過去の類似案件が探せないのは共有不足か?引き当てる条件を決める4つの設計

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「前にも似た案件があったはず」と思って探し、見つからずに諦めたことはありませんか。類似案件の抽出とは、過去の記録を共有し続ける取り組みのことではありません。どの手がかりで引き当てるかを業務の側から決め、探す作業を機械へ渡す設計です。 Agentforceは機能の追加が続いている製品のため、本記事の記述は2026年9月時点で確認できる範囲に限っています。

なお、条件に一致する商談を一覧で表示する仕組みは、AIを使わない標準の機能としても用意されています。本記事で扱うのは、その条件を業務の側からとらえ直し、AIへ引き継ぐ設計です。

※参考記事はこちら

そこで本記事では、類似案件が探せない状態から、共有の徹底で解けない理由、引き当てる4つの条件、AIに任せる線引きまでを解説します。

Agentforce導入前に類似案件が探せない3状態

食品加工機械のメーカーでは、従業員176名のうち営業が11名、営業企画1名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。CRMには過去10年で3,200件の案件が記録されています。新しい引き合いが来るたびに営業は似た案件を探しますが、月38回探して見つかるのは9回だけです。「あるはずなのに出てこない」という声が、営業から繰り返し出ていました。そこでここでは、この会社を例に、過去の類似案件が探せない3つの状態を整理します。

この会社の営業は、引き合いを受けるたびに過去を思い出そうとします。記憶に残っている案件までは届きますが、そこから先へは進めません。探せないのは記録の少なさではありません。手がかりが決まっていない状態です。

状態①あるはずの案件が出てこない

1つ目は「あるはずの案件が出てこない」状態です。記憶にある案件が、検索では引っかかりません。

出てこないのは、探すときに使う語と、記録に入っている語が一致しないためです。営業は「殺菌工程の案件」と覚えていても、記録には商材の型番と会社名しか入っていません。自由入力の欄に書かれた内容も、書き手ごとに表現が違います。記録が3,200件あっても、たどり着ける経路がなければ存在しないのと同じです。

この食品加工機械のメーカーでは、月38回の検索のうち、目当ての案件にたどり着いたのは9回でした。営業企画の担当が3か月分を記録したもので、割合にすると24%です。残る29回は、探しても出てきませんでした。

点検の出発点になるのは、記録の件数ではありません。探した回数とたどり着けた回数を3か月ぶん並べると、24%という水準が数字で出てきます。この水準が3割を下回る間は、項目を足す作業に効果は出ません。

状態②出てきても似ているか判断できない

2つ目に挙げるのは、出てきても似ているか判断できない状態です。候補は並ぶものの、選べません。

判断できないのは、どこが似ているのかが示されないためです。会社名と金額だけが並んだ一覧では、その案件が今回の引き合いと同じ性質かどうかが読み取れません。一件ずつ開いて中身を確かめることになり、5件並べば5件分の時間がかかるため、候補が多いほど、かえって使われなくなります。記録を参照できる形にする考え方はナレッジ設計の記事でも扱っています。

検索の役割を担うのは、質問をベクトルに変換して近い情報を探す仕組みです。取り出す範囲を絞る設計は、この仕組みを前提にしています。

※参考記事はこちら

先ほどの会社では、検索の結果から1件を選ぶまでに平均22分かかっていました。営業11名への聞き取りでは、7名が「開いてみないと分からない」と答えています。

見るべきは候補の件数ではありません。引き合いを受けてから1件に絞るまでの所要時間を測り、22分がどこまで縮んだかで判定します。

状態③探すのをやめて経験で進める

3つ目は「探すのをやめて経験で進める」状態です。見つからない経験が続き、最初から探さなくなります。

やめてしまうのは、探す作業の期待値が下がるためです。10回探して2回しか当たらなければ、11回目に探す理由がありません。営業は自分の記憶にある案件だけを頼りに進め、記憶にない領域では毎回ゼロから考えます。組織に3,200件の記録があっても、使われるのは各自の担当分だけになります。

この会社では、探すのをやめた回数が月に29回ありました。営業企画の担当は、この数字が「記録が使われていない」ことを最も直接に示していると見ています。

諦めた回数は、入力率と違って少ないほどよい数字です。月29回が続く間、3,200件の記録は帳簿の上にあるだけで、提案の材料には回っていません。

共有で足りる?Agentforceで類似案件が出ない理由3つ

3つの状態はどれも、「もっと共有しよう」という結論につながります。実際、多くの解説が情報共有の定着や商談履歴の蓄積を解として示しています。ところが記録の件数が積み上がっても、営業が探し当てる回数は増えていません。そこでここでは、類似案件を共有の徹底で探せるようにならない3つの理由を整理します。

