Agentic CRMへ入れ替えるべきか?AIに読ませる前に確かめる移行の判断と5つの観点

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CRMの入れ替えは進め方の問題だといわれますが、見積りを取ると期間も費用も想定を超え、手順を詰める前に判断が止まります。AIに商談の記録を読ませたいという要望が出た時点で検討を始めた会社ほど、そこで結論を出せずにいるのではないでしょうか。CRMの移行の判断とは、入れ替えるかどうかを進め方の前に決める作業で、入れ替えずに解ける範囲を先に確かめることから始まります。 ここで扱う考え方はAgentic CRMの設計にもとづくもので、特定の製品を前提にしていません。

そこで本記事では、CRMを入れ替えるかどうかを決めるための考え方と、決めたあとに扱う範囲・順番・期間について解説します。

CRMの移行を検討し始める3つのきっかけ

住宅設備の部材を扱う専門商社では、従業員360名のうち営業が41名、情報システム部が3名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。この会社は9年前に導入したCRMを使い続けており、部署ごとの要望に応じて開発を重ねた結果、商談画面の自由記述の欄が22個まで増えています。当初の目的は「商談の記録をAIに読ませて、営業が探す時間を減らすこと」でした。そこでここでは、この会社を例に、CRMの移行を検討し始める3つのきっかけを整理します。

きっかけは機能の不足として語られますが、内容は3つに分かれます。移行の検討が始まるのは、AIに読ませたい記録が今の形では読めないと分かった時点です。

比較の観点入れ替える場合入れ替えない場合
期間の目安1年以上になりやすい数か月で終わる場合がある
失う記録移さないものは残らないそのまま残る
業務の停止並行して動かす期間が要る止めずに進められる
解ける課題道具に起因するもの運用に起因するもの
判断の材料見積りと移行の計画入れ替えずに解ける範囲

きっかけ①AIに読ませたい記録が入っていない

1つ目は「AIに読ませたい記録が入っていない」というきっかけです。商談の経緯をAIに要約させたい、過去の類似案件を引かせたいという要望が出た段階で、手元の記録がその用途に耐えないことが分かります。

耐えないのは記録の量が少ないからではありません。同じ内容が複数の欄に散っていたり、担当者ごとに書く欄が違ったりして、どこを読めばよいかが定まらないためです。読む側から見ると、22個の欄はすべて候補になります。

先ほどの住宅設備の商社では、情報システム部の担当者が直近1年の商談を機械で数えました。AIに読ませられる形になっていた商談は全体の31%で、残る69%は必要な情報がどの欄にあるか特定できない状態です。同じ内容が複数の欄に書かれていた商談は、全体の62%を占めていました。

読める形になっている商談が半分に届かない状態なら、AIに読ませる前に入力の設計を見直す段階です。数える前に入れ替えを検討すると、判断の材料がありません。

きっかけ②部署ごとに別の仕組みが増えている

2つ目に挙げるのは、部署ごとに別の仕組みが増えているきっかけです。既存のCRMで足りない部分を、部署が個別のツールで補い始めます。

増えること自体は現場の判断として自然です。困るのは、同じ顧客の情報が複数の場所に分かれ、どれが最新かを誰も言えなくなる点にあります。全体を見たい立場からは、統合の必要が課題として上がります。

この会社では、営業部が案件の管理に表計算ソフトを併用し、カスタマーサポートが問い合わせを別のツールで管理していました。情報システム部の3名が把握しているだけで、CRMの外にある顧客情報の置き場は4か所あります。

CRMの外にある置き場を数え、それぞれで誰が最新の情報を持つのかまで確認しましょう。置き場が4か所あっても、最新の情報が1か所に決まっているなら、統合の要求は強くなりません。部門をまたぐ収益プロセスの分断は、RevOpsの記事で整理しています。

きっかけ③保守の費用が使う範囲に見合わない

3つ目は「保守の費用が使う範囲に見合わない」というきっかけです。長く使ううちに追加の開発が積み上がり、その保守にかかる費用が毎年増えていきます。

費用が問題になるのは、増えた機能のうち実際に使われているものが一部だからです。9年のあいだに作った機能を全部維持していれば、使っていない部分の保守にも払い続けることになります。

