部門ごとの目標はすべて達成しているのに、経営会議に出す数字が毎回合わない、という状況に心当たりはないでしょうか。RevOps(レベニューオペレーション)とは、マーケティング・営業・カスタマーサクセスという収益を生む部門の連携を強化し、統合的に管理する機能や組織のことです。分業によって専門性は高まった一方で、部門間の連携不足やKPIの分断が、収益の伸びを止めているケースは少なくありません。
そこで本記事では、収益の数字が合わなくなる状況の整理から、RevOpsがその分断をどうつなぎ直すのか、構成要素・組織体制・導入の5ステップまでを、一連の流れとして解説します(本記事の内容は2026年8月時点のものです)。
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この記事を書いた人
合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援と、Agentic CRM設計支援を提供している。
部門ごとの目標は達成しているのに、経営に出す数字が合わない

RevOpsという考え方に行き着く企業の多くは、まず数字が合わないという状況から検討を始めています。ここでは、勤怠・労務管理のクラウドサービスを提供する中堅BtoB SaaS企業を例に、収益の流れがどこで途切れていたのかを整理します。
それぞれの部門が目標を達成しても、会社全体の収益は伸びない
部門ごとの目標達成と、会社全体の収益の伸びは、必ずしも一致しません。
今回例に挙げる勤怠・労務管理SaaSの企業は、従業員180名で、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスをThe Modelの考え方で分業しており、マーケティングはリード獲得数、営業は受注金額、カスタマーサクセスは解約率という、それぞれ別の目標を追っていました。四半期の報告会では、どの部門も目標を達成したと報告しており、資料の上では問題が見当たりませんでした。
それでも、会社全体の収益は計画に届いていませんでした。経営会議では、社長から「全部門が目標を達成しているのに、なぜ収益計画に届かないのか」と問われました。マーケティング責任者はリードの獲得数を、営業責任者は受注金額を示しましたが、どちらの数字も目標を上回っています。獲得したリードの質が営業の求めるものと合わず、受注した顧客が半年で解約するということが繰り返し起きていたのですが、その問いに答えられる部門は、どこにもありませんでした。
部門の目標がすべて達成されているのに収益が伸びていないなら、問題は部門と部門の間で起きています。
経営会議のたびに、各部門が別々の数字を持ち寄る
数字が合わなくなっていた要因の一つは、部門ごとに別のツールで数字を管理していたことでした。
マーケティング・営業・カスタマーサクセスがそれぞれ別のツールで数字を持っていると、収益全体の状況を一つの画面で確認できないからです。
この企業では、マーケティングはMAツール、営業はCRM、カスタマーサクセスは独自の管理表で数字を追っており、経営会議のたびに各部門が別々の集計を持ち寄っていました。同じ「商談」という言葉が部門ごとに違う状態を指していたため、数字の突き合わせだけで時間が過ぎていきます。四半期の着地予測も、営業の受注見込みだけを根拠にしており、契約後の解約や追加契約が反映されていません。その結果、着地予測と実績のずれが20%を超えることも珍しくありませんでした。
どこに問題があるのかを判断するまでに数週間かかることもあり、経営が判断に使える数字が一つもないまま、四半期が進んでいました。
部門の間に落ちた問題は、どの部門のKPIにも表れない
収益の流れが途切れていたのは、いずれも部門と部門の接続点でした。
たとえば、マーケティングが渡した見込み客のうち、営業がフォローしないまま放置されるものが一定数あり、その多くは半年後に競合へ流れていました。営業からカスタマーサクセスへの引き継ぎでも、商談中に顧客が挙げていた懸念が伝わっておらず、導入後の面談で顧客が同じ説明を繰り返す場面がありました。どちらも、どの状態になったら次の部門へ渡すのか、渡した後は誰がいつまでに対応するのかが決められていなかったために起きていました。
こうした損失は、どの部門のKPIにも表れませんでした。マーケティングの獲得数にも、営業の受注金額にも、カスタマーサクセスの解約率にも、放置された見込み客の数は計上されないからです。
部門の間に落ちた問題は、どの部門の目標にも表れないため、経営が気づいたときには数か月分の収益機会が失われています。
