AIの導入はどのくらいかかるのか?5つの工程に分けて読む期間の見積もり

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「導入にどのくらいかかりますか」と聞かれて、規模によりますとしか答えられない状態では稟議が進みません。AIの導入期間とは、対象を決めてから運用に乗るまでの日数で、規模では決まりません。工程の数と合意に要る人数で決まります。 本記事の工程の分け方はAgentic CRMを設計するときの考え方から起こしたもので、特定のベンダーの製品や導入手順には依存しません。

そこで本記事では、期間が読めないときに起きる状態から、規模で見積もると外れる理由、期間を分ける5つの工程、AIで縮められる範囲までを解説します。

期間が読めないときに起きる3つの状態

紙器の製造と印刷を手がける会社では、従業員112名のうち営業が10名、営業企画の担当1名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。CRMにAIの仕組みを入れる計画を立てたものの、経営会議で「いつ終わるのか」を問われて答えられませんでした。支援会社からは規模によりますとしか返ってこず、稟議は止まったままです。過去に別のシステムで3か月と言われ、実際には11か月かかった経験もあり、経営の判断はより慎重になっていました。そこでここでは、この会社を例に、期間が読めないときに起きる3つの状態を整理します。

経営会議で問われたのは計画の中身ではなく、いつ終わるのかという1点でした。期間を答えられないと、稟議は内容の良し悪しに関係なく止まります。

比較の観点規模で見積もる場合工程で見積もる場合
出てくる答え3か月から6か月13週間(工程ごとの内訳つき)
外れたときの説明できないどの工程が延びたかを示せる
稟議での通り方幅が広く判断できない工程ごとに承認できる
待ち時間の扱い作業日数に混ざる別に数える
次に使えるか使えない実績が次の見積もりになる

状態①稟議が通らないまま止まる

1つ目は「稟議が通らないまま止まる」状態で、内容には賛成が得られても、いつ終わるのかで判断が保留されます。

保留になるのは、期間が読めなければ費用も読めないためです。3か月から6か月という幅で示すと、決裁する側は上限で考えます。上限の費用に対して効果が見合うかを判断することになり、承認のハードルが上がります。

この紙器の会社では、経営会議で2回にわたって判断が持ち越されました。営業企画の担当が説明した内容に反対はなく、期間の根拠だけが問われています。工程ごとに誰が決めて誰が止めるかは、役割の決め方で扱っています。部門をまたぐ合意がなぜ時間を要するのかは、RevOpsの記事で整理しています。

期間を幅で示してよいのは、その上限の金額でも決裁が下りると分かっている場合だけです。分からないうちは、幅を狭める作業より先に、工程ごとの内訳を作るほうが承認に近づきます。

状態②途中で予算が尽きる

2つ目に挙げるのは途中で予算が尽きる状態で、見積もりを超えた時点で追加の承認が必要になります。

尽きるのは、工程ごとの内訳がないため、超えた理由を説明できないためです。総額で3か月と見積もった案件が5か月かかったとき、どこで延びたのかを示せなければ、追加の予算は認められません。過去に同じ経験がある会社ほど、次の稟議が慎重になります。

先ほどの会社では、別のシステムの導入で3か月の見積もりが11か月になりました。見積もりの3.7倍です。当時は工程を分けずに総額で見積もっていたため、どこで延びたのかを説明できませんでした。

過去の案件で、見積もりと実績の差を確かめましょう。差の理由を工程の名前で言えるなら、その分け方はそのまま次の見積もりに使えます。一方で、理由を言えないなら、工程の切り方から作り直す必要があります。

状態③終わったかどうかを誰も言えない

3つ目は「終わったかどうかを誰も言えない」状態で、動いてはいるものの、完了したのかが判断できません。

判断できないのは、各工程の終わりの条件を決めていないためです。設定が入った時点で完了なのか、営業が使い始めた時点なのか、効果が数字に出た時点なのかで、期間は大きく変わります。定義が曖昧なまま進むと、報告のたびに認識がずれます。

この紙器の会社では、計画の段階で完了の定義を決めていませんでした。営業企画の担当が経営会議で説明した際、経営から「効果が出るまでを含むのか」と問われて答えられていません。

工程ごとに終わりの条件を1文で書きましょう。5つのうち1つでも空欄が残れば、そこが報告の詰まる箇所になります。定義がそろって初めて、経営会議の場で進捗を同じ言葉で確認できます。

規模で読める?期間の見積もりが外れる理由3つ

3つの状態はどれも、見積もりの出し方そのものに原因があります。多くの支援会社は、対象となる営業の人数や、扱うデータの量から期間を出そうとします。人数が2倍なら期間も2倍という考え方です。ところが規模から出した見積もりは実績と大きくずれ、外れる方向もほぼ決まっています。長くなるのは、いつも実績の側です。そこでここでは、期間を規模で見積もると外れる3つの理由を整理します。

外れる原因は見積もる人の精度にはありません。なぜなら、期間の中身のうち作業が占める割合が小さいからです。期間を規模で見積もると外れます。時間を使うのは作業より合意だからです。