この住宅設備の商社では、9年間で追加した画面と処理のうち、直近1年で1度でも使われたものは半分ほどでした。情報システム部の担当者が保守の内訳を出したところ、使われていない部分にかかる費用が毎年の予算のなかで無視できない割合になっています。

保守の費用は総額で見ず、使われている画面と使われていない画面へ割り付けた形で提示してもらいましょう。分けなければ、費用の議論は総額でしかできません。

移す前に何を?CRMの移行で確かめる4つの前提

ここまで挙げた3つのきっかけは、どれも入れ替えれば解けるように見えます。ところが記録が読めない状態も、仕組みが分かれている状態も、入れ替えたあとに同じ形で再現することがあるのです。再現するかどうかは、入れ替えを決める前の段階で確かめられます。確かめる項目を持たないまま見積りを比べても、金額の大小しか分かりません。そこでここでは、CRMの移行を決める前に確かめる4つの前提を整理します。

確かめるのは移行先の機能にはなりません。入れ替えを決める前に確かめるのは、いま困っている原因が道具にあるのか運用にあるのかです。

前提①いま困っているのは道具か運用か

最初に確かめるのは、困っている原因がどちらにあるかです。道具に起因する問題は入れ替えで解けますが、運用に起因する問題は入れ替えても残ります。

分ける基準は、同じ課題が新しい仕組みでも起こりうるかどうかです。自由記述の欄が22個あるという状態は、新しいCRMでも同じように作れます。作らせたのは部署ごとの要望であり、道具の制約ではありません。

先ほどの会社の22個の欄を情報システム部が調べたところ、そのうち16個は5年以内に部署の要望で追加されたものでした。移行先の製品でも同じ要望が出れば、同じ数の欄が再現します。担当者は、この時点で入れ替えだけでは解けないと判断しています。

課題を1つずつ書き出し、新しい仕組みでも起こりうるかを問いましょう。起こりうるものは、運用の側の課題です。仕組みの側が何を読むのかは、エージェンティックAIの記事で整理しています。

前提②入れ替えずに解ける範囲がどこまでか

次に確かめるのは、入れ替えずに解ける範囲です。全体を入れ替える前に、部分的な対処で足りる課題がどれだけあるかを見ます。

範囲を確かめる意味は、判断の選択肢を増やすことにあります。入れ替えるか何もしないかの二択で考えると、費用と期間だけで結論が出てしまい、中間の選択肢を並べたときとは比べる対象が変わります。

この住宅設備の商社では、AIに読ませるという目的に絞って必要な作業を洗い出しました。読ませたい情報は5種類で、そのうち4種類は既存の項目の設計を直せば取り出せる見込みです。残る1種類だけが、今の仕組みでは形にできないものでした。

読ませたい情報が5種類あるなら、5種類をまとめて扱わず、1種類ごとに必要な作業を洗い出しましょう。目的が広いままだと、入れ替え以外の案が出てきません。

前提③移行で失う記録がどれだけあるか

3つ目は「移行で失う記録がどれだけあるか」です。入れ替えるとき、過去の記録すべてを移せるとは限りません。

失う量が問題になるのは、自由記述の欄や添付ファイル、独自に作った項目ほど移しにくいためです。移せない記録は、旧の仕組みを残して参照するか、諦めることになります。

この会社の場合、9年分の商談に添付された見積書と図面が最も移しにくい対象でした。情報システム部の担当者が見積りを取った2社のいずれも、添付ファイルの移行は別費用という提示です。移した場合でも、商談との紐づけが一部で失われる説明を受けています。旧の仕組みを参照用に残す選択をすれば、その保守の費用は移行のあとも払い続けることになります。

移せない記録を先に特定しましょう。特定してからでなければ、失うものの大きさを判断できません。

前提④移行の期間に業務を止められるか

4つ目は「移行の期間に業務を止められるか」です。入れ替えには、旧と新を並行して動かす期間が必ず発生します。工程ごとに期間を積み上げる手順は、立ち上げ期間の見積もりで扱っています。

この期間に何が起きるかを見積もらないと、判断が甘くなります。営業は2つの仕組みに同じ内容を入力することになり、その負担が数か月続けば、入力の質は下がっていきます。

先ほどの商社が受けた見積りは、いずれも移行に1年以上を要する内容でした。並行して動かす期間は3か月から6か月という説明で、その間は営業41名が二重に入力する前提です。情報システム部の担当者は、この期間の負担を数字にして経営へ示しました。