RevOpsは分断した収益プロセスをどうつなぎ直すのか

前章では、収益の流れが部門の接続点で途切れている状況を整理しました。日本のBtoB企業では、The Modelという分業の考え方が広く使われています。そこでここでは、RevOpsの定義とThe Modelとの違い、そして対象となる部門について解説していきます。
| 観点 | The Model | RevOps |
|---|---|---|
| 目的 | 各工程を専門化して生産性を高める | 収益全体を一つの流れとして最適化する |
| 単位 | 部門・工程ごと | 収益(顧客ライフサイクル全体) |
| KPI | 部門ごとに個別のKPI | 部門横断の共通KPI |
| 課題 | 連携不足・KPI分断・サイロ化 | 分断を共通の軸でつなぎ直す |
The Modelの分業は、なぜ収益全体の伸びを止めるのか
The Modelは、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスを分業する体制であり、各工程の専門性を高めて生産性を上げる点では有効に機能します。実際に、先ほどの企業でもThe Modelを取り入れてから、マーケティングは見込み客の獲得に、インサイドセールスは商談化に集中できるようになり、営業一人あたりの商談数も増えました。
一方でThe Modelには、部門ごとの分断とサイロ化という課題があります。工程を分けるほど、それぞれが自分のKPIだけを追うようになり、部門をまたいだ収益全体への視点が薄れるからです。
この企業では、マーケティングが見込み客の獲得数を追った結果、量は増えたものの、受注につながらない見込み客が大半を占めるようになりました。営業は「質が低い」と言い、マーケティングは「数は達成している」と言う。どちらの部門も自分のKPIは達成しているため、問題の責任がどこにあるかも定まりませんでした。部門の間に落ちた問題は、放置されたままになります。
つまり、分業という設計に問題があるというより、分業した部門をつなぐ設計が欠けていることが、収益全体の伸びを止めていました。
RevOpsは分業を否定せず、収益という共通の軸でつなぎ直す
RevOpsとは、収益を生む部門の連携を強化し、統合的に管理する機能や組織のことです。The Modelの分業を否定せず、その分断を収益という共通の軸でつなぎ直します。
なぜこうした機能が必要かというと、マーケティング・営業・カスタマーサクセスがそれぞれ最適化を進めても、部門をまたぐ引き渡しやデータが分断されていれば、収益全体は最大化しないからです。
先ほどの企業を例にとると、The Modelの体制は残したまま、マーケティングから営業への引き渡し基準を共通のものに揃え、部門を横断する収益のKPIを設定しました。見込み客の獲得数ではなく、受注につながった見込み客の数をマーケティングの指標に変えたところ、量を追う動きが止まり、部門間の対立も減りました。体制を壊さずに、指標とプロセスをつなぎ直しただけです。
RevOpsはThe Modelを置き換えるものではありません。分業した部門を、収益という共通の軸でつなぎ直す設計です。
RevOpsの読み方と語源(Revenue Operations)
RevOpsは「レブオプス」と読み、Revenue Operations(レベニューオペレーション)を略した言葉です。
Revenueは収益、Operationsは業務の運用や仕組みを指します。つまり、収益を生み出す一連の業務を、一つの運用として設計するという意味が、言葉自体に込められています。日本語では「レベニューオペレーション」と表記されることもあり、RevOpsと併記されるのが一般的です。
SalesOps(セールスオペレーション)やMarketingOps(マーケティングオペレーション)といった、部門ごとの運用機能を指す言葉もありますが、RevOpsはそれらを収益という単位で束ねた、より上位の概念にあたります。この企業でも、営業企画がCRMの運用を、マーケティング担当がMAツールの運用をそれぞれ担っていました。ただし、両者をまたいで収益で判断する役割は置かれておらず、部門ごとの運用機能は揃っているのに、それらを束ねる機能だけが欠けている状態でした。
このように、RevOpsという言葉は、業務を部門単位で切らず、収益を単位に設計するという考え方を、そのまま名前に表しています。
RevOpsが対象とする3部門(マーケ・営業・カスタマーサクセス)
