業務設計から頼むSalesforce導入支援|要件定義の範囲と選び方

読了時間 6 分
結論・要約
  • 業務設計から頼むSalesforce導入支援とは、設定の前に業務の流れと項目の意味を決めて手元に残す支援です。
  • Salesforce導入の作り直しは、例外・項目の意味・承認者を設定の担当者が推測で埋めることから起きます。
  • Salesforceの要件定義は、業務設計と業務要件を業務の言葉で決めてから、システム要件を書く順番が基本です。
  • 業務設計から入る支援会社は、流れ図の見本に例外の扱いがあり、定義表に入力する人の欄があるかで見分けます。

業務設計から頼むSalesforce導入支援とは、設定や開発に入る前に、営業の業務の流れと任せる範囲、項目の意味、承認の決まりを支援会社と一緒に決め、要件定義の成果物として手元に残す支援のことです。SalesforceにAgentforceのようなAIエージェントを足す計画がある会社ほど、設定より先に業務を決める順番が問われます。

しかし、導入の相談を始めると、最初の打ち合わせから画面の見本や設定の見積もりの話が中心になり、業務をどこまで整理してもらえるのかが分からないまま進んでいくのではないでしょうか。Salesforce導入の作り直しを減らすには、設定に入る前に業務設計と要件定義を終えておくことが出発点です。

そこで本記事では、業務設計から頼むと手元に残る成果物と要件定義の範囲を整理したうえで、支援会社の見極め方と、構築を自社で行う場合に設計レビューだけを頼む形までを解説します。

目次
  1. Salesforce導入の要件定義を業務設計から頼むと残る5つの成果物
    1. 成果物①今の営業業務の流れ図
    2. 成果物②任せる業務と人が持つ業務の一覧
    3. 成果物③項目とデータの定義表
    4. 成果物④権限と承認の決まり
    5. 成果物⑤効果を測る指標と測り方
  2. なぜ作り直す?業務設計を飛ばした導入の3つの理由
    1. 理由①現場の例外処理が設定の後で見つかるから
    2. 理由②同じ項目の意味が部署ごとに違うから
    3. 理由③誰が承認するかが決まっていないから
  3. 業務設計と要件定義の違い|3つの段階
    1. 段階①業務設計で仕事の回し方を決める
    2. 段階②業務要件で仕組みに求めることを決める
    3. 段階③システム要件で設定と開発の中身を決める
  4. Salesforce導入で業務設計から頼む5つの工程
    1. 工程①営業の業務を段階ごとに書き出す
    2. 工程②例外と判断の基準を現場に聞く
    3. 工程③任せる業務と人が持つ業務を分ける
    4. 工程④項目と画面の要件に落とす
    5. 工程⑤小さく組んで現場で確かめる
  5. 業務設計から入る支援会社の4つの見極め方
    1. 見極め①最初の打ち合わせで業務の流れを聞くか
    2. 見極め②成果物の見本を見せられるか
    3. 見極め③現場の担当者への聞き取りを工程に含むか
    4. 見極め④設計と構築の担当がつながっているか
  6. Salesforceの設計レビュー・アドバイザリーだけ頼む3つの形
    1. 形①要件定義書を一度だけ見てもらう
    2. 形②構築の期間に定例で相談する
    3. 形③構築を終えた後に設計を点検してもらう
  7. 業務設計の支援でつまずく3つの落とし穴
    1. 落とし穴①現場の担当者が聞き取りに出てこない
    2. 落とし穴②決裁者が成果物を見ないまま進む
    3. 落とし穴③成果物が構築の担当に渡らない
  8. 業務設計から頼むべき企業の3つの条件
    1. 条件①Salesforceを入れ直すのが2回目以降である
    2. 条件②営業の手順が担当者ごとに違う
    3. 条件③AIエージェントに任せる業務を決めたい
  9. 業務設計を自社でできる企業の3つの条件
    1. 条件①業務とSalesforceの両方が分かる担当がいる
    2. 条件②現場の担当者が聞き取りに時間を割ける
    3. 条件③決裁者が設計の会議に出られる
  10. 業務設計の効果を3つの時点で測る
    1. 時点①設計を終えた時|決まっていない例外の件数
    2. 時点②公開から1か月|空欄のまま残る項目の割合
    3. 時点③公開から3か月|設定の作り直しの依頼件数
  11. 見積もり3項目|業務設計の支援で確かめること
    1. 項目①聞き取りの対象と回数
    2. 項目②成果物の種類と渡し方
    3. 項目③構築に進まなかったときの扱い
  12. 【一問一答】業務設計から頼むSalesforce導入支援に関するよくある質問
  13. Salesforce導入の要件定義は、業務設計から頼むと作り直しが減る
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Salesforce導入の要件定義を業務設計から頼むと残る5つの成果物

手元に何が残るのかが見えなければ、業務設計から頼む支援の見積もりは比べられません。今回は、産業用部品を扱う専門商社を例にします。従業員180名ほど、営業40名、情報システム2名で、Salesforceの導入から4年目の企業です。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。設定から始めた結果、項目は230ほどに増え、半分以上が空欄のままでした。営業部長は「Agentforceを入れる前に、営業が毎日使う項目と手順を決め直したい」と考えています。そこでここでは、Salesforce導入を業務設計から頼むと手元に残る5つの成果物を整理します。

成果物中身主に使う人
①業務の流れ図誰が何をどの順で行うか営業部長・設計担当
②業務の一覧任せる業務と人の業務営業部長・現場
③項目の定義表項目の意味と入力の決まり構築担当
④権限と承認見る人・決める人情報システム
⑤指標と測り方効果を測る数字決裁者

成果物①今の営業業務の流れ図

1つ目は「今の営業業務の流れ図」です。問い合わせから見積、受注、納品後のフォローまでを、誰がどの順番で行い、どの画面や表に記録しているかを1枚にまとめた図を指します。

流れ図が最初なのは、ほかの4つの成果物がこの図を前提にするからです。図のどの段階の話かが決まっていなければ、一覧も定義も打ち合わせのたびに前提がずれます。

たとえば、産業用部品の専門商社では、見積を営業担当が自分で作る場合と営業事務に頼む場合が混在しており、聞き取りを流れ図に書き出すと、同じ「見積」の段階に3通りの手順があり、1つはSalesforceを使わず表計算ソフトで作られていました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

