Salesforceの運用保守とは、導入が終わったあとも毎月発生する、設定の変更・データの整備・現場からの問い合わせ対応をまとめた作業のことです。自社の運用体制を決める立場で調べていると、支援会社のサービス紹介と求人情報ばかりが並び、そもそも何の作業が含まれるのかが分からないまま比較に入ってしまうのではないでしょうか。Agentforceを足すかどうかを考えている段階なら、なおさら先に整理しておきたいところです。
Salesforceの運用保守でつまずくのは、作業の量ではなく、どの作業を誰が持つかを決めていない状態です。作業を6つに分けて並べるとSalesforceのサポートに含まれる範囲と自社か外部が持つ範囲が分かれ、持ち主さえ決まれば、依頼が1人に集まる状態は解けます。
そこで本記事では、Salesforceの運用保守に含まれる作業の内訳から、自社で持つ範囲の分け方、外に出すときの契約の形、そしてAgentforceを足すと増える作業までを解説します。なお、サポートの区分と料率は変わりやすいため、本記事に書いたのは2026年9月時点で確認できた範囲です。
当社はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、 ソリューション営業に特化したAgentforce導入・定着支援を 行っています。
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この記事を書いた人
合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援と、Agentic CRM設計支援を提供している。Salesforce認定アドミニストレーター・Sales Cloudコンサルタント・Marketing Cloud Account Engagement スペシャリスト。
Salesforceの運用保守に含まれる6つの作業
産業用フィルターのメーカーでは、従業員330名のうち営業が16名、カスタマーサービスが8名、情報システムが3名という体制で、Sales Cloudを6年使ってきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。設定変更の依頼は情報システムの1名に集まり、その担当が他システムと兼務のため、依頼から反映まで平均3週間かかっています。そこでここでは、この会社を例に、Salesforceの運用保守に含まれる作業を6つに分けて整理します。
依頼が滞っているのは、担当者の処理の速さの問題ではありません。Salesforceの運用保守は、発生する頻度も必要な知識も違う6つの作業を、1つの名前でまとめたものです。
| 作業 | 発生の頻度 | 必要な知識 |
|---|---|---|
| ①ユーザーと権限 | 入退社のたび | 設定の操作 |
| ②項目とレイアウト | 月に数回 | 業務と設定 |
| ③レポート | 四半期ごと | 業務の指標 |
| ④定期アップデート | 定期的 | 影響範囲の判断 |
| ⑤データの整備 | 常時 | 業務の知識 |
| ⑥問い合わせ対応 | 毎日 | 使い方の知識 |
作業①ユーザーと権限の棚卸
1つ目は「ユーザーと権限の棚卸」で、入社と退職のたびにアカウントを作って見える範囲を設定し、異動があれば権限を付け替える作業にあたります。
ユーザーと権限の棚卸は、1件ごとの作業量よりも、放置した期間の長さで重くなります。1回ごとの手間は小さくても、放置が続くと誰が何を見られるのかを説明できなくなるためです。退職者のアカウントが残ったままだとライセンスの費用がかかり続け、権限の付け替えを飛ばせば、異動した担当者が前の部署のデータを見られる状態が残るため、年に一度は全件を見直す必要があるでしょう。
産業用フィルターのメーカーでは、この棚卸を人事の異動が集中する時期にまとめて行っており、情報システムの担当が対象の一覧を出すところから着手していました。ところが一覧を出すだけで数日かかり、見直しの作業が翌月へずれ込んでいたのです。
棚卸の周期は入退社の件数から決めるものとして、月に数件ある会社であれば四半期に一度を目安にしましょう。
作業②項目とレイアウトの追加
2つ目に挙げるのは項目とレイアウトの追加で、営業から「この情報も記録したい」と依頼が来るたびに入力欄を足し、画面の並びを調整していく作業にあたります。
この作業が運用保守の中心になるのは、依頼の数がもっとも多く、判断が要るからです。入力欄を1つ足す操作は数分で終わりますが、足してよい項目かどうかは業務を知らないと決められません。依頼のまま足し続けると入力欄だけが増え、現場の担当者が使わない項目が画面に並びます。
このメーカーには月に14件の依頼が来ており、そのすべてを兼務の担当が受けていました。6年のあいだに使われていない項目が38個まで増え、営業の半数が入力を後回しにしていたのは、依頼を断る基準を持っていなかったためです。
足す基準は依頼を受ける前に決め、誰がその項目を見るのかを書けないものは保留にしましょう。
作業③レポートとダッシュボードの手入れ
3つ目は「レポートとダッシュボードの手入れ」で、営業の会議で使う集計を作るところから、見なくなったものを畳むところまでが含まれます。
レポートは、作った人だけが中身を把握している状態になりやすい対象です。作成した担当が異動すると、誰も内容を説明できない集計が残り、数字が合わないという指摘が出たときに、どの条件で絞っているのかをたどれず、作り直すしかなくなります。
産業用フィルターのメーカーでは、四半期に一度、会議で実際に開いたレポートだけを残す形にし、開いていないものは使わない置き場へ移しています。削除せずに移したのは、年に一度しか使わない集計が混ざっていたためです。