RevOpsが対象とするのは、収益に直接関わるマーケティング・営業・カスタマーサクセスの3部門です。
なぜこの3つかというと、顧客が自社を知ってから、契約し、使い続けるまでの一連の流れを、この3部門が分担して担っているからです。インサイドセールスを置く企業では、マーケティングと営業の間に入る役割として、この範囲に含まれます。
具体例でいうと、先ほどの企業では、マーケティングが認知と見込み客の獲得を、インサイドセールスが商談化を、営業が受注を、カスタマーサクセスが定着と契約の継続を担っていました。この4つの役割は、顧客から見れば一つの体験としてつながっています。しかし社内では、それぞれが別のツールと別の目標で動いていました。
このように、顧客にとっては一続きの体験を、社内では複数の部門が分担している。この構造こそが、RevOpsが対象とする範囲です。
RevOpsを構成する4つの要素

ここまで、RevOpsとThe Modelの違いを整理してきました。では、RevOpsという機能は、具体的に何から成り立っているのでしょうか。RevOpsは、オペレーション・イネーブルメント・インサイト・テクノロジーという4つの要素で構成されます。ここでは、その4つの要素を順に解説します。
要素①オペレーション(業務プロセスの統合設計)
1つ目の要素は、オペレーションです。部門をまたぐ業務プロセスを、一つの流れとして統合的に設計する役割を担います。
なぜなら、部門ごとに最適化されたプロセスをつなげただけでは、引き渡しの基準やタイミングがずれ、案件がこぼれてしまうからです。
たとえば、先ほどの勤怠・労務管理SaaSの企業では、マーケティングが見込み客を営業へ渡す基準が明文化されておらず、担当者の判断で送られていました。オペレーションの役割は、どの状態になったら次の部門へ渡すのか、渡した後は誰がいつまでにフォローするのかを、収益の流れ全体で定義することです。この企業では、引き渡しの条件と対応期限を決め、全部門が同じ手順で動けるようにしました。
このように、オペレーションは部門をまたぐ業務の流れを設計し、収益プロセスを一本につなぐ役割を持ちます。
要素②イネーブルメント(人材育成とツール活用支援)
2つ目の要素は、イネーブルメントです。担当者がプロセスとツールを使いこなせるように支援する役割を担います。
プロセスやツールを整えても、現場の担当者が使いこなせなければ、設計は機能しないからです。
たとえば、この企業では、新しい引き渡し基準を決めた後、その基準をどう判断するかの研修を、営業とマーケティングの合同で行いました。あわせて、CRMへの入力手順やレポートの見方を共有し、担当者が迷わず運用できる状態を整えました。この企業では、ルールを配るだけで終わらせず、担当者が実際に運用できる状態まで整えたのです。ルールが現場で使われて初めて、設計したプロセスは意味を持ちます。
このように、イネーブルメントは、設計したプロセスを現場が実行できる状態にする役割を持ちます。
要素③インサイト(データ分析と可視化)
3つ目の要素は、インサイトです。収益に関わるデータを分析し、意思決定に使える形で可視化する役割を担います。
なぜなら、部門をまたいだ数字を一つの視点で見なければ、どこに問題があるのかを特定できないからです。
たとえば、先ほどの企業では、見込み客の獲得から受注、契約の継続までを一つのダッシュボードで見られるようにしました。すると、特定の流入経路から来た顧客の解約率が高いことが分かり、その経路への投資を見直せました。部門ごとのレポートを別々に見ていた頃には、気づけなかった問題です。収益の流れ全体を一つの視点で見ることで、部門をまたいだ問題が浮かび上がります。
このように、インサイトは分断された数字を統合し、収益全体の問題を特定する役割を持ちます。
要素④テクノロジー(CRM・MA・BIの基盤管理)
4つ目の要素は、テクノロジーです。CRM・MA・BIといったツールの基盤を管理し、データがつながる状態を保つ役割を担います。
なぜなら、ツールが部門ごとにばらばらに導入され、データが連携していなければ、統合された分析も自動化もできないからです。
たとえば、この企業では、マーケティングのMAツールと営業のCRM、カスタマーサクセスの管理表が、それぞれ独立して動いていました。テクノロジーの役割は、これらを連携させ、顧客のデータが一つのIDでつながる状態をつくることです。ツールを増やすことより、既存のツールをつなぎ、データの重複や欠けをなくすことが優先されます。
RevOpsはオペレーション・イネーブルメント・インサイト・テクノロジーの4つがそろって初めて機能します。どれか一つだけを整えても、収益全体はつながりません。