理由①時間を使うのが作業より合意だから

1つ目は「時間を使うのが作業より合意だから」です。実際に手を動かす時間より、決める時間のほうが長くかかります。

長くかかるのは、決める作業が人の予定に左右されるためです。設定への反映は1日で終わっても、その内容を承認する会議が2週間先にしか入らなければ、2週間が過ぎます。規模から出した見積もりは作業の量しか見ておらず、この待ちが入っていません。

たとえば、この紙器の会社では対象を1つに決める工程に2週間かかりました。候補を洗い出す作業は1週間で終わりましたが、営業部門との合意にもう1週間が必要でした。作業と合意で、ちょうど半分ずつです。

工程ごとに、作業の時間と合意の時間を分けて書きましょう。合意の側が長くなります。

理由②試験の運用は日数で決まるから

2つ目に挙げるのは、試験の運用は日数で決まるからです。人を増やしても短くなりません。

短くならないのは、実際の商談が動く速さに縛られるためです。設定した条件が正しく動くかを確かめるには、その条件に該当する案件が発生するのを待つ必要があります。営業のサイクルが4週間の会社では、1回転を見るのに4週間かかります。

先ほどの会社では、試験の運用に4週間を置きました。この会社の営業サイクルが4週間で、1回転を見る設計です。人員を増やしても、条件に該当する案件が発生する速さは変わらないため、この4週間は縮みません。

試験の期間は、自社の営業サイクルの長さで決めましょう。人数から出した日数は、この長さを超えない限り見積もりの根拠になりません。

理由③効果が出るまでの待ち時間が入るから

3つ目は「効果が出るまでの待ち時間が入るから」です。運用に乗った後、数字として読めるまでにさらに時間がかかります。

かかるのは、効果の判定に母数が必要なためです。商談の件数が一定たまるまで、変化が偶然なのか設計の結果なのかを区別できません。四半期をまたがなければ、季節による増減とも切り分けられません。この待ち時間を完了の期間に含めるかどうかで、答えは倍近く変わります。

この紙器の会社では、運用に乗るまでが13週間、効果が数字で読めるまでにさらに1四半期を見ています。着手から効果の判定までは約6か月です。経営会議には、この2つを分けて説明しました。

稟議に出す数字は、運用に乗るまでの期間を先に置きましょう。効果の判定までを1つにまとめると、提示する数字は約6か月まで伸びます。

5工程|AIの導入期間を分けて読む

では、規模で見積もらないとしたら、何を単位に期間を置けばよいのでしょうか。工程に分ければ、それぞれの期間が何で決まるのかは個別に説明できるものです。工程の切り方は業務によって変わりますが、AIの設計を運用に乗せる流れは5つに整理できます。そこでここでは、期間を分ける5つの工程を整理します。

工程を細かく割るほど見積もりが当たるわけではありません。5つで足ります。運用に乗るまでの工程は5つで、合計はおよそ13週間です。

5つの工程と期間の内訳(紙器の会社の計画)

工程期間内訳
①対象を1つに決める2週間候補の洗い出し1週+合意1週
②条件を言葉にする3週間聞き取り2週+確定1週
③設定へ反映する2週間反映1週+動作確認1週
④試験の運用を回す4週間営業サイクル1回転
⑤本番へ広げる2週間対象の追加1週+周知1週
合計13週間= 2+3+2+4+2

工程①対象を1つに決める

1つ目の工程は「対象を1つに決める」ことです。どの業務をAIに任せるかを確定します。

この工程が2週間になるのは、候補を出す作業と、合意を取る作業の両方が入るためです。候補の洗い出しは、過去の案件を並べれば1週間で終わります。ところがどれを選ぶかは営業部門との合意が要るため、会議の日程に左右されます。会議が隔週であれば、次回まで最大で2週間の待ちが入る計算です。

この紙器の会社では、営業企画の担当が候補を5つ出し、営業部門の会議で1つに絞りました。会議は隔週で開かれており、次回まで1週間待つ形になったため、合意だけでこの工程の半分を使っています。

候補を出す前に、合意を取る会議の日程を押さえましょう。会議待ちが期間を決めます。

工程②条件を言葉にする

2つ目に挙げるのは、条件を言葉にする工程です。何をもって該当とするかを、機械が読める形で書きます。

この工程が最も長くなるのは、上位の担当者への聞き取りに時間がかかるためです。判断の基準は本人の中にあり、抽象的に聞いても出てきません。実際の案件を一緒に見ながら聞く形になり、1人あたり2時間ほどを複数回に分けて確保します。

先ほどの会社では、聞き取りに3週間、条件の確定に1週間で計4週間かかりました。計画では聞き取りを2週間としていましたが、日程が営業の繁忙期と重なって1週間延びています。5つの工程のうち、延びたのはここだけでした。

聞き取りの日程を、営業の繁忙期を避けて置きましょう。避けられないなら、計画の段階で1週間の余裕を足しておくほうが確実です。

工程③設定へ反映する

3つ目は「設定へ反映する」工程です。言葉にした条件を、実際の設定に落とします。

この工程は作業が中心で、合意の待ちが入りません。反映の作業は数日で終わり、意図どおりに動くかの確認に数日を足して2週間を見ます。担当が1名でも進められるため、会議の日程を待つ必要がありません。5つの工程のなかで、最も見積もりが当たりやすい工程です。