並行して動かす期間は、月数だけでなく、その間に営業が二重の入力へ費やす合計時間まで見積もりましょう。見積もらなければ、比べる材料が足りません。

CRMの移行に踏み切る3つの基準

前章の4つの前提を確かめたうえで、それでも入れ替えるべき場合があります。前提を確かめた結果として、いまの仕組みでは目的に届かないと分かることがあるためです。この種の課題は、判断を先送りするほどあとで選べる手が減っていきます。逆に、先送りしても状況が変わらない課題であれば、急いで結論を出す理由はありません。そこでここでは、CRMの移行に踏み切る3つの基準を整理します。

踏み切る条件は、不満の大きさでは決まりません。入れ替えを選ぶのは、必要なデータの形が今の仕組みでは作れないと分かったときです。

基準①必要なデータの形が今の仕組みで作れない

1つ目は「必要なデータの形が今の仕組みで作れない」という基準です。項目の設計を直しても、必要な粒度や関係が表現できない場合があります。

作れないと言えるのは、試したうえで確かめたときだけです。設定の画面を見て「たぶん無理だろう」と判断すると、実際には作れるものまで諦めることになります。

この住宅設備の商社では、5種類のうち1種類だけが該当しました。1つの商談に複数の現場が紐づき、現場ごとに納期と仕様が分かれるという構造です。既存のCRMでは1商談に1つの納期しか持てず、担当者は現場の情報を自由記述の欄へ書いていました。

作れないと判断する前に、移行先の試用環境で実際に項目を作ってみましょう。試した記録が、あとで判断の根拠になります。

基準②追加の開発が毎年の予算を超えている

2つ目に挙げるのは、追加の開発が毎年の予算を超えている基準です。足りない部分を開発で補い続けた結果、その費用が入れ替えの費用に近づきます。

比べるのは初期の費用だけではありません。今のまま5年続けた場合の総額と、入れ替えて5年運用した場合の総額を並べます。並べて初めて、どちらが安いかを言えます。

この会社の場合、追加の開発と保守にかかる費用は毎年発生していましたが、入れ替えの見積りと5年で比べると総額は下回っていました。移行後にも同じ要望が出れば追加の開発が再び始まる点も、計算に入れました。そのうえで情報システム部の担当者は、この基準では踏み切る根拠にならないと結論しています。

開発と保守と利用料を5年の総額にそろえてから比べましょう。単年の費用だけを比べると、入れ替えの初期費用が過大に見えます。

基準③提供元の保守が終わる時期が決まっている

3つ目は「提供元の保守が終わる時期が決まっている」という基準です。使っている製品やその基盤の提供が終了する日が公表されている場合、判断の期限が外から決まります。

この場合に必要なのは、入れ替えるかどうかの判断ではありません。いつまでに何を終えるかの計画です。期限から逆算して、並行して動かす期間と切り替えの時期を決めます。

先ほどの商社が使っているCRMには、保守の終了に関する告知は出ていませんでした。情報システム部の担当者は、この基準も該当しないことを確認しています。3つの基準のうち該当したのは基準①の1つだけでした。

判断は、当てはまった本数で分かれます。基準③が当てはまるなら、期限が外から決まっているため、本数に関係なく入れ替えの計画へ進みましょう。基準①と基準②の2つが同時に当てはまる場合も、入れ替えを選ぶほうが5年の総額と期間の両方で有利になります。当てはまったのが基準①か基準②の1つだけなら、その1つを別の仕組みで補えないかを先に確かめてください。先ほどの商社が入れ替えを見送ったのは、該当が基準①の1つで、その1種類を既存の項目の設計で扱える見込みが立ったためです。

3つの基準のうち何本が当てはまるかを数えてから、入れ替え以外の手を検討する順番にしましょう。以上が、CRMの移行に踏み切るかを分ける3つの基準でした。

移すか残すか、どちらを選ぶ?3つの代替案

前章の3つの基準に1つしか当てはまらなかった場合、入れ替え以外の手を検討することになります。ここからはAgentic CRMの考え方に沿って、AIに読ませるという目的から逆算した代替案を扱います。目的が絞れていれば、全体を入れ替えなくても届く範囲が残っているはずです。そこでここでは、CRMの移行を選ばない3つの代替案を整理します。

