インサイドセールスのAI活用とは?任せる工程の見極め方と商談化までの設計

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インサイドセールスの仕事は、リードを受け取ってから商談としてフィールド営業へ渡すまでの5つの局面に分かれます。インサイドセールスのAIとは、この5つの局面のうち、連絡する順番を決める、文面を用意する、商談にするかの材料をそろえるといった工程を、AIが受け持つ仕組みのことです。任せる局面を決める前にAgentforceのような製品から検討を始めると、投資の効果を示す根拠がないまま、導入の可否だけを議論することになります。

そこで本記事では、インサイドセールスのAIに任せる工程の見極め方と、人に残す判断、商談化までの設計を解説します。リードの受け取りから商談化までを1本の流れとして見直したい方に向けた内容です。なお、Agentforceの機能と単価は2026年9月時点で公式ページを見て確かめたもので、今後変わる可能性があります。

目次
  1. インサイドセールスのAIが受け持つ5つの局面
    1. 局面①リードを受け取る
    2. 局面②連絡する順番を決める
    3. 局面③連絡の文面を作る
    4. 局面④商談にするかを見極める
    5. 局面⑤フィールド営業へ引き継ぐ
  2. なぜ伸びない?架電を増やしても商談が増えない3つの理由
    1. 理由①連絡する順番が担当者の勘で決まるから
    2. 理由②連絡の文面が1種類しかないから
    3. 理由③商談化の基準がフィールド営業とずれているから
  3. 連絡の順番をAIに決めさせる3つの材料
    1. 材料①問い合わせの内容
    2. 材料②過去の商談の結果
    3. 材料③これまでの接点の履歴
  4. 誰が決める?AIに任せない3つの判断
    1. 判断①商談にするかの最終判定
    2. 判断②フィールド営業へ渡す時期
    3. 判断③既存顧客からの問い合わせの扱い
  5. 3指標|インサイドセールスのAIを測る
    1. 指標①初回の連絡までにかかった時間
    2. 指標②商談化率
    3. 指標③フィールド営業が差し戻した割合
  6. フィールド営業へ渡す3つの引き継ぎ項目
    1. 項目①顧客が抱えている課題
    2. 項目②決裁の進み具合
    3. 項目③次に約束した連絡
  7. インサイドセールスへのAI導入でつまずく3つの失敗
    1. 失敗①すべてのリードへ同じ文面を送る
    2. 失敗②順番の根拠を誰も説明できない
    3. 失敗③フィールド営業との基準合わせを後に回す
  8. Agentforceでインサイドセールスを組む3つの方法
    1. 方法①問い合わせへの初回の連絡を任せる
    2. 方法②商談前の情報集めを任せる
    3. 方法③商談化の判定材料をCRMにそろえる
  9. いつ始める?AIを先に入れるべきインサイドセールスの3条件
    1. 条件①リードの数に対して担当が足りない
    2. 条件②CRMに接点の記録が残っている
    3. 条件③商談化の基準を文章にできる
  10. インサイドセールスのAIを急がなくてよい3つの状況
    1. 状況①リードが月に数十件に収まっている
    2. 状況②商談化の基準がフィールド営業と合っていない
    3. 状況③接点の記録がCRMに残っていない
  11. 【一問一答】インサイドセールスのAIに関するよくある質問
  12. インサイドセールスのAIは、架電の量より、商談化の基準をそろえたところで効き始める
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本田正憲

合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援と、Agentic CRM設計支援を提供している。Salesforce認定アドミニストレーター・Sales Cloudコンサルタント・Marketing Cloud Account Engagement スペシャリスト。

インサイドセールスのAIが受け持つ5つの局面

インサイドセールスにAIを入れる話は、多くの場合「架電の件数をどこまで増やせるか」という問いから始まるのではないでしょうか。しかし、件数はインサイドセールスの仕事の一部でしかなく、AIが受け持てる工程はリードを受け取った時点から始まっています。任せる範囲を決めるには、まず自社のインサイドセールスがどの局面で何をしているかを分けて見る必要があります。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、製品のデモを見る前に、この5つの局面へ自社の作業を振り分けるところから相談できる相手を選ぶと、比べる製品の数も絞りやすくなるでしょう。そこでここでは、インサイドセールスのAIが受け持つ5つの局面を、順番に整理していきます。

局面AIが受け持てること人が持ち続けること
①受け取る重複の統合・情報の補完例外的な問い合わせの判断
②順番を決める材料をもとにした並べ替え並べ替えの基準づくり
③文面を作る型に沿った下書き送ってよいかの確認
④見極める判定に使う材料の収集商談にするかの最終判定
⑤引き継ぐ引き継ぎ項目の記入渡す時期の決定

局面①リードを受け取る

1つ目は「リードを受け取る」局面です。展示会の名刺、Webの問い合わせ、資料請求と、リードは複数の経路から届きます。この局面でAIが受け持てるのは、同じ会社や同じ担当者の重複を統合し、足りない項目を過去の記録から補う作業です。