この紙器の会社では、反映に1週間、動作の確認に1週間で計2週間でした。計画どおりです。営業企画の担当が単独で進められる範囲で、他部門との調整も発生していません。

合意の待ちが入らない工程は、見積もった日数をそのまま計画に置けます。ここを短くしても、13週間のうち縮むのは数日です。

工程④試験の運用を回す

4つ目は「試験の運用を回す」工程です。実際の商談で条件が正しく動くかを確かめます。

この工程が4週間なのは、理由②で挙げたとおり営業サイクルの長さで決まるためです。この会社の営業サイクルは4週間で、1回転を見る設計にしています。案件が発生するのを待つ工程であり、人を増やしても短くなりません。試験の運用で何を見るかは、パイプラインの停滞を検知する設計が参考になります。

先ほどの会社では、4週間で該当した案件が17件ありました。うち3件で条件のずれが見つかり、その場で調整しています。調整は工程③へ戻さず、この工程の中で吸収しました。

試験の期間は、営業サイクルの1回転を最低ラインにしましょう。半回転では判断できません。

工程⑤本番へ広げる

5つ目は「本番へ広げる」工程です。試験の対象を全体へ広げ、運用として定着させます。

この工程が2週間になるのは、対象を追加する作業と、周知の作業が入るためです。設定の変更は数日で済みますが、営業10名への説明と、質問への対応に1週間ほどかかります。質問の多くは、どの案件が対象になるのかという確認でした。周知を省くと、通知が届いても使われない状態になります。

この紙器の会社では、対象の追加に1週間、周知に1週間で計2週間でした。周知は朝礼での説明と、資料の配布の2段階で行っています。運用に乗った時点で、着手から14週間が過ぎていました。

周知の期間を、必ず工程に入れましょう。営業10名の全員が説明を受けた日をもって、この工程の終わりとします。

工程ごとに期間を決める4つの基準

前章で5つの工程がそろいました。では各工程の期間を、何を根拠に決めればよいのでしょうか。それは、その工程を止めているものが何かを先に見分けることです。人数や作業量から出すと、理由①で挙げたとおり合意の時間が抜け落ちます。工程を止めているのは、会議の日程か、聞き取る相手の空き時間か、案件が発生する速さのどれかです。この3つはいずれも、担当を増やしても短くなりません。そこでここでは、工程ごとに期間を決める4つの基準を整理します。

作業量から日数を出すと、必ず足りなくなります。工程の期間は、合意が要る人数と営業のサイクルの長さで決まります。

基準①合意が要る人数で決める

1つ目は「合意が要る人数で決める」という基準です。その工程で承認を得る必要がある人の数を数えます。

人数で決める理由は、承認者が増えるほど日程の調整が難しくなるためです。1人の承認で済む工程は数日で通りますが、3部門の合意が要る工程は会議の開催を待つことになります。会議が隔週であれば、それだけで2週間が確定します。

この紙器の会社では、工程①で営業部門の合意が必要でした。会議は隔週開催で、次回まで平均1週間の待ちが発生します。営業企画の担当は、この1週間を最初から見積もりに入れました。入れていなければ、工程①は1週間で終わる計算になり、実績と合いません。

承認者の数と、会議の頻度を書き出しましょう。掛け合わせると、待ちの日数が出ます。

基準②聞き取る相手の人数で決める

2つ目に挙げるのは、聞き取る相手の人数で決める基準です。条件を言葉にする工程で、何人から話を聞くかを数えます。

人数で決めるのは、聞き取りが1人あたり2時間ほどを複数回に分けて必要とするためです。5名に聞くなら延べ10時間で、営業の空き時間に合わせると2週間ほどに広がります。相手が5名を超える場合は、日程の調整だけで1週間が必要です。まとめて確保できないことが、この工程を長くします。

先ほどの会社では、上位の営業3名に聞き取りを行いました。1人あたり2回、計6回の時間を確保しています。聞き取りの計画は2週間でしたが、繁忙期と重なって3週間かかりました。

聞き取る人数に、1人あたり2時間を掛けましょう。それが最短で、実際にはその倍を見ます。

基準③営業のサイクルの長さで決める

3つ目は「営業のサイクルの長さで決める」という基準です。試験の運用の期間を、自社の商談の速さから出します。

サイクルで決める理由は、待つしかない工程だからです。理由②で挙げたとおり、条件に該当する案件が発生するまで待つほかありません。営業サイクルが4週間の会社と12週間の会社では、同じ設計でも試験の期間が3倍違います。営業サイクルに合わせて施策のタイミングを変える考え方は、個別化の記事で扱っています。