社内の誰に見せても同じ順番で説明できれば、流れ図は完成です。

成果物②任せる業務と人が持つ業務の一覧

2つ目は「任せる業務と人が持つ業務の一覧」です。流れ図の各段階で、Salesforceの自動化やAIエージェントに任せる作業と、担当者が判断する作業を分けた表で、AIエージェントを入れる計画がある会社ほど、この一覧の有無で後の設計が変わります。

一覧を作らずに設定を始めると、自動化できそうな作業から手を付け、担当者の判断が必要な作業まで自動の流れに組み込んでしまう場合があります。そうなると例外のたびに担当者が自動の処理を止めて手で直すことになり、手間はかえって増えます。

この専門商社でも、営業部長が最初に挙げたのは「見積の作成をAgentforceに任せたい」という希望でした。ところが流れ図で整理すると、標準品の見積は任せられる一方、特注品は価格の判断を営業担当が持っていると分かり、一覧では同じ見積を2行に分け、それぞれに最終的に判断する人を書き入れました。

成果物③項目とデータの定義表

3つ目は「項目とデータの定義表」です。Salesforceの項目ごとに、意味、誰がどの段階で入力するか、空欄を許すかを1行ずつ書いた表を指します。

定義表が要るのは、名前だけでは項目の意味が定まらないからです。「受注予定日」ひとつでも、見積を出した日から数えるのか、顧客が発注を口にした日なのかで、入力される日付が変わります。名前だけ決めて設定に進むと、担当者ごとに違う意味で入力され、集計の数字が使えなくなります。

産業用部品の専門商社では、230ほどある項目を定義表に並べ直したところ、意味を説明できる担当者がいない項目が多く見つかり、作った経緯を情報システムの2名に確かめて、残すか削るかを1行ずつ決めました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

入力する人と入力する段階が書けない項目は、残す理由が無い項目として扱います。

成果物④権限と承認の決まり

4つ目は「権限と承認の決まり」です。どの役職の担当者がどの情報を見られるか、値引きや契約条件の変更を誰が承認するかを、流れ図の段階ごとに書いた取り決めを指します。

権限と承認は後から設定の画面で決められそうですが、業務の取り決めが先に無いと設定の担当者が推測で決めることになり、営業部長の承認が要る値引きが担当者の判断で通ったり、承認待ちの案件が部長のところで滞ったりします。

たとえば、この専門商社では値引きの承認が口頭とメールで行われ、記録が残っていませんでした。承認の決まりを書き出す段階で、一定の値引き率を超える見積は営業部長、それ以下は課長が承認すると決め、その条件をそのまま承認の設定に渡しています。

逆に、「状況に応じて部長が判断する」のように数字の無い条件が残っていると、設定の担当者は承認の流れを組めません。

成果物⑤効果を測る指標と測り方

5つ目は「効果を測る指標と測り方」です。Salesforceの公開後、何の数字が変わればうまくいったと言えるのかを、測る時点と取り出し方まで決めておく取り決めを指します。

指標を最初に決めるのは、公開後に決めると取り出しやすい数字だけが並びやすいからです。ログイン回数や登録件数は、営業の業務が変わったかどうかを示しません。

この専門商社の営業部長は、当初「入力率を上げたい」と言っていました。そこで、どの項目がいつまでにどれだけ埋まればよいかを書き分け、設計を終えた時点、公開から1か月、公開から3か月の3つの時点で数字を取ると決めました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。測り方は後の章で扱います。

業務設計の成果物は、設定に入る前に「何が決まっていれば構築に進めるか」を示す判断材料になります。以上が、Salesforce導入を業務設計から頼んだときに残る5つの成果物でした。

なぜ作り直す?業務設計を飛ばした導入の3つの理由

前章では、業務設計から頼むと残る5つの成果物を整理しました。こうした成果物を作らずに設定から始めると、数年後に作り直しを迫られることがあります。Salesforceに限らない一般のシステム開発を対象にした約10年前の調査ですが、IPA(情報処理推進機構)が2017年2月の講演資料「失敗しない要件定義とリスク対策」で引いた日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の2016年の調査では、工期遅延の理由のうち55%が要件定義の問題で、残りの45%がプロジェクト管理の問題でした。そこでここでは、業務設計を飛ばしたSalesforce導入が作り直しになる3つの理由を解説します。

理由①現場の例外処理が設定の後で見つかるから

標準の流れだけを聞いて設定を進めると、公開後に「この顧客だけは別の手順で処理している」という話が現場の担当者から次々に出ます。

なぜ後から見つかるのかというと、例外の多くは担当者の頭の中にあり、マニュアルにも議事録にも書かれていないからです。同じIPAの講演資料が引くJUASの2014年の調査では、手戻りの件数比は設計段階からの手戻りが85%、総合テスト段階からが10%、運用段階からが5%で、後の段階で見つかる手戻りほど修正の負荷が大きいと示されています。設定の後に見つかる例外は、件数は少なくても直す負荷が大きい側の手戻りです。

産業用部品の専門商社も、最初の導入では聞き取りの相手が営業部長と情報システムの担当だけでした。公開後、特定の取引先では納期回答の前に仕入先の確認を挟む手順があると指摘され、商談の段階の設定を何度も変えました。

現場の担当者から設定の前に例外を聞いておくかどうかで、公開後の作り直しの量が変わります。

理由②同じ項目の意味が部署ごとに違うから

例外と並んで作り直しを生むのが、項目の意味のずれです。営業と営業事務、営業と経理で、同じ名前の項目が違う内容を指すことは珍しくありません。

たとえば、この専門商社では「受注日」に、営業は注文の連絡を受けた日を、営業事務は注文書を受け取った日を入力していました。どちらも間違いではないものの、月末に受注金額を集計すると、営業部長が見る数字と経理に渡る数字が合わない状態が続いていたのです。

項目の意味を決めないまま設定を進めると、こうしたずれが集計の段階で表に出たときには入力済みのデータが何年分も積み上がっており、意味をそろえ直すには項目を分けて作り直すしかなくなります。

