営業とCSの連携はなぜ進まないのか?役割分担の前に決める返す情報の設計

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「導入が終わったあと、お客様がいまどう使っているのかが分からない」という声を、営業の責任者からよく聞きます。受注が決まった瞬間から、顧客の利用の実態は営業に届かなくなります。営業とCSの連携とは、受注の前後で分かれた情報を渡し直す取り組みで、進むかどうかを決めるのは役割分担の明確さではありません。どの変化をいつ返すかを決めているかで変わります。 ここで扱う考え方はAgentic CRMの設計にもとづくもので、特定の製品を前提にしていません。

そこで本記事では、連携が切れて受注後の情報が戻らない場面から、役割分担で進まない理由、返す変化を決める4つの基準、AIに任せる線引きまでを解説します。

営業とCSの連携は、一般には次の順で整えます。まず引き継ぎの範囲と担当を決め、次に引き継ぎの様式(引き継ぎ書・定例・共有の場)をそろえます。そのうえでツール上の記録の置き場所を決め、最後に連携が続いているかを指標で確かめる、という流れです。この記事は、この流れでは扱われない「受注後の変化を営業へ返す側」に絞って扱います。返す情報を決めない限り、様式をそろえても連携は続かないためです。

連携が切れて受注後の情報が戻らない3つの場面

施工管理のクラウドサービスを提供する会社では、従業員140名のうち営業が16名、カスタマーサクセスが9名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。CSが担当する契約は620社あり、利用の状況は日々記録されています。ところが契約が決まった後の変化は営業へ渡らず、更新の商談で相手の状況を知っていた割合は22%にとどまっていました。そこでここでは、この会社を例に、連携が切れて受注後の情報が戻らない3つの場面を整理します。

3つの場面に共通するのは、CS側の記録に変化が残っていながら、その記録を営業が開く機会だけがないことです。受注後の状況が届かないのは、CSが伝えないからではありません。渡す約束が業務に入っていないためです。

比較の観点役割分担を整える場合返す情報を決める場合
決める対象誰がどこまで担当するかどの変化をいつ返すか
成果が出る条件双方が相手を理解している経路が業務に組み込まれている
担当が替わったとき合意し直しが要るそのまま動く
測る対象会議の開催回数返した情報に動いた割合
情報の量全部か何もないかに寄る判断に使う分だけ届く

場面①更新の商談で相手の状況を知らない

1つ目は「更新の商談で相手の状況を知らない」場面です。営業が久しぶりに訪問し、そこで初めて利用の実態を聞くことになります。

知らないまま臨むと、話の入り方を間違えます。使われていない機能の追加を勧めたり、すでに解決した問題を持ち出したりすれば、相手は自社を理解していないと受け取ります。更新の商談は取引を続けるかどうかを相手が決める場でもあり、ここでのずれは次の1年の関係に響いてしまうのです。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、更新の商談に臨む前に相手の状況を知っていた割合が22%でした。営業推進の担当が過去1年の商談記録から数えたもので、残る78%は当日に聞いています。営業からは「CSに聞けば分かるのに、聞くきっかけがない」という声が出ていました。

更新の前に状況を知っていた割合が半分を下回るなら、聞く機会が業務のどこにも組み込まれていないと判断して構いません。担当者の熱心さの問題として扱っている限り、次の手は決まらないままです。

場面②解約の連絡が営業に届くのが遅い

2つ目に挙げるのは、解約の連絡が営業に届くのが遅い場面です。CSが把握してから営業が知るまでに、数週間が空きます。

遅れるのは、伝える経路が個別の連絡に頼っているためです。CSは日々の対応に追われており、営業へ知らせる作業は後回しになります。しかも解約の意思が固まってから伝えても、営業にできることは残っていません。部門をまたいで数字が合わない構造はRevOpsの記事でも整理しています。

先ほどの会社では、更新の直前に解約を告げられた案件が四半期に14件ありました。CS側の記録を確認すると、そのうち11件は3か月以上前から利用が落ち込んでおり、気づかれていた変化が営業へ渡らないまま更新日を迎えていたのです。

解約になった案件をさかのぼり、変化が何か月前から記録に出ていたかを調べてください。渡せたはずの期間が月単位で見えてきます。

場面③追加の提案の機会に気づけない

3つ目は「追加の提案の機会に気づけない」場面です。相手の使い方が広がっていても、営業はその事実を知りません。

気づけないのは、良い変化を伝える経路がさらに細いためです。問題が起きたときは連絡が回りますが、順調に使われている事実はわざわざ共有されません。結果として提案できたはずの機会が過ぎていき、営業は新規の獲得へ時間を回し、既存の顧客は後回しになっていきます。

この会社では、利用する部署が増えていた顧客が年間で27社ありました。CS側の記録には残っていますが、営業へ伝えたのは3社です。営業推進の担当は、この差を機会の損失として整理しました。