この紙器の会社の営業サイクルは4週間でした。引き合いから受注までの中央値を、過去1年の案件から算出しています。試験の期間は、この4週間をそのまま置きました。

自社の営業サイクルを、案件の記録から中央値で出しましょう。感覚で決めると外れます。

基準④待ち時間を別に数える

4つ目は「待ち時間を別に数える」という基準です。作業していない期間を、作業の日数と分けて記録します。

分ける理由は、混ぜると次の見積もりに使えなくなるためです。会議を待つ1週間を作業日数に含めると、その工程が1週間かかったように見えます。次に同じ工程を見積もるとき、作業が1週間だと誤って計算します。

先ほどの会社では、工程ごとに作業日数と待ち日数を分けて記録しました。実績の14週間のうち、実際に手を動かした日数は延べ14日です。記録は表計算の2列だけで、1日の終わりに数字を入れる運用にしています。

作業日数と待ち日数は、別の列に置きましょう。次の案件へ持ち込めるのは作業の列だけで、待ちの列は会議の頻度が変われば数字ごと変わります。

何を任せる?期間を縮める線引き3つ

4つの基準で各工程の期間を置いたあと、どこを機械に任せれば短くなるのかで迷う場面が出てきます。すべての工程が縮むわけではありません。縮む工程と縮まない工程は、はっきり分かれています。任せる範囲をどこで切るかは、Agentic CRMの設計で扱う考え方がそのまま当てはまる部分です。そこでここでは、期間を縮めるためにAIに任せる3つの線引きを整理します。

機械を入れて作業が減るのは、5つの工程のうち1つだけです。機械で縮められるのは反映と確認の工程だけです。合意と待ち時間は縮みません。

線引き①自動で進めてよい工程

1つ目は「自動で進めてよい工程」です。人の判断を挟まずに進められる作業を切り分けます。

自動で進めてよいのは、判断の基準が確定していて、結果を後から確認できる作業です。工程③の設定への反映と動作の確認が、これにあたります。条件が言葉になっていれば、反映の作業は機械が担えます。

この紙器の会社では、工程③の2週間のうち、動作の確認に自動のテストを使いました。条件に該当する過去の案件を流し、想定どおりに判定されるかを確かめる形です。確認にかけた作業は5営業日から2営業日に減りましたが、工程③の期間は2週間のままでした。

自動化で減るのは作業の日数であり、工程の期間ではありません。期間まで短くしたいなら、次の工程の日程を前倒しできるかを先に確かめます。

線引き②人の合意が要る工程

2つ目に挙げるのは、人の合意が要る工程です。工程①の対象の決定と、工程②の条件の確定が入ります。

任せられないのは、合意が人の予定と判断で決まるためです。候補を機械が並べても、どれを選ぶかは営業部門の判断であり、その会議を早めることはできません。基準①で承認者の数を数えた理由が、ここに対応します。

先ほどの会社でも、工程①と工程②で機械が担ったのは候補の整理までです。合意の日程は変わらず、この2工程に計画で5週間、実績では6週間を使いました。5つの工程のなかで、最も長い区間になります。

合意の工程は、機械を入れても短くなりません。会議の頻度を隔週から毎週へ変えられるかどうかが、短縮の唯一の手段になります。

線引き③待つしかない工程

3つ目は「待つしかない工程」です。工程④の試験の運用が、これにあたります。

待つしかないのは、実際の商談が発生する速さに縛られるためです。案件を人工的に作ることはできず、営業サイクルの1回転を見る必要があります。この4週間は、どのような仕組みを入れても縮みません。営業サイクルが12週間の会社なら、この工程だけで12週間を見込むことになります。

この紙器の会社では、試験の期間中に該当した案件が17件でした。件数を増やそうと対象を広げる案も出ましたが、条件の検証が曖昧になるため見送っています。4週間はそのまま置き、対象の追加は次の周回へ回しました。

待つ工程は、縮めようとしないほうが確実です。短くすると、検証が甘くなります。

期間を1工程ずつ確定する4つのステップ

ここまでで、工程の分け方と期間の決め方、機械で縮む範囲がそろいました。あとは見積もりを作る順番です。3か月で収めたいという前提から入り、全体の期間を5つに割り振る作り方をすると、各工程に無理な日数が入ります。無理な日数を入れると、最初の1つが延びた時点で残りの工程も間に合いません。1工程ずつ確定していけば、合計は後から出ます。そこでここでは、期間を1工程ずつ確定する4つのステップを整理します。

順番を逆にすると、待ち時間の置き場がなくなります。見積もりで最初に足すのは作業の日数ではありません。待ち時間です。

ステップ①工程を5つに分けて書き出す

1つ目のステップは「工程を5つに分けて書き出す」ことです。前章の5工程を、自社の言葉に置き換えて並べます。

5つに分ける理由は、これ以上細かく割っても精度が上がらないためです。10工程に割ると、それぞれの期間が数日単位になり、待ち時間の扱いが曖昧になります。逆に3工程だと、どこで延びたのかを特定できません。

この紙器の会社では、5つの工程名をそのまま使いました。業種による読み替えは不要だったためです。営業企画の担当が1枚の表に書き出し、経営会議の資料にしています。表は工程名と週数の2列だけで、経営からの質問はこの1枚で収まりました。