レポートは作った人と見る人を記録し、その2つが空欄のものから畳む候補に入れましょう。
作業④定期アップデートへの対応
4つ目は定期アップデートへの対応で、Salesforceは定期的に機能が更新されるため、自社の設定に影響が出ないかを事前に確かめておく作業にあたります。
アップデートへの対応は、6つの作業のなかで唯一、自社の都合と関係なく期日が決まります。更新が自動で適用され、使っている機能の動きが変わる場合があるためです。気づかないまま本番で不具合が出ると、原因を探すところから始めることになります。更新の内容を読み、影響しそうな設定をサンドボックスで試しておけば、当日に慌てずに済むでしょう。
このメーカーでは、担当が他システムと兼務で更新の内容を読む時間を取れず、この作業が毎回空いていました。実際に商談の画面で使っていた入力規則が動かなくなり、営業から報告が来て初めて気づいた回もあります。
更新の内容を読む時間は、リリースが適用される前月のうちに確保しましょう。影響の確認まで含めると、対象の設定が多い会社では数日分の余裕が要ります。
作業⑤重複と欠けたデータの整備
5つ目は重複と欠けたデータの整備で、同じ取引先が二重に登録されていないか、必要な欄が空のまま残っていないかを点検します。
データの整備は、6つのなかでもっとも後回しにされやすい作業にあたります。重複があっても日々の業務は進んでしまい、緊急性が低く見えるためです。点検はいつでもできるものとして、順番が繰り下がっていきます。ところが集計を出す段になると、同じ会社が2件に分かれて売上が割れ、数字が合わなくなります。Agentforceに読ませる場面ではさらに影響が出て、参照するデータが二重であれば回答も二重に返ってくるでしょう。
産業用フィルターのメーカーでは、取引先の重複を年に一度だけ点検しており、営業がそれぞれの判断で登録していたため、同じ会社が別の表記で残っている例が出ていました。
点検の周期は業務の締めに合わせ、四半期の集計を出す前に見ておくと、数字の食い違いを先に見つけられます。
作業⑥現場からの問い合わせの一次対応
6つ目は現場からの問い合わせの一次対応で、使い方が分からない、画面が出ないといった連絡を受けて答える作業にあたります。
この作業が負担になるのは、件数が読めず、いつ来るか分からないためです。1件あたりは数分で終わる質問でも、集中する日には他の作業が進みません。同じ質問が繰り返し来るようなら、答えを残して現場の担当者が自分で探せる形にする必要があります。
具体例でいうと、このメーカーでは問い合わせが情報システムの担当へ直接届いていました。窓口を決めていなかったためで、担当が席を外していると答えが返らず、営業が入力を諦める場面も出ています。
問い合わせの受け口は、担当者個人ではなく部門の窓口へ集める形に決めましょう。
以上が、Salesforceの運用保守に含まれる6つの作業でした。
どこまで見てもらえる?Salesforceのサクセスプラン3種
6つの作業を並べたところで、次に気になるのは、このうちどこまでをSalesforce自身が見てくれるのかという点でしょう。ライセンスを契約していれば問い合わせ先はすでにありますが、答えてもらえる範囲を確かめないまま運用に入ると、聞ける相手がいると思っていた作業が実は自社に残っていた、という状態になります。そこでここでは、Salesforceのサポートの区分を3つに分けて整理します。
Salesforceのサクセスプランが見るのは製品の動きまでで、自社の設定をどう組むかは範囲の外です。
| プラン | 費用 | 主な範囲 |
|---|---|---|
| ①Standard | ライセンスに付属 | 資料と学習環境 |
| ②Premier | ライセンス料の30% | 専門家の助言と24時間対応 |
| ③Signature | 要問い合わせ | 専任担当と監視 |
プラン①全ライセンスに付くStandard
1つ目は「Standard Success Plan」です。すべてのライセンスに自動的に含まれており、ナレッジ記事や各種ドキュメント、Trailheadの学習環境を使えます。
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このプランの位置づけを理解しておきたいのは、追加の費用がかからない代わりに、調べるのは自社という前提だからです。資料と学習環境は用意されていますが、自社の設定を見て助言する形ではありません。操作の方法は資料で分かっても、自社の業務に合わせてどう組むかは、読む側が決めることになります。
産業用フィルターのメーカーも、6年のあいだこのプランのまま運用してきました。情報システムの担当が資料を読んで設定していたため、調べる時間がそのまま作業時間に乗っていたことになります。
Standardのままで進めるなら、資料を読んで調べる時間まで工数に数えましょう。学習環境が無料でも、担当者が読む時間まで無料になるわけではありません。
プラン②ライセンス料の30%で付くPremier
2つ目に挙げるのは「Premier Success Plan」です。エキスパートによる助言と製品のトレーニングが付き、ビジネスの停止につながる問題には24時間365日の体制で対応し、費用はライセンス料の30%になります。
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この費用をどう見るかは、Salesforceが止まったときに受ける影響の大きさで決まります。ライセンスの契約数が多いほど、30%の料率で計算される金額も大きくなります。一方で、受注の処理がSalesforceの上で完結している会社にとって、半日止まることの損害は別の桁になるでしょう。製品側の不具合で止まる可能性をどう見積もるかが、判断の分かれ目にあたります。
