- ソリューション営業のAI活用とは、提案の材料をそろえる作業をAIに任せ、課題の定義を人に残す進め方です。
- 課題の定義、提案の範囲と価格、関係者の利害の調整の3つは、ソリューション営業でAIに任せない判断です。
- ソリューション営業のAI活用は、商談の段階ごとに時間を測り、合計が最も長い1つの段階から2〜3名で試します。
- ソリューション営業に特化した支援会社は、商談の段階に沿って営業の業務を分解できるかどうかで見極めます。
「営業にAIを」と言われて調べてみると、出てくるのはメールの自動作成やリードの絞り込みのような、決まった商品を短い商談で売る営業向けの活用例ばかりではないでしょうか。ソリューション営業のAI活用とは、案件ごとに組み立てる提案の材料をそろえる作業をAIに任せ、顧客の課題を定義する判断を人に残す進め方のことです。SalesforceのAgentforceを使う場合も、この線の引き方は変わりません。
そこで本記事では、ソリューション営業でAIが効く場面と任せない判断、Agentforceで支える仕組み、始め方と効果の測り方、費用の内訳、そしてソリューション営業に特化した支援会社の見極め方までを解説します。なお、費用の目安は変わりやすいため、本記事は2026年10月時点で確認できた公式の価格にもとづいています。
- ソリューション営業でAIが効く5つの場面
- なぜ外れる?ソリューション営業で汎用AIが合わない3つの理由
- ソリューション営業でAIに任せない3つの判断
- Agentforceでソリューション営業を支える3つの仕組み
- 手順4選|ソリューション営業のAI活用の始め方
- ソリューション営業のAI活用でつまずく3つの落とし穴
- 何で測る?ソリューション営業のAI活用の効果3段階
- ソリューション営業でAI活用を先に進めるべき3つの条件
- ソリューション営業でAI活用を急がなくてよい3つの条件
- Agentforceをソリューション営業に入れる費用3内訳
- ソリューション営業に特化した支援を選ぶ4つの見極め方
- 【一問一答】ソリューション営業のAI活用に関するよくある質問
- ソリューション営業のAI活用は、課題を決める人の時間をつくるためのもの

ソリューション営業でAIが効く5つの場面
ソリューション営業でAIが効くのは、提案の中身を決める場面よりも、その前後で材料を集めて整える場面のほうです。ここでは、工場向けの設備保全サービスを売る中堅のBtoB企業を例に考えていきます。センサーと保守契約を組み合わせて提案する会社で、従業員250名ほどのうち営業が30名、情報システムの担当が2名という体制のもと、Sales Cloudを導入して3年目を迎えていました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
この会社の商談期間は平均5か月で、1件の商談に購買・工場長・情報システムの3者が関わっていました。提案書は案件のたびにゼロから作られており、訪問前の準備だけで、1回の訪問につき半日ほどかかっていたのです。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。当初の目的は「訪問前の準備にかかる時間を減らし、顧客の課題を考える時間を営業に戻すこと」でした。そこでここでは、この設備保全サービスの会社を例に、ソリューション営業でAIが効く5つの場面を解説します。
| 場面 | 商談の段階 | AIに任せる作業 | 人が持つ判断 |
|---|---|---|---|
| ①課題の仮説 | 初回訪問の前 | 顧客の情報を集めて並べる | 仮説を採るかどうか |
| ②課題の構造 | ヒアリングの後 | 記録を現象・原因・影響に分ける | 課題をどう定義するか |
| ③提案の型 | 提案の準備 | 類似案件の提案書を引き当てる | 提案の範囲と価格 |
| ④関係者の懸念 | 提案から合意まで | 立場ごとの懸念を一覧にする | 利害をどう調整するか |
| ⑤次の提案 | 受注の後 | 利用状況の変化を知らせる | 次に何を提案するか |
場面①商談前に顧客の課題の仮説を下書きする
1つ目は「商談前に顧客の課題の仮説を下書きする」場面です。ソリューション営業の初回訪問は、顧客が自分の課題をまだ言葉にできていない段階で始まることが多く、営業が仮説を持って行くかどうかでヒアリングの深さが変わります。仮説の材料になるのは、顧客の業種や設備の構成、過去の問い合わせ、同じ業種の既存顧客で起きたできごとで、これらを集めて並べる作業はAIに任せられます。
例えば、この設備保全サービスの会社では、初回訪問の前に営業が顧客の工場の情報と過去の問い合わせを探し、仮説を1枚にまとめるまでに1時間ほどかけていました。そこでAIには材料集めと仮説の下書きまでを任せ、出てきた仮説のうちどれを当日の質問に使うかを営業が選ぶ形に変えています。仮にAgentforceで組むなら、顧客の取引先情報と過去の問い合わせの記録をエージェントが参照し、仮説の下書きを返す形になります。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
仮説の下書きをAIに任せても、その仮説を採るかどうかを決めるのは訪問する営業のほうです。
場面②ヒアリングの記録から課題を構造にする
2つ目は「ヒアリングの記録から課題を構造にする」場面です。ヒアリングで聞いた話は顧客が話した順に記録されるため、そのままでは課題と原因と影響が混ざった状態で残ります。ソリューション営業でAIに任せられるのは、ヒアリングの記録を課題・原因・影響に分け直す下書きまでです。
具体的には、設備保全サービスの会社の営業が工場長から聞いた「止まってから呼ぶので修理が長引く」「部品の在庫が読めない」「夜間の停止に誰も気づかない」という話を、AIで現象・原因・影響の3列に並べ直しました。営業はこの表を見たうえで、原因の欄に並んだ「異常に気づく仕組みが無い」を顧客の課題として定義するかどうかを判断しています。同じ作業をAgentforceで組む場合も、エージェントに任せるのは3列に分ける下書きまでで、課題の定義は営業の判断として残します。