工程は5つを目安にしましょう。細かく割っても、精度は上がりません。

ステップ②各工程の終わりの条件を決める

2つ目のステップは、各工程の終わりの条件を決めることです。何ができたらその工程が完了かを、1文で書きます。

条件を決める理由は、状態③で挙げた「終わったかを言えない」状態を避けるためです。工程②であれば「条件を文書化し、上位の営業3名が内容に同意した時点」と書きます。条件は、誰が読んでも同じ日を指す書き方にします。

先ほどの会社では、5つの工程それぞれに1文の条件を書きました。所要は営業企画の担当が1時間ほどで、後からの書き直しは発生していません。経営会議では、この5行が進捗の報告書として使われています。

終わりの条件は、日付で判定できる書き方にしましょう。「おおむね完了」と書いた工程は、報告の場で必ず追加の質問を受けます。

ステップ③待ち時間を先に足す

3つ目のステップは「待ち時間を先に足す」ことです。作業の日数を出す前に、待ちの日数を確定します。

先に足す理由は、後から足すと計画に収まらなくなるためです。作業日数を積み上げてから会議の待ちを足すと、当初の見積もりを超えます。基準①で会議の頻度を数え、基準③で営業サイクルを出しておけば、待ちの日数は先に確定できます。この2つは着手する前に分かる数字で、動き出してからは変えられません。

この紙器の会社では、待ち時間の合計が先に出ました。会議待ちが2週間、試験の運用が4週間で、先に確定できる待ちだけで計6週間です。13週間のうち、半分近くが待ちでした。

待ちの日数を先に置いてから、残った枠に作業を入れましょう。作業から積み上げた見積もりは、会議1回ぶんの遅れで超えます。

ステップ④実績を記録して次に使う

4つ目のステップは、実績を記録して次に使うことです。計画と実績のずれを工程ごとに残します。

記録する理由は、次の見積もりの精度が上がるためです。今回どの工程が延びたかが分かれば、2つ目の対象を設計するときに、その工程だけ余裕を持たせられます。記録がなければ、毎回ゼロから見積もることになるでしょう。記録した結果を次の判断に回す仕組みは、エージェンティックAIの記事で扱っています。

この紙器の会社では、計画13週間に対して実績が14週間でした。延びたのは工程②の1週間だけで、ずれは7.7%です。2つ目の対象では、工程②を最初から4週間で見積もっています。

残す記録は、工程名と計画の週数、実績の週数の3つで足ります。次の対象では、延びた工程だけを1週間長く置けば済みます。

以上が、期間を1工程ずつ確定する4つのステップでした。

期間の見積もりでつまずく3つの落とし穴

前章の4つのステップは、順番どおりに進めば見積もりとして形になります。ところが実際には、途中で元のやり方へ戻ってしまう会社があります。戻り方には共通した型が3つあり、いずれも工程に分ける前の状態へ引き返す形です。先に知っておけば避けられるもので、見積もる人の経験の多さとは関係がありません。3つとも、稟議の直前に急いで数字を作るときに出ます。そこでここでは、期間の見積もりでつまずく3つの落とし穴を整理します。

3つに共通するのは、数字を1つにまとめてしまう点です。総額で見積もると、どの工程が延びたのかを説明できなくなります。

落とし穴①総額で見積もって内訳を出さない

1つ目は「総額で見積もって内訳を出さない」ことです。3か月という数字だけを示し、根拠を添えません。

内訳がないと、延びたときに説明できません。状態②で挙げた予算が尽きる事態は、この形から生まれます。しかも決裁する側は根拠を確かめられないため、幅の上限で判断します。承認が通りにくくなるだけで、良いことがありません。

先ほどの紙器の会社が過去に経験した3か月から11か月への超過も、総額での見積もりでした。当時の資料には工程の内訳がなく、なぜ延びたのかを後から検証できていません。今回は5工程の内訳を添えています。

見積もりには、必ず工程の内訳を添えましょう。延びたときに書き換えるのは1行だけで済み、稟議をやり直さずに報告できます。

落とし穴②待ち時間を作業日数に含める

2つ目に挙げるのは、待ち時間を作業日数に含めることです。会議を待つ期間を、その工程の作業として数えます。

含めると、次の見積もりが狂います。ここに対応するのが、基準④で分けて数えた理由です。会議待ちの1週間を作業として記録すると、次に同じ工程を見積もるとき、作業に1週間かかると誤って計算します。実際の作業は1日で、待ちが4日という配分だったかもしれません。

この紙器の会社が残した記録では、14週間のうち手を動かした日数は延べ14日でした。待ちを作業として記録していれば、次の見積もりは14週間ぶんの工数を前提に作られてしまいます。実際には、待ちが大半です。

記録の基準は、その日に設定の画面を開いたかどうかで決めましょう。判断に迷う日は、待ちの側に入れておくほうが安全です。

落とし穴③効果が出る時期を完了に含める

3つ目は「効果が出る時期を完了に含める」ことです。運用に乗った時点と、数字が動いた時点を混ぜます。

混ぜると、答えが倍近くになります。理由③で挙げたとおり、運用に乗るまでが13週間でも、効果が数字で読めるまでにはさらに1四半期が必要です。合わせて約6か月になり、稟議に出す数字としては重くなります。導入したが使われない状態の立て直しで、定着まで伴走してほしい場合は、この2つを分けて合意することが特に重要になります。