部署をまたいで使う項目は、設定の前に定義表で意味を1つに決めておくことが作り直しを防ぐ条件です。

理由③誰が承認するかが決まっていないから

最後の理由は、承認の決まりが業務の側に無いまま、設定の担当者に判断が任されるからです。承認の流れは画面で組めても、誰に何を承認させるかは設定の担当者には決められません。

承認者が決まらないまま設定を進めると、設定の担当者は以前の慣習や他社の例から仮の承認者を置きます。公開後に営業部長が「この金額の値引きは自分が見たい」と言えば流れを組み直し、決裁の範囲が変わるたびに同じ作業が発生します。

産業用部品の専門商社でも、導入時に値引きの承認を設定せず口頭とメールに任せた結果、どの見積がどの条件で通ったのかを後から確かめられませんでした。

業務設計を飛ばしたSalesforce導入では、例外・項目の意味・承認者を設定の担当者が推測で埋めるため、作り直しが起きます。以上が、業務設計を飛ばした導入が作り直しになる3つの理由でした。

業務設計と要件定義の違い|3つの段階

前章で作り直しの理由が分かると、次に迷うのは「業務設計」と「要件定義」の違いです。支援会社の提案書でも両者が同じ意味で使われることがあり、頼む範囲を決めるときに混乱します。たとえば提案書の「要件定義」が、流れ図を作るところからか、決まった業務を画面の仕様に書き起こすところからかで、頼める範囲の差は小さくありません。そこでここでは、業務設計と要件定義の違いを、決めることと成果物で分けて3つの段階で整理します。

段階決めること主な成果物
①業務設計仕事の順番と担当業務の流れ図
②業務要件仕組みに求めること業務の一覧・定義表
③システム要件設定と開発の中身画面・項目の仕様

段階①業務設計で仕事の回し方を決める

最初の段階は業務設計で、Salesforceとは関係なく、営業の仕事をどの順番で、誰が、どの基準で進めるかを決めます。決めるのは仕組みではなく人の動きで、成果物は業務の流れ図と担当の分け方です。

業務設計を独立させるのは、仕組みの話を先にすると今の業務を画面に写すだけになりやすいからです。たとえば、見積の承認がメールで行われている業務をそのまま写すと、Salesforceの中にメールの代わりの項目が増えるだけで、承認の基準の曖昧さはそのまま残ります。

この段階では、今の手順のどれをやめ、どれを1つにまとめるかを決めます。営業担当と営業事務で分かれた見積の手順を1つにそろえる判断は、この段階でしか下せません。

業務の順番と担当が決まり、例外の扱いまで書けたら、業務設計の段階は終わりです。

段階②業務要件で仕組みに求めることを決める

仕事の回し方が決まったら、次は業務要件として、仕組みに何を求めるかを決めます。業務要件定義とは、業務の流れを実現するために、システムが満たすべき条件を業務の言葉で書き出す作業のことです。

業務要件の段階では、まだ画面の配置や項目の型は決めません。決めるのは「見積を出す前に在庫の有無を確認できること」「一定の値引き率を超えたら部長の承認が要ること」のように、業務の側から見た条件です。業務の言葉で書けば、営業部長や現場の担当者が読んで正しいかを判断できます。

前章の成果物でいえば、任せる業務の一覧と項目の定義表が、この段階にあたります。どちらも設定にそのまま使えるほど細かくはありませんが、業務の側で合意した内容として次の段階の前提になります。

業務要件が現場の担当者に読める言葉で書かれていれば、構築に入ってから前提が覆ることは減ります。

段階③システム要件で設定と開発の中身を決める

最後の段階がシステム要件で、業務要件をSalesforceの設定と開発の中身に置き換えます。どのオブジェクトにどの項目を置くか、どの画面に何を表示するか、承認の流れや自動化をどう組むかを決め、構築の担当が使う仕様書にします。

業務要件が固まっていれば、システム要件の多くは構築の担当が書けます。逆に、業務要件が決まらないうちにシステム要件を書くと、設定の担当者が業務の判断まで引き受け、作り直しの理由に挙げた状態に戻ります。

期間の目安としては、当社のAgentforce導入・定着支援の導入・定着までの流れでは、「キックオフ・要求定義(~4週間)」「構築スプリント(2週間x3~4回)」と分け、「要求定義から本番公開までおよそ3か月で進めます」としています。最初の4週間ほどで要求定義を終え、2回目以降のスプリントでフィードバックを反映する流れです。

業務設計と業務要件を業務の言葉で決めてから、システム要件を設定の言葉で書く順番を守ることが要件定義の基本です。

3つの段階それぞれの担当と、どこまで外部に頼むかを決めておくと、支援会社の提案書を同じ基準で読めます。以上が、業務設計と要件定義の違いを3つの段階で整理した内容でした。

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Salesforce導入で業務設計から頼む5つの工程

3つの段階の違いを整理したところで、業務設計から頼んだときの実際の工程を見ていきます。扱うのは業務設計と要件定義の工程までで、設定を組み上げる工程は含みません。依頼する側から見ると、工程の多くで現場の担当者や営業部長の時間が要るため、どの工程に誰が出るかを先に知っておくと社内の予定を組みやすくなります。そこでここでは、Salesforce導入で業務設計から頼む5つの工程を、産業用部品の専門商社の例で順に解説します。

工程①営業の業務を段階ごとに書き出す

最初の工程では、問い合わせから納品後のフォローまでの営業の業務を、段階ごとに書き出します。書き出す単位は「誰が」「何を受けて」「何を作り」「誰に渡すか」で、この4つがそろえば流れ図が描けます。

書き出しは、営業部長や情報システムの担当の説明だけで済ませないことが大切です。管理する立場から見た流れと担当者の実際の手順には差があり、その差こそが決め直す対象になるからです。

産業用部品の専門商社では、営業部長の説明で作った最初の流れ図は7つの段階でしたが、営業担当6名と営業事務2名に2回ずつ聞き取ると、見積の前に仕入先へ納期を確かめる段階や、受注後に営業事務が与信を確認する段階が加わり、10の段階に増えました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

逆にいえば、聞き取りの後も段階の数が変わらないなら、管理する立場の説明だけで描いていないかを疑いましょう。

工程②例外と判断の基準を現場に聞く

流れが書けたら、次は各段階で起きる例外と、担当者が判断に使う基準を聞き出します。標準の流れだけでも設定はできますが、公開後の作り直しの依頼は、多くが例外の扱いから来ます。