代替案は妥協の産物にはなりません。入力する項目の設計をやり直すだけで、AIに読ませられる記録の割合は大きく変わります。

代替案①足りない部分だけ別の仕組みで補う

1つ目は「足りない部分だけ別の仕組みで補う」案です。基準①に該当した機能だけを、別の仕組みで扱います。

この案が成立するのは、足りない部分が限られている場合です。5種類のうち1種類なら、その1種類のために全体を入れ替える必要はありません。補う仕組みと既存のCRMをつなぐ手間は残りますが、期間は大幅に短くなります。

先ほどの住宅設備の商社では、1商談に複数の現場が紐づく構造を、既存のCRMの外で管理する案が出ました。ただし現場の情報は商談と一緒に読ませたいという要望があり、つなぐ設計が別に必要になります。情報システム部の担当者は、この案を第2案として残しました。

補う範囲が全体の2割を超えるなら、つなぐ設計の手間が入れ替えの手間に近づき、この案は成立しにくくなります。読ませたい情報のうち何種類を外へ出すのかを数え、2割を基準に判断してください。

代替案②入力する項目の設計だけをやり直す

2つ目に挙げるのは、入力する項目の設計だけをやり直す案です。仕組みは変えず、どの欄に何を書くかを決め直します。

この案が効くのは、前提①で「運用の側の課題」と分けられた部分です。自由記述の欄が22個あるという状態は、欄を減らして書く内容を決めれば解けます。仕組みの制約ではないためです。

この会社が選んだのがこの案でした。情報システム部の2名と営業企画の1名で、22個の欄を6個へ整理しています。過去の記録については、どの欄の内容をどの新しい欄へ寄せるかの対応表を作り、機械で移し替えました。かけた期間は11週間、工数は合計140時間です。

ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、この項目の設計をやり直す工程を担ってもらえるかが判断材料になります。

代替案③データを外へ出して読む仕組みを足す

3つ目は「データを外へ出して読む仕組みを足す」案です。既存のCRMはそのまま使い、記録を外へ複製して読ませます。

この案の利点は、既存の業務にまったく手を入れずに済むことです。営業の入力は変わらず、読む側だけを追加します。欠点は、元の記録が整っていなければ、外へ出しても読めない点にあります。

先ほどの商社でも、この案は最初に検討されました。ところが直近1年の商談のうち読める形になっていたのは31%で、外へ出しても結果は変わらないという結論です。情報システム部の担当者は、代替案②を先に行い、その後にこの案を重ねる順番へ変えています。

外へ出す前に、出したものが読める形かを確かめましょう。整っていない記録は、場所を変えても読めません。Agentic CRMの設計では、読ませる前のデータの形から扱います。

CRMの移行で持っていくデータを決める4つの区分

前章では入れ替えを選ばない3つの代替案を示しましたが、入れ替えを選んだ場合も、代替案②のように項目を作り直す場合も、過去の記録をどう扱うかは決めなければなりません。全部を持っていこうとすると、1件ずつ確認する工程が件数に比例して増え、期間も費用も膨らみます。区分を先に決めておけば、見積りを取る前に対象の量を支援会社へ伝えられる状態です。そこでここでは、CRMの移行で持っていくデータを決める4つの区分を整理します。

区分は年数では決まりません。持っていくデータは、日々の判断に使っているかどうかで区分します。古いから捨てるという決め方にはなりません。

区分①日々の判断に使っている記録

1つ目は「日々の判断に使っている記録」です。営業や担当者が週に何度も参照する情報が該当します。

この区分に入るものは、形を整えて必ず移します。参照の頻度が高い記録が使えなくなれば、移行は失敗として受け取られます。

先ほどの住宅設備の商社では、進行中の商談と直近2年の取引の履歴がこの区分でした。情報システム部の担当者が参照の記録を1か月分数えたところ、営業41名が開いた記録の9割以上が直近2年に集中しています。この9割を先に確定させたことで、残りの記録をどう扱うかの議論へ進めました。また、停滞している商談の扱いは、パイプラインの停滞を扱った記事でも整理しています。