先ほどの会社では、経営会議に2つの数字を分けて示しました。運用に乗るまで13週間、効果の判定までさらに1四半期です。分けたことで、13週間の時点で中間の報告ができる形になりました。

稟議に出す期間は、運用に乗るまでの13週間で切りましょう。効果の判定までを含めた約6か月は、中間の報告を挟む予定として別に添えます。

計画どおり?期間を測る4指標

見積もりを作り終えたあと、走り出した計画がそのとおりに進んでいるかは、どうすれば確かめられるのでしょうか。全体の進み具合だけを見ていると、遅れに気づくのが最後の工程になります。50%と報告された時点では、どの工程で詰まっているかが分かりません。工程が終わるたびに1つずつ確定させれば、遅れはその場で数字になります。そこでここでは、期間が計画どおりかを測る4つの指標を整理します。

全体の進捗率では、遅れが見えません。見るべきは全体の進み具合より、工程ごとの実績のずれです。

指標①工程ごとの実績のずれ

1つ目は「工程ごとの実績のずれ」です。各工程の計画と実績の差を、工程が終わるたびに記録します。

工程ごとに見る理由は、全体の進捗率では遅れの原因が分からないためです。全体で50%と報告されても、どの工程で詰まっているかは見えません。工程ごとであれば、終わった時点でずれが確定し、次の工程へ持ち越すかどうかを判断できます。工程の進み方をどの数字で見るかは、KPI設計の記事の考え方が使えます。

この紙器の会社では、工程②が1週間延びました。計画3週間に対して実績が4週間で、全体では13週間に対して14週間です。ずれは7.7%で、経営会議では工程②の名前とともに報告されています。

工程が終わった日に、計画との差を週の単位で記録しましょう。差が2週間を超えた工程が出たら、次の工程へ入る前に計画を引き直します。

指標②終わりの条件を満たした日

2つ目に挙げるのは、終わりの条件を満たした日です。ステップ②で決めた1文の条件が、いつ満たされたかを記録します。

日付を記録する理由は、進捗の報告から主観を外すためです。「ほぼ終わりました」という報告は、人によって指す状態が違います。日付であれば誰が見ても同じ数字で、解釈の余地が残りません。条件を満たした日付があれば、報告する側もされる側も同じものを見ます。

先ほどの会社では、5つの工程それぞれに達成日を記録しました。工程②だけが計画より5営業日遅れ、ほかの4工程は計画どおりです。記録は日付だけで、所要は数秒でした。

達成日は、条件を満たした当日に記録しましょう。後からさかのぼって書くと、5営業日の遅れが1日の遅れに見えます。

指標③待ち時間の割合

3つ目は「待ち時間の割合」です。全期間のうち、作業していない期間が何割かを見ます。

割合を見る理由は、縮められる余地がどこにあるかを表すためです。待ちが大半なら、人を増やしても期間は変わりません。会議の頻度を上げるか、承認者を減らすほうが効きます。逆に作業が大半であれば、線引き①で自動化できる範囲を探すことになるでしょう。割合は工程が終わるたびに更新し、次の工程の見積もりへ反映させます。

この紙器の会社では、14週間のうち手を動かした日数が延べ14日でした。1週を5営業日とすると70営業日のうち14日で、作業は約20%です。残る80%は待ちでした。

作業の日数を全期間で割りましょう。割合が低ければ、人を増やしても縮みません。

指標④投入した工数の累計

4つ目は「投入した工数の累計」です。期間とは別に、何時間を使ったかを記録します。

工数を別に見る理由は、期間と工数が比例しないためです。14週間かかっても、実際に使った時間は62時間ということがあります。兼任の担当者が進める場合に、本来の業務へ与える影響を表すのがこの数字です。期間だけを見ていると、負担の大きさを見誤ります。

先ほどの会社では、営業企画の担当1名で計62時間でした。14週間で割ると週約4.4時間です。この数字を示したことで、経営会議では兼任のままで進める判断が通っています。専任を置く前提であれば、稟議はもう一段上の決裁に上がっていました。

期間と工数を、別々に報告しましょう。期間が長くても、工数は小さいことがあります。

期間が延びたときに切る3つの判断

ここまでは、計画どおりに進める前提で扱ってきました。では実際に延びたとき、何を切って先へ進めるのでしょうか。全部を守ろうとすると、どの工程も中途半端なまま運用に届きません。切る順番を決めていない会社ほど、延びた分をそのまま後ろへ足していきます。順番を先に決めておけば、延びた時点で改めての議論は要りません。そこでここでは、期間が延びたときに切る3つの判断を整理します。