なぜこの作業から任せると効果が出やすいかというと、重複したまま次の局面へ進むと、同じ相手に別々の担当者が連絡してしまい、後の工程すべてが狂うからです。順番を決める材料も、文面の材料も、元になるリードの情報が整っていることが前提になります。

たとえば、工業用接着剤を製造するメーカーでは、展示会で集めた名刺とWebからの問い合わせが同じ会社から届くことが月に何件もあり、インサイドセールスの担当者が目視で照合していました。照合の作業は1件あたり数分でも、月に数百件あれば連絡を始める時刻そのものが遅くなります。

このように、受け取る局面は、AIに任せても判断の質が落ちにくい作業が集まっています。最初に任せる工程を選ぶときは、この局面から候補にするのが現実的です。

局面②連絡する順番を決める

2つ目は「連絡する順番を決める」局面で、届いたリードのうち、どれから連絡するかを決める作業にあたります。AIは、問い合わせの内容や過去の商談の結果をもとに、連絡すべき順にリードを並べ替えます。

この局面が重要なのは、インサイドセールスの成果が、件数よりも「誰に先に連絡したか」で決まるからです。同じ100件へ連絡しても、購買の検討が進んでいる相手を後回しにすれば、商談になる件数は減ります。

実際に、この接着剤メーカーでは、リードが月に420件届く一方でインサイドセールスは5名しかおらず、朝の時点で誰から連絡するかを各担当者が自分で決めていました。判断の材料は担当者の記憶にあり、前日に届いたリードが翌々日まで残ることも起きています。

インサイドセールスのAIは、5つの局面のどこを任せるかを決めてから製品を選ぶと、入れた後の説明がしやすくなります。

局面③連絡の文面を作る

3つ目は「連絡の文面を作る」局面です。メールの下書きや、電話で話す内容の要点を、リードの情報に合わせて用意する作業を指します。AIは、問い合わせの内容と過去のやり取りから、型に沿った文面を作ります。

ただし、この局面で任せられるのは下書きまでです。なぜなら、送ってよい内容かどうかの確認には、製品の在庫や納期、過去の取引の経緯といった、文面の外にある情報が必要になるからです。

この接着剤メーカーの場合、送る文面は担当者ごとに書き方が違い、問い合わせの種類に関係なく同じ挨拶文から始まるものがほとんどでした。文面を作り直す時間を惜しんだ結果、相手の質問に触れないまま資料の案内だけを送る連絡が増えていたのです。

具体例でいうと、接着剤の耐熱性を質問してきた相手に、製品一覧の資料を送るだけで終わる連絡が該当します。文面の下書きをAIに任せる価値は、こうした「質問に答えていない連絡」を減らせる点にあります。

局面④商談にするかを見極める

4つ目は「商談にするかを見極める」局面で、連絡した相手を商談としてフィールド営業へ渡すか、まだ情報提供を続けるかを判断する作業になります。AIが受け持てるのは、判断に使う材料を集めて示すところまでです。

判定そのものをAIに任せない理由は、商談として成立するかどうかの基準が、フィールド営業の受け入れ状況によって動くからです。同じ条件のリードでも、受け取る側の稼働に余裕があるかどうかで、渡してよい時期は変わります。

たとえば、この接着剤メーカーでは、フィールド営業14名のうち特定の地域を担当する数名に商談が偏っており、渡す先の状況を見ずに判定だけを機械的に進めると、受け取った側が着手できないまま滞ることが起きていました。

このように、見極めの局面は、材料の収集と最終の判定を分けて考える必要があります。どこまでをAIに渡すかは、この分け方で決まります。

局面⑤フィールド営業へ引き継ぐ

5つ目は「フィールド営業へ引き継ぐ」局面です。商談として渡すと決めた後に、何を伝えて渡すかを決める作業にあたります。AIは、やり取りの記録から引き継ぎに必要な項目を抜き出し、所定の欄へ記入します。

この局面を任せる効果は、引き継ぎの内容が担当者によって変わらなくなる点にあります。記録から機械的に抜き出す形にすれば、書く人によって項目が欠けることがなくなります。

先ほどの接着剤メーカーでは、引き継ぎの内容が自由記述の欄に書かれており、顧客の課題まで書く担当者と、次回の連絡日だけを書く担当者が混在していました。受け取ったフィールド営業は、不足している情報を自分で聞き直すことになり、初回の訪問までに日数がかかっています。

以上が、インサイドセールスのAIが受け持つ5つの局面でした。

なぜ伸びない?架電を増やしても商談が増えない3つの理由

ここまで、インサイドセールスのAIが受け持てる5つの局面を整理してきました。では、AIを入れて連絡の件数を増やしたのに、商談の数が変わらないという結果になるのはなぜでしょうか。原因は件数の増やし方ではなく、順番と基準の決め方にあります。ここからは、工業用接着剤を製造するメーカーの例を交えて解説していきます。従業員280名、インサイドセールス5名、フィールド営業14名、マーケティング2名という体制で、Salesforceを運用してきた企業です。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。そこでここでは、インサイドセールスのAIを入れても商談が増えない3つの理由を解説します。