記録を構造にする作業と、その構造から課題を1つに決める判断は、分けて設計しておく必要があります。
場面③過去の類似案件から提案の型を引き当てる
3つ目は「過去の類似案件から提案の型を引き当てる」場面です。提案書を毎回ゼロから作っている会社でも、過去の受注案件を並べてみると、業種や課題が近い案件は少なくありません。似た案件で何を提案し、どこで合意が取れたのかを探す作業は、AIが営業の時間を減らしやすい作業のひとつです。
この会社では、業種・従業員数・事業概要・商談メモの4つを手がかりに、Sales Cloudに残っていた過去3年分の受注案件から類似案件を引き当てる形にしました。食品工場の案件であれば、同じ食品工場で受注した案件の提案書と、合意までに顧客から出た質問の一覧が並びます。営業はゼロから構成を考える代わりに、近い案件の提案の型から書き始められるようになりました。
引き当てた型をそのまま使うか、今回の顧客に合わせて組み替えるかは、営業が課題の定義に照らして決めます。
場面④関係者ごとの懸念を商談記録から拾う
4つ目は「関係者ごとの懸念を商談記録から拾う」場面です。1件の商談に複数の関係者が関わると、同じ提案に対して立場ごとに違う懸念が出てきますが、その懸念は訪問のたびに少しずつ記録され、商談記録のあちこちに散らばって残ります。散らばった懸念を関係者ごとに一覧にする作業は、AIに任せられる範囲に入ります。
たとえば、設備保全サービスの会社の商談では、購買は保守契約の総額を、工場長は導入のために生産ラインを止める時間を、情報システムはセンサーのデータを社内のネットワークへつなぐときの安全性を気にしていました。それぞれの懸念は別々の訪問で出ていたため、担当の営業自身も全体を一度に見られていなかったのです。AIで商談記録から関係者ごとの懸念を抜き出して並べたことで、次の訪問で誰のどの懸念に答えるかを営業が先に決められるようになりました。Agentforceであれば、商談に紐づく活動の記録から懸念を関係者ごとに抜き出すアクションを用意する形です。
懸念の一覧は、関係者の利害を調整する判断の前に置く材料として使います。
場面⑤受注後の利用状況から次の提案を見つける
5つ目は「受注後の利用状況から次の提案を見つける」場面です。ソリューション営業では受注した後の利用状況が次の提案の材料になりますが、受注後の記録は保守やサポートの部署に残ることが多く、営業が自分で見に行かない限り使われません。
この会社では、保守の担当が残すセンサーの異常の件数と問い合わせの記録をAIで月に1回まとめ、変化のあった顧客を営業に知らせる形にしました。Agentforceで組むなら、保守やサポートの記録もSalesforceに入っていることが、この形の前提になります。異常の件数が増えている工場は、センサーを増やす提案や点検の頻度を見直す提案の対象になります。営業が保守の記録を自分で読みに行っていた時期には、こうした変化に気づくのは契約更新の直前になっていました。
受注後の記録を営業へ渡す流れを作っておけば、次の提案の時期を顧客の変化から決められます。以上が、ソリューション営業でAIが効く5つの場面でした。
なぜ外れる?ソリューション営業で汎用AIが合わない3つの理由
前章では、ソリューション営業でAIが効く5つの場面を見てきました。一方で、検索して見つかる営業AIの活用例をそのまま自社に持ち込むと、この5つの場面とはかみ合わないことが少なくありません。メールの文面を自動で作る、見込みの高いリードを絞り込む、通話を要約するといった活用例は、どれも営業の時間を減らす点では正しいものの、案件ごとに提案を組み立てる営業の時間がどこで使われているかには触れていないからです。そこでここでは、ソリューション営業で汎用AIが合わない3つの理由を解説します。
理由①商談ごとに提案の中身が変わるから
汎用AIが外れる最初の理由は、ソリューション営業では商談ごとに提案の中身が変わることにあります。決まった商品を売る営業であれば、商品の説明や価格の案内を型にしておき、AIに文面を作らせれば済みますが、顧客ごとに課題を聞いてから提案の範囲を決める営業では、型にできるのは提案書の構成までで、中身は毎回違うものになります。
設備保全サービスの会社でも、最初は営業メールの文面をAIで作る話から検討が始まりました。ところが、営業が実際に時間を使っていたのはメールの文面ではありません。顧客の工場の設備に合わせてセンサーの台数や点検の頻度を組み直す作業のほうで、文面を速く作っても準備の時間はほとんど変わらなかったのです。
汎用の営業AIの活用例が合うかどうかは、営業の時間が文面作りと提案の組み直しのどちらに多く使われているかで決まります。
理由②決めるのが複数の関係者だから
次に挙げられるのは、ソリューション営業では提案を受け入れるかどうかを決めるのが1人ではないことです。汎用の活用例は、問い合わせてきた担当者1人とのやり取りを効率化する前提で組まれているものがほとんどでしょう。
一方で、1件の商談に購買と現場の責任者と情報システムが関わると、同じ提案書でも読む人によって見る箇所が違います。設備保全サービスの会社では、購買には総額と支払いの条件を、工場長には導入の手順を、情報システムにはデータの扱いを説明する資料が別々に必要でした。担当者1人への返信を速くする仕組みは、この3通りの説明を準備する時間には効きません。
関係者が増えるほど、AIに任せる作業は「返信を作る」から「立場ごとの材料をそろえる」へ移っていきます。
理由③商談期間が長く記録が途中で途切れるから
最後の理由は、商談期間が長いほど記録が途中で途切れやすいことです。数週間で終わる商談なら、担当者の記憶で前回の話を補えます。ところが、商談が数か月にわたると、訪問と訪問のあいだに担当者の異動や他の案件が入り、前回までに何を聞いて何を約束したかが記録にしか残らなくなります。