聞き方の要点は、「普段はどうしていますか」の後に「最近、いつもと違う処理をした案件はありますか」と続けることです。具体的な案件を思い出すと、担当者は自分では例外と思っていなかった手順まで話してくれます。

この専門商社の聞き取りでは、「海外の仕入先の品は、納期を回答する前に必ず輸入担当に確認する」「既存の取引先でも、3年取引が無かった会社は与信を取り直す」といった例外が30件ほど集まりました。それぞれ判断しているのは誰か、基準が書けるかを確かめ、基準が書けるものと担当者の判断に残すものに分けています。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

集めた件数より、判断者と基準が書けたかどうかで、この工程の終わりを判断します。

工程③任せる業務と人が持つ業務を分ける

例外と基準がそろったら、流れ図の各段階で、Salesforceの自動化やAIエージェントに任せる業務と、人が持つ業務を分けます。ここでは、誰がどの会議で決めたかを記録に残すことが後の工程で効いてきます。

分ける作業を営業部長1人で決めると、公開後に現場から「その判断は自分たちがしていた」と言われたとき、決め直す根拠がありません。そのため、営業部長と現場の代表、情報システムの担当がそろう会議で、一覧の各行に決めた理由を書き残します。

たとえば、産業用部品の専門商社はこの会議を2時間ずつ2回開き、一覧を確定させました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。Agentforceに任せる候補として残ったのは、標準品の見積の下書きと、納品後のフォローの連絡の2つでした。

工程④項目と画面の要件に落とす

業務の分け方が決まって、初めて項目と画面の要件に落とします。流れ図と一覧をもとに、各段階で入力・確認・承認する項目を決め、定義表を仕上げます。

この工程で意識したいのは、項目を足すより先に、今ある項目を残すか削るかを決めることです。入れ直しで前回の項目をそのまま引き継ぐと、使われていない項目が新しい画面にも並び、担当者がどこに入力すればよいか迷う状態が残ります。

この専門商社では、230ほどの項目から流れ図のどの段階でも使われないものを外し、90ほどに絞りました。あわせて商談の画面の項目を段階ごとに並べ替え、見積の段階では見積に要る項目だけを表示する要件を書いています。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

逆に、残す理由を説明できない項目を「念のため」と残すと、新しい画面でも空欄のまま残る項目が増えていきます。

工程⑤小さく組んで現場で確かめる

最後の工程では、一部の業務だけを小さく組み、現場の担当者に使ってもらって確かめます。すべて組み終えてから見せると、食い違いを直す範囲が大きくなるためです。

小さく始めたい場合は、最初に組む範囲を1つの業務に絞ると、確かめる観点も絞り込めます。1つの業務で、入力の手順、承認の流れ、集計の数字が業務設計どおりに動くかを確かめ、合わない点は要件を直します。

産業用部品の専門商社では、最初に組む範囲を標準品の見積に絞り、営業担当6名に2週間使ってもらいました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。その結果、見積の画面に仕入先の納期を確かめる欄が足りないと指摘され、要件に1項目を足してから、ほかの業務の構築に進んでいます。

以上が、Salesforce導入で業務設計から頼む5つの工程でした。

業務設計から入る支援会社の4つの見極め方

前章で5つの工程を知ると、どの支援会社ならこの工程を通してくれるのかが気になります。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、提案書の言葉より、最初の打ち合わせでの質問や成果物の見本から支援会社の進め方を確かめるほうが判断しやすくなります。業務設計から入る支援会社は、AIエージェント導入支援を手がける会社のなかでも、設定より前の工程に時間を割く会社です。そこでここでは、業務設計から入る支援会社を見極める4つの観点を解説します。

見極め①最初の打ち合わせで業務の流れを聞くか

1つ目は「最初の打ち合わせで業務の流れを聞くか」です。業務設計から入る支援会社は、Salesforceの機能や画面の話をする前に、問い合わせから受注までの業務の進め方を聞いてきます。

逆に、最初の打ち合わせが画面のデモと設定の見積もり中心なら、設定から入る進め方が標準の可能性があります。設定から入る支援が悪いわけではありませんが、業務の整理を頼みたい会社には、その工程が見積もりに含まれていません。

たとえば、打ち合わせで「見積は誰が作り、誰が承認していますか」「その手順に例外はありますか」と聞かれたかを、後で書き留めておきましょう。複数の支援会社と話す場合も、同じ観点で比べられます。

ただし、業務の資料を先に渡していると質問は減るため、資料に無い例外まで聞いてくるかで判断しましょう。

見極め②成果物の見本を見せられるか

2つ目は「成果物の見本を見せられるか」です。業務の流れ図や項目の定義表といった成果物の見本を、社名を伏せた形で見せてもらえるかを確かめます。業務設計から入る支援会社であれば、こうした見本を出せるはずです。

見本を求めるのは、「業務設計から行います」という説明だけでは、どこまでの粒度で整理するのかが分からないからです。流れ図が段階の名前を並べただけのものか、担当者と例外まで書かれたものかで、構築に渡せる情報の量が大きく変わります。

業務設計から入る支援会社かどうかは、見本の流れ図に例外の扱いがあり、定義表に入力する人と段階の欄があるかで見分けられます。見本が無い場合は、過去に納めた成果物を口頭で説明してもらい、具体的な項目の名前が出てくるかを見ます。

見極め③現場の担当者への聞き取りを工程に含むか

3つ目は「現場の担当者への聞き取りを工程に含むか」です。提案書の工程表に、営業担当や営業事務への聞き取りが回数とともに書かれているかを確かめます。

聞き取りの相手が管理職だけだと、作り直しの理由に挙げた例外を見落としやすくなります。現場への聞き取りは時間がかかるため、見積もりを小さく見せたい提案では省かれがちです。

たとえば、工程表に「現状業務の確認」とだけある場合は、誰に何回聞くのかを質問してみましょう。営業担当と営業事務それぞれに聞く計画と、結果を誰がどの成果物にまとめるかまで答えられる支援会社なら、工程に組み込まれていると判断できます。

聞き取りの対象と回数は、見積もりを比べる段階でも工程表で確かめられる観点です。

見極め④設計と構築の担当がつながっているか

4つ目は「設計と構築の担当がつながっているか」です。業務設計の担当とSalesforceの設定を組む担当が別の会社や部署に分かれていると、成果物が構築の担当まで正しく届くかを確かめる必要があります。