理由①連絡する順番が担当者の勘で決まるから

1つ目の理由は、連絡する順番が担当者の勘で決まっているからです。誰から連絡するかの基準が人の頭の中にあると、AIで件数を増やしても、増えるのは後回しにしてよいリードへの連絡になります。

なぜこうなるかというと、順番の基準が文章になっていない組織では、AIに渡す材料も決まらないためです。材料が決まらなければ、AIは届いた順か、名前の順でしか並べられません。

この接着剤メーカーでは、リードが月420件届くのに対して、初回の連絡までに平均26時間かかっていました。担当者に理由を聞くと「見た目で急ぎそうなものから連絡している」という答えが返ってきており、その見た目の判断は担当者の勘に依存していたのです。

架電の件数を増やしても商談が増えないのは、連絡の順番と商談化の基準が担当者ごとに違うためです。

理由②連絡の文面が1種類しかないから

2つ目の理由は、連絡の文面が1種類しかないからです。問い合わせの内容が違っても同じ文面を送っていると、連絡の件数だけが増え、返信の数は変わりません。

文面が1種類になるのは、担当者が手を抜いているからではありません。作り分けるには、問い合わせの種類ごとに何を書くかを決める作業が先に必要で、その作業に時間を取れないまま運用が続くからです。

実際に、この接着剤メーカーが送っていた初回のメールは、資料請求と技術的な質問のどちらにも同じ文面で返す形でした。技術的な質問をした相手からは返信が来ず、インサイドセールスの担当者は「返信が来ないリードは関心が低い」と受け取っていました。

しかし、返信が来なかった相手の中には、後から競合他社の製品を採用した企業も含まれています。文面を作り分けていれば違う結果になった可能性は、この時点では誰も検証できませんでした。

理由③商談化の基準がフィールド営業とずれているから

3つ目の理由は、商談化の基準がフィールド営業とずれているからです。インサイドセールスが商談として渡しても、受け取る側が商談だと認めなければ、数字の上でしか商談は増えません。

基準がずれる原因は、両者が見ている情報が違うところにあります。インサイドセールスは問い合わせの内容と反応を見ており、フィールド営業は予算の有無や決裁の段取りを見ています。

この接着剤メーカーでは、インサイドセールスが月に42件を商談として渡していましたが、そのうち14件がフィールド営業から「まだ早い」と差し戻されていました。割合にすると33%で、3件に1件が戻ってくる状態だったのです。

このように、商談が増えない理由は、AIの性能よりも基準の不一致にあります。AIを入れる前に確かめるべきなのは、この基準がそろっているかどうかです。

連絡の順番をAIに決めさせる3つの材料

前の章では、順番が担当者の勘で決まることが商談の増えない理由になると整理しました。では、その順番をAIに決めさせるには、何を材料として渡せばよいのでしょうか。材料は3つあり、いずれもCRMに記録が残っていれば新しく集める必要はありません。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合は、この3つの材料の組み合わせ方だけを外部に確かめてもらい、組む作業は社内で進める形でも足ります。そこでここでは、インサイドセールスのAIに順番を決めさせるための3つの材料を解説します。

材料①問い合わせの内容

1つ目の材料は、問い合わせの内容です。何を聞いてきたか、どの製品のページを見て問い合わせたかという情報が、連絡の優先度を決める最初の手がかりになります。

この材料を最初に置く理由は、問い合わせの内容が、相手の検討段階をもっとも直接に表すからです。用途と条件を書いて問い合わせてきた相手は、資料を1点だけ請求した相手より検討が進んでいます。

たとえば、この接着剤メーカーでは、問い合わせのフォームに「使用温度」と「接着する素材」の記入欄があり、両方が埋まっている問い合わせは、商談になる割合が明らかに高いことが分かっていました。ところが、その情報は担当者が個別に開いて読むまで分からない状態でした。

このように、問い合わせの内容は、判断の材料としてすでに手元にあることが多いものです。新しく集める必要はなく、読める形に並べ替えるところから始められます。

材料②過去の商談の結果

2つ目の材料は過去の商談の結果で、どの業種、どの規模、どの用途の相手が商談になり、受注まで進んだかという履歴を、順番の判断に使います。

履歴を材料にするのは、自社の得意な条件を数字で確かめられるためです。担当者の印象ではなく、受注に至った商談の条件を並べれば、優先すべき相手の輪郭が見えてきます。

この接着剤メーカーの場合、過去の受注は自動車部品と電子部品の製造業に集中しており、建材向けの引き合いは商談になっても受注まで進まないことがほとんどでした。それでも連絡の順番は届いた順のままで、受注しにくい相手に先に時間を使う日が生まれていたのです。

記録が少ない段階でも始められるかという疑問は残ります。この点は記録が少ない段階での進め方が参考になり、件数が足りないうちは材料①だけで順番を決める形から入るのが現実的でしょう。