産業用フィルターのメーカーが検討したときの論点も、まさにここでした。営業が使う商談の管理は止まっても翌日に取り戻せる一方、カスタマーサービス8名が使う問い合わせの管理が止まると、顧客への回答が当日中にできなくなります。
当日中に止まってしまう業務がいくつあるかを先に数えましょう。1つでもあるなら、ライセンス料の30%は保険として読める金額です。
プラン③専任の担当が付くSignature
3つ目は「Signature Success Plan」です。専任のカスタマーサクセスマネージャーが付き、監視と主要なイベントの管理を受けられます。ビジネスを停滞させる重要な問題にはSalesforceが15分以内に応答し、料金は営業担当への確認が必要です。
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このプランが向くのは、Salesforceの停止が事業の停止に直結する規模の会社です。専任の担当が付くため、問い合わせのたびに状況を説明し直す手間がなくなります。ただし料金が公開されていないことからも分かるとおり、規模に応じた個別の契約にあたるため、中堅企業が最初に検討する選択肢にはなりにくいでしょう。
産業用フィルターのメーカーでは、このプランを検討の対象から外しています。従業員330名の規模で、Salesforceの停止が即座に売上へ響く業務構成ではなかったためです。
専任の担当が要る規模かどうかを先に判断し、要らないと決められれば、比較の時間を他のプランへ回しましょう。
以上が、Salesforceのサクセスプラン3種でした。
サクセスプランでは埋まらない3つのすき間
サポートの区分を確かめると、Salesforceが見るのは製品の動きまでだと分かります。ここから先に必要なのは、プランに入っても自社に残る作業を名指しすることです。残る作業を把握しないまま「サポートに入ったから大丈夫」と考えると、依頼が来たときに受ける人がいない状態になります。そこでここでは、サクセスプランでは埋まらないすき間を3つ整理します。
サポートに入っても、自社の業務に合わせて何をどう設定するかを決める作業は残ります。
| すき間 | 誰が持つか | 必要なもの |
|---|---|---|
| ①設定変更 | 自社か外部 | 業務の知識 |
| ②使い方の質問 | 自社 | 現場との距離 |
| ③データの点検 | 自社 | 業務の判断 |
すき間①自社の業務に合わせた設定変更
1つ目のすき間は自社の業務に合わせた設定変更で、項目を足す、入力規則を作る、承認の流れを組むといった作業がここに入ります。
この作業が残るのは、何を設定するかが自社の業務で決まるからです。製品の機能として何ができるかはサポートに聞けますが、自社の商談の進め方に合わせてどの項目を必須にするかは、業務を知っている人にしか決められません。操作の方法を聞けても、決めるのは自社という線引きになります。
産業用フィルターのメーカーで詰まっていたのは、操作の方法ではありません。足してよい項目かどうかを判断する工程で、その判断ができる担当が1名しかいなかったため、依頼から反映まで3週間かかっていました。
依頼を判断が要るものと操作だけのものに分けると、それぞれ別の持ち主へ渡せるようになります。
すき間②現場の担当者からの使い方の質問
2つ目は現場の担当者からの使い方の質問で、入力の場所が分からない、画面に項目が出ないといった連絡がここに入ります。
この種の質問の答えは、製品の仕様ではなく自社の運用の取り決めで決まります。「この項目はどんなときに入れるのか」と聞かれても、Salesforceの側では答えようがないため、社内の誰かが答えることになります。担当者が代わっても答えが変わらないよう、取り決めを文書に残しておく必要があるでしょう。
産業用フィルターのメーカーでは、この種の質問が情報システムの担当へ直接届いていました。営業から日に数件が個別に来るため、設定の作業が中断されます。同じ質問が繰り返し来ていたことも、後から一覧にして分かりました。
繰り返し来る質問を数えて、上位の3つを文書にするだけでも、問い合わせの件数は目に見えて減ります。
すき間③入力されたデータの中身の点検
3つ目のすき間は入力されたデータの中身の点検で、取引先の重複、空欄のまま残った項目、実態と合わない商談の状態などを見ていきます。
点検が自社に残るのは、正しいかどうかを業務で判断するしかないためです。同じ社名が2件あるとき、それが別の事業所なのか二重登録なのかは、担当者に確認しないと分かりません。データの形式が正しいかどうかは機械で見られますが、中身が実態と合っているかは業務の知識が要ります。
産業用フィルターのメーカーで実際に判断へ迷ったのは、同じ社名が2件あり、片方が支店として登録されていた例で、登録した営業に確認して初めて二重登録だと分かっています。
点検の対象は集計に使う項目だけに絞り、そこから広げていきましょう。対象を絞らずに始めようとすると、点検は着手したまま止まります。
以上が、サクセスプランでは埋まらない3つのすき間でした。
自社で持つか外に出すかを分ける4つの判断軸
ここまでサクセスプランでは埋まらないすき間を整理してきましたが、残った作業を自社で持つのか外に出すのかという判断が、ここから始まります。作業をまとめて「運用保守」と呼んだまま委託先を探すと、どの会社の見積にも違う範囲が入り、金額を並べても比べられません。作業ごとに持ち主を決めておくほうが、結果として費用も読めるようになります。そこでここでは、Salesforceの運用保守を自社と外部に分ける判断軸を4つ整理します。
持ち主を分ける基準は作業の難しさではなく、毎月出るかどうかと、業務の知識が要るかどうかです。
| 判断軸 | 当てはまる場合 | 持ち主 |