RevOpsを導入する4つのメリット

前章では、RevOpsを構成する4つの要素を解説しました。では、これらを整えると、企業にはどのような変化が起きるのでしょうか。ここでは、RevOpsを導入する4つのメリットを解説します。
メリット①部門間のデータ連携で顧客体験が一貫する
1つ目のメリットは、部門間でデータが連携され、顧客体験が一貫することです。
なぜなら、顧客の情報が部門をまたいで共有されていれば、担当者が変わっても、これまでのやり取りを踏まえた対応ができるからです。
たとえば、先ほどの企業では、以前は営業からカスタマーサクセスへ引き継ぐ際、商談中に顧客が挙げていた懸念が伝わっていませんでした。導入後の面談で、顧客が同じ説明を繰り返す場面が何度もありました。データを連携させてからは、商談中の記録がそのまま引き継がれ、顧客は同じ話を繰り返さずに済むようになりました。顧客にとっては、担当が変わっても一つの会社と話している状態が保たれます。
このように、データの連携は、顧客から見た体験を一続きのものに変えます。
メリット②収益予測の精度が向上する
2つ目のメリットは、収益予測の精度が上がることです。
なぜなら、見込み客の獲得から受注、契約の継続までのデータが一つにつながれば、収益の見通しを一貫した基準で立てられるからです。
たとえば、この企業では、以前は営業の受注見込みだけで四半期の着地を予測していました。しかし、契約後の解約や追加契約が数字に入っていないため、予測と実績のずれが20%を超えることも珍しくありませんでした。マーケティングの獲得状況とカスタマーサクセスの継続状況まで含めて予測するようにしてから、着地の見通しが実態に近づき、統合から半年後にはこのずれが8%以内に収まりました。収益の一部だけを見て立てた予測は、どうしても実態からずれます。
このように、収益全体のデータがつながることで、予測は正確になります。
メリット③重複業務が削減され生産性が上がる
3つ目のメリットは、部門間の重複業務が減り、生産性が上がることです。
なぜなら、部門ごとに同じデータを別々に入力したり、似たレポートを個別に作ったりする作業が、統合によってなくなるからです。
たとえば、先ほどの企業では、マーケティング・営業・カスタマーサクセスが、それぞれ月次のレポートを別の形式で作っていました。同じ顧客の情報を、3つのツールに手で入力している場面もありました。データ基盤を統合してからは、レポートは一つの元データから自動で生成され、二重入力もなくなりました。各部門が同じ数字を別々に作る作業は、統合すればまとめて減らせます。
このように、統合によって重複した作業が消え、担当者は本来の業務に時間を使えます。
メリット④共通KPIで部門の対立が減る
4つ目のメリットは、部門横断の共通KPIによって、部門間の対立が減ることです。
なぜなら、それぞれが自分のKPIだけを守ろうとする状態から、同じ数字を一緒に追う状態へ変わるからです。
たとえば、この企業では、マーケティングと営業が「見込み客の質」をめぐって対立していました。共通のKPIとして、受注につながった見込み客の数を両部門で追うようにしたところ、マーケティングは量だけを追う動きをやめ、営業はフォローの状況を共有するようになりました。導入から1年で、渡した見込み客の商談化率は約1.8倍になりました。同じ数字で評価されるようになると、部門は自然に協力し始めます。
共通のKPIを持つことは、部門の対立をなくすうえで最も効果の大きい打ち手です。
RevOps導入で陥りやすい3つの落とし穴

ここまで、RevOpsを導入するメリットを整理してきました。ただし、RevOpsは導入すれば必ず成果が出るというものではありません。ここでは、導入の過程で陥りやすい3つの落とし穴を解説します。
落とし穴①組織を作るだけでプロセスを設計せず形骸化する
1つ目の落とし穴は、RevOpsという組織を作っただけで、プロセスを設計せず形だけに終わることです。
なぜなら、部署を新設しても、部門をまたぐ業務の流れと引き渡しの基準を決めなければ、これまでと何も変わらないからです。
たとえば、ある企業では、RevOps推進室という部署を立ち上げましたが、各部門のプロセスには手を入れませんでした。推進室は各部門から数字を集めて報告するだけの役割になり、部門間の分断は残ったままでした。組織図が変わっても、現場の動き方が変わらなければ、収益は変わりません。先に決めるべきは、組織図よりも部門をまたぐ業務の流れです。