設計と構築が分かれるのは珍しくありませんが、つながりが弱いと構築の担当が成果物を読まずに設定を進め、決めた例外の扱いや承認の条件が反映されないまま公開されてしまいます。

確かめ方は、設計の打ち合わせに構築の担当が同席するか、成果物を渡すときに説明の場があるかを質問します。設計と構築を同じ会社が担う場合も、担当者が変わるなら同じ確認が要ります。

支援会社を比べる際は、Agentforce導入支援会社の比べ方とあわせて、この4つの観点を当てはめてみてください。以上が、業務設計から入る支援会社を見極める4つの観点でした。

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Salesforceの設計レビュー・アドバイザリーだけ頼む3つの形

ここまでは、業務設計から構築までを外部に頼む前提でした。一方で、構築は社内のSalesforceの担当で進めたい会社もあるでしょう。社内で構築する場合も、業務の判断を構築の担当1人が抱えると、推測での設定が起きやすい点は変わりません。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合は、頼む時期と回数によって3つの形から選べます。そこでここでは、Salesforceの設計レビュー・アドバイザリーだけを頼む3つの形を解説します。

形①要件定義書を一度だけ見てもらう

1つ目は「要件定義書を一度だけ見てもらう」形です。社内でまとめた業務の流れ図や項目の定義表、システム要件の仕様書を外部に渡し、構築に入る前に一度だけ確認してもらいます。

この形が向いているのは、要件定義書をすでに社内で書き上げていて、抜けている観点が無いかを確かめたい場合です。1回で終わるため頼む範囲が明確で、社内の稟議も通しやすい形と言えます。

たとえば、レビューを頼むときは「例外の扱いが書けているか」「承認の条件が数字と役職で書かれているか」「項目ごとに入力する人と段階が決まっているか」の3点を重点的に見てほしいと伝えておくと、指摘が具体的になります。レビューの結果は、どの成果物のどの行を直すべきかが分かる形で受け取りましょう。

形②構築の期間に定例で相談する

2つ目は「構築の期間に定例で相談する」形です。構築を自社で進めながら、週に1回や2週間に1回の間隔で外部に相談し、設計の判断に迷った点をその都度確かめます。

構築の期間には、要件定義のときに想定していなかった判断が出てきます。たとえば、標準の機能か開発か、例外の業務をどこまで自動化に入れるかを構築の担当だけで決めると、後で作り直しになる設定が残る場合があります。

相談の前に「今週決めたいこと」をまとめておけば、限られた時間で判断まで進められます。相談の結果を要件定義書のどこを変えたかと合わせて記録しておけば、構築後に設計の経緯を追えます。

構築中の判断が多そうな会社ほど、一度だけのレビューより定例が合うでしょう。

形③構築を終えた後に設計を点検してもらう

3つ目は「構築を終えた後に設計を点検してもらう」形です。自社で構築したSalesforceを公開する前か公開の数か月後に、設定が業務設計の成果物どおりかを外部に点検してもらいます。

点検を頼むのは、構築を進めるうちに要件と設定がずれていくからです。現場の要望に1つずつ応えて項目や自動化を足すと、個々の変更は正しくても、全体は最初の業務設計から離れます。

たとえば、AIエージェントを足す前に点検を頼めば、エージェントが参照する項目の意味や、承認の流れが業務の決まりと合っているかを確かめられます。直すべき設定の一覧が手元に残るので、社内で優先順位を付けて直せます。

当社でも、構築は貴社のチームが担い、設計の妥当性を確認して改善点をお伝えする設計レビュー・アドバイザリーを提供しています。設計書や構成を一度確認するスポットと、構築期間中に定期的に相談を受ける定例から選べますので、Agentforce導入・定着支援の無料相談からお気軽にご相談ください。

設計レビューの形は、要件定義書が書き上がっているかと、構築の期間に判断がどれだけ出そうかの2点で選ぶと迷いません。以上が、Salesforceの設計レビュー・アドバイザリーだけを頼む3つの形でした。

業務設計の支援でつまずく3つの落とし穴

前章で頼む形が決まっても、進め方を誤ると、業務設計の成果物が使われないまま終わる場合があります。業務設計は支援会社だけでは完結せず、依頼する側の現場の担当者と決裁者が関わることで初めて成り立つ工程だからです。つまずく場面の多くは、支援会社の力量より、依頼する側の体制に原因があります。そのため、ここで挙げる落とし穴は、支援会社に頼む場合も自社で進める場合も同じように起きる点に注意が必要です。そこでここでは、業務設計の支援でつまずく3つの落とし穴を整理します。

落とし穴①現場の担当者が聞き取りに出てこない

1つ目は「現場の担当者が聞き取りに出てこない」落とし穴です。聞き取りの日程を組んでも、営業担当が商談や出張を優先して欠席し、代わりに上長が答える形で進んでしまいます。

担当者が出てこないと、例外と判断の基準を聞く工程が成り立ちません。上長が答えられるのは標準の流れまでで、担当者が日々処理している例外が出ないまま要件定義が終わります。

産業用部品の専門商社でも、1回目の聞き取りは支援会社が組んだ日程で行ったため、商談と重なった営業担当の一部が欠席し、課長が代わりに答える回がありました。2回目からは聞き取りを週の営業会議の直後に置き、1回の時間を短く区切ったことで、予定した担当者がそろって参加しています。

聞き取りへの参加を営業部長が業務として指示しているかどうかで、この落とし穴に落ちるかどうかが決まります。

落とし穴②決裁者が成果物を見ないまま進む

2つ目は「決裁者が成果物を見ないまま進む」落とし穴です。業務の流れ図や任せる業務の一覧が完成しても、決裁者が中身を確認しないまま構築に進むと、公開の直前に決裁者から方針の変更が入ります。

決裁者が見ないまま進むのは、成果物が分厚いうえに説明の場が無く、資料を渡されただけでは決裁者が読む時間を取れないためです。その結果、構築が進んだ段階で「この承認の条件は自分が考えていたものと違う」という指摘が出て、作り直しが発生します。