この会社の営業企画の担当も、最初は共有の徹底を検討していました。共有の施策で解決する範囲と、解決しない範囲を先に分けておく必要があります。共有を徹底しても探せません。共有は入れる側の話だからです。

比較の観点共有を徹底する場合引き当ての条件を決める場合
手を入れる対象記録を入れる側記録を出す側
増やすもの記録の件数たどり着ける経路
現場に求めること書く量を増やす決めた条件で探す
効果が出るまで記録がたまるまで条件を書いた翌日から
測る対象入力率探して見つかった割合

理由①共有は入れる側の話だから

1つ目は「共有は入れる側の話だから」です。共有の施策は、記録をどう残すかを扱います。

出す側が解けないのは、探すときに何を手がかりにするかが別の設計だからです。全員が丁寧に記録を残しても、検索の条件が決まっていなければ引き当てられません。図書館に本を増やしても、目録がなければ探せないのと同じ構造です。入れる側の施策をいくら重ねても、出す側で使う手がかりは自動的には定まりません。

この食品加工機械のメーカーでも、2年前に商談の記録の項目を増やしていました。入力率は6割から9割へ上がりましたが、探して見つかった割合は24%のまま変わっていません。

入力率と見つかった割合は、並べて記録すると連動していないことが分かります。入力率が9割に届いていても、見つかった割合が24%のままなら、手を入れる場所は出す側にあります。

理由②手がかりが記録に残っていないから

2つ目に挙げるのは、手がかりが記録に残っていないからです。探すときに使う情報が、そもそも項目になっていません。

残っていないのは、記録の項目が「報告のため」に設計されているからです。金額や受注日、担当者といった項目は上長への報告に要ります。一方、営業が過去を探すときに使うのは、相手の業種や求められた仕様の型です。報告の項目と検索の手がかりは、重なりません。過去の記録を使う実装は活用事例の記事でも扱っています。

先ほどの会社では、記録の12項目のうち、営業が探すときに使いたいと答えた項目は3つだけでした。残る9項目は報告のための情報で、検索には使われていません。

聞き取りは営業全員に行う必要はなく、直近で引き合いを担当した数名で足ります。3つに絞られた項目が出てきたら、それが引き当ての条件の原型になります。

理由③似ているの定義が人によって違うから

3つ目は「似ているの定義が人によって違うから」です。何をもって似ているとするかが、共有されていません。

揃わないのは、営業ごとに見ている軸が違うためです。ある担当者は業種で似ていると考え、別の担当者は仕様の難しさで考えます。定義が揃わなければ、機械に探させても人が納得する結果は返りません。似ているの定義を言葉にすることが、共有より先に来る作業です。

この会社では、営業11名に「似た案件とは何か」を尋ねたところ、答えは4通りに分かれました。営業企画の担当は、この4通りをそのまま条件の候補にしています。

答えが割れること自体は、設計の材料が集まった状態を示します。全員の答えが1つに揃っている会社であれば、その1つを条件にするだけで済みます。

類似案件を引き当てる4つの条件

では、共有を増やす以外に、何を決めれば過去の案件を引き当てられるのでしょうか。決めるための材料は、営業が実際に何を手がかりにしているかという答えのほうにあります。聞き取った内容を整理すると、条件は4つに収まりました。Agentforceでできることの範囲を押さえたうえで、条件を組みます。そこでここでは、類似案件を引き当てる4つの条件を整理します。

4つの条件は、どれも記録の項目名から出てきたものではありません。営業が引き合いを受けた瞬間に思い出そうとする順番に沿って並んでいます。引き当てる条件は4つです。業種、仕様の型、金額の帯、止まった段階です。

条件①相手がどの業種か

1つ目は「相手がどの業種か」という条件です。同じ業種であれば、抱える課題と検討の進み方が近くなります。

この条件が最初に来るのは、営業が最も自然に使う手がかりだからです。乳業の会社に提案するとき、過去の乳業の案件が出てくれば話が早くなります。業種は既に記録されていることが多く、新しく項目を足す必要もありません。まず1つ条件を決めるなら、ここから始めるのが確実です。

この食品加工機械のメーカーでは、業種を14分類で記録していました。営業企画の担当は、この分類をそのまま最初の条件に使っています。追加の作業は発生していません。

最初の条件に業種を選ぶ判断は、記録済みかどうかで決まります。14分類のように既存の区分があるなら、着手した週のうちに候補を出せます。

条件②求められた仕様の型

2つ目に挙げるのは、求められた仕様の型です。どういう要求だったかを、いくつかの型に分けて記録します。

型で分けるのは、仕様を文章のまま残すと検索できないためです。「殺菌温度を上げたい」「洗浄の手間を減らしたい」といった要求は、いくつかの型へまとめられ、型が5つか6つあれば多くの引き合いはどれかに当てはまります。型を決める作業は、過去の案件を読み返せば1日ほどで終わります。