材料③これまでの接点の履歴

3つ目の材料は、これまでの接点の履歴です。メールの開封、資料のダウンロード、展示会での訪問といった行動の記録を、順番の判断に加えます。

接点の履歴を加えると、同じ問い合わせ内容でも、検討が動いている相手を先に見つけられます。問い合わせの内容は申し込みの時点で止まっているのに対し、接点の履歴はその後の動きを示すからです。

実際に、この接着剤メーカーでは、展示会で名刺を交換した後に技術資料を2回開いた企業からの問い合わせが、商談まで最短で進んでいました。しかし、展示会の記録とWebの行動記録が別々に管理されていたため、連絡の時点では誰も気づいていません。

このように、3つの材料はどれも新しく買うものではありません。すでに社内に分かれて存在しています。インサイドセールスのAIに順番を任せる準備とは、この3つを1か所に集める作業だといえます。

誰が決める?AIに任せない3つの判断

ここまで、順番を決めるための材料を整理してきました。一方で、材料がそろっても、AIに渡してはいけない判断があります。渡してしまうと、商談の数は増えても、フィールド営業から戻される件数まで一緒に増えるからです。差し戻しが増えると、フィールド営業はインサイドセールスから届く案件を後回しにし始め、早めた初回の連絡が成果につながらなくなるでしょう。任せる範囲を線引きするときは、AIの精度ではなく、判断を誤ったときに誰が責任を負うかで考えると決めやすくなります。そこでここでは、インサイドセールスのAIに任せない3つの判断を解説します。

判断①商談にするかの最終判定

1つ目は、商談にするかどうかの最終判定です。AIが示すのは判定の材料までで、商談として登録するかどうかはインサイドセールスの担当者が決めます。

最終判定を人に残す理由は、判定を誤ったときの影響が、後の工程すべてに及ぶからです。商談として登録された案件は、フィールド営業の予定を占め、予測の数字にも入ります。

この接着剤メーカーでは、AIが示した材料をもとに担当者が判定する形をとりました。材料には、問い合わせの内容、過去の類似商談の結果、直近の接点が並びます。担当者はそこへ、電話で聞き取った予算の話を足して判定しました。

商談にするかどうかの最終判定は、インサイドセールスの担当者が持ち続けるほうが差し戻しを減らせます。

判断②フィールド営業へ渡す時期

2つ目は、フィールド営業へ渡す時期です。商談として成立する見込みがあっても、いつ渡すかは受け取る側の状況で決まります。

時期の判断を人に残すのは、渡す先の稼働という、CRMの記録に表れにくい情報が必要になるためです。担当者の予定表には訪問の予定しか入っておらず、提案書の作成にかかる時間までは記録されていません。

具体例でいうと、この接着剤メーカーでは、特定の地域を担当するフィールド営業に商談が集中する時期があり、その期間に渡した案件は初回の訪問まで日数がかかっていました。渡す時期を1週間ずらすだけで、初回の訪問が早まる場合もあったのです。

AIに渡してよい範囲をどう絞るかは、権限の設計とも関係します。任せる範囲を先に決めておけば、判断だけを人に残す形も作れます。

判断③既存顧客からの問い合わせの扱い

3つ目は、既存顧客からの問い合わせの扱いです。すでに取引のある企業から新しい問い合わせが届いたとき、新規のリードと同じ流れに乗せてよいかを人が決めます。

この判断を残す理由は、既存顧客には担当のフィールド営業がすでにいるからです。インサイドセールスが新規と同じ手順で連絡すると、担当者が知らないところで別のやり取りが進み、顧客から見て窓口が2つある状態になります。

この接着剤メーカーの場合、既存顧客からの問い合わせは月420件のうち一定数を占めており、その多くが追加発注や別ラインへの展開の相談でした。新規のリードと同じ順番の計算に乗せると、担当のフィールド営業を飛ばして連絡してしまう事態が起きます。

このように、任せない判断を先に決めておくと、AIに渡す範囲がはっきりします。線引きは、精度への不安から引くものではありません。業務の責任の所在から引くものです。

3指標|インサイドセールスのAIを測る

ここまで、AIに任せない判断を整理してきました。任せる範囲と人に残す判断が決まったら、次は入れた後に何を見て効果を判断するかを決めておく必要があります。インサイドセールスのAIの効果は、連絡の件数や自動化した割合で語られることが多いものです。しかし、それだけでは商談が増えたのか、フィールド営業が受け取る商談の質が変わったのかが分かりません。そこでここでは、インサイドセールスのAIを測る3つの指標を、導入前後の数字とあわせて解説します。

指標①初回の連絡までにかかった時間

1つ目の指標は、初回の連絡までにかかった時間です。リードが届いてから最初の連絡を入れるまでの平均を、導入の前後で比べます。

この接着剤メーカーが当初掲げた目的は「リードへの初回の連絡を早め、フィールド営業が受け取る商談の質をそろえること」でしたが、導入前の平均は26時間でした。順番の計算と文面の下書きをAIに任せた後、この平均は2時間まで縮んでいます。

短縮できた理由は、担当者が朝に行っていた「誰から連絡するか」を考える作業と、文面を書き起こす作業が、連絡を始める前から用意される形に変わったからです。担当者は並んだ順に確認し、必要なところだけ直して送る流れになりました。