返す対象を決めるときは、問題の兆候と良い変化を同じ基準で扱ってください。悪い知らせだけを運ぶ経路にすると、提案の材料は最後まで営業に届きません。

役割で解ける?連携が進まない理由3つ

ここまで挙げた3つの場面は、いずれも連携の見直しに着手する動機になります。多くの会社がまず取り組むのは、役割分担の整理と定例会議の設置です。ところが数か月後には会議が形骸化し、情報の流れは元に戻ります。議事録は残っていても、翌月に扱う顧客が入れ替わるため、前月の共有が次の行動につながりません。そこでここでは、連携を役割分担で解こうとして進まない3つの理由を整理します。

戻る理由は3つあり、いずれも会議の運営のうまさとは別のところにあります。役割分担を決めても、渡す情報が決まっていなければ何も動きません。

理由①渡す情報が決まっていないから

1つ目は「渡す情報が決まっていないから」です。分担は決まっても、何を渡すのかが言葉になっていません。

決まっていない状態では、CSは自分の判断で選ぶことになります。ところがCSは営業が次に何を判断するのかを知らないため、選ぶ基準を持てません。結果として、全部を共有するか、何も共有しないかのどちらかに寄ってしまい、いずれの場合も営業の手元には判断に使える情報が残らないのです。

この施工管理のクラウドサービスの会社でも、当初の取り決めは「顧客の状況に変化があれば営業に共有する」というものでした。CSの9名に何を共有すべきかを聞いたところ、答えは全員違っています。基準を決めないまま分担だけが先に決まり、共有するかどうかの判断はCS一人ひとりに残されていました。

分担を割り振る前に、渡す情報を1つ書き出せるかどうかを確かめてください。書けないうちは、担当者を決めても情報は動きません。

理由②渡す時期が決まっていないから

2つ目に挙げるのは、渡す時期が決まっていないからです。いつ渡すのかが決まらないと、渡す作業は永遠に後回しになります。

後回しになる理由は、CSにとって伝達が本来の業務ではないためです。目の前の問い合わせに答えることが優先され、営業への共有は手が空いたときの作業になります。手が空く日は来ません。変化が起きた時点で自動的に流れる形にしなければ、時期は決まらないままです。

先ほどの会社では、月に一度の定例会議で共有する取り決めがありました。ところが会議で扱えるのは数社にとどまり、620社のうち大半は議題に上がりません。CSが伝達に使っていた時間は月12時間で、その割に届く情報は限られていました。

渡す時期は「変化が起きたとき」に固定してください。定例を月2回に増やしても、620社という件数には追いつきません。

理由③渡した結果を誰も確かめないから

3つ目は「渡した結果を誰も確かめないから」です。共有した情報が使われたかどうかを、記録していません。

確かめる工程がないと、続ける根拠が作れません。CSは共有しても反応がないため、伝える意味を感じなくなります。営業は届いた情報の中に使えるものが少ないため、読む習慣が付きません。双方が「相手が動かない」と感じたまま、経路が細っていきます。

この会社では、共有した情報に営業が接触したかどうかを追っていませんでした。営業推進の担当が着手にあたって最初に決めたのは、この記録の残し方です。返した情報と、営業の行動と、その後の結果を紐づける形にしました。

返した結果を残す設計は、経路を作るより先に決めてください。後から足すと、それまでに返した分は比較の対象から外れます。

営業へ返す変化の4基準|何を戻せば動くか

前章の3つの理由は、いずれも「何を返すかを決めていない」という一点に行き着きます。決めるには、営業が次に何を判断するのかから逆算し、判断が決まっていれば返す対象は自然に絞れるという順番をたどります。逆算せずに候補を並べると、CS側から見て重要な変化ばかりが残り、営業が動けない一覧ができあがってしまうのです。そこでここでは、連携で営業へ返す変化を決める4つの基準を整理します。

4つの基準は、上から順に当てはめると候補が1種類まで絞られる並びになっています。返す変化は、営業が次に何を判断するかから逆算して決めます。

基準①営業の次の判断に使えるか

1つ目は「営業の次の判断に使えるか」という基準です。受け取った営業が、その情報をもとに動けるかを確かめます。

動けるかどうかで選ぶのは、動けない情報は読まれないためです。「顧客の満足度が下がっている」という共有では、営業は次に何をすればよいのかが決まりません。「先月から特定の機能の利用が半分に落ちている」であれば、確認の連絡を入れるという行動が決まります。2つの共有を分けているのは、情報の重さではありません。次の一手が書けるかどうかです。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、営業16名に「どの情報があれば動けるか」を聞き取りました。返ってきた答えのうち最も多かったのが、利用の落ち込みです。営業推進の担当は、この聞き取りを対象の選定に使っています。

候補を絞る作業は、営業への聞き取りから始めてください。CS側で想像して選ぶと、現場の関心と外れた一覧ができあがります。

基準②CSが機械で拾える変化か

2つ目に挙げるのは、CSが機械で拾える変化かという基準です。人の観察に頼らずに検知できる変化を選びます。

機械で拾える変化を選ぶ理由は、人の観察に頼ると件数に追いつかないためです。620社を9名で見ている状態では、全社の変化を人が把握することはできません。利用の記録や問い合わせの件数のように、数字として残っている変化であれば、件数が増えても拾えます。顧客ごとに判断を変える実装は個別化の記事で扱っています。