先ほどの会社では、要求を6つの型に分けました。過去2年分の引き合いを読み返して分類したもので、営業企画の担当が1日で作っています。新しい引き合いも、この6つのどれかに入りました。

型は最初からすべてを揃えようとせず、過去2年分の引き合いに当てはまる範囲で決めます。当てはまらない引き合いが出たときに1つ足していけば、分類の作業は続けられます。

条件③金額の帯

3つ目は「金額の帯」です。案件の規模を、いくつかの帯に分けて扱います。

帯で見るのは、規模が近い案件ほど進め方が似るためです。数百万円の案件と数千万円の案件では、決裁の経路も検討の期間も違います。金額の数字で絞ると該当が減りすぎるため、3つか4つの帯に分けます。帯は既存の記録から自動で計算でき、入力の手間は増えません。

たとえば、この会社では金額を4つの帯に分けました。過去の案件の分布を見て境界を決めたもので、各帯にある程度の件数が入るように調整しています。境界にかかる案件は両方の帯へ含める扱いにし、帯の境目で候補が消えないようにしました。

帯の数は、3つでも4つでも構いません。1つの帯に入る件数が極端に偏っていないかだけを、最初に確かめておきます。

条件④商談が止まった段階

4つ目は「商談が止まった段階」です。決まったか、どこで止まったかを条件に加えます。

段階を条件に入れるのは、参考にしたい内容が変わるためです。決まった案件からは進め方を学び、止まった案件からはつまずきを学びます。今回の引き合いがどちらを必要としているかで、出すべき案件は変わります。この項目は失注の記録と重なるため、既に残している会社であれば追加の作業はありません。

この食品加工機械のメーカーでは、決まった案件と止まった案件を分けて出す形にしました。営業からは、止まった案件のほうが参考になるという声が出ています。

候補を返すときは、決まった案件と止まった案件を混ぜずに並べます。混ぜて出すと、営業はどちらの経過を読んでいるのか分からないまま参考にしてしまいます。

類似案件から取り出す3種類の情報

4つの条件で案件が引き当てられるようになると、今度は何を読むかで迷う場面が出てきます。案件の記録を全文読むなら、探せても時間は縮みません。一方で、取り出す情報を絞れば数十秒で判断できます。そこでここでは、類似案件から取り出す3種類の情報を整理します。

この会社では、案件の記録に自由入力の欄がいくつも並び、1件を読み終えるまでに時間がかかっていました。読む場所を決めておかないと、候補が並んでも作業の量は変わりません。取り出すのは3種類です。進め方、つまずき、条件の3つに絞ります。

種類①どう進めて決まったか

1つ目は「どう進めて決まったか」です。受注に至った案件について、何をした結果そうなったかを取り出します。

この情報が効くのは、次の一手を決める材料になるためです。誰を巻き込んだか、どの資料が効いたか、何回目の訪問で話が動いたか。この経過が読めれば、今回の引き合いでも同じ順番を試せます。結論だけを見ても、再現の手がかりにはなりません。

この食品加工機械のメーカーでは、受注に至った案件の記録から、訪問の回数と同席した相手を取り出す形にしました。営業からは、初回の進め方を決めるときに役立つという反応が出ています。

取り出す項目は、訪問の回数と同席した相手の2つで足ります。項目を増やすほど記録する側の負担が戻ってくるため、最初は2つに留めておくのが確実です。

種類②どこでつまずいたか

2つ目に挙げるのは、どこでつまずいたかです。止まった案件について、何が原因で進まなかったかを取り出します。

つまずきを見るのは、同じ失敗を避けるためです。過去に殺菌温度の要求で折り合えなかった案件があれば、今回は最初にその点を確かめられます。止まった理由は記録に残りにくいため、意識して項目にしていなければ抜けますが、残っていれば決まった案件より参考になる場面もあります。

先ほどの会社では、止まった案件の理由を6つに分類していました。営業11名のうち8名が、決まった案件より止まった案件を先に見たいと答えています。

理由の分類は6つ程度に収め、当てはまらないものは「その他」に入れて構いません。その他ばかりが増えるようなら、切り方が実態と合っていない合図になります。

種類③いくらでどんな条件だったか

3つ目は「いくらでどんな条件だったか」です。金額と、そのときに提示した条件を取り出します。

この情報が要るのは、見積の妥当性を判断するためです。似た仕様の案件がいくらで決まったかが分かれば、今回の見積が高すぎるか安すぎるかを見当できます。ただし条件は時期によって変わるため、いつの案件かを併記しておきましょう。金額の考え方については料金の記事でも触れています。