このように、組織を作ることを目的にすると、RevOpsは形だけの存在になります。
落とし穴②データ基盤を整備しないまま統合しようとして頓挫する
2つ目の落とし穴は、データ基盤を整えないまま統合を進めようとして、途中で止まってしまうことです。
なぜなら、部門ごとにデータの定義や粒度が違えば、それらをつなげても、意味のある数字にならないからです。
たとえば、ある企業では、各部門のツールを連携させようとしましたが、同じ「商談」という言葉が部門ごとに違う状態を指していました。マーケティングが商談と呼ぶものと、営業が商談と呼ぶものが一致しないまま統合したため、出てきた数字は誰も信用しませんでした。まず必要だったのは、データの定義を揃えることでした。定義の統一を飛ばした統合は、数字への不信だけを残します。
このように、定義を揃えないままの統合は、途中で頓挫します。
落とし穴③経営のコミットがなく部門の抵抗で進まない
3つ目の落とし穴は、経営のコミットがなく、部門の抵抗で進まなくなることです。
なぜなら、RevOpsは部門のKPIや評価の仕組みにまで踏み込むため、現場の判断だけでは決めきれないからです。
たとえば、ある企業では、担当者レベルでRevOpsの必要性が語られていましたが、各部門長は自部門のKPIが変わることに抵抗しました。評価制度に手を入れる判断は経営にしかできず、結局、提案は宙に浮いたままになりました。共通KPIを設定するには、経営が判断して進める必要があります。部門長どうしの話し合いだけでは、KPIの見直しは決着しません。
RevOpsは部門のKPIと評価の仕組みに踏み込むため、経営のコミットなしには前へ進みません。
RevOpsの組織体制とCROの役割

前章では、RevOps導入で陥りやすい落とし穴を整理しました。では、RevOpsを実際に機能させるには、どのような組織体制が必要なのでしょうか。ここでは、CROの役割と、RevOps組織に必要な機能、中堅企業が現実的に始められる最小構成を解説します。
CRO(最高収益責任者)が担う統括の役割
CRO(Chief Revenue Officer・最高収益責任者)は、収益全体を統括する役割を担います。
なぜこの役職が必要かというと、マーケティング・営業・カスタマーサクセスがそれぞれ別の責任者を持つかぎり、部門をまたいだ意思決定を下せる人がいないからです。
たとえば、先ほどの勤怠・労務管理SaaSの企業では、マーケティング責任者と営業責任者が、見込み客の質をめぐって対立していました。どちらの主張にも理があり、両者の上に立って収益全体で判断する人がいなかったため、議論は平行線のままでした。CROは、部門ごとの目標より収益全体を優先し、KPIや評価の設計にまで踏み込んで決める役割を持ちます。
このように、CROは部門の利害を超えて、収益全体で意思決定する責任者です。
RevOps組織に必要なポジションと機能
RevOps組織には、オペレーション・データ・イネーブルメントという3つの機能を担うポジションが必要です。
なぜなら、RevOpsを構成する4つの要素を実行するには、それぞれを担当する人が要るからです。
たとえば、業務プロセスの設計と改善を担うオペレーション担当、データ基盤とダッシュボードを整えるデータ担当、現場への浸透と研修を担うイネーブルメント担当、という分け方が一般的です。企業によっては、テクノロジーの管理を情報システム部門と連携して担う場合もあります。重要なのは、それぞれの機能に責任者が明確にいることです。担当が曖昧なままでは、要素は誰の仕事にもなりません。
このように、RevOps組織はプロセス・データ・浸透の3つの機能を持つ体制として設計します。
中堅企業が現実的に始める最小組織構成
中堅企業であれば、専任1名から始めるのが現実的です。
なぜなら、いきなり部署を立ち上げても、担う業務が定まっていなければ、形だけの組織になってしまうからです。
たとえば、先ほどの企業では、まず営業企画の担当者1名をRevOps担当として任命し、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門から1名ずつ兼務のメンバーを出す形にしました。専任1名と兼務3名の計4名で、まずデータの定義を揃えるところから着手しました。組織を大きく作るより、部門をまたいで動ける人を1人置くほうが、最初の一手としては現実的でした。
中堅企業のRevOpsは、大きな組織を作ることより、部門をまたいで動ける担当者を1人置くところから始まります。
RevOpsを導入する5ステップ