インサイドセールスのAIの効果は、初回の連絡までの時間と商談化率、差し戻しの割合の3つで測ります。

指標②商談化率

2つ目の指標は、商談化率です。届いたリードのうち、何件が商談になったかの割合を見ます。連絡の件数ではなく割合で見るのは、リードの数が月によって変わるためです。

この接着剤メーカーでは、導入前に月420件のリードから42件を商談にしており、商談化率は10%でした。順番と文面を変えた後は63件となり、15%まで上がっています。

割合が上がった理由は、連絡する順番が変わったことにあります。同じ420件に連絡していても、検討が進んでいる相手へ先に連絡すれば、話が始まる件数は増えます。連絡の総量を変えずに順番だけを入れ替えた結果である点は、社内で数字を説明するときの前提にしておきましょう。

このように、商談化率は、AIに任せた工程が成果に届いているかを判断する指標になります。連絡の件数だけを見ていると、この変化は見えません。

指標③フィールド営業が差し戻した割合

3つ目の指標は、フィールド営業が差し戻した割合です。商談として渡した件数のうち、受け取る側から「まだ早い」と戻された件数の割合を見ます。

この指標を置く理由は、商談化率だけを追うと、質の低い商談を増やす方向へ進みかねないからです。渡した件数が増えても、戻される件数が同じ割合で増えていれば、フィールド営業の時間は減りません。

この接着剤メーカーの場合、導入前は42件のうち14件が差し戻され、割合は33%でした。商談化の基準を文章にそろえた後は、63件のうち7件となり、11%まで下がっています。それでも戻ってきた案件は、いずれも決裁の部門を特定できていないものでした。

指標の設計そのものに迷う場合は、動きを測る指標の考え方が参考になります。測る対象を先に決めておくほど、導入後の説明はしやすくなるでしょう。

フィールド営業へ渡す3つの引き継ぎ項目

ここまで、効果を測る3つの指標を見てきました。差し戻しの割合を下げるには、渡すときに何を伝えるかを決めておく必要があります。引き継ぎの内容が担当者ごとに違うと、受け取る側は不足を聞き直すことになり、初回の訪問までに日数がかかります。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合、この引き継ぎの設計は、提案の組み立てに直結するため優先して確かめておきたい部分です。そこでここでは、インサイドセールスのAIに記入させる3つの引き継ぎ項目を解説します。

項目①顧客が抱えている課題

1つ目の項目は、顧客が抱えている課題です。何に困って問い合わせたのかを、顧客の言葉に近い形で残します。製品名や型番だけを残すと、受け取る側は提案の出発点を自分で探し直すことになります。

課題を最初の項目に置くのは、提案の内容がここから決まるからです。同じ製品への問い合わせでも、既存の接着剤が剥がれる問題と、作業時間を短くしたい要望とでは、提案する内容が変わります。

この接着剤メーカーでは、やり取りの記録から課題にあたる部分を抜き出し、所定の欄へ記入する形に変えました。記入の作業をAIに任せたことで、引き継ぎの欄が空欄のまま渡される商談はなくなっています。

フィールド営業への引き継ぎは、顧客の課題と決裁の進み具合を項目にすると受け取る側が判断できます。

項目②決裁の進み具合

2つ目の項目は、決裁の進み具合です。誰が決める案件なのか、予算の枠はいつ決まるのかという情報を残し、この項目を渡す時期の判断にもそのまま使います。

決裁の情報を項目にする理由は、フィールド営業が最初に確かめるのがこの点だからです。課題が明確でも、決める人と時期が分からない案件は、訪問しても次の約束を取りにくくなります。

たとえば、この接着剤メーカーが差し戻しを受けていた商談の多くは、技術部門の担当者との会話だけで渡されたものでした。購買の決裁が別の部門にあると分かるのは、フィールド営業が訪問した後だったのです。

引き継ぎの内容をどの粒度で残すかは、商談メモの作り方とも重なります。項目を決めておけば、記入する内容のばらつきは小さくなります。

項目③次に約束した連絡

3つ目の項目は、次に約束した連絡です。いつ、誰に、何を伝えると約束したかを残します。約束の内容が残っていないと、フィールド営業は前の担当者の連絡をなぞるところから始めることになります。

この項目が効くのは、顧客から見た連絡の連続性を保てるためです。インサイドセールスが約束した内容をフィールド営業が引き継げば、顧客は同じ説明を繰り返さずに済みます。

この接着剤メーカーでは、次回の連絡日だけを書く担当者と、約束の内容まで書く担当者が混在していました。記録からの抜き出しに変えた後は、約束の内容が全件に残るようになり、初回の訪問での聞き直しが減っています。