この会社の商談は平均5か月で、その間に8回ほど顧客を訪問していました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。途中で担当が代わった案件では、引き継いだ営業が過去の記録を読み直すだけで丸1日かかっていたこともあります。汎用AIの活用例は1回の商談の要約には強い反面、何か月にもわたる複数回の記録をつなげて読む前提にはなっていません。
長い商談でAIを使うには、記録が途切れずに残っていることが前提になります。以上が、ソリューション営業で汎用AIが合わない3つの理由でした。
ソリューション営業でAIに任せない3つの判断
ここまでで、ソリューション営業でAIが効く場面と、汎用の活用例が外れる理由を見てきました。では反対に、AIに渡さず人が持ち続けるべき判断はどこにあるのでしょうか。それは提案の中身を決める場面にあり、材料をそろえる作業をAIに任せるほど、残った判断の重さは増していきます。営業の仕事をAIに任せる単位の一般論は営業AIエージェントの記事で扱うため、本章で扱うのはソリューション営業だから人に残る判断だけです。そこでここでは、ソリューション営業でAIに任せない3つの判断を解説します。
判断①顧客の課題をどう定義するか
1つ目は「顧客の課題をどう定義するか」という判断です。ソリューション営業の提案は、顧客の課題をどう定義したかで中身がほぼ決まります。AIはヒアリングの記録を構造にして候補を並べることはできても、どの課題を提案の出発点に置くかは、顧客の事業の状況と営業自身の見立てを合わせて決めることになります。
たとえば、工場の設備が止まる問題ひとつを取っても、「修理が遅い」と定義すれば保守の体制の提案に、「異常に気づけない」と定義すればセンサーの提案になり、どちらを選ぶかで提案の範囲も説得すべき関係者も変わります。この選択をAIの出した候補の順番に任せてしまうと、顧客が本当に困っている点とずれた提案になる場合があります。
課題の定義は、顧客との次の会話で確かめられる立場にある営業が持つべき判断です。
判断②提案の範囲と価格をどう決めるか
2つ目は「提案の範囲と価格をどう決めるか」です。過去の類似案件の価格や構成はAIで引き当てられますが、今回の顧客にどこまでを提案し、いくらで出すかは、顧客の予算や競合の状況、自社がその案件にどれだけの体制を割けるかで変わります。
ある工場では、過去の類似案件にならって全ラインへのセンサー設置を提案すれば、総額が大きくなるぶん予算の承認が次の年度まで下りません。最初は1ラインに絞って効果を見せ、翌年に広げる提案にすれば、受注までの期間は短くなります。この選択は、顧客の社内の事情を聞いている営業でなければできません。
顧客の課題の定義、提案の範囲と価格、関係者の利害の調整の3つは、ソリューション営業で人が持つ判断です。
判断③関係者の利害をどう調整するか
3つ目は「関係者の利害をどう調整するか」という判断です。AIは関係者ごとの懸念を一覧にできますが、懸念が互いにぶつかったときにどちらを優先するかは、人と人のあいだで決めることになります。
具体的な場面でいうと、購買は総額を下げたいと考え、工場長は点検の頻度を増やしたいと考えているとき、両方を満たす提案はありません。点検の頻度を保ったまま契約の期間を延ばして年あたりの費用を下げるのか、頻度を減らして総額を抑えるのかは、誰が最終的に決裁するのか、誰の反対が商談を止めるのかを知っている営業が判断します。
決裁する人と反対しそうな人を営業が把握できていない商談では、懸念の一覧がそろっていても、どの懸念から答えるかを決められません。以上が、ソリューション営業でAIに任せない3つの判断でした。

Agentforceでソリューション営業を支える3つの仕組み
前章では、ソリューション営業で人が持ち続ける3つの判断を整理しました。その判断の前にある材料集めを、Agentforceはどのような仕組みで支えるのでしょうか。製品の機能をすべて理解する必要はなく、ソリューション営業で使うのは、CRMの記録を読むこと、社内の資料を参照すること、任せる範囲を区切ることの3つに集約され、この3つの仕組みを押さえておくと、自社で何を準備すればよいかが見えてきます。そこでここでは、Agentforceでソリューション営業を支える3つの仕組みを解説します。
仕組み①CRMの商談記録を読んで答える
1つ目は「CRMの商談記録を読んで答える」仕組みです。Agentforceは、Salesforceに残っている取引先や商談、活動の記録を参照して答えを作ります。営業が「この顧客の前回までの懸念は何か」と聞けば、記録に残っている内容から答えが返ってくる形です。
一方で、記録に残っていない話にAgentforceは答えられません。訪問で聞いた懸念を営業が記録に書いていなければ、関係者ごとの懸念の一覧にも出てきません。ソリューション営業の商談記録は、訪問の日付と「打ち合わせ実施」だけで終わっていることも多く、この状態では仕組みが動いても答えの中身が薄くなります。
Agentforceがソリューション営業で答えられる範囲は、CRMに残っている商談記録の質で決まります。
仕組み②社内の提案書をナレッジとして参照する
2つ目は「社内の提案書をナレッジとして参照する」仕組みです。CRMの記録だけでは、過去にどのような提案をしたかの中身までは分かりません。そこで、過去の提案書や導入事例の資料をナレッジとして登録し、Agentforceが参照できる状態にしておきます。
ナレッジとして参照させるときに効いてくるのは、資料の置き場所と名前の付け方です。提案書が営業ごとのフォルダにばらばらに保存され、ファイル名も「提案書_最終_修正版」のような形で残っていると、どの業種のどの課題に向けた提案だったのかをAgentforceが判別できません。業種や課題の分類を付けたうえで1か所に集めておくと、類似案件の提案の型を引き当てる精度が安定します。
参照させる資料を集める作業は、AIの設定より前に終わらせておくことになります。
仕組み③任せる範囲を指示とアクションで区切る