この会社では、金額と条件に加えて、その案件の年月を必ず並べる形にしました。3年前の条件をそのまま持ち出す誤りを防ぐためです。

金額に年月を添えるのは、実装としては1項目の追加で済みます。3年より古い案件は参考値として扱うといった線を決めておくと、担当者が迷いません。

何を任せる?Agentforceの類似案件抽出の線引き3つ

前章までで、引き当ての条件と取り出す情報が決まりました。次に決めるのは、どこまでを機械に任せるかです。すべてを自動で選ばせると、外れた案件が根拠のように扱われます。そこでここでは、類似案件の抽出をAIに任せる3つの線引きを整理します。

任せる範囲を決めずに始めると、候補の並び順がそのまま優先順位として読まれます。営業11名のうち誰が使っても同じ判断になるよう、線を先に引いておきます。任せてよいのは並べるところまでです。どれを参考にするかは人が選びます。

線引き①条件に合う案件を並べるまで任せる

1つ目は「条件に合う案件を並べるまで任せる」ことです。4つの条件で絞り込み、候補を出すところを機械が担います。

ここを任せるのは、最も時間のかかる作業だからです。3,200件から条件に合うものを人が探せば、22分かかります。条件が書けていれば機械は数秒で候補を返すため、担当者は返ってきた一覧を見るところから始められます。

この食品加工機械のメーカーでは、引き合いの情報を入れると候補が5件まで並ぶ形にしました。1回あたりの探す時間は22分から4分へ変わっています。

先に外すのは、条件に合う案件を集める作業です。この部分だけを機械に渡しても、1回あたり22分の大半が消えるため、効果は着手した月から出ます。

線引き②似ている理由の提示までを任せる

2つ目に挙げるのは、似ている理由の提示までを任せることです。どの条件で一致したのかを、候補ごとに添えさせます。

理由を添えるのは、選ぶ判断を速くするためです。「業種と仕様の型が一致、金額の帯は1つ下」と示されれば、開かずに使えるかどうかを判断できます。理由がなければ、結局は一件ずつ開くことになり、探す時間は縮みません。返る内容が揺れる問題については推論の揺れの記事で扱っています。

先ほどの会社では、候補ごとに一致した条件を並べる形にしました。営業からは、開く前に当たりを付けられるようになったという反応が出ています。

一致した条件は、4つのうちどれが合いどれが外れたかまで示すと判断が速くなります。合致した数だけを点数で返す形は、営業が理由を確かめられないため定着しません。

線引き③どれを参考にするかは人が選ぶ

3つ目は「どれを参考にするかは人が選ぶ」ことです。候補の中から使う案件を決めるのは、担当者に残します。

残す理由は、条件では拾えない事情があるためです。同じ業種で同じ仕様でも、相手の担当者との関係や、そのときの社内の事情で進め方は変わります。機械が1件に絞って提示すると、その1件が正解のように扱われます。5件並べて選ばせる形にすれば、外れた候補があっても害になりません。

この会社では、候補を5件まで並べ、選ぶのは営業に任せる形にしました。3か月の運用で、参考にした案件は月に平均2.4件です。1回の検索で複数を参考にする場面もありました。

並べる件数は5件を上限にし、それ以上は返さない設計にしました。上限を置かずに返すと、営業は先頭の数件しか見なくなります。

Agentforceで類似案件の条件を足していく4ステップ

条件、取り出す情報、任せる範囲がそろったところで、どの順番で着手すればよいのでしょうか。4つの条件を最初からすべて組むと、絞り込みが厳しくなって候補が出ません。とはいえ1つずつ足していけば、数週間で運用に入れます。そこでここでは、類似案件の条件を足しながら始める4つのステップを整理します。

この会社が最初に手を付けたのは、条件を考えることではありませんでした。営業11名から、探して諦めた事例を集めるところから始めています。最初にそろえるのは条件ではありません。見つからなかった引き合いです。

ステップ①探して見つからなかった引き合いを集める

1つ目のステップは「探して見つからなかった引き合いを集める」ことです。過去に探して諦めた事例を、営業から集めます。

集めることから始めるのは、条件を決める材料にするためです。見つからなかった引き合いには、「本当は何で探したかったか」が含まれています。営業に聞けば、業種で探した、仕様で探した、といった手がかりが具体的に出ます。この材料がないまま条件を決めた場合、出てくるのは机上の分類です。