ここまで、RevOpsの組織体制とCROの役割を解説しました。ここからは、実際にRevOpsを導入するまでの流れを、5つのステップに分けて解説します。先ほどの勤怠・労務管理SaaSの企業が、どの順番で進めたかに沿って見ていきます。
ステップ①現状の部門プロセスとデータの分断を可視化する
まず取りかかるのは、現状の部門プロセスとデータが、どこで分断されているかを可視化することです。
なぜなら、どこがつながっていないかを把握しないまま統合を始めても、手を打つ場所を間違えるからです。
たとえば、この企業では、見込み客の獲得から契約の継続までの流れを1枚の図に書き出し、各工程で誰が何のツールを使い、次の部門へ何を渡しているかを整理しました。すると、マーケティングから営業への引き渡しに基準がないこと、営業とカスタマーサクセスの間で顧客情報が引き継がれていないことが、はっきり見えました。分断の場所が分かれば、手を打つ順番も決められます。
このように、現状の分断を可視化することが、RevOps導入の出発点になります。
ステップ②収益プロセス全体の共通KPIを定義する
次に行うのが、収益プロセス全体で追う共通KPIを定義することです。
部門ごとのKPIを残したままでは、それぞれが自分の数字だけを守る動きは変わらないからです。
たとえば、先ほどの企業では、マーケティングと営業の共通KPIとして「受注につながった見込み客の数」を、営業とカスタマーサクセスの共通KPIとして「契約後6か月の継続率」を設定しました。部門をまたぐ2つの接続点に、それぞれ共通の数字を置いたのです。この定義には経営と責任者が関わり、評価にも反映させました。共通の数字を持つだけで、部門どうしの見ている方向が揃い始めます。
部門の接続点に共通KPIを置くことが、The Modelの分断を解消する中心になります。
ステップ③データ基盤を統合してシングルソースを作る
そのうえで進めるのが、データ基盤を統合し、収益データのシングルソースを作ることです。
なぜなら、共通KPIを決めても、それを計算する元データが部門ごとにばらばらであれば、数字を出せないからです。
たとえば、この企業では、MAツールとCRM、カスタマーサクセスの管理表を連携させ、顧客が一つのIDで一貫して追える状態を作りました。あわせて、「商談」「有効リード」といった言葉の定義を全部門で統一しました。ツールをつなぐ前に言葉を揃えたことが、統合が頓挫しなかった理由でした。同じ言葉が同じ状態を指すようになって初めて、統合したデータは信用されます。
このように、定義を揃えたうえでデータを一つに統合することが、共通KPIを実際に測れる状態を作ります。
ステップ④部門横断の運用ルールとオペレーションを設計する
続いて設計するのが、部門を横断する運用ルールとオペレーションです。
なぜなら、KPIとデータが整っても、日々どう動くかのルールがなければ、現場の動き方は変わらないからです。
たとえば、先ほどの企業では、見込み客をどの状態で営業へ渡すか、渡した後は何営業日以内にフォローするか、フォローできなかった場合はどう戻すかを決めました。営業からカスタマーサクセスへの引き継ぎでも、商談中の懸念事項を必ず記録して渡すルールを設けました。ルールは全部門の合意のうえで決め、CRMの運用に組み込みました。ルールをCRMの項目や画面に落とし込むことで、担当者は迷わず運用できます。
このように、部門をまたぐ運用ルールを設計することで、共通KPIが日々の行動につながります。
ステップ⑤モニタリングと改善サイクルを回す体制を作る
最後に作るのが、モニタリングと改善のサイクルを回す体制です。
なぜなら、一度設計したプロセスやKPIも、事業や市場の変化に合わせて見直し続ける必要があるからです。
たとえば、この企業では、月に一度、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの責任者が集まり、共通KPIの進捗と、引き渡しの基準が実態に合っているかを確認する場を設けました。基準が合わなくなっていれば、その場で見直します。設計して終わりにせず、運用しながら改善を続ける体制を作ったのです。月に一度の見直しの場があることで、設計は実態に合ったまま保たれます。部門をまたぐ問題が起きても、その場で調整できるようになりました。
以上が、RevOpsを導入する5つのステップでした。
RevOpsのKPI設計の考え方
前章では、RevOpsを導入する5つのステップを解説しました。そのステップ②で触れたとおり、RevOpsの成否は、共通KPIをどう設計するかで大きく変わります。部門ごとのKPIを並べるだけでは足りず、収益プロセス全体を一本の流れとして測る指標を選ぶ必要があります。