3つ目は「任せる範囲を指示とアクションで区切る」仕組みです。Agentforceのエージェントは、エージェントが目的から外れないようにする指示と、実際に実行できる処理であるアクションの組み合わせで動きます。何をさせ、何をさせないかは、この2つの設計で決まります。
ソリューション営業では、前章で挙げた3つの判断をアクションに入れないことが設計の出発点になります。たとえば、類似案件の提案書を探して並べるアクションは用意しても、価格を決めて顧客に送るアクションは用意しません。指示の側でも「候補を並べる」「下書きを作る」までを書き、「決める」「送る」は営業が行う形にしておきます。
任せる範囲を区切っておけば、AIが判断の領域に踏み込む心配をせずに、材料集めを任せられるようになります。以上が、Agentforceでソリューション営業を支える3つの仕組みでした。
手順4選|ソリューション営業のAI活用の始め方
前章では、Agentforceでソリューション営業を支える仕組みを3つに分けて見てきました。仕組みが分かっても、どの業務から始めるかが決まらなければ検討は進みません。ソリューション営業は業務の種類が多く、全体に一度に入れるとどこで効果が出たのかが分からなくなるため、小さく始めたい場合は、どの段階から入れるかを始める前に決めておく必要があります。そこでここでは、ソリューション営業のAI活用を始める4つの手順を、設備保全サービスの会社の例で解説します。
| 手順 | やること | 押さえる点 |
|---|---|---|
| ①時間を測る | 段階ごとの時間と回数を出す | 商談1件の合計で比べる |
| ②段階を選ぶ | 合計が最も長い段階を選ぶ | 選ぶのは1つだけ |
| ③記録をそろえる | 商談記録の項目を決める | AIの設定より先に行う |
| ④少人数で試す | 2〜3名で1四半期試す | 終わりに時間を測り直す |
手順①商談の段階ごとに時間を測る
最初の手順は、商談を段階に分けて、それぞれにかかっている時間を測ることです。「営業の準備に時間がかかっている」という声だけでは、どの段階にAIを入れればよいかが決まりません。初回訪問の前、ヒアリングの後、提案書の作成、関係者への説明、受注の後という段階ごとに、1件あたりの時間と商談1件の中で発生する回数を出します。
設備保全サービスの会社でこの作業を行ったところ、提案書の作成は1回あたり1日半ほどかかる一方で、商談1件につき多くても2回しか発生していませんでした。これに対して訪問前の準備は1回あたり半日ほどで、平均5か月の商談のあいだに8回ほど発生していたのです。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。営業部長が「提案書の作成が一番重い」と考えていた見立ては、合計の時間で見ると逆になっていました。
1回あたりの重さではなく、商談1件の中での合計時間で比べると、手を付ける段階が変わることがあります。
手順②最も時間のかかる段階を1つ選ぶ
段階ごとの時間がそろったら、次は合計の時間が最も長い段階を1つだけ選びます。複数の段階に同時に入れると、時間が短くなったとしても、どの段階の変化によるものかが分からなくなるからです。
この会社が選んだのは訪問前の準備でした。提案書の作成を任せたいという声も営業から出ていましたが、提案書は判断②の提案の範囲と価格に直結するため、AIに任せる範囲の線引きに時間がかかります。訪問前の準備は、顧客の情報と過去の記録を集めて並べる作業が中心で、判断の手前にある作業だけで構成されていました。そのため、AIに任せる範囲は「集めて並べる」までと短い議論で決まりました。
ソリューション営業のAI活用は、商談の段階ごとに時間を測り、合計が最も長い段階から始めます。
手順③商談記録の書き方を先にそろえる
対象の段階が決まったら、AIの設定に入る前に、その段階で使う商談記録の書き方をそろえます。訪問前の準備をAIに任せるなら、前回の訪問で何を聞き、何を約束し、次に何をするかが記録に残っていなければ、AIは何も集められません。
設備保全サービスの会社では、商談記録に「聞いた課題」「関係者の懸念」「次の打ち手」の3つの項目を設け、訪問のあとに営業が埋める形にしました。記録の項目を増やすと入力の手間が増えるため、3つ以外の項目は任意にしています。項目をそろえてから1か月ほど記録を貯めた段階で、ようやくAIに訪問前の準備を任せる設定に入りました。Agentforceで組む場合も、この3つの項目が、エージェントが前回までの経緯を読み取る材料になります。
記録の書き方をそろえる期間は、AIの設定にかける期間より長くなることもあると見込んでおきましょう。
手順④2〜3名で1四半期だけ試す
最後の手順は、少人数で期間を区切って試すことです。小さく始めたい場合は、営業2〜3名で1四半期だけ試し、手順①で測った時間と比べて効果を判断します。営業全体に広げるのは、その結果が出てからで遅くありません。
この会社では、記録の項目を最初から丁寧に埋めていた営業3名を選び、3か月のあいだ訪問前の準備をAIに任せました。試す人数を絞ったことで、出てきた準備の資料に足りない点があれば、営業3名と情報システムの担当が週に1回集まって指示を直す運用を続けられ、広げるかどうかは、四半期の終わりに準備の時間を測り直して決めることにしていました。
試す期間を1四半期に区切っておくと、広げるか止めるかの判断の時期が最初から決まります。以上が、ソリューション営業のAI活用を始める4つの手順でした。
ソリューション営業のAI活用でつまずく3つの落とし穴
前章では、ソリューション営業のAI活用を始める4つの手順を整理しました。手順どおりに進めても、ソリューション営業ならではの事情で効果が出ないまま止まることがあります。多いのは、AIの設定の問題よりも、AIが参照する記録や資料の状態、そして効果の測り方に原因がある場合です。つまずく箇所を先に知っておけば、手順の中で避けられます。そこでここでは、ソリューション営業のAI活用でつまずく3つの落とし穴を解説します。
落とし穴①商談記録が一言メモで残っている