この食品加工機械のメーカーでは、営業11名から直近3か月で諦めた事例を集めました。出てきたのは29件です。営業企画の担当が1週間で聞き取りを終えています。

集める範囲は直近3か月で足ります。それ以上さかのぼると記憶が薄れ、何で探したかったのかを営業が思い出せなくなります。

ステップ②最初の条件を1つ決めて試す

2つ目のステップは、最初の条件を1つ決めて試すことです。既に記録されている項目から1つ選び、その条件だけで候補を出します。

1つから始めるのは、条件を重ねるほど候補が減るためです。4つ全部を最初から掛け合わせると、該当が0件になる引き合いが増えます。1つの条件で候補が多すぎるなら、そこで初めて2つ目を足します。試す順番は、既に記録されている項目からで構いません。

先ほどの会社では、業種の1条件だけで試しました。候補が20件を超える引き合いが多く、絞り込みが足りないことが2週間で分かっています。

判定は候補の件数で行い、2週間ぶん見れば足りるかどうかが分かります。件数が多すぎる場合だけ2つ目を足し、少なければ条件を緩めるほうが順当です。

ステップ③外れた結果を見て条件を足す

3つ目のステップは「外れた結果を見て条件を足す」ことです。返ってきた候補のうち、使えなかったものを見て次の条件を決めます。

外れを見るのは、足すべき条件がそこに書かれているためです。業種は同じでも仕様がまったく違う案件が並んでいれば仕様の型が2つ目の条件になり、金額の桁が違う案件が混ざっていれば金額の帯を足します。外れた理由を数えれば、順番は自然に決まります。

たとえば、この会社では外れた候補の理由を2週間ぶん記録しました。最も多かったのが仕様の違いで、次が金額の桁です。この順で条件を足し、6週間で4つの条件がそろっています。

外れた理由は、候補の一覧に手書きで印を付けるだけでも数えられます。専用の画面を作ろうとすると、この2週間の作業が止まります。

ステップ④見つかった割合を月ごとに記録する

4つ目のステップは、見つかった割合を月ごとに記録することです。探した回数と、たどり着いた回数を並べて残します。

記録を残すのは、条件を直す判断の材料にするためです。割合が上がらなければ、条件の組み方が合っていません。逆に上がりきったら、条件を足すのをやめる合図になります。この数字がなければ、いつまでも条件を足し続けることになります。

この食品加工機械のメーカーでは、着手から6週間で運用に入りました。営業企画1名で、要した工数は計30時間です。3か月後には、見つかった割合が24%から82%へ変わりました。

割合が82%まで上がったあとは、条件を足す作業より、探す時間の短縮のほうに効果が残ります。以上が、類似案件の条件を足しながら始める4つのステップでした。

類似案件の抽出でつまずく3つの落とし穴

前章の4つのステップは、順番どおりに進めば6週間ほどで運用に入ります。ところが途中で止まる会社もあり、止まり方には型があります。いずれも良かれと思って選んだ手が原因です。そこでここでは、類似案件の抽出でつまずく3つの落とし穴を整理します。

3つとも、着手したあとに起きます。条件を足す途中で判断を誤るため、進んでいるつもりのまま候補が出ない状態が続き、営業が使わなくなります。記録を増やしても、探せる件数は増えません。

落とし穴①記録を増やして探しやすくしようとする

1つ目は「記録を増やして探しやすくしようとする」ことです。探せないのは情報が足りないからだと考え、項目を足します。

うまくいかないのは、探せない理由が量ではないためです。3,200件で探せなかったものは、4,000件になっても探せません。むしろ候補が増えるぶん、選ぶ作業が重くなります。手を入れる先は、記録の件数からたどり着ける経路へ移す必要があります。

この食品加工機械のメーカーでも、2年前に記録の項目を増やしています。入力率は6割から9割へ上がりましたが、見つかった割合は24%のままでした。今回は項目を1つも増やさず、既にある記録から条件を組んでいます。

項目を足す提案が出たときは、直前の見つかった割合を先に確かめます。数字が動いていない期間に項目だけが増えていれば、同じ選択を繰り返しています。

落とし穴②条件を最初から4つ全部そろえる

2つ目に挙げるのは、条件を最初から4つ全部そろえることです。完成形を目指して、一度に組み上げます。

止まる理由は、条件を重ねるほど該当が減るためです。業種と仕様と金額と段階をすべて満たす案件は、3,200件のなかでも数件しかありません。候補が0件で返る経験が続けば、営業は使わなくなります。1つずつ足し、候補が多すぎるときだけ絞るのが順当です。

先ほどの会社では、最初に4条件を試した週があり、38回中12回で候補が0件になりました。1条件からやり直し、外れた理由を見ながら足す形に切り替えています。

4条件を同時に使うのは、候補が20件を超え続けるようになってからで足ります。0件が返る状態を1度でも営業に見せると、次から使われません。

落とし穴③似ている理由を示さずに並べる

3つ目は「似ている理由を示さずに並べる」ことです。候補だけを出し、なぜ似ているかを添えません。

使われなくなるのは、選ぶ判断ができないためです。会社名と金額だけの一覧では、一件ずつ開くことになり、探す時間は縮みません。候補が5件返っても、5件とも開くのであれば作業の量は変わりません。理由を添えるのは実装としては小さな作業ですが、使われるかどうかを分けます。