そうならないためには、成果物ごとに決裁者の確認の場を30分ほど設け、確認した日付と決裁者の名前を成果物に書き残すとよいでしょう。とくに任せる業務の一覧と承認の決まりは決裁の範囲にかかわるため、確認を省けません。

決裁者の確認の記録が成果物に残っているかどうかを、構築に進む前の条件にしておくと安心です。

落とし穴③成果物が構築の担当に渡らない

3つ目は「成果物が構築の担当に渡らない」落とし穴です。成果物が完成しても、構築の担当に渡されないか、読まれないまま設定が進む場合があります。

この落とし穴は、業務設計と構築を別の会社に頼んだ場合や、構築を自社で行う場合に起きやすくなります。成果物を渡す責任者が決まらず、ファイルの共有だけで引き継ぎを終えたことになるためです。

具体的には、成果物を渡すときに、業務設計の担当が構築の担当へ1時間ほどの説明の場を設け、とくに例外の扱いと承認の条件を口頭で伝える形が有効です。説明の後に構築の担当の質問への回答を成果物に書き足しておけば、構築の途中で同じ質問を繰り返さずに済みます。

成果物を渡す日と説明の場を工程表に入れておくことが、この落とし穴を避ける最も確かな方法です。以上が、業務設計の支援でつまずく3つの落とし穴でした。

業務設計から頼むべき企業の3つの条件

前章で見た落とし穴を避ける体制が整えられるとしても、すべての会社が業務設計から外部に頼む必要があるわけではありません。外部に頼むと、聞き取りや会議の進行を支援会社が担う分、社内の担当者の負担は軽くなる一方で、支援の費用と、支援会社に業務を説明する時間がかかります。外部に頼む費用と時間をかけるだけの理由がある会社かどうかを、先に確かめておきましょう。そこでここでは、業務設計から頼むべき企業の3つの条件を解説します。

条件①Salesforceを入れ直すのが2回目以降である

1つ目は「Salesforceを入れ直すのが2回目以降である」ことです。一度導入して使われなくなったか、項目が増えすぎて使いにくくなった会社が入れ直すなら、業務設計から頼む効果はとくに大きくなります。

2回目以降は前回の設定とデータが残っているため、業務設計をせずに入れ直すと、前回の項目や手順を引き継ぎ、使われなかった原因も持ち込みます。前回を設定から始めた会社なら、なおさら同じ進め方は避けるべきです。

産業用部品の専門商社も、Salesforceを入れ直す2回目の導入にあたります。社内だけで項目を残すか削るかを話し合った段階では、営業と情報システムで判断が分かれ、数か月決めきれずにいました。

前回の導入で作り直しが続いた会社は、この条件に当てはまります。

条件②営業の手順が担当者ごとに違う

2つ目は「営業の手順が担当者ごとに違う」ことです。同じ見積や受注でも担当者によって進め方や記録の仕方が違うなら、業務設計で手順を1つにそろえる工程が要ります。

手順がばらばらのまま設定を進めると、Salesforceには一番多いやり方か、声の大きい担当者のやり方が反映されます。ほかの担当者は合わない画面を避けて表計算ソフトやメールで業務を続け、Salesforceには一部の担当者のデータしか入らなくなります。

具体的には、営業担当に「見積を出すまでに何を確認していますか」と聞き、答えが担当者ごとに違うかを確かめましょう。答えが3通り以上に分かれるようであれば、手順をそろえる判断を社内だけで下すのは難しく、外部の第三者が流れ図を示して議論を進めるほうが合意しやすくなります。

条件③AIエージェントに任せる業務を決めたい

3つ目は「AIエージェントに任せる業務を決めたい」ことです。SalesforceでAgentforceのようなAIエージェントを使う計画があるなら、任せる業務と人が持つ業務を分ける工程が導入の成否を左右します。

AIエージェントは、Salesforceの項目と業務の決まりを参照して動きます。項目の意味が部署ごとに違ったり、承認の条件が書かれていなかったりすると、エージェントは誤った前提で処理を進めます。担当者なら経験で補える曖昧さも、エージェントには補えません。

先ほどの専門商社で見積の下書きを標準品に限って任せる候補にできたのも、特注品の価格は営業担当が判断するという線を、業務の言葉で書き分けてあったからです。この書き分けは、業務の流れと例外を知る担当者と、エージェントの動きを知る担当者がそろわないと進みません。

逆に、AIエージェントの計画がまだ無くても、後から足す可能性があるなら、定義表だけは先に作っておくと入れ直しを避けられます。以上が、業務設計から頼むべき企業の3つの条件でした。

業務設計を自社でできる企業の3つの条件

頼むべき企業の条件を見てきましたが、逆に業務設計を自社で進められる企業もあります。社内に人材と時間があれば、外部に頼む範囲を設計レビューだけに絞るか、頼まずに進める判断も成り立ちます。外部に頼むかどうかは、能力の有無より、体制と時間の確保で決まる面が大きいからです。ここでいう自社で進めるとは、聞き取りから成果物の作成、決裁者の確認までを社内の担当者が受け持つことです。そこでここでは、業務設計を自社でできる企業の3つの条件を整理します。

条件①業務とSalesforceの両方が分かる担当がいる

1つ目は「業務とSalesforceの両方が分かる担当がいる」ことです。営業の業務の流れを理解し、Salesforceで何ができて何が難しいかも判断できる担当者がいれば、業務設計を自社で進められます。

両方が分かる担当が要るのは、業務設計の段階からSalesforceの標準機能で実現しやすい手順を選べると、後の工程が進めやすいからです。業務だけが分かる担当は仕組みに無理のある手順を決め、Salesforceだけが分かる担当は例外を見落とします。

両方が分かる担当者がいれば、聞き取りから定義表までを社内で作り、設計レビューだけを外部に頼む形が選べるうえ、公開後のSalesforceの運用も同じ担当者が担えるため、成果物を直し続ける体制まで社内で持てます。産業用部品の専門商社の情報システムの担当は、Salesforceの設定に詳しくても営業の見積の手順は説明できず、この条件を満たさなかったため業務設計を外部に頼んでいます。