|---|---|---|
| ①毎月発生するか | する | 自社に置く候補 |
| ②止まると業務が止まるか | 止まる | 二重に持つ |
| ③引き取れる担当がいるか | いない | 外に出す候補 |
| ④業務の知識が要るか | 要る | 自社に残す |
判断軸①作業が毎月発生するか
最初に見るのは、その作業が毎月発生するかどうかです。毎月出る作業は自社に置く候補になり、年に数回しか出ない作業は外に出す候補になります。
頻度で分けるのは、外部へ出す作業には毎回の説明がかかるためです。月に何度も出る作業を都度依頼すると、依頼の文面を書く時間と、状況を説明する時間が積み上がります。逆に年に一度の棚卸のような作業は、手順が固まっていれば外へ出しても説明の負担が小さく済みます。
産業用フィルターのメーカーでは、件数の多い項目の追加を自社に残し、年に一度のユーザーと権限の棚卸を外へ出す形を検討しました。件数が多い作業ほど、自社で手を動かせる形にしたほうが速いと判断しています。
1か月分の作業を数えて頻度の順に並べ、上位の作業から持ち主を決めましょう。
判断軸②止まったときに業務が止まるか
次に見るのは、その作業が止まったときに業務まで止まるかどうかで、止まる作業は担当が1人にならない形で持ちます。
ここを見るのは、Salesforceの運用保守の事故が、担当者の不在によって起きるためです。設定変更が数日遅れても業務は進みますが、ユーザーのアカウントを作れないと新入社員が初日から仕事を始められません。止まる作業は、社内の2人目を決めるか、外部に受け口を用意しておくことになります。
産業用フィルターのメーカーで実際に止まったのは、定期アップデートへの対応でした。担当が繁忙期に読む時間を取れず、商談の画面の入力規則が動かなくなっています。営業からの報告で気づいたため、原因を探すところから始めることになりました。
止まると困る作業を先に選びましょう。数は多くないはずなので、選んだ作業だけを二重に持てば足ります。
判断軸③社内に引き取れる担当がいるか
3つ目に見るのは、社内にその作業を引き取れる担当がいるかどうかで、いない作業は外に出す候補になります。
この軸が必要なのは、持つと決めても人がいなければ回らないからです。情報システムが兼務の会社では、Salesforceに割ける時間が月に数十時間しかない場合があり、その枠を超える作業を自社に置けば、依頼が滞る状態に戻ります。引き取れるかどうかは、意欲より時間で判断する項目にあたります。
産業用フィルターのメーカーでは、情報システムの担当がいずれも他システムと兼務でした。Salesforceに割ける時間を合計したところ、月14件の依頼をさばく時間は確保できても、アップデートの確認まで含めると足りないという結果になっています。
Salesforceに割ける時間を先に数え、足りない分に当たる作業から外に出す候補へ入れましょう。決める人・直す人・止める人をどう分けるかは、AIの運用の役割分担で整理しています。
判断軸④判断に業務の知識が要るか
最後に見るのは、その作業の判断に業務の知識が要るかどうかで、要る作業は自社に残し、手順が決まっている作業を外に出します。
業務の知識で線を引くのは、外部に出しても判断だけは自社に戻ってくるためです。項目を足してよいかどうか、この商談の状態は実態と合っているか、といった判断は、自社の業務を知らないと決められません。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、この判断の部分まで一緒に見てもらえる相手を探すことになります。
産業用フィルターのメーカーで内訳を数え直すと、月14件の依頼のうち業務の判断が要るものが9件、操作だけで済むものが5件でした。操作だけの5件を外に出し、判断の9件は自社に残す形で整理しています。
迷ったときは、その作業を外部の担当者だけで完了まで進められるかを考えましょう。途中で自社に確認が戻る作業は、業務の知識が要る側に入ります。
以上が、自社で持つか外に出すかを分ける4つの判断軸でした。
運用保守が止まる3つの症状
判断軸を決めても、日々の運用では気づかないうちに作業の片寄りが起きるものです。止まりかけているSalesforceの運用保守には共通の見え方があり、先に知っておけば、担当者の予定が埋まりきる前の段階で手を打てます。症状として現れるのは、依頼が1人に集まる状態・使われない項目が増える状態・更新の対応が空く状態の3つで、どれも月末の締めに間に合わない原因になりかねません。そこでここでは、Salesforceの運用保守が止まるときに出る症状を3つ整理します。
症状①設定変更の依頼が1人に集まる
1つ目の症状は、設定変更の依頼が特定の1人に集まっている状態で、窓口を決めていない会社で起きます。
依頼が1人に集まるのは、詳しい人へ直接聞くのがもっとも速いためです。現場から見れば合理的な行動ですが、受ける側には順番待ちができます。その人が休んだ日は依頼が止まり、戻った日にまとめて処理することになるため、反映までの日数が読めなくなります。
産業用フィルターのメーカーでは、情報システムの担当1名にすべての依頼が届いていました。依頼から反映まで平均3週間かかっており、営業からは「頼んでも当分入らない」と受け止められ、頼むこと自体をやめる担当者も出ていました。
依頼の受け口を、個人ではなく部門へ変えましょう。誰がいつ受けたかを記録に残すところから始めれば、順番待ちの長さも見えてきます。
症状②使われていない項目が増え続ける
2つ目に挙げるのは、使われていない項目が増え続けている状態で、依頼を断る基準がない会社で起きます。