1つ目の落とし穴は「商談記録が一言メモで残っている」状態です。訪問のあとに残すのが「先方前向き」「次回見積」のような一言だけだと、AIが前回までの経緯を読み取る材料がありません。
設備保全サービスの会社でも、手順③で記録の項目をそろえる前に過去の商談記録を見直したところ、半数を超える記録が一言のメモで終わっていました。その中には、工場長が気にしていた導入時のライン停止の話が、営業の手帳にしか書かれていない案件もあったのです。AIに関係者ごとの懸念をまとめさせても、一言メモの案件では「懸念の記録なし」としか返ってきませんでした。Agentforceで組んだ場合も、記録に無い懸念がエージェントの答えに出てこない点は同じです。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
ソリューション営業のAI活用で最初に整えるべきなのは、AIの設定より商談記録の書き方です。
落とし穴②提案書が個人のフォルダに散らばっている
2つ目は「提案書が個人のフォルダに散らばっている」状態です。過去の提案書が営業それぞれのパソコンや個人のフォルダに保存されていると、ナレッジとして参照させる前に集める作業が必要になります。
この会社では、類似案件の提案の型を引き当てるために過去の提案書を集めたところ、同じ顧客向けの提案書が版違いで何通りも見つかりました。どれが顧客に出した最終版かは、作った本人に聞かなければ分かりません。結局、受注した案件の提案書に限って最終版を営業に確認してもらい、業種と課題の分類を付けて1か所へ移す作業から始めることになりました。
提案書を集める作業は、受注した案件の最終版に絞ると、量が読める範囲に収まります。
落とし穴③効果を受注件数だけで測る
3つ目は「効果を受注件数だけで測る」ことです。ソリューション営業は商談期間が長いため、AIを入れた月の受注件数には、AIを入れる前に始まった商談の結果が出てきます。
設備保全サービスの会社でも、試した四半期の途中で役員から「受注は増えたのか」と聞かれる場面がありました。しかし、平均5か月の商談であれば、四半期の中で始まった商談はまだ受注の段階に届いていません。受注件数だけで判断していれば、効果が出る前に止める結論になっていたでしょう。そこで、役員への報告では受注件数の代わりに、訪問前の準備にかかった時間を示すことにしました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
受注件数は、効果を測る指標の最後の段階に置き、試す時期には使わないようにします。以上が、ソリューション営業のAI活用でつまずく3つの落とし穴でした。
何で測る?ソリューション営業のAI活用の効果3段階
前章の最後で、受注件数だけで効果を測ると判断を誤ることに触れました。では、ソリューション営業のAI活用の効果は何で測ればよいのでしょうか。商談期間が長い営業では、効果が数字に表れる時期が指標ごとに違うため、試す時期・広げる時期・続ける時期で見る指標を変え、時期と指標の対応を先に決めておくことで、途中で「効果が出ていない」と判断を急ぐことも避けられます。そこでここでは、ソリューション営業のAI活用の効果を測る3つの段階を解説します。
段階①試す時期|商談準備にかかった時間
1つ目の段階は「試す時期」で、見る指標は商談準備にかかった時間です。AIに任せたのは準備の作業なので、最初に変化が出るのも準備の時間になります。試す前に測った時間と、試した後の時間を同じ測り方で比べます。
当初の目的は「訪問前の準備にかかる時間を減らし、顧客の課題を考える時間を営業に戻すこと」でしたが、設備保全サービスの会社で試した営業3名の訪問前の準備は、1回あたり半日ほどから2時間足らずまで短くなりました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。短くなった時間の多くは、顧客の情報と過去の記録を探す作業が無くなった分でした。
ソリューション営業のAI活用の効果は、試す・広げる・続けるの時期ごとに測る指標を変えます。
段階②広げる時期|次の打ち手が記録された商談の割合
2つ目の段階は「広げる時期」です。営業全体に広げる段階で見るのは、次の打ち手が記録された商談の割合で、準備の時間が短くなっても、その時間が次の打ち手を考えることに使われていなければ、目的には届きません。
設備保全サービスの会社では、営業全体へ広げたあと、商談記録の「次の打ち手」の項目が埋まっている商談の割合を月ごとに数えました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。広げる前は3割ほどだった割合が、広げてから2か月で8割近くまで増えています。準備に使っていた時間の一部が、次の訪問で何をするかを考える時間に移ったことが、この数字から読み取れました。
ただし、「検討中」のような一言だけで埋まった欄まで数に入れると、記録の書き方が変わっただけでも割合が上がって見えます。
段階③続ける時期|商談化から受注までの日数
3つ目の段階は「続ける時期」で、見るのは商談化から受注までの日数です。ソリューション営業でAIを使い続ける意味があるかどうかは、最終的には商談が速く進むかどうかで判断します。ただし、商談期間が長い営業では、この数字が動くまでに半年以上かかります。
この会社でも、続ける時期の指標として商談化から受注までの日数を追い始めましたが、試してから半年の時点では、まだ判断できる件数がそろっていませんでした。そこで、四半期ごとに受注した案件の日数を、AIを使った商談と使っていない商談に分けて並べる形で記録を続けています。判断の時期をあらかじめ1年後に置いたことで、途中で結論を急ぐ議論は起きませんでした。
以上が、ソリューション営業のAI活用の効果を測る3つの段階でした。
ソリューション営業でAI活用を先に進めるべき3つの条件