定着まで伴走してほしい場合は、この理由の提示が設計に入っているかを支援先に確かめてください。候補を出すところで終わる提案は、使われるところまで見ていません。

理由の提示は、候補を返す処理の最後に1行足すだけで実装できます。この1行があるかどうかで、22分が4分に縮むかが決まります。

使われている?Agentforceの類似案件を測る4指標

前章の落とし穴を避けたうえで、次に要るのは変化を確かめる手段です。記録の件数は増えないため、件数を追っても変化が見えません。指標は運用の中で自然に取れるものに絞ると続きます。そこでここでは、類似案件が使われているかを測る4つの指標を整理します。

この会社が毎月見ているのは、探した回数と見つかった回数の2つだけです。営業企画の担当が月末に集計し、翌月の朝礼で営業へ共有する形を続けています。見るべきは記録の件数より、探して見つかった割合です。

指標①見つかった割合

1つ目は「見つかった割合」です。探した回数のうち、目当ての案件にたどり着いた割合を見ます。

この指標を最初に置くのは、設計の目的をそのまま表すためです。探せるようにすることが目的なら、探せたかどうかを直接見ればよく、分母を探した回数にすれば、引き合いの多い月と少ない月をまたいで比べられます。指標の定義の置き方は効果測定の記事で扱っています。

この食品加工機械のメーカーでは、月38回のうち9回から31回へ変わりました。割合にすると24%から82%です。記録の件数は3,200件のまま動かしていません。

分母は探した回数で固定し、引き合いの件数へ置き換えないようにします。引き合いを分母にすると、探さなかった月ほど割合が高く出てしまいます。

指標②1回あたりの探す時間

2つ目に挙げるのは、1回あたりの探す時間です。探し始めてから、見つかるか諦めるまでの時間を測ります。

時間を見るのは、続けて使われるかを左右するためです。見つかる割合が上がっても、22分がそのままなら営業は使いません。候補が並び、似ている理由が添えられていれば判断は数分で終わり、縮んだぶんは提案の準備へ回せます。測定は、探し始めた時刻と終えた時刻を営業が控えるだけで足ります。

先ほどの会社では、22分から4分へ変わりました。営業11名で月38回だと、合計は月14時間から月2.5時間ほどです。

出す数字は平均だけで足ります。中央値まで求めると集計の手間が増え、月ごとの記録が続きません。1名でも続けられる範囲に収めるのが、この指標を残す条件です。

指標③探すのをやめた回数

3つ目は「探すのをやめた回数」です。探し始めたが、見つからずに諦めた回数を数えます。

回数を見るのは、諦めが習慣になっていないかを確かめるためです。この数字が減らなければ、条件の組み方が実態と合っていません。減っていれば、営業は次も探すようになります。見つかった回数と表裏の数字ではありますが、営業の行動として見ると意味が変わります。

この会社では、月29回から月7回へ変わりました。残る7回は、前例のない仕様の引き合いに集中しています。営業企画の担当は、この7回を条件で拾い切れない範囲として、人が見る枠に残しました。

諦めた回数は、見つかった回数と同じ表に並べて残します。片方だけを見ると、探す行動が減ったのか、条件が効いたのかを見分けられません。

指標④参考にした案件の数

4つ目は「参考にした案件の数」です。候補のうち、実際に開いて提案に使った件数を数えます。

数を見るのは、候補の質を判定するためです。5件並べても1件も使われなければ、条件が合っていません。逆に複数が参考にされていれば、絞り込みが適切です。1回の検索で何件が使われたかを記録すれば、条件を足すか減らすかの判断ができます。

この食品加工機械のメーカーでは、1回あたり平均2.4件が参考にされていました。営業企画の担当は、この数字が2を下回ったら条件を見直す目安に置いています。

平均2.4件という水準は、5件のうち半分弱が実際に読まれたことを示します。1件も使われない引き合いが続くようなら、条件より取り出す情報の選び方を疑います。

類似案件を人が選ぶべき3つの条件

前章の指標は、任せた範囲が機能しているかを示します。ただし数字が良くても、人が選ぶべき場面は残ります。判断は条件の一致度では決まりません。なぜなら、その案件をそのまま参考にしてよいかで決まるからです。そこでここでは、類似案件を人が選ぶべき3つの条件を整理します。

この会社では、3つに当てはまる引き合いを月に数件、人が見る枠へ回しています。数は少なくても、外すと候補の信頼が一度で失われる範囲にあたるためです。前例のない仕様は、人が選びます。