具体的には、マーケティングから営業、営業からカスタマーサクセスへの接続点に共通の数字を置き、先行指標と遅行指標を組み合わせて設計します。獲得数や商談化率といった先行指標で早めに変化を捉え、受注金額や継続率といった遅行指標で成果を確かめる、という組み合わせです。RevOpsのKPIは、部門ごとの達成度を測るものではありません。収益プロセス全体の健全さを測る指標として設計します。
収益プロセスの健全さを具体的にどの指標で測り、どう監視し続けるかについては、ほか記事「Agentic CRMを活用したパイプライン管理のKPI設計と自律モニタリング」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。
RevOpsが注目される3つの背景

前章では、RevOpsのKPI設計の考え方を整理しました。では、なぜ今この考え方が国内外で取り上げられるようになったのでしょうか。ここでは、RevOpsが求められるようになった3つの背景を、公開されている調査とあわせて解説します。
背景①部門サイロによる収益機会の損失が顕在化したから
1つ目の背景は、部門のサイロ化による収益機会の損失が、目に見える形で表れてきたことです。
なぜなら、分業が進むほど、部門の間の引き渡しでこぼれる案件や、責任の所在が曖昧な領域が増えるからです。
調査の対象や時期によって数値は変わりますが、Forresterが2025年1月に公開した記事によると、B2Bのオペレーション担当者のおよそ6割にあたる59%が、自部門の計画が全社の事業目標と整合していないと回答しています。先ほどの勤怠・労務管理SaaSの企業でも、マーケティングが渡した見込み客のうち、営業がフォローしないまま放置されるものが一定数あり、その多くは半年後に競合へ流れていました。どの部門も自分の目標は達成しているため、この損失は誰の責任としても計上されませんでした。
このように、サイロ化による損失が数字で見えるようになったことが、RevOpsが注目される背景の一つです。
※参考記事はこちら
背景②SaaS・サブスクで顧客ライフサイクル全体の管理が必要になったから
2つ目の背景は、SaaSやサブスクリプションの普及で、顧客のライフサイクル全体を管理する必要が生まれたことです。
売り切りのビジネスと違い、サブスクリプションでは受注後の継続と拡大が収益を左右するからです。
この企業のサービスも月額課金であり、受注した時点では収益のごく一部しか確定していませんでした。契約後に現場で定着して使い続けてもらい、追加のプランへ広げてもらって、はじめて事業として成り立ちます。営業が受注して終わりという設計のままでは、収益全体を追えなくなっていました。あわせて、Forresterが2024年10月に公開した2025年の予測では、100万ドル以上の大型のB2B取引についても、半数以上がベンダーのサイトやマーケットプレイスといったデジタルのセルフサーブ経由で処理されるようになる、とされています。受注前の接点が自動化されるほど、収益を左右する場面は受注後へ移ります。
このように、受注前から受注後までを一つの流れで管理する必要が、RevOpsを求める背景になっています。
※参考記事はこちら
背景③データが分断され経営判断のスピードが落ちていたから
3つ目の背景は、データが部門ごとに分断され、経営判断のスピードが落ちていたことです。
Forresterが2024年8月に公開したブログでは、同社のRevenue Operations Survey, 2024をもとに、アジア太平洋地域のB2Bのリーダーが、ツールの不整合・部門ごとに食い違う指標・整っていないプロセスを、自社のオペレーション上の主要な課題として挙げていると報告されています。日本のBtoB企業でも、この3つは同時に起きやすい組み合わせです。
冒頭で挙げた勤怠・労務管理SaaSの企業でも、3つのツールに分かれた数字を突き合わせるだけで経営会議の時間が過ぎ、どこに問題があるかを判断するまでに数週間かかることもありました。その間にも商談は進むため、対策を決めた頃には四半期が終わっている、ということが繰り返されます。市場の変化が速いなかで、この遅れは大きな不利になります。
データが部門ごとに分かれているかぎり、経営は収益全体を一つの数字として把握できません。
※参考記事はこちら
RevOpsのデータ基盤と運用をAgentic CRMで支える方向性