このように、引き継ぎの3項目は、受け取る側が判断に使う順に並んでいます。項目を決める作業は、AIを入れる前でも今日から始められるものです。

Agentforceの導入・定着支援では、こうした引き継ぎ項目の設計から無料相談を受け付けています。詳しくはAgentforce導入・定着支援をご確認ください。

インサイドセールスへのAI導入でつまずく3つの失敗

ここまで、引き継ぎの項目を整理してきました。ただ、項目や指標を決めていても、進め方を誤ると使われないまま止まります。実際につまずく形はいくつかに分かれており、いずれもAIの精度とは関係のないところで起きています。定着まで伴走してほしい場合は、入れた後にこの3つが起きていないかを一緒に確かめられる相手を選ぶと、立て直しの時間を短くできるでしょう。そこでここでは、インサイドセールスへのAI導入でつまずく3つの失敗を解説します。

失敗①すべてのリードへ同じ文面を送る

1つ目は、すべてのリードへ同じ文面を送ってしまう失敗です。文面の作成をAIに任せたのに、出力の型を1種類しか用意しなかった場合に起きます。

この失敗が起きるのは、文面を作る作業を「速く書く作業」と捉えてしまうからです。速さだけを求めれば型は1つで足りますが、返信が増えるかどうかは、問い合わせの種類に合っているかで決まります。

この接着剤メーカーでは、問い合わせを技術的な質問、価格の確認、資料請求の3種類に分け、文面の型を3種類用意しました。型を分けた後は、技術的な質問への返信が届くようになり、担当者が電話で確認する内容も具体的になっています。

型が1つのままであれば、文面の作成をAIに任せても返信の数は変わりません。逆に、問い合わせの種類が1つに絞られる商材であれば、型を増やさずに運用しても差は出ないでしょう。

失敗②順番の根拠を誰も説明できない

2つ目は、連絡する順番の根拠を誰も説明できなくなる失敗です。AIが並べ替えた結果をそのまま使い続けると、なぜこの順番なのかを聞かれたときに答えられなくなります。

根拠が説明できないと、現場の担当者は並び順を無視し始めます。自分の判断と違う順番が並んでいても、理由が分からなければ従う理由がないからです。

実際に、この接着剤メーカーでも、運用を始めた最初の週に「なぜこの会社が上位なのか」という質問が担当者から出ました。使った材料を画面上で示す形に変えたところ、担当者は並び順を確かめながら連絡を進めるようになっています。

インサイドセールスへのAI導入でつまずく原因の多くは、基準合わせを後に回したことにあります。

失敗③フィールド営業との基準合わせを後に回す

3つ目は、フィールド営業との基準合わせを後に回す失敗です。インサイドセールス側だけで運用を始め、商談の定義をそろえないまま件数を増やすと、差し戻しが増えます。

後に回してしまうのは、基準合わせが会議の時間を要する作業で、AIの設定より進めにくいからです。設定は1日で終わっても、2つの部門の基準をそろえる話し合いは数週間かかることがあります。

この接着剤メーカーは、初回の連絡だけを4週間試した時点で、フィールド営業を交えて商談の定義を文章にしました。予算の枠が確認できていること、決める人が分かっていること、時期の目安が出ていることの3点を条件に決めています。

このように、基準合わせは後回しにできる作業ではなく、効果が出るかどうかを左右します。AIの設定より先に着手しても早すぎることはありません。

Agentforceでインサイドセールスを組む3つの方法

ここまで、つまずく形を見てきました。では、CRMの中で動く製品で組む場合、インサイドセールスのどの工程から形にできるのでしょうか。Agentforceを使う場合、5つの局面のすべてを一度に任せる必要はなく、1つの局面から試せます。小さく始めたい場合は、スモールスタートで初回の連絡だけを対象にし、効果を確かめてから広げる進め方が合うでしょう。そこでここでは、Agentforceでインサイドセールスを組む3つの方法を解説します。

方法①問い合わせへの初回の連絡を任せる

1つ目は、問い合わせへの初回の連絡を任せる方法で、届いたリードの情報を読み取り、連絡の順番と文面の下書きまでを用意させる形になります。営業向けにはSDRとして、この工程を受け持つ区分が用意されています。

この方法から始める理由は、効果が件数と時間で示しやすいからです。初回の連絡までの平均時間は、導入の前後で比べられる数字として残ります。

この接着剤メーカーは、初回の連絡だけを4週間試しました。対象は問い合わせフォームから届くリードに限り、展示会の名刺は従来どおり担当者が扱っています。範囲を絞ったことで、効果が出た理由を後から確かめられる形になりました。

Agentforceでインサイドセールスを組むときは、初回の連絡という1つの局面から試すと効果を確かめやすくなります。

方法②商談前の情報集めを任せる

2つ目は、商談前の情報集めを任せる方法です。連絡する相手の企業情報、過去の取引、問い合わせの履歴を集めて、担当者が話す前に要点として示します。

この工程を任せる価値は、担当者が画面を切り替えながら探していた時間を減らせる点にあります。探す作業と話す作業が分かれていると、電話をかける前の準備だけで時間が過ぎていきます。

具体例でいうと、この接着剤メーカーの担当者は、電話の前に取引の履歴と過去の問い合わせを別々の画面で確認していました。要点が1つの画面にまとまった後は、確認にかけていた時間を、聞き取る内容の準備へ回せるようになっています。