前章までで、始め方と測り方がそろいました。ただし、すべてのソリューション営業の組織で、AI活用をいますぐ進めるべきとは限りません。進めて効果が出やすいのは、ソリューション営業の特徴である関係者の多さ、商談期間の長さ、提案の作り直しが強く表れている組織です。自社がどちらに当てはまるかを先に確かめておくと、社内で優先順位を説明しやすくなります。そこでここでは、ソリューション営業でAI活用を先に進めるべき3つの条件を解説します。
条件①1件の商談に3人以上の関係者が関わる
1つ目の条件は「1件の商談に3人以上の関係者が関わる」ことです。関係者が3人以上になると、立場ごとの懸念を営業が頭の中だけで整理するのは難しくなり、AIに懸念の一覧を作らせる効果が大きくなります。ここでいう関係者は、提案を受け入れるかどうかの判断に意見を出す人を指します。
設備保全サービスの会社では、購買・工場長・情報システムの3者が毎回の商談に関わっていました。関係者が2人までの商談であれば、営業は前回の会話を思い出すだけで次の説明を準備できます。3者になると、誰にどの資料を出したかを記録から探す時間が増え、場面④の懸念の一覧が最初に効いた理由もここにありました。
関係者の人数は、商談記録の取引先責任者の数から自社でもすぐに数えられます。
条件②商談期間が3か月を超える
2つ目は「商談期間が3か月を超える」ことです。商談期間が3か月を超えるソリューション営業ほど、記録を読み直す時間をAIに任せる効果が大きくなります。3か月を超える商談では、訪問の回数が増え、前回までの経緯を記録から読み直す時間が準備の大きな部分を占めるからです。
この会社の商談期間は平均5か月で、その間に8回ほど訪問していました。訪問のたびに前回までの記録を読み直していたため、訪問前の準備に半日ほどかかっていたのです。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。商談が1か月で終わる組織であれば、読み直す記録そのものが少なく、AIに任せても短くなる時間はわずかでしょう。
条件③提案書を案件ごとに作り直している
3つ目は「提案書を案件ごとに作り直している」ことです。提案書を毎回ゼロから作っている組織は、過去の類似案件から提案の型を引き当てるだけで、作成にかかる時間を減らせます。作り直しているかどうかは、直近の提案書を数件並べ、構成が営業ごとに違っているかで確かめられます。
設備保全サービスの会社では、営業ごとに提案書の構成が違い、同じ業種の顧客に向けた提案でも、構成から考え直していました。過去の受注案件の提案書を業種ごとに並べられるようになってからは、近い案件の構成を出発点にする営業が増えています。
逆にいえば、提案書の型がすでに社内で決まっている組織では、この条件による効果は小さくなります。以上が、ソリューション営業でAI活用を先に進めるべき3つの条件でした。
ソリューション営業でAI活用を急がなくてよい3つの条件
前章では、AI活用を先に進めるべき組織の条件を3つ挙げました。反対に、条件によっては、AIを入れるより先に取り組むべきことがある組織もあります。急がなくてよいと判断することは、AI活用をやめることとは違い、AIが効く前提を先にそろえる順番を選ぶことです。ここで挙げる条件に当てはまる場合は、AIの検討を一度止めて、記録や体制の整備から始めるほうが結果として早く進みます。そこでここでは、ソリューション営業でAI活用を急がなくてよい3つの条件を解説します。
条件①商品と価格がほぼ決まっている
1つ目の条件は「商品と価格がほぼ決まっている」ことです。ソリューション営業という名前で呼んでいても、実際には提案する商品と価格の幅がほぼ決まっている組織もあります。この場合、課題を構造にしたり類似案件を引き当てたりする作業はもともと少なく、本記事で扱った場面の多くが当てはまりません。
たとえば、3種類のプランから選んでもらう業務システムを売る営業であれば、ヒアリングで聞くことも提案書の中身もほぼ決まっています。このような営業では、汎用の営業AIの活用例であるメールの作成や通話の要約のほうが、そのまま効果につながる場合があります。
提案の中身が商談ごとにどれだけ変わるかが、ソリューション営業向けの設計が必要かどうかの判断基準になります。
条件②商談の記録がCRMに残っていない
2つ目は「商談の記録がCRMに残っていない」ことです。AIが参照できるのは記録に残っている内容だけなので、商談の経緯が営業の手帳やメールの中にしか無い組織では、AIを入れても答えの中身が薄くなります。
具体的には、CRMには商談の金額と段階だけが登録され、訪問で聞いた話は営業が個人のメモに残している組織が当てはまります。訪問の記録があっても、中身が「訪問済み」の一言だけであれば、同じ状態として扱います。この状態でAIの設定に時間を使うより、まず訪問のあとに3つほどの項目を記録する習慣を作るほうが、半年後のAI活用の効果は大きくなるでしょう。
記録が残っていない組織にとっては、記録を残す運用そのものがAI活用の準備にあたります。
条件③営業が数名で案件を口頭で共有できている
3つ目は「営業が数名で案件を口頭で共有できている」ことです。営業が数名で、毎週の会議で全案件の状況を口頭で確かめられている組織では、記録を探したり懸念を一覧にしたりする作業に時間がかかっていません。
営業が4名ほどの組織であれば、誰がどの顧客で何に困っているかを、全員が会議の中で把握できています。この規模でAIに記録を整理させても、短くなる時間は会議で話す時間とほとんど変わりません。この規模では、利用料と記録を整える工数のほうが、短くなる時間に見合わない場合もあります。営業が増えて口頭で共有しきれなくなった時点が、AIの検討を始める時期の目安になります。
以上が、ソリューション営業でAI活用を急がなくてよい3つの条件でした。
Agentforceをソリューション営業に入れる費用3内訳
前章までで、AI活用を進めるかどうかの判断材料はそろいました。進めると決めたあとに必要になるのが、費用の見立てです。Agentforceの費用は、見積もりに出てくる利用料だけでなく、社内で記録と資料を整える工数や、外部の支援を使う場合の費用まで含めて考えないと、総額を読み違えます。とくにソリューション営業では、記録と資料を整える工数が大きくなりやすい点に注意が必要です。そこでここでは、Agentforceをソリューション営業に入れる費用を3つの内訳に分けて解説します。