前章では、RevOpsが注目される背景を整理しました。RevOpsを機能させるうえで手間がかかるのは、データ基盤を統合する段階と、その後の運用を続ける段階です。部門ごとに分かれたツールをつなぎ、顧客のデータを一つのIDで追える状態にするには、継続的な整備が要ります。担当者の手入力に頼っているかぎり、記録の抜けや遅れは避けられません。
そこで出てきているのが、AIエージェントがデータの収集と更新に加えて、KPIの集計や引き渡しの監視、部門への通知までを自律的に担う方向性です。商談の活動やメールの履歴が自動でCRMに集まる状態を作れば、RevOpsが必要とするシングルソースは、運用しながら保たれます。人が入力を続けなくても、データ基盤が実態を映したまま維持され、担当者は判断のほうに時間を使えるようになります。
こうした方向性は、Agentic CRMという考え方として整理されつつあります。専任者を多く置けない中堅企業ほど、運用を続ける負担をどれだけ減らせるかが、RevOpsを定着させられるかどうかを分けます。
【一問一答】RevOpsに関するよくある質問
ここまで、RevOpsの定義から導入の進め方までを解説してきました。最後に、RevOpsについてよく寄せられる質問に答えていきます。
質問①RevOpsとSalesOps・MarketingOpsの違いは何か
対象とする範囲が違います。SalesOpsは営業部門、MarketingOpsはマーケティング部門の運用を担う機能です。RevOpsは、それらを含めた収益に関わる部門全体を、一つの単位として統合的に管理します。部門単位の最適化か、収益単位の最適化かという違いです。
質問②中堅企業でもRevOpsは導入できるか
導入できます。専任の部署を作らなくても、部門をまたいで動ける担当者を1名置き、各部門から兼務メンバーを出す形から始められます。まずはデータの定義を揃え、部門の接続点に共通KPIを1つ置くところから着手するのが現実的です。
質問③RevOps導入に必要な期間はどのくらいか
現状の可視化と共通KPIの定義までは、数か月で進められます。ただし、データ基盤の統合と運用ルールの定着まで含めると、1年程度を見ておくのが現実的です。成果が収益の数字に表れるまでには、さらに時間がかかります。
質問④RevOps専任者がいない場合はどうするか
営業企画や事業企画の担当者が兼務する形から始めるのが一般的です。重要なのは、部門をまたいで判断できる立場にあることと、経営がその役割を認めていることです。専任がいなくても、経営のコミットがあれば設計は進められます。
質問⑤RevOpsの効果はどう測定するか
部門横断の共通KPIで測ります。マーケティングと営業の接続点なら受注につながった見込み客の数、営業とカスタマーサクセスの接続点なら契約後の継続率といった指標です。あわせて、収益予測の精度や、部門間の重複業務の削減も効果として測れます。
RevOpsは収益部門の分断を解消して収益成長を実現する経営の仕組みである
RevOps(レベニューオペレーション)とは、マーケティング・営業・カスタマーサクセスという収益を生む部門の連携を強化し、統合的に管理する仕組みです。本記事では、部門ごとの目標は達成しているのに数字が合わないという状況から、RevOpsがその分断をどうつなぎ直すのか、4つの構成要素、メリットと落とし穴、組織体制、導入の5ステップまでを、一連の流れとして解説してきました。
本記事で例として挙げた勤怠・労務管理SaaSの企業も、着手する前は四半期の着地予測と実績のずれが20%を超えることが珍しくありませんでした。データの定義を揃え、部門の接続点に共通KPIを置き、引き渡しのルールを決めていった結果、統合から半年後にはこのずれが8%以内に収まり、経営が四半期の途中でも着地を読めるようになりました。専任1名と兼務3名という、決して大きくない体制から始めた変化です。
The Modelによる分業は、各工程の生産性を高める合理的な設計です。しかし、分けた部門をつなぐ設計がなければ、部門の間に落ちた問題は誰の目にも留まりません。まずは自社のどこで収益の流れが途切れているのかを、1枚の図に書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。
なお、クロスコムでは、AIが読み書きする前提でCRMを業務設計から見直すAgentic CRM設計支援を行っています。専任1名から小さく始める(スモールスタート)形で相談したい場合や、設計して終わりにせず定着まで伴走してほしい場合は、無料相談も受け付けていますので、あわせてご確認ください。本記事が、その一助になれば幸いです。