先ほどの会社では、利用の記録が日次で残っていました。前の月と比べて半分以下に落ちた顧客を抽出する形であれば、人の手は要りません。CSの担当は、この抽出を最初の対象に決めています。

候補を挙げたら、その変化が記録のどこに残るかを指させるかどうかを確かめてください。場所を指させない変化は、人が覚えていることを前提にした運用になります。

基準③繰り返し起きている変化か

3つ目は「繰り返し起きている変化か」という基準です。年に数回しか起きない変化は、後回しにします。

回数が要るのは、効果を数えるためです。月に数件しか起きない変化では、返したことが効いたのかを判断できません。件数の多い変化から始めれば、四半期で結果が読めます。重要度の高い変化から始めたくなりますが、重要な変化ほど件数が少なく、判定に時間がかかってしまうのです。

この会社では、利用の落ち込みで営業へ返す対象になった顧客が月に38社ありました。620社のうち約6%で、母数として十分です。一方、担当者の交代は月に9社で、こちらは次の対象へ回しています。

候補ごとに月の件数を数えてください。担当者の交代のように月9社の規模にとどまる変化は、四半期を通しても効いたかどうかを判定できる件数になりません。

基準④返した効果を数えられるか

4つ目は「返した効果を数えられるか」という基準です。返したことで何が変わったかを、後から測れる変化を選びます。

測れる形にする意味は、続ける根拠を最初から組み込むことにあります。理由③で止まった状態も、この設計を後回しにしたことから生まれたものでした。返した件数、営業が動いた件数、その後の結果の3つが取れれば、四半期で判断できます。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、利用の落ち込みを返した後の営業の接触を記録しました。接触した割合は68%です。さらに接触した顧客のうち、更新に至った割合まで追える設計にしています。

何をもって効いたと判断するかを、着手の前に1文で書いてください。書けない変化を対象に入れると、半年後に続けるかどうかを議論できなくなります。

連携で受け渡す4種類の情報

前章の4つの基準で対象を選ぶとき、候補になる情報の種類を知っておくと迷いません。受注後に起きる変化は数え切れませんが、営業の判断に使えるものは4つに整理できます。4つはそれぞれ記録の残り方が違い、返すまでに許される時間も同じではありません。そこでここでは、連携で受け渡す4種類の情報を整理します。

種類を増やすほど営業が1件に使える時間は減るため、最初に選ぶのは1つで足ります。営業が使えるのは4種類で、そのうち機械で拾えるのは利用の落ち込みです。

情報①利用の落ち込み

1つ目は「利用の落ち込み」です。前の期間と比べて、使われ方が減っている状態を指します。

この情報が最も扱いやすいのは、数字として残っていて、判定の基準を数値で決められるためです。前の月と比べて半分以下、あるいは特定の機能の利用が3週間ゼロといった形で条件を書けます。基準②で機械で拾える変化を選んだ理由が、ここに対応します。

先ほどの施工管理のクラウドサービスの会社では、この条件で月に38社を営業へ返しています。落ち込みの理由は現場の繁忙期であることも多く、そのすべてが解約の兆しではありません。どの動きを兆しとして拾うかの基準は、解約予兆の検知で扱っています。それでも営業が連絡を入れる理由としては十分でした。

4種類のうち、条件を数値で書けるのはこの1つだけです。着手の1つ目には、利用の落ち込みを置いてください。

情報②担当者の交代

2つ目に挙げるのは、担当者の交代です。相手の窓口が変わった事実を営業へ返します。

交代が重いのは、それまでの経緯が引き継がれていない可能性があるためです。導入を決めた担当者が異動すると、後任は契約の背景を知りません。更新の判断も、費用対効果を一から評価し直す形になります。早い時期に営業が接触できれば、経緯を伝え直す余地が残ります。

この会社では、担当者の交代が月に9社ありました。CSは問い合わせのやり取りで気づいていますが、営業へ伝える経路がありません。件数が少ないため、営業推進の担当は次の対象へ回しています。

交代の情報は、後任が更新の稟議を書き始める前に返す形にしてください。気づいてから数週間が空くと、経緯を伝え直す余地はほとんど残りません。

情報③問い合わせの内容の変化

3つ目は「問い合わせの内容の変化」です。聞かれる内容が、操作の質問から契約の条件へ移った場合などを指します。

内容の変化が手がかりになるのは、相手の関心が移ったことを示すためです。契約の期間や解約の条件を尋ねる問い合わせは、社内で見直しの議論が始まっているサインになります。買い手が社内で何を検討しているかは購買体験の記事でも扱っています。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、問い合わせを内容で分類していました。分類があるため、条件に関する質問だけを抽出できます。ただし件数が月に4社と少なく、こちらも次の対象です。

問い合わせの分類は、この情報を対象に入れる予定がない段階でも先に付けてください。分類のない記録はさかのぼって抽出できず、対象に加えた月より前の件数が空白になります。