項目が増えるのは、足すことに費用がかからないように見えるためで、1つ足すだけなら数分の作業にしかならず、断る理由も見つかりません。ところが入力欄が増えるほど現場の担当者の入力は重くなり、使わない項目が並んだ画面を前に、入力が後回しにされます。足した項目を数える習慣がないため、増えていることに気づくのは、入力画面が縦に長くなってからでしょう。
このメーカーでは6年で使われていない項目が38個まで増え、営業の半数が入力を後回しにしていました。棚卸で残したのは21個で、残る17個は画面から外しています。
四半期に一度、入力率の低い項目を一覧に出し、外すかどうかは足した経緯を依頼者に確かめてから決めましょう。
症状③担当の異動でアップデート対応が空く
3つ目の症状は、担当の異動や繁忙期でアップデートへの対応が空く状態で、属人的な運用の会社で起きます。
対応が空くのは、この作業に締め切りが無いように見えるためです。更新は自動で適用されるため、確認しなくても当日は何も起きません。影響が出るのは後日で、しかも別の原因に見える形で出てくるうえ、担当が代わると、この作業の存在自体が引き継がれないこともあります。
産業用フィルターのメーカーでは、繁忙期と更新の時期が重なった回に確認が飛んでいました。商談の画面の入力規則が動かなくなり、営業からの報告で気づいています。
更新の確認は、担当者の予定表へ先に入れておきましょう。作業として置かないかぎり、この対応は毎回後回しになります。
以上が、Salesforceの運用保守が止まる3つの症状でした。
外に出すときに選ぶ3つの契約の形
ここまで挙げた症状が出ている作業を外に出すと決めたら、次に決めるのは契約の形です。同じように「Salesforceの運用保守を頼みたい」と伝えても、買い方によって費用の読み方も頼める内容も変わり、途中で追加の見積が必要になるかどうかも変わります。形を決めないまま声をかけると、金額だけが並んで比べられません。そこでここでは、外部へ委託するときの契約の形を3つ整理します。
契約の形で変わるのは金額ではなく、依頼できる内容と、依頼のたびにかかる説明の手間です。
| 契約の形 | 買うもの | 向いている作業 |
|---|---|---|
| ①時間で買う | 月あたりの工数 | 件数が読めない作業 |
| ②件数で買う | 作業1件ごと | 手順が決まった作業 |
| ③窓口を置く | 相談できる関係 | 判断が要る作業 |
契約①時間で買う形
1つ目は月あたりの工数を買う形で、月に何時間という枠を決めておき、その範囲で作業を依頼していきます。
この形が合うのは、月ごとの件数が読めず、見積を先に立てられない作業です。項目の追加もデータの点検も同じ枠から使えるため、依頼のたびに見積を取り直す手間がありません。一方で、使い切れなかった時間を繰り越せるかどうかは契約によって変わるため、確かめておく必要があります。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合も、この形が選択肢になるでしょう。
産業用フィルターのメーカーが最初に検討したのも、この形でした。操作だけで済む依頼を外に出すと、必要な時間が読みやすかったためです。
繰り越しの可否と、枠を超えたときの扱いを先に聞きましょう。同じ単価が提示されていても、その2点で実質の費用は変わります。
契約②作業の件数で買う形
2つ目に挙げるのは作業1件ごとに買う形で、項目の追加1件、レポートの作成1件といった単位で費用が決まります。
この形が向くのは、手順が決まっていて、依頼の内容を短く書ける作業です。件数が少ない月は費用が下がるため、発生が読めない作業には有利に働きます。ただし1件あたりの定義があいまいだと、どこまでが1件なのかで認識がずれます。
産業用フィルターのメーカーでは、年に一度のユーザーと権限の棚卸をこの形で出す案を検討しました。手順が決まっているうえ、依頼の文面も毎年同じで済むためです。見積を依頼する前には、棚卸の手順書をそのまま渡せるかどうかを確かめています。
1件の範囲は、具体的な作業で例示してもらいましょう。言葉の定義を読み合わせるより、実際の作業で示してもらうほうがずれません。
契約③相談できる窓口を置く形
3つ目は作業の代行ではない、相談できる関係を買う形で、月に1回の定例を置き、判断に迷う場面で聞ける相手を確保します。
この形を選ぶのは、手を動かす作業より判断のほうが詰まっている場合です。項目を足してよいかどうか、この運用は続けてよいのかといった問いは、作業を単位にした契約では受けてもらえません。定着まで伴走してほしい場合は、この形を軸にして、作業の契約を足していく組み方になります。自社に判断できる担当を置く前提なら、期間を区切って契約する形も取れるでしょう。
このメーカーでは、判断が要る依頼を自社に残す前提で、迷ったときに聞ける窓口を置く形を選びました。作業を全部出すより費用が抑えられ、判断の基準が社内に残るためです。
定例の頻度と、そこで何を決めるのかを先に書き出しましょう。議題が無いまま置くと、定例は近況の報告を聞くだけの場になります。
なお、支援先を探す段階であれば、支援会社の選び方をタイプ別に整理した記事も判断の材料になります。
以上が、外に出すときに選ぶ3つの契約の形でした。
Agentforceを足すと増える3つの作業
ここまでは、いまのSalesforceを維持する作業を整理してきました。ここにAgentforceを足すと、作業は置き換わるのではなく増えていきます。増える分を見積もらずに導入を決めてしまうと、Salesforceの運用保守が止まっている状態のまま、AIの運用まで抱えることになりかねません。そこでここでは、Agentforceを足したときに増える作業を3つ整理します。
Agentforceを足すと運用保守は減らず、回答の点検・データの手入れ・使われ方の確認が新しく増えます。
| 増える作業 | 頻度 | 持ち主の候補 |
|---|---|---|
| ①回答の点検 | 毎週 | 業務の担当 |