先に決めておくのは、何を切るかではありません。どの順番で切るかです。期間が延びたときに減らすのは、条件の精度ではありません。対象の数です。

判断①対象を減らして先に運用へ乗せる

1つ目の判断は「対象を減らして先に運用へ乗せる」ことです。扱う範囲を狭めて、期間内に運用へ到達させます。

対象を減らす理由は、条件の精度を落とすより影響が小さいためです。5つの条件のうち3つだけを先に運用へ乗せれば、残る2つは次の周回で足せます。運用に乗った実績があれば、次の予算も通りやすくなるはずです。対象を減らしても購買の体験が損なわれないかは、購買体験の側から確かめられます。

この紙器の会社では、工程②が延びた時点で対象を減らす案が出ました。結果としては1週間の遅れで収まったため実行していませんが、判断の順番は事前に決めています。

減らす順番は、影響の大きい対象を残す形で決めましょう。迷うなら、工程④で該当が少なかった条件から外します。

判断②条件を粗いまま試験へ進める

2つ目に挙げるのは、条件を粗いまま試験へ進めることです。工程②を切り上げて、工程④で調整します。

粗いまま進めてよいのは、試験の運用が調整の場でもあるためです。工程④で該当した案件を見れば、条件のずれはその場で分かります。完璧な条件を作ってから進むより、粗い条件で試して直すほうが速いこともあるでしょう。ただしこの進め方が成立するのは、試験の対象が1つに絞られている場合に限ります。

先ほどの会社では、工程④で該当した17件のうち3件に条件のずれが見つかりました。工程③へ戻さず、工程④の中で調整しています。条件を作り込む時間を、この調整に振り替えた形です。

条件は、試験で直せる前提で作りましょう。完璧を目指すと、工程②が延び続けます。

判断③いったん止めて条件から作り直す

3つ目は「いったん止めて条件から作り直す」ことです。試験の結果が想定と大きく違う場合に選びます。

止める判断が要るのは、条件が根本から外れている場合に、調整では追いつかないためです。該当する案件が想定の半分を下回れば、条件の前提を疑います。このまま本番へ広げても、使われない仕組みが残るだけです。止めた場合でも、工程①の対象の選定まで戻す必要はありません。

この紙器の会社では、工程④で該当が17件あり、想定の15件を上回りました。止める判断には至っていません。営業企画の担当は、該当が想定の半分を下回った場合に止めるという線を事前に引いています。

止める線を、試験に入る前に数値で引きましょう。走り出してからでは決められません。

期間の見積もりに外部支援を使う4つの判断軸

ここまでの見積もりは、営業企画の担当が1名いれば自社で作れる範囲です。とはいえ、工程の切り方や待ち時間の置き方で迷う場面は出てきます。外部に相談するかどうかの分かれ目は、社内に工程を割れる担当がいるかどうかにあります。相談すると決めたなら、何を基準に選ぶかを先に整理しておくほうが、提案を受けてからの判断は速くなるはずです。基準がないまま複数社の提案を並べると、金額の安い順に見てしまいます。そこでここでは、期間の見積もりに外部支援を使う4つの判断軸を整理します。

4つの軸は、いずれも最初の面談で確かめられます。支援を選ぶときに見るのは実績の数ではありません。工程ごとの内訳を出せるかどうかです。

判断軸①工程ごとの内訳を出せるか

1つ目の判断軸は「工程ごとの内訳を出せるか」です。総額を避け、工程ごとの週数を提示できるかを確かめます。

この軸を最初に置くのは、内訳を出せるかどうかに経験が表れるためです。工程ごとの週数を答えられる相手は、どこで延びるかを知っています。規模によりますとしか答えない相手は、自社の案件でも同じ見積もりの作り方をしている可能性があります。

相談先の型は、開発の請負を主とする総合系、特定のツールの導入を主とする特化系、業務の設計から入る伴走系の3つに整理できます。工程ごとの週数まで答えられるのは、業務の設計から入る型に多く見られます。

最初の面談で、工程ごとの週数を聞いてみましょう。合計だけで返ってきたら、内訳は契約した後にも出てきません。

判断軸②業務設計から入ってくれるか

2つ目の軸は、業務設計から入ってくれるかどうかです。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、この点を最初に確かめます。

確かめる意味は、期間の大半を占めるのが合意と条件づくりだからです。13週間のうち、工程①と工程②で5週間を使います。設定の作業は2週間で、そこだけを請け負う相手では、期間の大半に手が届きません。

先ほどの紙器の会社が最初に相談した先は、設定の構築を提案してきました。対象の決定と条件の言語化は自社で行う前提だったため、営業企画の担当は判断を保留しています。結果として、設計は自社で進めました。

最初の提案が設定の画面から始まるか、業務の流れから始まるかで見分けましょう。設定から始まる相手は、13週間のうち2週間にしか関われません。

判断軸③小さく始める形を示せるか

3つ目の軸は、小さく始める形を示せるかどうかです。小さく始めたい場合は、1ユースケースのスモールスタートとして、対象を1つに絞る形を提案できるかを確かめます。

小さく始める形が示せる相手は、工程①の意味を理解しています。複数の対象を同時に扱う提案は、工程②の聞き取りの相手が増えて期間が読めなくなります。中堅・中小企業では専任を置けないことが多く、1つの対象で13週間を通してから広げる進め方のほうが現実的です。