情報④要望として挙がった機能

4つ目は「要望として挙がった機能」です。相手が求めている機能を営業へ返します。

この情報は、追加の提案につながります。場面③で挙げた機会の損失は、ここが渡っていないことから起きます。要望はCSに直接届くことが多く、営業は聞く機会がありません。渡す経路を作れば、次の商談の材料になります。

先ほどの会社では、要望が記録として残っていました。ただし記録の粒度がまちまちで、機械で分類できる形にはなっていません。営業推進の担当は、記録の書き方を整えた後に対象へ入れる判断をしています。

要望を対象に入れる前に、記録の粒度を確かめてください。書き方が担当者ごとに違う段階で経路だけを作ると、営業には要点の分からない文章が届きます。

AIに任せる?連携判断の線引き3つ

前章で情報の種類が整理できました。次に決めるのは、返すかどうかの判断をどこまで機械に渡すかです。全件を人が見る形では、620社の規模に追いつきません。ここから先はAgentic CRMの設計にもとづく、任せる範囲の話になります。そこでここでは、連携の判断をAIに任せる3つの線引きを整理します。

同じ精度で検知できる変化でも、営業が根拠を開けるかどうかで扱いは変わります。自動で返してよいのは、営業がその場で根拠を確かめられる変化に限ります。

線引き①自動で営業へ返してよい範囲

1つ目は「自動で営業へ返してよい範囲」です。人を通さずに、営業へ直接届けてよい情報を決めます。

自動で返してよいのは、判定が数値で決まっていて、営業が根拠を開ける情報です。利用の落ち込みであれば、どの機能がいつからどれだけ減ったかを添えられます。営業は数字を見て、連絡するかどうかを自分で判断できます。理由①で挙げた「動けない情報」にはなりません。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、前の月と比べて利用が半分以下に落ちた顧客を自動の対象にしました。返す内容には、落ちた機能の名前と、落ち始めた時期を添えています。運用の6か月で、営業が接触した割合は68%でした。

自動の対象は、最初は1種類に絞ってください。2つ目を足すのは、接触した割合が6割を超えた状態を3か月続けられてからで足ります。

線引き②CSが確かめてから返す範囲

2つ目に挙げるのは、CSが確かめてから返す範囲です。数字だけでは意味を判定できない変化が、この範囲に入ります。

確かめる人は、その顧客を担当しているCSが向きます。利用が落ちていても、現場の繁忙期であることをCSが把握していれば、営業へ返す必要はありません。機械が候補を出してCSが確定させる形にすると、確認の対象が絞られるぶん、時間は短く収まります。

先ほどの会社では、CSが確認したうえで営業へ返さなかった顧客が、月に11社ありました。理由は季節の要因が大半です。CSが伝達に使う時間は月12時間から月4時間へ減りましたが、返すかどうかを判断する工程は残しています。

候補を出す役と、返すかどうかを確定させる役は分けてください。分けたうえでCSに残すのは、季節の要因のように機械が持っていない事情の判定だけに限ります。

線引き③返さずに記録だけ残す範囲

3つ目は「返さずに記録だけ残す範囲」です。判定の確からしさが低い変化は、営業へ返さずに記録します。

残す選択肢を用意する意味は、営業の読む時間を守ることにあります。関連しそうな変化をすべて返すと、営業は届いた情報を開かなくなります。理由③で挙げた「読む習慣が付かない」状態は、この線を引かなかった場合に起きるのです。記録として残しておけば、後から条件を見直すときの材料になります。

この会社では、利用の落ち込みが2割程度にとどまる顧客を記録だけの範囲に置きました。営業推進の担当が四半期ごとに見返したところ、そのうち6社が翌四半期に自動の条件を満たしています。

返さないという選択は、経路を作る時点で用意しておいてください。全部を返す前提で始めると、後から条件を厳しくする判断は通りにくくなります。

連携を1情報から始める4つのステップ

ここまでで、返す対象と任せる範囲がそろいました。あとは着手の順番です。4種類の情報を同時に流そうとすると、記録の整っていない情報の準備に引きずられて数か月が過ぎます。4つのステップは、1つ目を飛ばすと残りの3つが決まらない並びです。そこでここでは、連携を1情報から始める4つのステップを整理します。

着手の順番を情報の重要度で決めると、記録の整っていない情報から手を付けることになります。最初に決めるのは情報の種類ではありません。営業に答えさせたい問いです。

ステップ①営業に答えさせたい問いを決める

1つ目のステップは「営業に答えさせたい問いを決める」ことです。返した情報で営業に何を判断させたいのかを、1文で書きます。

問いを1つに絞るのは、問いが決まらないと返す情報も決まらないためです。「顧客の状況を共有したい」という形では、何を渡せばよいのか誰にも言えません。「更新の前に接触すべき顧客はどこか」という形になって、はじめて対象を逆算できます。

この施工管理のクラウドサービスの会社が決めた問いは、「いま連絡を入れるべき顧客はどこか」でした。営業推進の担当が1文で書き、営業とCSの合同の会議で読み上げて合意を取っています。この1文が、その後の判断の基準になりました。