内訳①Agentforceの利用料
1つ目の内訳は「Agentforceの利用料」です。Agentforceの料金には、エージェントが処理を実行するたびにクレジットを消費する考え方があり、Salesforceの価格ページではFlex Creditsは10万クレジットあたり60,000円、Agentforceのアクションは1回あたり20クレジットと示されています(2026年10月時点)。1アクションに換算すると12円です。社内の担当者が使う場合には、Flex Creditsを前提にしたAgentforceユーザーライセンスもユーザーあたり月600円で示されています。
この単価を、試す時期の使い方に当てはめてみます。たとえば営業3名がそれぞれ月に20回の訪問前の準備をAgentforceに任せ、1回の準備で5つのアクションが動くとすれば、月に300アクション、6,000クレジットで、金額にして3,600円ほどになります。
準備1回あたりのアクションの数は設計によって変わるため、試す時期に実際の消費を確かめてから広げる段階の予算を組むのが確実です。
利用料は、試す人数と準備の回数から先に計算できるため、3つの内訳の中では最も読みやすい費用です。
内訳②商談記録と提案書を整える工数
2つ目は「商談記録と提案書を整える工数」です。この内訳は見積もりには出てきませんが、ソリューション営業では最も大きくなりやすい費用にあたります。落とし穴①と②で見たように、商談記録の書き方をそろえ、散らばった提案書を集めて分類する作業が、AIを動かす前提になるからです。
工数として見込むのは、次の3つの時間です。
記録と資料を整える3つの工数 ①記録の項目・・・項目を決めて営業に説明する時間です ②提案書の回収・・・過去の提案書を集めて最終版を確かめる時間です ③分類と移動・・・業種と課題の分類を付けて1か所へ移す時間です
提案書の整理を受注した案件の最終版に絞っても、営業が1件ずつ確認する時間は営業全体の業務時間から割くことになります。この時間を見込まずに始めると、記録が整わないまま試す時期が終わってしまいます。
記録と資料を整える工数は、営業の時間を割く費用として、利用料と同じ表に並べて見積もりましょう。
内訳③支援会社の設計と定着の費用
3つ目は「支援会社の設計と定着の費用」です。外部の支援を使う場合は、指示とアクションの設計、ナレッジの登録、試す時期の運用の見直し、広げたあとの定着までのどこを頼むかで費用が変わります。
外部に頼む範囲を考えるときは、内訳②の工数をどこまで社内で持てるかが判断の出発点になります。商談記録の書き方をそろえる作業は、営業の業務を知っている社内の担当者が主導したほうが早く進みます。一方で、商談の段階ごとの時間の測り方や、AIに任せる範囲の線引きは、他社での進め方を知っている支援会社に頼むと、検討が一巡して戻る時間を減らせるでしょう。
支援会社の費用は、頼む範囲を内訳②と照らして決めると、社内の工数との重なりを避けられます。以上が、Agentforceをソリューション営業に入れる費用の3つの内訳でした。

ソリューション営業に特化した支援を選ぶ4つの見極め方
前章では、費用の内訳の3つ目として支援会社の費用を挙げました。では、外部の支援を使うとして、どのような会社を選べばよいのでしょうか。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、AIの設定ができるかどうかより、商談の進み方を理解したうえで業務を分解できるかどうかを見ます。Agentforceの支援会社を広く比べたい場合は、Agentforce導入支援会社の選び方で整理した7つの見極め方もあわせて確認してください。そこでここでは、ソリューション営業に特化した支援を選ぶ4つの見極め方を解説します。
見極め①商談の段階に沿って業務を分解できるか
1つ目は「商談の段階に沿って業務を分解できるか」です。ソリューション営業のAI活用は、商談の段階ごとに時間を測り、最も長い段階を選ぶところから始まります。この分解を支援会社と一緒に行えるかどうかと、手順①の段階ごとの時間の測り方を自社の商談に当てはめて説明できるかどうかで、AIを入れる場所の精度が変わります。
支援会社に最初の打ち合わせで「どの業務からAIを入れるべきか」と聞いたとき、製品の機能の一覧から答えが返ってくるのか、商談の段階ごとの時間を聞く質問から始まるのかで、支援の進め方は大きく違います。前者の場合、AIを入れる場所は機能の側から決まり、自社の商談で最も時間がかかっている段階と合わないことがあります。
見極め②商談記録と提案書の整え方まで扱うか
2つ目は「商談記録と提案書の整え方まで扱うか」です。費用の内訳②で見たとおり、ソリューション営業では記録と資料を整える工数が最も大きくなりやすく、ここを支援の範囲に含まない会社では、設定が終わっても答えの中身が薄いまま残ります。
確かめるときは、商談記録の項目をどう決めるか、過去の提案書をどの範囲で集めるか、分類をどう付けるかといった作業が、支援の範囲に書かれているかを見ます。範囲がAgentforceの設定だけになっている場合は、記録と資料を整える作業を社内で誰が持つのかを、契約の前に決めておく必要があります。
記録と資料の整え方を範囲に含むかどうかは、見積もりの項目を見れば契約前に確かめられます。
見極め③複数の関係者がいる前提で設計するか
3つ目は「複数の関係者がいる前提で設計するか」です。ソリューション営業の商談には購買や現場の責任者、情報システムといった複数の関係者が関わるため、AIに作らせる資料も関係者ごとに分ける設計が必要になります。