| ②データの手入れ | 常時 | 自社 |
| ③使われ方の確認 | 月次 | 業務の担当 |
増える作業①任せた業務の回答の点検
1つ目は任せた業務の回答を点検する作業で、エージェントが返した内容が業務として正しいかを、人が見て確かめます。
回答の点検は、導入した初期にもっとも時間を取られる作業になります。回答が業務として正しいかを判断できるのは、自社の業務を知っている人だけだからです。回答が日本語として自然でも、自社の取引条件と合っていなければ使えません。導入した直後は全件を見て、誤りの出る場面が絞れてきたら対象を減らしていく進め方になります。
産業用フィルターのメーカーでは、カスタマーサービス8名が受ける問い合わせの一次回答から試す案を検討しました。件数が読めるうえ、誤りが出ても顧客へ届く前に社内で止められるためです。
点検する人と頻度は、導入を決める前に置いておきましょう。点検の担当が空欄のまま始めると、公開した日から誰も見ない状態になります。
増える作業②参照するデータの手入れ
2つ目に挙げるのはエージェントが参照するデータの手入れで、取引先の重複や古い記録は、手を入れないかぎりそのまま回答に出ます。
手入れの重みが増すのは、人が読むときには無視できた粗さが、AIの回答では表に出るためです。同じ会社が2件に分かれていれば、どちらを参照したかで回答が変わります。人が画面を見るときは「こっちが正しい」と読み替えられますが、エージェントは読み替えません。
このメーカーでは、営業がそれぞれ登録した取引先に重複が残っていました。Agentforceを足すなら、参照する範囲のデータだけでも先に整える必要があります。
参照させる範囲を先に決め、その範囲だけを点検の対象にしましょう。すべてを整えてから始めようとすると、いつまでも始まりません。
増える作業③使われ方の記録の確認
3つ目は使われ方の記録を確認する作業で、どの場面で使われ、どこで人が引き取っているかを月ごとに見ます。
使われ方の記録は、公開してから数か月のあいだがもっとも重要になります。公開した時点では、現場の担当者に使われるかどうかが分からないためです。作った側が想定した場面と、現場の担当者が実際に使う場面はずれるもので、記録を見ないまま数か月が過ぎると、使われていないことにも、誤った使われ方にも気づけません。
産業用フィルターのメーカーでは、既存のレポートの手入れが四半期ごとだったため、月ごとに見る作業が新しく増えることになります。持ち主を決めずに始めれば、この作業も空くことが予想できました。
任せてよい仕事の見極め方は、営業AIエージェントの記事で3つの段階に分けて扱っています。月に一度、使われた件数と人が引き取った件数を並べれば、続けるかどうかは判断できます。
小さく始めたい場合は、点検できる件数の業務を1つだけ選ぶスモールスタートから入ります。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、商談の準備や提案の作成といった営業の業務に絞って設計できる相手を選ぶことになるでしょう。クロスコムでも、1つのユースケースを3か月で立ち上げる形からAgentforce導入・定着支援を行っており、無料相談も受け付けています。足すかどうかの判断に迷う段階であれば、Agentforceの導入判断から確かめてください。
以上が、Agentforceを足すと増える3つの作業でした。
いくらかかる?運用保守の費用3内訳
ここまで見てきたAgentforceで増える作業まで含めると、最後に必要になるのは費用の見積もりです。Salesforceの運用保守の費用を、外部へ支払う金額だけで見てしまうと、実態から外れた数字になります。自社の担当者が運用保守に使っている時間も、同じ費用として数える必要があるでしょう。そこでここでは、Salesforceの運用保守にかかる費用を3つの内訳に分けて整理します。
運用保守の費用は外部へ支払う金額だけではなく、自社の担当者が使っている時間を足して初めて比べられます。
| 内訳 | 何にかかるか | 見積もり方 |
|---|---|---|
| ①サポート費用 | Salesforceのプラン | ライセンス料からの率 |
| ②自社の時間 | 担当者の工数 | 月の作業時間 |
| ③委託の費用 | 外へ出した作業 | 契約の形による |
内訳①Salesforceのサポート費用
1つ目はSalesforceのサポートにかかる費用で、Standardはライセンスに含まれるため追加の支払いは発生せず、Premierはライセンス料の30%がかかります。ライセンスに含まれる範囲と、そこから外れて追加費用になる部分の見分け方は、別の記事で整理しています。
※参考記事はこちら
この内訳を最初に置くのは金額が計算で出るためで、ライセンス料が分かっていれば、Premierに上げたときの増加分はその場で出せます。Signatureは料金が公開されておらず営業担当への確認が要るため、比較の段階では候補から外して考えるほうが進みます。
このメーカーでは、Premierへ上げた場合の増加分を先に計算しています。上げるかどうかの判断は、止まったときに当日中の業務が止まるかどうかで決めることにしました。
いまのプランの費用と、上げた場合の金額を先に並べましょう。どちらを選ぶかの判断は、並べ終えたあとで構いません。
内訳②自社の担当者の時間
2つ目に挙げるのは、自社の担当者が運用保守に使っている時間です。人件費として社内にあるため見えにくく、費用として数えられないまま残ります。
この時間を数えるのは外部への委託と比べるためで、依頼1件あたりにかかる時間を測って件数を掛ければ、月あたりの工数はその場で出ます。兼務の担当者が他の業務を後ろへずらして対応しているなら、その分も費用として発生しています。数えないまま「外注は高い」と判断すると、比較が成り立ちません。