問いが1文で書けるかどうかを、着手の可否の判定に使ってください。書けない段階で経路の設計に進むと、返す情報の候補が最後まで絞れません。

ステップ②その問いに要る変化を選ぶ

2つ目のステップは、その問いに答えるために要る変化を選ぶことです。4種類のうち、どれが必要かを決めます。

選ぶと、対象は1つで足りることが分かります。いま連絡すべき顧客を知りたいだけなら、必要なのは利用の落ち込みです。担当者の交代も要望も、この問いには直接使いません。基準③で件数を確かめた理由が、ここに対応します。

先ほどの会社では、4種類のうち利用の落ち込みだけを最初の対象にしました。ほかの3種類は記録の粒度が足りないか、件数が少ないかのどちらかです。1種類に絞ったことで、着手から9週間で運用に入りました。

問いから逆算したとき、残る変化が2種類以上になったら選び直してください。2種類を並行させると、どちらが効いたのかを後から切り分けられなくなります。

ステップ③返す時期を決める

3つ目のステップは「返す時期を決める」ことです。変化が起きてから、どれだけの間隔で営業へ届けるかを定めます。

時期を決めておく必要があるのは、理由②で挙げたとおり、決まらないと後回しになるためです。変化を検知した時点で流すのか、週に一度まとめるのかで、営業の動き方は変わります。どちらが合うかは、その変化がどれだけ急ぐかで決まります。

この会社では、利用の落ち込みを検知した翌営業日に返す形にしました。即時を避けて翌日にしたのは、CSが確認する時間を確保するためです。営業からは、朝にまとめて届くほうが動きやすいという反応が出ています。

返す時期は、変化の種類ごとに別々に決めてください。1つの間隔で全部をそろえると、急ぐ情報が待たされるか、急がない情報が営業の手を止めるかのどちらかになります。

ステップ④返した記録を残して広げる

4つ目のステップは、返した記録を残して広げることです。返した情報と、営業の行動と、その後の結果を紐づけます。

記録を最初から組み込むのは、理由③で挙げた「効いたかを追えない」状態を避けるためです。返した件数だけでは、質が上がったのかが分かりません。営業が動いた割合と、その後の更新の結果を並べて見れば、次の情報へ広げてよいかの判断ができます。判断を機械へ移す考え方はエージェンティックAIの記事でも整理しています。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、着手から9週間で運用に入りました。CS1名と営業企画1名で、要した工数は計64時間です。運用の6か月で、更新の商談で相手の状況を知っていた割合は22%から79%へ変わりました。

記録を残す設計は、経路の設計と同じ週に作ってください。後から足すと、最初の数か月は前後を比べられない期間になります。以上が、連携を1情報から始める4つのステップでした。

連携の設計でつまずく3つの落とし穴

前章の4つのステップは、順番どおりに進めば運用まで届きます。ところが途中で元の形へ戻ってしまう会社があり、戻り方には共通した型があります。先に知っておけば避けられるものばかりです。3つとも、運用が始まって数か月が過ぎたころに現れます。そこでここでは、連携の設計でつまずく3つの落とし穴を整理します。

つまずく時期は、経路が動き始めて件数が増えてきた後に集中します。全部の変化を流すと、営業は届いた情報を読まなくなります。

落とし穴①全部の変化を営業へ流す

1つ目は「全部の変化を営業へ流す」ことです。せっかく経路を作ったのだからと、拾えた変化をすべて届けてしまいます。

全部を流すと、営業が1件あたりに使える時間が減ります。620社の規模では、条件を絞らなければ日に数十件が届きます。読む時間がないため、営業は通知を開かなくなるのです。線引き③で返さない範囲を作った理由が、ここに対応します。

先ほどの施工管理のクラウドサービスの会社でも、当初は変化を広く拾う案がありました。営業推進の担当が件数を試算したところ、月に200件を超える見込みです。1種類に絞る判断へ切り替え、実際に返したのは月38件でした。

返す件数の上限は、条件を書く前に決めてください。営業1名あたり月3件を目安に置けば、16名の体制で月48件が上限になります。

落とし穴②返した件数を成果とみなす

2つ目に挙げるのは、返した件数を成果とみなすことです。CSが共有した件数を、連携が進んだ証拠として報告してしまいます。

件数を成果に置くと、増やす方向にしか動けません。ところが返した情報に営業が動かなければ、CSの作業が増えただけで終わります。見るべきは件数より、返した情報に営業が動いた割合です。件数と割合を同時に追うと、条件を緩めた月に件数だけが伸びる動きも見えます。

この会社では、報告の対象を返した件数から営業が接触した割合へ変えました。運用の6か月で68%です。件数を追っていた期間には見えなかった数字で、営業推進の担当はこれを合同の会議での報告に使っています。

報告に載せる指標は、件数と割合を並べる形にしてください。割合を単独で置くと、母数が減っただけの改善を成果と読み違えます。

落とし穴③CSの判断に丸ごと任せる

3つ目は「CSの判断に丸ごと任せる」ことです。何を返すかをCSの裁量に委ね、基準を決めないまま運用します。

丸ごと任せると、理由①の状態に戻ります。CSは営業の判断を知らないため、選ぶ基準を持てません。しかも担当が替わるたびに基準が変わり、返ってくる情報の質が人によって違ってきます。導入したが使われない状態の立て直しで、定着まで伴走してほしい場合にも、基準を文書にしているかが分かれ目になります。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、返す条件を数値で書き出しました。前の月と比べて半分以下という形で、誰が見ても同じ判定になります。CSが確認するのは、その条件に該当した後の季節の要因だけです。