支援会社の設計の案を見たときに、営業担当者1人への返信や要約を作る仕組みだけで構成されていれば、関係者が1人の商談を前提にしている可能性があります。関係者ごとの懸念を一覧にする、立場ごとの説明資料の下書きを作るといった設計が含まれているかを確かめましょう。条件の違いによる支援会社の選び方の全体は、AIエージェント導入支援の5つのパターンで整理しています。
関係者の人数を前提に置いた設計かどうかは、提案された設計の案から読み取れます。
見極め④営業の現場を経験した担当がいるか
4つ目は「営業の現場を経験した担当がいるか」です。課題の定義や関係者の利害の調整をAIに任せないという線引きは、ソリューション営業の現場で商談を進めた経験がないと、設計の段階で引くのが難しくなります。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、支援を担当する人がどのような営業の経験を持っているかを、打ち合わせの段階で確かめておきましょう。
当社の代表の本田は、専門商社でBtoBの法人営業を7年間経験し、フリーランス時代を含め、累計100社以上のBtoB企業のマーケティングを支援してきました。
Agentforceは、代表の本田が2026年の初めから当社自身の営業の多くの業務で使っており、その知見をもとに、設計から定着までの支援を提供しています。要求定義から本番公開まではおよそ3か月で進め、本番公開後3か月から定着の支援を行います。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、Agentforce導入・定着支援にご相談ください。無料相談も受け付けています。
以上が、ソリューション営業に特化した支援を選ぶ4つの見極め方でした。
【一問一答】ソリューション営業のAI活用に関するよくある質問
ここまで、ソリューション営業でAIが効く場面と任せない判断、始め方と測り方、費用の内訳、支援会社の見極め方を見てきました。最後に、ソリューション営業のAI活用を検討する担当者から実際によく出てくる疑問をまとめておきます。営業の仕事がなくなるのかという不安から、顧客情報の扱い、効果が見えるまでの期間、社内の担当の決め方まで、検討の段階ごとに出てくる順に並べました。そこでここでは、ソリューション営業のAI活用に関するよくある質問を6つ取り上げます。
ソリューション営業の仕事はなくならず、AIに任せられるのは、顧客の情報を集める、記録を構造にするといった材料をそろえる作業までで、課題の定義、提案の範囲と価格、関係者の利害の調整は人に残ります。本記事の例に挙げた設備保全サービスの会社でも、AIに任せたのは材料集めまででした。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
扱う範囲と権限を設計すれば扱えます。社内の担当者が使うエージェントは利用者と同じ権限とセキュリティ設定に従うため、参照できる範囲は権限の設定で絞れます。本記事の例に挙げた設備保全サービスの会社でも、AIを使える人を試した営業3名に限って始めました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
準備の時間は1四半期で、受注までの日数は1年ほどで見えてきます。本記事の設備保全サービスの会社では、試した3か月で訪問前の準備が半日ほどから2時間足らずになりました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。商談期間が平均5か月あるため、受注までの日数の判断は1年後に置いています。
材料をそろえる作業をAIに任せる点は同じです。違いが出るのは、コンサルティング営業では課題を見つける前の調査の比重が大きく、ソリューション営業では課題に合わせて提案を組み立てる比重が大きい点にあります。本記事の例でいえば、類似案件から提案の型を引き当てる場面が、提案を組み立てる比重の大きいソリューション営業に合わせた使い方にあたります。
使えますが、Agentforceを使う場合は、商談記録がSalesforceに残っていることが前提になります。本記事の例に挙げた設備保全サービスの会社で類似案件を引き当てられたのも、Sales Cloudに3年分の受注案件が残っていたからでした。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。
営業の業務を知っている人が主導し、設定は情報システムの担当が受け持つ分担が進めやすいでしょう。本記事の設備保全サービスの会社では、試した営業3名と情報システムの担当が週に1回集まり、出てきた準備の資料を見ながら指示を直していました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。当社の支援事例ではありません。商談の段階の分解と記録の項目の決定は、営業の側で決める必要があります。
ソリューション営業のAI活用は、課題を決める人の時間をつくるためのもの
ソリューション営業でAIを使う目的は、営業の仕事をAIに置き換えることにはありません。ここまで見てきたように、案件ごとに提案を組み立てる営業では、顧客の情報を集める、ヒアリングの記録を構造にする、類似案件を引き当てる、関係者ごとの懸念を一覧にするといった材料をそろえる作業に多くの時間が使われており、その時間をAIに任せることで、課題の定義、提案の範囲と価格、関係者の利害の調整という人が持つ判断に時間を戻すことができます。
そのためには、汎用の営業AIの活用例をそのまま持ち込まず、商談の段階ごとに時間を測って合計が最も長い段階を1つ選び、商談記録の書き方をそろえてから少人数で試す順番が欠かせません。効果は試す・広げる・続けるの時期ごとに指標を変えて測り、受注件数だけで早く結論を出さないようにします。外部の支援を使う場合も、AIの設定ができるかどうかより、商談の段階に沿って業務を分解できるかどうかで選ぶことが、ソリューション営業のAgentforceを課題を決める人の時間に結びつける近道になるでしょう。本記事の内容が、自社のソリューション営業でAIの使いどころを決める材料として、少しでもお役に立てれば幸いです。