産業用フィルターのメーカーでは、依頼を受けてから反映するまでに、内容の確認と営業への折り返しが毎回入っていました。手を動かす時間より、この往復のほうが長くかかっていたことが記録で分かっています。
まずは1か月分の作業時間を記録しましょう。繁忙期を避けずに1週間分を測るだけでも、月あたりの見当は付きます。
内訳③外部へ委託する作業の費用
3つ目は外部へ委託する作業の費用で、契約の形によって、時間・件数・定例の回数のいずれかで決まります。
この費用は、①と②が出てからでないと金額が決まりません。自社で持てない作業が何時間分あるかが分かって、はじめて必要な枠が決まります。順番を逆にして先に見積を取ると、何を頼むのかが決まっていないまま金額だけを比べることになります。
このメーカーでは、外へ出す作業を4つ、自社で持つ作業を2つに分けてから見積を依頼しました。作業が具体的に決まっていたため、複数社の見積を同じ条件で比べられています。
①と②を出してから見積を取ると、金額の差が何の差なのかを説明できます。
以上が、Salesforceの運用保守にかかる費用3内訳でした。
運用保守でよくある3つの誤解
費用まで整理してくると、体制を決めるための材料はひととおりそろいます。ところがSalesforceの運用保守には、決める直前で引っかかりやすい思い込みがいくつかあり、どれも導入の前後で一度は耳にするものです。思い込みを外さないまま進めてしまうと、持ち主を決める工程がそのまま飛んでしまいます。そこでここでは、Salesforceの運用保守でよくある誤解を3つ整理します。
運用保守の誤解はどれも、導入を終わりと見なし、そこから先に作業が続くことを見落としたときに起きます。
誤解①導入が終われば作業は減る
1つ目は、導入プロジェクトが終われば作業は減るという見方で、構築を終えた直後にはそう見えるものです。
実際には、導入の直後から依頼の件数はむしろ増えていきます。運用保守の作業が、業務の変化に合わせて発生し続けるためです。組織が変われば権限を付け替え、商品が増えれば項目を足し、会議の議題が変わればレポートを作り直すことになります。業務が動いている限り依頼は出続けるため、導入の終わりは作業の終わりではなく開始にあたります。
産業用フィルターのメーカーでも、6年のあいだ依頼は途切れませんでした。依頼が月14件まで増えたのは、扱う商品と部署の数が6年のあいだに変わったためです。
導入計画には、運用保守の体制まで含めて書きましょう。構築の予算だけを見ていると、誰が持つのかを決める工程がそのまま抜け落ちます。
誤解②サポートに入れば設定まで見てもらえる
2つ目に挙げるのは、サポートのプランに入れば設定まで見てもらえるという見方で、費用を払うのだから範囲も広いはずだと考えたときに起きます。
この見方が成り立たないのは、サクセスプランが見るのが製品の動きだからです。エキスパートの助言は受けられますが、自社の業務に合わせて何をどう設定するかを決めるのは自社にあたります。24時間365日の対応も、製品側の停止に対するもので、設定変更の依頼を受ける窓口ではありません。
産業用フィルターのメーカーが検討の段階で確かめたのも、この線引きでした。Premierに上げても設定変更の依頼は自社に残ると分かり、体制の検討を別に進めています。
プランの範囲は、自社の作業の一覧と並べて確かめましょう。1行ずつ突き合わせてみれば、埋まらない作業が必ず残っているはずです。
誤解③運用保守は情報システムの仕事である
3つ目は、運用保守はすべて情報システムの仕事だという見方で、システムの話だからと割り振られます。
運用保守の作業は、情報システムだけでは最後まで進められません。判断に業務の知識が要る作業が混ざっているためです。項目を足してよいか、この商談の状態は実態と合っているかという判断は、営業やカスタマーサービスの側にしか材料がありません。情報システムに全部を預けると、判断のたびに確認が往復し、反映までの日数が延びます。
産業用フィルターのメーカーでは、業務の判断が要る依頼を営業側で先に整理してから出す形に変えたことが、日数を縮める起点になっています。
作業を判断と操作に分けて、判断の側に業務部門の担当を置きましょう。情報システムだけで抱える形は、担当が代わった時点で続かなくなります。
以上が、Salesforceの運用保守でよくある3つの誤解でした。
体制を決めるまでの3つの段取り
ここまで整理してきた誤解を外すと、決めるべきことは3つに絞られます。1か月の作業を並べること、その持ち主を決めること、そして残った作業の相談先を置くことの3つで、順に進めれば体制は決まるでしょう。逆に、どれか1つを飛ばしたまま先へ進むと、決めたはずの体制が数か月で元へ戻ってしまいます。そこでここでは、Salesforceの運用保守の体制を決めるまでの段取りを3つ整理します。
体制は人を決めてから作業を割り振るのではなく、1か月の作業を書き出してから持ち主を決める順で固まります。
| 段取り | やること | 出てくるもの |
|---|---|---|
| ①書き出す | 1か月の作業を記録 | 作業の一覧と件数 |
| ②持ち主を決める | 判断軸で分ける | 自社と外部の線 |
| ③相談先を決める | 契約の形を選ぶ | 見積を取る条件 |
段取り①1か月の作業を書き出す
はじめに行うのは、1か月のあいだに発生した作業をすべて書き出すことで、依頼の日付、内容、かかった時間の3つを記録していきます。
書き出しから始めるのは、体制の話が人の割り振りから始まると空回りするためです。誰を担当にするかを先に決めても、その人が何時間必要なのかが分からなければ、同じ状態に戻ります。逆に1か月分の記録さえあれば、必要な時間は計算で出せます。