返す条件は、CSの誰が当番でも同じ判定になる数値にして、着手の週のうちに文書へ落としてください。裁量に委ねたままの設計は、最初の担当者が異動した月に止まります。

効いている?営業とCSの連携を測る4指標

ここまでで、設計と着手の順番、避けるべき形がそろいました。次に必要なのは、効いているかどうかを確かめる方法です。返した件数だけを見ていると、落とし穴②と同じ状態になります。4つの指標は、返した件数の多さを評価するために置くものではありません。受け取った営業の行動と、その後の結果と、渡す側の負担の3方向から見ます。そこでここでは、連携が効いたかを測る4つの指標を整理します。

4つのうち3つは四半期ごと、1つは毎月見る形にすると、確認の負担が偏りません。見るべきは返した件数より、更新の商談で相手の状況を知っていた割合です。

指標①返した情報に営業が動いた割合

1つ目は「返した情報に営業が動いた割合」です。届いた情報のうち、実際に接触へつながった件数を数えます。

この割合は、返す条件が適切かをそのまま表します。割合が低いときは、条件が緩すぎて動く必要のない情報まで届いている状態です。落とし穴②で報告の対象をここへ変えた理由が、これにあたります。件数を増やしても、この割合が下がれば意味がありません。

この会社では、月38件に対して営業が接触した割合が68%でした。残る32%を営業推進の担当が確認したところ、既に別件で連絡していた顧客が大半です。条件を調整する材料になりました。

この指標だけは毎月見てください。2か月続けて下がったときは、営業の動きより先に、返す条件の側を疑います。

指標②更新の商談で状況を知っていた割合

2つ目に挙げるのは、更新の商談で状況を知っていた割合です。商談に臨む前に、相手の利用の実態を把握できていた件数を数えます。

この指標を置くのは、場面①で挙げた状態が解けたかを確かめるためです。情報が届いていても、更新の時期に思い出せなければ意味がありません。商談の記録に相手の状況が書かれているかどうかで判定できます。

先ほどの施工管理のクラウドサービスの会社では、22%から79%へ変わりました。営業推進の担当が商談の記録から数えたもので、判定の基準は着手の前に決めています。基準を先に決めていたため、後から議論になりませんでした。

この割合は、更新が一巡する期間を待ってから比べてください。契約の更新周期が1年なら、着手から1年後の四半期が最初の比較点になります。

指標③直前に解約を告げられた件数

3つ目は「直前に解約を告げられた件数」です。更新の1か月前を切ってから解約の意思を知った案件を数えます。

この件数を見る理由は、気づくのが遅れた案件を直接表すためです。件数がゼロにはなりませんが、減っていれば早い段階で拾えるようになっています。また、止まった案件を検知する考え方はパイプラインの停滞の記事でも扱っています。

この会社では、四半期14件から5件へ減りました。残る5件のうち3件は、相手の事業の縮小によるもので、早く知っても結果は変わりません。営業推進の担当は、この内訳まで報告に含めています。

残った件数は、防げたものと防げなかったものに分けて数えてください。分けずに合計だけを追うと、経路を直せば減る件数まで諦めることになります。

指標④CSが伝達に使った時間

4つ目は「CSが伝達に使った時間」です。営業へ情報を渡すためにCSが使った時間を測ります。

時間を測るのは、経路が業務として成立しているかを確かめるためです。時間が増え続けるなら、その経路は続きません。自動で返す範囲を広げるほど、この時間は減ります。減った時間が本来の業務へ戻っているかも、あわせて確かめます。

この施工管理のクラウドサービスの会社では、月12時間から月4時間へ減りました。CSの人数は9名のまま変えていません。空いた時間は、条件に該当した顧客への直接の対応へ回っています。

伝達の時間と、返した件数を並べて見てください。件数が増えているのに時間も増えているなら、機械に任せたはずの工程が人の手に戻っています。

連携を人が担う3つの例外

ここまで、機械に任せる範囲の決め方を扱ってきました。では人が直接話して渡す範囲をどこまで残すのかが、最後に決めることになります。落とし穴③で挙げたとおり、裁量に委ねるのは危険ですが、機械だけに寄せるのも違うでしょう。残す範囲を決めておかないと、例外にあたる案件は誰の手にも渡らないまま過ぎていきます。そこでここでは、連携を人が担う3つの例外を整理します。

例外に置くかどうかは、CSの余力で決めるものではありません。通知の文面だけで意味が伝わるかどうかで判定します。相手の体制が大きく変わる案件は、人が話して渡す範囲に残します。