条件①前例のない仕様のとき

1つ目は「前例のない仕様のとき」です。条件に当てはまる案件が3件を下回る引き合いが該当します。

人が選ぶのは、少ない候補から機械が選ぶと偏るためです。1件しか該当がなければ、その1件が「似ている」と提示されます。実際には性質が違っていても、比べる相手がいないため判定できません。候補が少ないときは、条件を緩めて人が見るほうが確実です。

自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合も、この下限の決め方は外部の目を入れる価値があります。何件を下回ったら人へ回すかは、商材によって変わるためです。

下限を3件に置いたのは、5件並べる形と釣り合う数だからです。扱う商材の種類が少ない会社では、2件でも判定できます。

条件②相手との関係が特殊なとき

2つ目に挙げるのは、相手との関係が特殊なときです。長い取引がある相手や、紹介で入った案件が該当します。

人が選ぶのは、関係の経緯が記録に残らないためです。20年の取引がある相手と、新規の相手では、同じ仕様でも進め方が違います。過去の案件を機械が並べても、関係の重みまでは考慮されません。既存の取引先については、担当者が案件を選ぶほうが噛み合います。

この食品加工機械のメーカーでは、取引年数が10年を超える相手の案件を、人が選ぶ対象にしました。月に3件ほどで、営業が過去の担当者に直接聞く形を続けています。

線引きは取引年数で機械的に引けるため、判定に手間はかかりません。10年という区切りは商材の入れ替わりの速さで動き、短い商材なら5年でも成立します。

条件③価格の条件が例外だったとき

3つ目は「価格の条件が例外だったとき」です。通常とは違う値引きや支払いの条件がついた案件が該当します。

人が選ぶのは、例外がそのまま前例として扱われるためです。特殊な事情で通した条件が候補に並ぶと、今回もその条件で出せるように見えます。例外の案件には印を付け、機械の候補から外すか、選ぶ前に人が確認する形にします。

先ほどの会社では、例外の条件がついた案件に印を付けました。過去10年で41件あり、候補には並びますが、印があることを一覧で示しています。

41件という数は、3,200件の1%を少し上回る程度です。この規模なら候補から完全に外すより、印を付けて残すほうが判断の材料は増えます。値引きの理由まで一言添えておけば、次に同じ交渉が来たときの判断も速くなります。

類似案件の設計に外部支援を使う4つの判断軸

ここまでの内容は、営業企画の担当1名でも進められる範囲です。ただし条件の切り方や下限の決め方で迷う場面はあり、外部の支援を検討する会社もあります。支援先を選ぶときは、実績の数より判断の作法を見るのが確実です。そこでここでは、類似案件の設計に外部支援を使う4つの判断軸を整理します。

4つとも、契約前の打ち合わせの受け答えで確かめられます。提案書が出てくる前に、その場で聞ける質問として用意しておくと比較が早く済みます。支援を選ぶ基準は実績の数ではありません。条件を業務から決められるかです。

判断軸①引き当ての条件を業務から決められるか

1つ目は「引き当ての条件を業務から決められるか」という軸です。条件の切り方を、営業の仕事の側から説明できるかを見ます。

この軸を最初に置くのは、条件の切り方が成果を左右するためです。汎用の分類を当てると、自社の引き合いの実態と噛み合いません。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、最初の打ち合わせで「探して見つからなかった事例」を見せてほしいと言われるかどうかで判断できます。切り方を決める材料は支援先の手元になく、自社の営業の記憶と、諦めた事例の側にあるからです。支援先の選び方の全体像は導入支援会社の選び方の記事で扱っています。

諦めた事例を見せてほしいと言うかどうかは、初回の打ち合わせで分かります。汎用の分類表を先に出してくる相手は、この軸を満たしません。

判断軸②小さく始める形を示せるか

2つ目に挙げるのは、小さく始める形を示せるかという軸です。最初の3か月で何をどこまでやるかを、具体的に示せるかを見ます。

この軸が要るのは、範囲を絞る提案ができる会社が限られるためです。記録の仕組み全体を作り直す提案のほうが、支援としては大きくなります。スモールスタートで小さく始めたい場合は、契約の前に次の3つを数字で示してもらいましょう。

契約の前に確かめる数字 ①最初に使う条件・・・いくつから始めるか ②対象にする案件・・・過去何年ぶんを対象にするか ③候補の件数・・・1回に何件まで並べるか

示せない提案は、範囲が定まっていません。3つとも即答できる相手であれば、最初の3か月で何が残るかを契約前に見積もれます。

判断軸③自社で構築する前提に対応できるか

3つ目は「自社で構築する前提に対応できるか」という軸です。作るのは自社で、条件の設計だけを見てもらう形に応じられるかを見ます。

この軸を置くのは、体制によって必要な支援が違うためです。社内に情報システムの担当がいる会社では、構築まで任せる必要がありません。条件の切り方と下限の決め方だけを見てもらう契約は成立します。支援の形が固定されている相手では、この頼み方ができません。