両方が分かる担当者が1人いるかが、自社で進められるかの最初の基準です。

条件②現場の担当者が聞き取りに時間を割ける

2つ目は「現場の担当者が聞き取りに時間を割ける」ことです。業務設計を自社で進める場合も、営業担当や営業事務から例外と判断の基準を聞き出す工程は省けません。

社内の担当者が聞き取りを行う場合、外部の支援会社が行う場合より、現場の担当者が日程を後回しにしやすくなります。同じ社内の依頼であるぶん、商談や顧客対応を優先されやすく、聞き取りが予定どおりに進まないまま要件定義の期限を迎えることがあります。

具体的には、聞き取りの対象者ごとに90分ほどの時間を2回確保できるかを、営業部長と事前に調整しておきましょう。営業の繁忙期を避けて日程を組めるか、聞き取りへの参加を業務として扱えるかを確認できれば、自社で進める条件を満たしていると言えます。

条件③決裁者が設計の会議に出られる

3つ目は「決裁者が設計の会議に出られる」ことです。任せる業務を分ける会議や承認の決まりを決める会議に、営業部長などの決裁者が出席できる会社なら、業務設計を自社で進めやすくなります。

決裁者が会議に出られないと、決めた内容を後から説明して承認を得る形になり、差し戻しのたびに工程が止まります。外部の支援会社なら第三者の立場で決裁者に判断を求める場を作れますが、社内の担当者だけでは作りにくいのが実情です。

たとえば、任せる業務を決める会議を2時間ずつ2回、承認の決まりを決める会議を1回と、決裁者の予定を先に押さえられるかを確かめましょう。予定が取れれば、決裁者の判断をその場で成果物に反映でき、差し戻しが減ります。

業務設計を自社で進められるかは、業務とSalesforceが分かる担当、現場の時間、決裁者の出席の3つがそろうかで決まります。以上が、業務設計を自社でできる企業の3つの条件でした。

業務設計の効果を3つの時点で測る

自社で進めるか外部に頼むかを決めたら、次に決めておきたいのが、業務設計の効果を何で測るかという点です。業務設計の効果は、公開した直後には見えにくく、時間をおいて作り直しの依頼が減ったかどうかで表れます。測る数字は、公開の前と後で同じレポートの条件で取り出さないと、変化があっても比べられないため、取り出し方まで先に決めておくことが前提です。そこでここでは、業務設計の効果を3つの時点で測る方法を、産業用部品の専門商社の数字とともに解説します。

時点①設計を終えた時|決まっていない例外の件数

最初に測るのは、業務設計を終えた時点で、扱いが決まっていない例外の件数です。聞き取りで集めた例外のうち、判断者か基準が決まっていないものを数えます。

この時点で測るのは、決まっていない例外が構築に持ち込まれると、公開後の作り直しの原因になるからです。件数はゼロにならなくても、残った例外に「公開後に決める」と期限を付けておけば、構築の担当が推測で設定することは防げます。

産業用部品の専門商社の営業部長が当初掲げた目的は、「Agentforceを入れる前に、営業が毎日使う項目と手順を決め直したい」でした。聞き取りで集まった30件ほどの例外のうち、設計を終えた時点で扱いが決まっていなかったのは数件にとどまり、いずれも営業部長が判断者として期限を付けて引き取っています。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

設計を終えた時点の例外の件数は、構築に進んでよいかの基準になります。

時点②公開から1か月|空欄のまま残る項目の割合

公開から1か月がたったら、次に測るのは空欄のまま残る項目の割合です。入力が必須でない項目のうち、商談や取引先の記録で空欄のまま残っている項目がどれだけあるかを、Salesforceのレポートで取り出します。

空欄の割合を測るのは、項目の定義表で決めた「誰が、どの段階で入力するか」が、現場で守られているかを確かめるためです。空欄が多い項目は、入力する人が分かっていないか、入力する段階で画面に出ていないかのどちらかで、業務設計と画面の要件のどちらを直すかが分かります。

この専門商社では、導入から4年がたった時点で、項目の半分以上が空欄のまま残っていました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。項目を90ほどに絞り、段階ごとに画面を並べ替えて公開したところ、1か月後に空欄のまま残る項目の割合は1割ほどまで下がっています。

時点③公開から3か月|設定の作り直しの依頼件数

最後に測るのは、公開から3か月の時点での、設定の作り直しの依頼件数です。情報システムの担当に届いた項目の追加や画面の変更、承認の流れの組み直しの依頼を月ごとに数えます。

3か月の時点で測るのは、公開直後の依頼には操作に慣れていないための問い合わせが混じり、業務設計の不足による作り直しと区別しにくいからです。3か月たつと、残る依頼の多くは業務の決まりと設定のずれによるものになります。

産業用部品の専門商社では、前回の導入の後、作り直しの依頼が月に十数件届いていました。業務設計からやり直した今回は、公開から3か月の時点で依頼は月に数件まで減り、その多くは設計を終えた時点で期限を付けて残した例外に関するものでした。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

公開から3か月の作り直しの依頼件数は、設計を終えた時点で残した例外の件数と見比べると、業務設計の不足によるものかを切り分けられます。以上が、業務設計の効果を測る3つの時点でした。

見積もり3項目|業務設計の支援で確かめること

前章で効果の測り方が決まったら、最後は業務設計の支援の見積もりです。業務設計の支援は、設定の作業と違って作業量を画面の数や項目の数で数えにくく、同じ「要件定義」という名前の見積もりでも、含まれる範囲が支援会社によって大きく異なるため、金額の大小を比べる前に、何が含まれているかをそろえて読む必要があります。本記事で金額の相場を扱わず、見積もりに書かれた中身の読み方だけを取り上げるのも、そのためです。そこでここでは、業務設計の支援の見積もりで確かめる3つの項目を解説します。

項目①聞き取りの対象と回数

1つ目は「聞き取りの対象と回数」です。見積もりに、誰に何回聞き取りを行うかが書かれているかを確かめます。営業部長だけか、営業担当や営業事務まで含むか、1人あたり何回かで、業務設計の深さが変わります。

聞き取りの対象と回数が書かれていない見積もりは、金額が小さく見えても例外を聞き出す工程が含まれていないことがあり、構築に入ってから例外が見つかれば、追加の費用や作り直しが発生します。

産業用部品の専門商社が見積もりを比べたときも、ある見積もりには「現状業務の確認」とだけ書かれていました。営業担当6名と営業事務2名に各2回の聞き取りを含めるよう条件をそろえて出し直してもらったところ、見積もりの範囲と工程表がほかの見積もりと同じ条件で並び、比べられるようになっています。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