このように、情報集めは、判断を伴わないぶん任せやすい工程です。最初の局面を試した後に広げる対象として適しています。

方法③商談化の判定材料をCRMにそろえる

3つ目は、商談化の判定材料をCRMにそろえる方法です。判定そのものは担当者が行い、判定に必要な材料を所定の項目へ記入させる形をとります。

材料をそろえる作業を任せる理由は、記入の抜けが判定のばらつきを生むからです。予算の話を聞いていても記録に残っていなければ、判定する担当者はその情報を使えません。

この接着剤メーカーでは、通話の記録から予算、決裁、時期にあたる内容を抜き出し、それぞれの項目へ記入する形に変えました。記入がそろった結果、担当者による判定の違いが小さくなり、差し戻しの割合も下がっています。

このように、3つの方法はいずれも工程を限って始められます。製品を決める前でも、どの工程から任せるかの検討は進められるでしょう。

いつ始める?AIを先に入れるべきインサイドセールスの3条件

ここまで、製品で組む方法を整理してきました。一方で、どの企業でも今すぐ着手すべきとは限りません。効果が出やすい状態には共通点があり、その条件を満たしているほど、導入後の変化を数字で示しやすくなります。逆に、条件を満たさないまま進めた組織では、導入の前後で何が変わったのかを説明できず、次の投資の判断まで止まってしまうのではないでしょうか。そこでここでは、インサイドセールスのAIを先に入れるべき3つの条件を解説します。

条件①リードの数に対して担当が足りない

1つ目の条件は、リードの数に対して担当者が足りない状態です。届く件数に対して連絡できる件数が少なければ、順番を決める工程を任せる効果がそのまま表れます。

この条件が効くのは、連絡できていないリードが存在するときに限り、順番の変更が成果を動かすからです。全件へ当日中に連絡できている組織では、順番を変えても結果は大きく変わりません。

この接着剤メーカーの場合、月420件に対してインサイドセールスは5名で、1人あたり84件を担当する計算になります。初回の連絡までに平均26時間かかっていた状態は、人数を増やさずに縮められる余地があることを示していました。

インサイドセールスのAIを先に入れるべきなのは、リードの数に担当者が追いつかない状態の組織です。

条件②CRMに接点の記録が残っている

2つ目の条件は、CRMに接点の記録が残っている状態です。過去の商談の結果や、メールの開封、資料の閲覧といった記録があれば、順番を決める材料として使えます。

記録の有無が条件になるのは、材料のないところでAIが作れる順番が、届いた順しかないからです。記録を新しく集めるところから始める場合は、効果が出るまでに数か月かかります。

この接着剤メーカーは、Salesforceを運用してきたため、過去の商談の結果と問い合わせの履歴が残っていました。展示会の記録だけが別の管理になっており、この部分をCRMへ集める作業から着手しています。

このように、条件②は設備の話ではなく、記録の置き場所の話です。すでにCRMを使っている組織であれば、満たしている場合が多いといえます。

条件③商談化の基準を文章にできる

3つ目の条件は、商談化の基準を文章にできる状態です。どの条件を満たせば商談として渡すかを、フィールド営業と合意して書き出せるかどうかを指します。

基準を文章にできることが条件になる理由は、書けない基準はAIにも人にも渡せないからです。基準が頭の中にある限り、判定のばらつきは担当者の数だけ残り続けます。

この接着剤メーカーは、予算の枠、決める人、時期の目安という3点で基準を文章にしました。書き出す作業そのものは1回の会議で終わっており、難しかったのは合意の内容よりも、両部門の時間を確保することでした。

このように、3つの条件は設備投資の話ではありません。社内の状態を確かめるものです。満たしていない条件があるなら、そこから着手するほうが効果は早く出ます。

インサイドセールスのAIを急がなくてよい3つの状況

ここまで、先に着手すべき条件を見てきました。逆に、いま急いで入れても効果が出にくい状況もあります。この場合に足りないのはAIの機能ではありません。順番を決める材料と、商談として渡す条件のほうです。整える対象を飛ばして製品だけを入れると、担当者は画面に並んだ順を信用できず、結局は自分の判断で連絡先を選び直すことになり、設定にかけた時間だけが残ってしまうのです。そこでここでは、インサイドセールスのAIを急がなくてよい3つの状況を解説します。

状況①リードが月に数十件に収まっている

1つ目は、リードが月に数十件に収まっている状況です。届く件数が少なければ、担当者は当日中に全件へ連絡できており、順番を変える効果は小さくなります。

この状況で効果が出にくいのは、順番の最適化が「連絡しきれない件数がある」ことを前提にしているからです。全件に同じ日に連絡できるなら、並べ替えの価値はほとんど生まれません。

たとえば、月に30件のリードへ2名で対応している組織であれば、1人あたり15件で、当日中の連絡は難しくありません。この規模では、AIの導入より文面の型を整えるほうが返信の数に効きます。

