資料をそろえようとすると数千件になりますが、対象業務に絞れば100件前後に収まり、数週間で終えられます。整理の作業は、重複の削除・古い記載の更新・参照先からの除外という3つに分けると進めやすくなります。1人で抱えず、業務を知る担当者と2名で進めるほうが判断も早くなりました。

棚卸しの段階では、この会社は過去案件の議事録・提案テンプレート・製品FAQの120件を3週間かけて確認し、生産終了した型番を含む36件を更新しました。更新の判断に迷った資料は営業企画で保留とし、参照先から外したうえで必要になった時点で戻す運用にしています。この前後で、返ってくる仮説の的外れは4割から1割へ下がりました。整備にかける期間は、100件前後の資料であれば3週間から1か月が目安になります。

ステップ③現場担当者を設計に巻き込んで小さく動かし検証する

最後に取り組むのは、現場担当者を設計に巻き込み、少人数で小さく動かして検証することです。特徴②の現場起点を、立ち上げの段階から実践します。

設計の初期から当事者が関われば、実務とのずれを早い段階で解消できます。試す範囲が小さいほど、修正の反映も翌週には間に合いました。

試用の段階では、商談準備を担当する5名が4週間使い、つまずきや要望を週1回のミーティングで集めました。集まった要望17件のうち、その場で設定を変えられた11件を先に反映し、残りは優先順位をつけて翌月に回しています。対象を広げる基準は、5名全員が週1回以上使った状態を4週間続けられたことに置き、無理なくチーム全体へ広がりました。以上が、自社でAgentforce活用を立ち上げる3つのステップでした。ソリューション営業に特化した支援が必要であれば、Agentforce導入・定着支援サービスにお気軽にご相談ください。

【一問一答】Agentforce活用事例に関するよくある質問

ここまで、事例から自社での進め方までを順に見てきました。最後に、Agentforceの活用事例について検索されやすい疑問に、簡潔にお答えします。

質問① Agentforceの活用事例は中小企業でも参考になるか

参考になります。むしろ中小企業ほど、1人の担当者が抱える業務範囲が広く、準備やフォローの自動化で削減できる時間の割合は大きいといえます。大企業の大規模事例をそのまま真似る必要はありません。事例を企業規模で読まずに、どの業務を何分から何分に変えたのかという切り口で読み替えれば、自社に応用できる部分が見えてきます。

質問② Agentforce活用の効果測定はどの指標で見るか

効果測定は、導入30日で工数、90日で定着、商談サイクル2〜3回分を経てから成果、と見る指標を時期で切り替えます。工数が減っていても使われ続けていなければ成果は続きませんし、定着していても売上につながっているかは別に確かめる必要があります。3つを同じタイミングで判断しないことが、測定を誤らないための要点です。

質問③ Agentforce活用に必要な最低限のSalesforceデータ量はどのくらいか

明確な最低件数があるわけではありません。大切なのは量よりも、対象業務に必要なデータが整っていて、内容が正確かどうかです。逆に、データが大量にあっても、更新日が1年以上前の資料や矛盾した記載が混ざっていれば精度は出ません。まずは選んだ1ユースケースで使う範囲、目安として100件前後のデータを整えることから始めると、現実的に進められます。

質問④ Agentforce活用事例はSalesforce公式以外でも調べられるか

調べられます。Salesforce公式の事例に加えて、導入支援会社の発信や、実際に運用している担当者の発信からも、現場に近い情報が手に入ります。公式情報は全体像の把握に、現場の発信は具体的な使い勝手の把握に向いています。とくに、自社と同じ業種・同じ業務での活用例は、導入後の運用を具体的に想像するうえで役立ちます。

成果が出たAgentforce事例に共通するのはユースケースより先にナレッジ設計を決めていたことだ

本記事では、産業用計測機器メーカーのソリューション営業でのAgentforce活用事例7選から、成果指標と成果が出る組織の特徴、活用が止まるパターン、業種別のユースケース、費用対効果の計算方法、そして自社で始める3ステップまでを解説しました。

事例を通して見えてくるのは、成果の差を分けたのが機能の使いこなしよりも導入の順番だったということです。この会社では、商談準備が1件40分から12分へ、フォロー漏れが月15件から2件へ、入社1年目の通過率は15ポイント改善し、問い合わせの30%はエージェントだけで解決するようになりました。いずれも、エージェントを設定する前にナレッジの設計から手をつけ、現場を起点に小さく始めて改善を止めなかった結果です。反対に、現場に相談せず、ナレッジを後回しにしたカスタマーサクセス部門では、公開から1か月で利用が週30件から週4件まで減っています。

Agentforceの活用は、最も工数のかかる1業務を選び、そこに必要なナレッジを整えるところから始まります。小さな成功を一つ作り、それを横へ広げていく進め方こそが、再現性のある成果につながると考えます。本記事で紹介した内容を、ぜひ自社の状況に合わせて実践し、少しでもお役に立てれば幸いです。

※当社では、ソリューション営業に特化したAgentforceの導入・定着支援を行っています。自力での設定は進んだものの、設計が正しいか不安、あるいは現場に定着させるところまで一緒に考えてほしいという場合は、Agentforce導入・定着支援もあわせてご覧ください。