この食品加工機械のメーカーにも専任の情報システムの担当はいませんでしたが、条件の設計は営業企画の担当1名で書き切っています。作る部分だけを外へ出す形であれば、費用は設計の期間ぶんに収まります。

確かめ方は、設計だけの契約に応じるかを直接聞くところまでで足ります。断られたなら、その相手は構築込みの案件しか扱っていません。

判断軸④営業の商談を理解しているか

4つ目は「営業の商談を理解しているか」という軸です。扱っている商材と引き合いの入り方を、支援先が把握しているかを見ます。

この軸が効くのは、条件が商材によって変わるためです。標準品を数多く扱う会社では業種と金額で足り、受注生産の会社では仕様の型が要ります。同じ業界でも、標準品と受注生産では手がかりが入れ替わるため、業界の実績があるだけでは足りません。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、引き合いの内容を聞かれるかどうかが目安になります。当社のAgentforce導入・定着支援では無料相談も受け付けています。詳しくはAgentforce導入・定着支援をご覧ください。

4つの軸のうち、最後まで残るのはこの軸です。商材と引き合いの入り方を聞かない相手は、条件をどこで切るかを決められません。

【一問一答】類似案件の抽出に関するよくある質問

ここまで、類似案件が探せない状態から、共有では解けない理由、引き当てる4つの条件、AIに任せる線引き、条件を足しながら始める手順、支援先の選び方までを順に見てきました。最後に、検討の場でよく出る質問を5つ取り上げます。件数の下限、条件の決め方、任せられる範囲、担当する部署、期間の見込みという並びで、いずれもこの記事で例に挙げた食品加工機械のメーカーの数字に沿って答えます。自社の体制と照らしながら、判断に迷う場面の目安として使ってください。

質問①類似案件はどのくらいの件数から使えますか?

件数の下限より、条件に合う候補が3件以上出るかで判断します。この記事の例では3,200件でしたが、数百件でも条件が絞れていれば成立し、候補が3件を下回る引き合いだけを人が選ぶ対象に回します。

質問②類似案件の条件は何から決めますか?

既に記録されている項目から1つ選んで試します。多くの会社では業種が最も手をかけずに始められるため、そこから入るのが順当です。この記事の例に挙げた食品加工機械のメーカーは業種を14分類で記録しており、最初に4条件を試した週は38回中12回で候補が0件になりました。候補が多すぎたら2つ目を足し、外れた理由を見ながら順に増やしていきます。

質問③類似案件の抽出はどこまでAIに任せられますか?

条件で絞って候補を並べ、どの条件で一致したかを添えるところまでです。どれを参考にするかは担当者が選びます。この記事の例では候補を5件まで並べ、1回あたり平均2.4件が参考にされました。

質問④類似案件の設計は誰が担当しますか?

営業企画や営業推進の担当が向いています。探して見つからなかった事例を集め、条件を言葉にする作業に業務の知識が要るためです。この記事の例では、営業企画の担当1名が6週間・計30時間で進めています。

質問⑤類似案件が見つかるまでどのくらいかかりますか?

条件を1つ試すだけなら着手の翌週から候補は出ます。実用になる割合まで上げるには、外れた理由を見て条件を足す期間が要り、6週間ほどが目安です。その後の3か月で割合は安定します。

Agentforceの類似案件は、引き当てる条件を決めると出てくる

ここまで見てきたとおり、過去の案件が探せないのは、記録が少ないからでも、共有が足りないからでもありません。何を手がかりに引き当てるかが決まっていないからです。共有の施策は記録を入れる側を扱い、出す側の条件を含んでいません。記録を増やしても、たどり着ける経路が増えなければ探せる件数は変わらないままです。

先に決めるのは、引き当ての条件です。相手がどの業種か、求められた仕様がどの型か、金額がどの帯か、商談がどの段階で止まったか。この4つを言葉にすれば、絞り込みは機械に渡せます。候補には一致した条件を添えたうえで、どれを参考にするかは担当者が選び、前例のない仕様と、関係が特殊な相手と、価格が例外だった案件は、人が選ぶ範囲に残しておきます。

この記事の例では、記録の件数も探した回数も1つも変えず、見つかった割合が24%から82%へ変わりました。1回あたりの探す時間は22分から4分へ、諦めた回数は月29回から月7回です。まず、探して見つからなかった引き合いを集めるところから着手できます。