例外①相手の体制が大きく変わる案件

1つ目の例外は「相手の体制が大きく変わる案件」です。合併や部署の統廃合が起きた顧客が、これにあたります。

体制の変化は、数字に出るまでに時間がかかります。利用の落ち込みとして現れるのは数か月後であり、その時点では相手の検討が進んでいるでしょう。CSが会話のなかで知った情報を、そのまま営業へ渡すほうが早くなります。機械の検知を待つ意味がありません。

この会社では、年に数件、顧客側で事業部の再編がありました。CSが打ち合わせで聞き取り、その日のうちに営業へ伝えています。営業推進の担当は、この種の情報を機械の対象から外す条件を明示しました。

会話で知った変化は、記録に残る前に人が渡してください。数字に出るのを待つと、相手の検討が終わった後の連絡になります。

例外②契約の条件を見直す案件

2つ目に挙げるのは、契約の条件を見直す案件です。値引きや契約期間の変更が話題に出た場合を指します。

条件の話を機械が中継すると、経緯が落ちます。相手がどういう文脈でその話を出したのかは、やり取りの全体を知っている人にしか伝えられません。外部の支援を受ける場合でも、この例外の置き方は自社で決められます。

先ほどの施工管理のクラウドサービスの会社では、条件に関する話題が出た時点でCSが営業へ直接連絡する取り決めにしました。件数は月に数件で、負担にはなっていません。

条件の話は、要点を切り出さずに経緯ごと渡してください。誰が、どの場面で、何と比べてその話を出したのかが抜けると、営業は値引きの可否だけを判断することになります。

例外③不満が表に出ている案件

3つ目は「不満が表に出ている案件」です。相手から明確な不満が伝えられている場合が入ります。

不満を機械の通知で伝えると、深刻さの度合いが落ちます。営業が軽く受け取れば、相手の心証はさらに悪くなってしまうのです。誰がいつ何に対して不満を述べたのかを、CSが直接説明する必要があります。部門をまたぐ指標の置き方はKPI設計の記事でも扱っています。

この会社では、不満の記録があった顧客を機械の通知から外しています。CSが営業へ直接伝え、必要なら同席の面談を設定する形です。件数は四半期に数件でした。

不満の案件は、機械の通知の対象から外す条件を明文化してください。除外の条件を書いておかないと、条件に該当した月に自動で流れてしまいます。

連携の設計に外部支援を使う4つの判断軸

ここまで挙げてきた設計は、CSと営業企画が1名ずついれば自社で進められる範囲です。とはいえ、返す変化の選び方や条件の粒度で迷う場面は出てきます。外部の支援を検討する場合は、何を基準に選ぶかを整理しておくと判断が速くなるでしょう。そこでここでは、連携の設計に外部支援を使う4つの判断軸を整理します。

4つの判断軸は、いずれも最初の面談のなかで確かめられる内容にそろえています。支援を選ぶ基準は実績の数ではありません。どの変化から始めるかを一緒に決められるかどうかです。

判断軸①どの変化から始めるかを決められるか

1つ目の判断軸は「どの変化から始めるかを決められるか」です。返す対象を絞る段階から関わってもらえるかを確かめます。

この軸を最初に置くのは、通知の仕組みを作る作業より、どの変化を選ぶかの判断のほうが難しいためです。ステップ①の問いを1文で書く作業を一緒にやってもらえるかどうかで、その後の成果が変わります。仕組みの構築から入る提案は、この段階を飛ばしています。

支援を探す会社の型は、大きく3つに分かれます。システム連携の実装を主とする総合系、特定のツールの導入を主とする特化系、業務の設計から入る伴走系です。変化の選定から一緒に決められるのは、3つ目の型になります。

最初の面談で、返す情報の選び方の話が出るかを見てください。出ないまま提案書に進むなら、絞る作業は自社に残ると考えて予定を組みます。

ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、返す情報を商談の進め方に合わせて選べるかが判断材料になります。

判断軸②業務設計から入ってくれるか

2つ目に挙げるのは、業務設計から入ってくれるかという軸です。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、この点を最初に確かめます。

確かめる意味は、連携の設計が業務側の定義に依存しているためです。何を営業へ返すべきかは、自社の商材と更新の進み方から決まります。ツールの設定はその後の作業であり、順番が逆になると、通知は動くのに読まれない状態になります。

先ほどの会社が最初に相談した先は、システム間の連携基盤の構築を提案してきました。何を返すかは自社で決める前提だったため、営業推進の担当は判断を保留しています。結果として、変化の選定は自社で行いました。

提案書の1枚目が業務の流れの図か、設定の画面かを見てください。画面の説明から始まる相手に依頼すると、決める作業は自社に残ったまま費用だけが動きます。

判断軸③小さく始める形を示せるか

3つ目は「小さく始める形を示せるか」という軸です。小さく始めたい場合は、1ユースケースのスモールスタートで動かす形を提案できるかを確かめます。

小さく始める形が示せる相手は、着手の順番を理解しています。4種類の情報をまとめて流す提案は、落とし穴①と同じ形になりがちです。中堅・中小企業では専任を置けないことが多く、1情報で成果を確かめてから広げる進め方のほうが現実的になります。

この施工管理のクラウドサービスの会社は、CS1名と営業企画1名が64時間を使って自社で進めました。1種類に絞ったため、9週間で運用に入っています。4種類を最初から設計していれば、この期間には収まりませんでした。