逆に、回数まで書かれていても対象が管理職だけなら、例外を聞き出す工程は含まれていないと読みましょう。

項目②成果物の種類と渡し方

2つ目は「成果物の種類と渡し方」です。業務の流れ図、任せる業務の一覧、項目の定義表、権限と承認の決まり、効果を測る指標のうち、どれが納められ、どの形式で渡されるのかを確かめます。

成果物の種類を確かめるのは、支援が打ち合わせの議事録だけで終わる場合があるからです。議事録は、構築の担当がそのまま使える形にはなっていません。成果物の形式と、誰にどう説明して渡すかまで決まっていれば、落とし穴として挙げた「成果物が構築の担当に渡らない」状態も防げます。

この専門商社では、見積もりの段階で5つの成果物を一覧にして各社に示し、それぞれが含まれるかどうかと、渡す形式が編集できるファイルかどうかを回答してもらいました。支援が終わった後に社内で直し続けるには、編集できる形式で受け取る必要があったからです。

一方で、成果物がPDFのような編集できない形式で渡されると、業務の手順が変わるたびに支援会社へ直しを頼むことになります。

項目③構築に進まなかったときの扱い

3つ目は「構築に進まなかったときの扱い」です。業務設計の後に構築を別の会社に頼むか自社で進めると決めた場合、成果物の扱いや費用がどうなるかを見積もりの段階で確かめておきます。

この項目を確かめるのは、業務設計と構築をまとめて見積もる支援会社の中に、構築まで頼むことを前提に業務設計の費用を低く設定している場合があるからです。その場合、構築を頼まないと成果物を渡してもらえなかったり、追加の費用がかかったりします。

たとえば、見積もりの段階で「業務設計だけで契約を終えた場合、成果物はすべて受け取れるか」「成果物を別の会社に渡して構築を頼んでもよいか」の2点を質問しておきましょう。この2点に明確に答える支援会社なら、業務設計の結果を見てから構築の頼み先を決める判断ができます。

以上が、業務設計の支援の見積もりで確かめる3つの項目でした。

【一問一答】業務設計から頼むSalesforce導入支援に関するよくある質問

ここまで、業務設計から頼むと残る成果物から、要件定義の段階、工程、支援会社の見極め方、効果の測り方、見積もりの確かめ方までを整理してきました。実際に相談を始める前には、期間や現場の負担、構築との分け方といった疑問が残ることもあるでしょう。なかでも期間と現場の負担は、社内で稟議を通すときに決裁者から聞かれやすい点です。最後に、業務設計から頼むSalesforce導入支援について、よく聞かれる質問を6つにまとめます。

質問①業務設計から頼むとSalesforce導入の期間は延びますか?

設定を始めるまでの期間は延びますが、業務設計に時間をかけるほど構築の途中での作り直しが減るため、公開までの全体の期間が大きく延びるとは限りません。当社のAgentforce導入・定着支援のサービスページの導入フローでは、キックオフと要求定義を4週間ほど、構築を2週間のスプリントで3〜4回とし、要求定義から本番公開までをおよそ3か月としています。

質問②Salesforceの要件定義だけ頼んで構築は自社でできますか?

できます。業務の流れ図や項目の定義表といった成果物を受け取れば、社内の担当者が構築を進められます。その場合は、構築の期間中に定例で相談する形や、構築を終えた後に設計を点検してもらう形を組み合わせると安心です。この記事の例に挙げた専門商社も、成果物を編集できる形式で受け取ることを見積もりの条件にしていました。

質問③業務設計の支援では現場の担当者に何時間かかりますか?

聞き取りの対象者ごとに、90分ほどの聞き取りを2回、合計3時間ほどが目安になります。この記事の例では、営業担当6名と営業事務2名に聞き取りを行い、そのうえで任せる業務を決める会議を2時間ずつ2回開きました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。聞き取りを営業の会議の直後に置くと、日程を確保しやすくなります。

質問④業務要件定義とシステム要件定義は何が違いますか?

業務要件定義は業務の側から見て仕組みに求める条件を業務の言葉で書く作業で、システム要件定義はその条件をSalesforceの設定と開発の中身に置き換える作業です。業務要件は営業部長や現場の担当者が読んで判断し、システム要件は構築の担当が使います。この記事の例でも、どの段階でも使われない項目を外す判断は業務要件の段階で下しました。

質問⑤Agentforceを入れる場合も業務設計から頼むべきですか?

Agentforceを入れる場合こそ、業務設計から頼む意味があります。AIエージェントは項目の意味と業務の決まりを参照して動き、それらが曖昧なままでは誤った前提で処理を進めるからです。この記事の例の専門商社も、候補を見積の下書きと納品後の連絡に絞ってからAgentforceの料金の検討に進みました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。

質問⑥業務設計の成果物は支援が終わった後に誰が直しますか?

支援が終わった後は、社内のSalesforceの管理者か、業務とSalesforceの両方が分かる担当者が直していくのが基本です。業務の手順や承認の条件が変わるたびに、流れ図と定義表を先に直してから設定を変える順番を決めておくと、作り直しの依頼が積み上がるのを防げます。この記事の例では、情報システムの担当が成果物の管理を引き継ぎました。

Salesforce導入の要件定義は、業務設計から頼むと作り直しが減る

Salesforce導入の作り直しは、設定の技術が足りないことより、設定の前に業務を決めていないことから生まれます。本記事では、業務設計から頼むと残る5つの成果物、作り直しになる3つの理由、業務設計と要件定義の違い、5つの工程、支援会社の見極め方、設計レビュー・アドバイザリーだけを頼む形、つまずく落とし穴、頼むべき企業と自社でできる企業の条件、効果の測り方、見積もりの確かめ方までを整理してきました。

業務設計から頼むかどうかを決めるときは、手元に残る成果物と、現場の担当者や決裁者がどこまで関われるかを先に確かめておくことが大切です。そのうえで、外部に頼む範囲を業務設計から構築までとするか、設計レビューだけに絞るかを選べば、自社の体制に合った進め方を決められます。

本記事で紹介した考え方を、ぜひ自社の状況に合わせて実践し、少しでもお役に立てれば幸いです。

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