この紙器の会社は、営業企画の担当1名が62時間を使って自社で進めました。対象を1つに絞ったため、14週間で運用に入っています。3つの対象を同時に設計していれば、この期間には収まりませんでした。

1つ目に何を対象にするかを聞いてみましょう。答えが複数なら、期間は読めなくなります。

判断軸④設計の確認だけを頼めるか

4つ目の軸は、設計の確認だけを頼めるかどうかです。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合に、その形で受けてもらえるかを確かめます。

この頼み方が成立するのは、工程を自社で回せる担当が1名いる場合です。工程の切り方や、待ち時間の見積もりを第三者に見てもらうだけでも、精度は変わります。構築まで一式で請け負う前提の相手には、確認だけの契約を断られることがあります。

当社が提供しているAgentic CRMの設計支援でも、工程の切り方と待ち時間の置き方だけを確認する関わり方を選べます。社内に設計を進められる担当がいるかどうかで、頼む範囲は変わります。

どこまでを自社で持つかを、相談の前に決めておきましょう。決めていれば、複数の提案を同じ条件で並べられます。

【一問一答】期間に関するよくある質問

ここまで、AIの導入期間を工程で読む方法を整理してきました。5つの工程に分けて週数を置き、待ち時間を先に確定させる手順です。実際に見積もりを作る段階では、どこまでを完了に含めるのか、どの工程なら短くできるのかといった細かい判断で迷う場面が出てきます。経営会議や稟議の場で追加の質問を受けることも多く、答えを用意しておけば差し戻しは減るはずです。そこでここでは、期間に関して寄せられることの多い質問に、順に答えていきます。

質問①導入の期間はどのくらいですか?

対象を1つに絞った場合、運用に乗るまでが13週間です。この記事で例に挙げた紙器の会社では、対象を決めるのに2週間、聞き取りと条件の確定に4週間、設定への反映と動作の確認に2週間、試験の運用に4週間、対象の追加と周知に2週間という配分でした。営業サイクルが4週間の会社の例で、サイクルが長い会社では試験の期間がその分だけ延びます。

質問②期間はAIで短くできますか?

設定への反映と動作の確認は短くできます。この会社も工程③の2週間のうち、動作の確認に自動のテストを使いました。一方、対象を決める合意と、条件を聞き取る工程、試験の運用は縮みません。実際、14週間のうち手を動かした日数は延べ14日で、残りは合意と待ち時間です。機械で減らせるのは作業の日数だけで、13週間という期間は変わらないと考えてください。

質問③期間が計画どおりかはどう測りますか?

工程ごとの実績のずれ、終わりの条件を満たした日、待ち時間の割合、投入した工数の累計の4つで測ります。全体の進捗率は使いません。50%と報告されても、どの工程で詰まっているかが見えないためです。この会社は計画13週間に対して実績が14週間で、延びたのは工程②の1週間だけだと特定できています。工程が終わるたびに、ずれを記録してください。

質問④期間が延びたらどうしますか?

まず対象の数を減らします。条件の精度を落とすより影響が小さく、運用に乗った実績が次の予算につながるためです。試験の結果が想定と大きく違う場合、たとえば該当する案件が想定の半分を下回った場合は、いったん止めて条件から作り直します。この会社は想定15件に対して該当が17件あり、この線を越えずに進みました。線は試験に入る前に数値で引いてください。

質問⑤効果が出るまでの期間はどのくらいですか?

運用に乗ってから、さらに1四半期を見てください。効果の判定には母数が必要で、商談の件数が一定たまるまで変化が偶然かどうかを区別できません。着手から効果の判定までは約6か月になります。この会社も経営会議には13週間と1四半期の2つの数字を分けて示しており、総額の見積もりで出すと過去の3か月が11か月になった経験を繰り返さずに済んでいます。

期間は、規模より工程の数で決まる

ここまで、期間が読めないときに起きる状態から、規模で見積もると外れる理由、5つの工程、工程ごとに期間を決める4つの基準、機械で縮められる範囲、延びたときに切る判断までを見てきました。共通しているのは、作業の量から期間を出していないという点です。

対象の人数やデータの量から見積もると、作業の時間しか計算に入りません。ところが実際に時間を使うのは、決める会議を待つ期間と、案件が発生するのを待つ期間です。先に決めるのは、工程ごとに誰の合意が要るかと、自社の営業サイクルが何週間かです。この2つが分かれば、待ち時間を先に足せます。

紙器の製造と印刷を手がける会社の例では、5つの工程に分けて13週間と見積もり、実績は14週間でした。延びたのは条件を言葉にする工程の1週間だけで、ずれは7.7%です。14週間のうち手を動かした日数は延べ14日で、残りは合意と案件の発生を待つ期間でした。過去に3か月の見積もりが11か月になった経験を持つ会社が、内訳を出したことで稟議を通しています。

当社では、Agentic CRMの設計支援として、工程の切り方から見積もりの作り方までを扱っています。合意が要る人数と営業サイクルを先に確かめ、待ち時間から積む形です。まずは、いま自社の営業サイクルが何週間なのかを一緒に確かめるところから始めてみませんか。

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