1つ目に何をやるかを聞いてください。答えが全体の設計から始まる場合、運用に入るまでの期間は9週間では収まりません。

判断軸④設計の確認だけを頼めるか

4つ目は「設計の確認だけを頼めるか」という軸です。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合に、その形で受けてもらえるかを確かめます。

この形が成立するのは、自社に設計を進められる担当がいる場合です。返す条件の置き方や、人が担う例外の切り方を第三者に見てもらうだけでも、判断の速さは変わります。構築を一式で請け負う前提の相手には、この形が難しいことがあります。

当社では、Agentic CRMの設計支援として、こうした確認だけを引き受ける形にも対応しています。返す条件の数値と、人が担う例外の一覧を持ち込んでもらう進め方です。

どこまでを頼むかは、相談の前に自社で決めておいてください。範囲を決めずに複数社へ声をかけると、提案の内容が比べられなくなります。

【一問一答】連携に関するよくある質問

ここまで、営業とCSの連携で返す情報の決め方から、外部支援の選び方までを整理してきました。実際に着手する段階では、返す情報を1つに絞る場面や、CSと営業のどちらが決めるかを分ける場面で、細かい判断に迷うことがあります。着手の順番と、任せる範囲と、効果の測り方の3つは、なかでも相談を受けることの多い箇所です。答えの根拠になる考え方は、それぞれ本文の該当する章に置いています。そこでここでは、連携に関して寄せられることの多い質問に、順に答えていきます。

質問①連携はどこから始めますか?

営業に「どの情報があれば動けるか」を聞き取るところから始めます。CS側で想像して選ぶと、外れます。この記事で例に挙げた施工管理のクラウドサービスの会社では、営業16名への聞き取りから、4種類のうち利用の落ち込みだけを最初の対象にしました。数字として残っていて、月に一定の件数が起きていて、効果を後から数えられるものを1つだけ選んでください。

質問②連携の判断はAIに任せられますか?

条件を数値で書ける変化の検知と、条件を満たしたときの通知までは任せられます。ただし季節の要因のように数字だけでは判定できない事情があるため、CSが確認する工程は残してください。この会社では、条件に合う月38社のうち、CSが確認したうえで営業へ返さなかった顧客が月に11社ありました。会話でしか分からない情報は人が渡します。

質問③連携の効果はどう測りますか?

返した情報に営業が動いた割合、更新の商談で状況を知っていた割合、直前に解約を告げられた件数、CSが伝達に使った時間の4つで測ります。この会社では、状況を知っていた割合が22%から79%へ変わり、CSが伝達に使った時間は月12時間から月4時間へ減りました。返した件数は成果になりません。件数が増えても動いた割合が下がれば、CSの作業が増えただけで終わります。

質問④連携の情報は誰が決めますか?

営業とCSの双方が入って決めてください。CSだけで決めると営業の判断に使えない情報になり、営業だけで決めると数字として拾えない情報になります。この会社では営業16名への聞き取りを起点にしており、CSが候補を並べる前に営業の答えを取っています。営業に答えさせたい問いを1文で書き、双方が読み上げて合意する形が現実的です。

質問⑤連携はどのくらいで効きますか?

1つの情報に絞った場合、運用に入るまでが9週間ほどです。この会社は、CS1名と営業企画1名が64時間を使って自社で進め、9週間で運用に入りました。営業が動いた割合は早い段階で読めますが、更新の結果まで含めた効果は契約の更新周期を1回またぐまで分かりません。最初の四半期は、条件を変えずに数字を集める期間と考えてください。

連携は、返す情報を決めたところから動き出す

営業とCSの連携は、どの変化をいつ返すかを決めたところから動き出します。本記事では、受注後の情報が営業に戻らない状態を出発点に、返す対象の選び方から、機械に任せる範囲、人が残す例外、効いたかを測る指標までを一連の設計として整理してきました。共通しているのは、組織の話から始めていないという点です。

役割分担の整理と定例会議の設置から入ると、決まるのは「誰が担当するか」までです。何を渡すのかが決まっていなければ、CSは選ぶ基準を持てず、営業は届いた情報を読みません。先に決めるのは、営業に答えさせたい問いです。問いが1つ決まれば、返す変化も、返す時期も、任せてよい範囲も順に決まっていきます。

施工管理のクラウドサービスの会社の例では、620社の契約とCS9名の体制を変えないまま、返す情報を1種類に絞りました。営業が接触した割合は68%、更新の商談で相手の状況を知っていた割合は22%から79%へ変わっています。更新の直前に解約を告げられた案件は四半期14件から5件に減り、CSが伝達に使う時間は月12時間から月4時間になりました。体制が変わる案件と不満のある案件は、いまもCSが直接話して渡しています。

当社では、Agentic CRMの設計支援として、返す情報を決めるところから運用に乗せるまでを扱っています。営業への聞き取りから入り、条件を数値で書き出す形です。まずは、いま営業が何を知らないまま更新の商談に臨んでいるのかを一緒に確かめるところから始めてみませんか。

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