実際に、このメーカーが1か月の記録を取ったところ、設定変更の依頼が14件、問い合わせが日に数件、アップデートの確認が1回という内訳になりました。記録を取るまでは、この件数を誰も把握していなかったのです。
1か月分が長ければ、期間を短く区切っても構いません。件数と内訳が分かることのほうが、記録した期間の長さより大事です。
段取り②毎月出る作業の持ち主を決める
書き出した一覧に対して、次に行うのが持ち主を決める作業です。4つの判断軸に当てて、自社に置くか外に出すかをひとつずつ分けます。
ひとつずつ分けるのは、まとめて「運用保守を委託する」と決めてしまうと、判断の部分まで外へ出ていくためです。判断は自社に残し、操作だけを外へ出す線を引いておけば、依頼の文面は短くなり、往復の回数も減ります。
産業用フィルターのメーカーでは、月14件のうち業務の判断を要する9件を自社に残し、操作だけの5件を外へ出す形にしました。あわせて外に出す作業を4つ、自社で持つ作業を2つに整理し、外へ出す4つは1枚にまとめて依頼の条件として使っています。
一覧の上で、判断が要る作業に印を付けていきましょう。印の付いたものが、そのまま自社に残す候補の一覧になります。
段取り③残った作業の相談先を決める
最後に決めるのが自社で持てない作業の相談先で、契約の形を選んだうえで、同じ条件をそろえて見積を取ります。立ち上げにどれくらいかかるかは、期間の見積もりの記事で5つの工程に分けて扱っています。
最後に置くのは、①と②が終わっていないと条件を書けないためです。何を何件、どの形で頼むのかが決まっていれば、複数社の見積を同じ条件で比べられます。逆にこの2つが空欄のまま声をかけると、各社が想定した範囲で見積が出てきて、金額の差が何の差なのか読めません。相談先の候補は、相談先の選び方をタイプ別に整理した記事も参考になります。
当初の目的は「設定変更の依頼が1人に集まる状態を解き、月末の締めに間に合う形にすること」でしたが、産業用フィルターのメーカーでは、作業の書き出しから持ち主の決定まで進めた結果、依頼から反映までの日数が3週間から5日へ短くなり、16日の短縮になりました。
以上が、体制を決めるまでの3つの段取りでした。
【一問一答】Salesforceの運用保守に関するよくある質問
ここまで、Salesforceの運用保守に含まれる作業から、持ち主の決め方、契約の形、費用の見積もりまでを整理してきました。体制の案を社内で共有すると、含まれる範囲はどこまでか、自社だけで足りるのか、サポートプランとの線引きはどこかといった質問が、立場ごとに繰り返し出てくるはずです。産業用フィルターのメーカーでも、情報システムの担当と営業の責任者が別の疑問を持ち寄っており、サポートプランに入れば設定まで見てもらえるのかという点は、打ち合わせのたびに確かめ直された論点でした。そこでここでは、Salesforceの運用保守について迷いやすい点を、5つの質問に分けて取り上げます。
ユーザーと権限の棚卸、項目とレイアウトの追加、レポートの手入れ、定期アップデートへの対応、データの整備、現場からの問い合わせ対応の6つが中心です。発生する頻度も必要な知識も違うため、まとめて1つの仕事として扱わないほうが体制を決めやすくなります。産業用フィルターのメーカーでは、このうち設定変更の依頼が月14件でもっとも多くなっていました。
判断に業務の知識が要る作業を社内で持てるなら、自社だけでも進められます。判断の目安になるのは、担当者がSalesforceに割ける時間です。産業用フィルターのメーカーでは情報システムの担当がいずれも兼務で、月14件の依頼はさばけてもアップデートの確認まで含めると足りませんでした。
サクセスプランが見るのは製品の動きまでのため、Salesforceの運用保守が不要になることはありません。2026年9月時点でプランは3種類あり、Standardは全ライセンスに含まれ、Premierはライセンス料の30%です。産業用フィルターのメーカーがPremierを検討したときも、設定変更の依頼は自社に残るという結論でした。
費用は契約の形で決まり、月あたりの工数を買う形、作業1件ごとに買う形、相談できる窓口を置く形の3つを、頼む作業の性質で選び分けます。費用を比べるときは、外部へ支払う金額だけでなく、自社の担当者が使っている時間も足して数えます。産業用フィルターのメーカーでは、外へ出す作業を4つに絞ってから複数社の見積を取りました。
Agentforceを足すと、運用保守は3つの作業の分だけ増えます。新しく発生するのは、任せた業務の回答の点検、参照するデータの手入れ、使われ方の記録の確認です。運用保守が止まったままAgentforceを足すと、増えた分も同じ担当者に乗るため、先に持ち主を決める順番になります。産業用フィルターのメーカーが最初の対象に選んだのは、カスタマーサービス8名が受ける問い合わせの一次回答でした。
Salesforceの運用保守は、作業を分けてから持ち主を決める
Salesforceの運用保守は、まとめて誰かに預ける仕事ではなく、頻度も必要な知識も違う作業の集まりです。本記事では、6つの作業の内訳から、サクセスプランが見る範囲と残るすき間、持ち主を分ける4つの判断軸、止まるときの症状、契約の形、Agentforceを足すと増える作業、費用の内訳、そして体制を決めるまでの段取りを整理してきました。
要点になるのは、1か月の作業を書き出し、判断が要るものと操作だけのものを分けてから、残った作業の相談先を決めるという順番です。この順で進めた産業用フィルターのメーカーでは、依頼から反映までが3週間から5日になりました。Agentforceを足すのは、この体制が決まってからでも遅くありません。
この記事で紹介した進め方を、ぜひ自社の状況に合わせて実践し、少しでもお役に立てれば幸いです。