このように、件数が少ない段階では、投資の効果が数字に表れにくくなります。判断の基準は、連絡しきれていない件数があるかどうかです。

状況②商談化の基準がフィールド営業と合っていない

2つ目は、商談化の基準がフィールド営業と合っていない状況です。基準がずれたままAIで商談の件数を増やすと、差し戻しの件数も同じ割合で増えます。

基準合わせを先にする理由は、AIが判定の材料をそろえても、判定の物差しが2つあれば結果が安定しないからです。物差しをそろえる作業は、製品の選定とは独立して進められます。

この接着剤メーカーが差し戻しを33%から11%まで下げられたのは、AIを入れたからではなく、商談の定義を3点で文章にしたからでした。文章にする作業を先に済ませていたため、件数が増えても差し戻しは増えませんでした。

このように、基準がずれている状況では、AIの導入は効果を薄めます。整える順番は、基準が先で製品が後です。

状況③接点の記録がCRMに残っていない

3つ目は、接点の記録がCRMに残っていない状況で、過去のやり取りが個人のメールや手元の資料にしかなければ、順番を決める材料をAIへ渡せません。

記録が残っていない状態で導入を進めると、AIが使える材料は問い合わせの内容だけになります。それでも並べ替えはできますが、過去の結果を踏まえた優先度にはなりません。

具体例でいうと、展示会で交換した名刺が担当者の手元で管理されている組織では、その企業が過去に何を検討したかを、AIは参照できません。記録をCRMへ集める作業が先に必要になります。

このように、急がなくてよい状況は、いずれも準備の順番の話です。AIを入れない判断というより、先に整える対象がある状態だと捉えるほうが実態に合います。

【一問一答】インサイドセールスのAIに関するよくある質問

ここまでの内容を社内で共有すると、架電の扱いや費用、対象の選び方について、同じ質問が繰り返し出てくるはずです。この接着剤メーカーでも、営業部門の責任者とインサイドセールスの担当者、情報システムの担当がそれぞれの立場から別の疑問を持ち寄っており、なかでも架電の要否と費用は、打ち合わせのたびに確かめ直された論点でした。そこでここでは、インサイドセールスのAIに関するよくある5つの質問を、このメーカーの判断とあわせて取り上げます。

質問①インサイドセールスのAIで架電はなくなるのか

架電はなくならず、この接着剤メーカーでも、順番の計算と文面の下書きをAIに任せた後、担当者は電話をかけ続けています。変わったのは件数ではなく、かける相手の順番と、話す前の準備にかけられる時間です。初回の連絡までの平均は26時間から2時間へ縮みましたが、電話という手段そのものは残っています。

質問②インサイドセールスのAIはどのリードから任せればよいのか

問い合わせフォームから届くリードから始めるのが現実的です。この接着剤メーカーは、フォーム経由のリードだけを4週間の対象にし、展示会の名刺は従来どおり担当者が扱いました。フォーム経由は記入項目が決まっており、AIが読み取る材料がそろっているためです。範囲を絞ると、効果が出た理由も後から確かめられます。

質問③インサイドセールスのAIとMAの自動配信は何が違うのか

MAの自動配信は、あらかじめ決めた条件に当てはまった相手へ、決めた内容を送る仕組みです。インサイドセールスのAIは、リードごとに材料を読み取り、連絡の順番や文面の内容を個別に変えます。この接着剤メーカーでは、問い合わせの種類に応じて文面の型を3種類に分けており、条件の分岐をあらかじめ書き切る形とは運用の手間が変わりました。

質問④インサイドセールスのAIの費用は何で決まるのか

費用は、AIが処理を実行する回数で大きく変わります。Agentforceの場合、標準的なアクションは1回あたり20クレジット、金額にして0.10ドルを消費し、Flex Creditsは10万クレジットあたり500ドルです(2026年9月時点)。この接着剤メーカーは、月420件のリードで処理が何回走るかを数えてから、料金の考え方に当てはめています。

※参考記事はこちら

質問⑤インサイドセールスのAIは少人数の部署でも効果があるのか

人数より、連絡しきれていない件数があるかどうかで決まります。この接着剤メーカーはインサイドセールス5名で月420件を担当しており、1人あたり84件という状態が効果の出る条件になっていました。逆に、月に数十件のリードへ当日中に連絡できている部署であれば、AIの導入より文面の型を整えるほうが返信の数に効きます。

インサイドセールスのAIは、架電の量より、商談化の基準をそろえたところで効き始める

インサイドセールスのAIは、連絡の件数を増やす仕組みではなく、連絡する順番と商談化の基準をそろえるための仕組みです。本記事で整理した5つの局面、商談が増えない理由、順番を決める3つの材料、人に残す3つの判断、測る3つの指標、引き継ぎの3項目、つまずく失敗、製品で組む方法は、自社のリードの記録とフィールド営業との合意が手元にあれば、製品を決める前に社内で詰められる内容です。

まず確かめたいのは、届いたリードに当日中に連絡できているかどうかと、商談として渡す条件を文章にできるかどうかの2点になります。この2つが確かめられれば、どの局面から任せるかの見当もつくでしょう。本記事の内容を、自社の状況に合わせて実践し、少しでもお役に立てれば幸いです。