1か月分の参照の記録が残っていないなら、まず記録を残す設定から始めましょう。感覚で決めると、使われない記録まで移すことになります。

区分②法令や監査で保存が要る記録

2つ目に挙げるのは、法令や監査で保存が要る記録です。契約や取引の証跡など、保存の義務がある情報が該当します。

この区分は、使うかどうかとは別の理由で残す必要があります。日々参照されなくても、求められたときに提示できる状態にしておかなければなりません。提示できる状態であればよいため、新しい仕組みへ移すか、読み取り専用のまま残すかは選べます。

この会社では、経理と法務に確認して保存の義務がある記録の範囲を先に確定しました。確定したのは移行の検討を始めて2週間目で、この作業がなければ持っていく範囲を決められなかったと担当者は振り返っています。

保存の義務は、情報システム部だけでは判断できません。関係する部署へ先に確認してください。

区分③参照される頻度が低い過去の記録

3つ目は「参照される頻度が低い過去の記録」です。年に数回しか開かれない古い商談や、終了した取引の履歴が該当します。

この区分の扱いが、期間と費用を最も大きく左右します。全部を移せば作業量は増え、移さなければ探せなくなります。どちらかを選ぶより、条件を決めて分けるほうが現実的です。

この商社では、5年以上前の終了した商談がこの区分でした。1か月の参照の記録では、開かれた回数が全体の1%に届いていません。担当者は、この範囲を次の区分へ回す判断をしています。一方で、2年から5年前の商談は開かれた回数が全体の9%ほどあり、形を整えて移す対象に残しました。

頻度の低い記録は、参照の記録で線を引きましょう。線を引かなければ、全部を持っていく話に戻ります。

区分④移行せずに保管だけする記録

4つ目は「移行せずに保管だけする記録」です。新しい仕組みへ入れず、読み取り専用の形で別の場所に残します。

この区分を用意する意味は、捨てるか移すかの二択を避けることにあります。年に数回の参照であれば、探しにくくても支障は小さく、保管にかかる費用も移行の費用よりはるかに小さく収まります。

先ほどの会社は、5年以上前の終了した商談を表形式で書き出して保管する方針にしました。営業が必要になったときは情報システム部へ依頼する運用で、依頼の想定は月に1件から2件です。書き出した表に残したのは商談名と取引先と金額と終了日だけで、自由記述の欄は対象から外しています。

4つの区分に分けてから、それぞれの扱いを決めましょう。区分せずに議論すると、全部か何もしないかになります。

CRMの移行を段階に分ける3つの切り方

前章で4つの区分に分けた記録が決まったら、次に決めるのは移す順番です。全社を一度に切り替えると、問題が起きたときに戻す判断が難しくなります。段階に分ける切り方には型があり、自社の事情に合うものを選べます。順番を決める作業には、区分を決めるときほどの時間はかかりません。そこでここでは、CRMの移行を段階に分ける3つの切り方を整理します。

段階に分ける目的は期間の短縮にはありません。段階に分けるのは、問題が起きたときに戻せる範囲を小さく保つためです。

切り方①部署の単位で順番に移す

1つ目は「部署の単位で順番に移す」切り方です。営業部から先に移し、次にカスタマーサポートという順で進めます。

この切り方が扱いやすいのは、部署ごとに使う機能が分かれている場合です。移した部署の中で完結する業務であれば、旧の仕組みを参照する必要が少なくなります。

先ほどの住宅設備の商社は、代替案②を選んだため全社の入れ替えは行っていません。ただし項目の設計をやり直す作業は、営業部の3つの課で順番に進めています。最初の課で出た指摘を、次の課へ移る前に反映できました。3つの課を同時に進めていたら、同じ指摘を3回受けることになっていたはずです。

部署をまたぐ業務が多いなら、この切り方は向きません。またぐ回数を数えてから選んでください。

切り方②業務の単位で順番に移す

2つ目に挙げるのは、業務の単位で順番に移す切り方です。商談の管理から先に移し、次に見積、次に問い合わせという順で進めます。

この切り方は、部署をまたぐ業務が多い場合に向きます。1つの業務を全部署で同時に切り替えるため、業務の中で新旧が混ざりません。混ざらなければ、どちらの記録を見るべきかを担当者が迷わずに済みます。

この会社の項目の設計も、商談の記録から着手しています。見積と問い合わせに関わる欄は後回しにし、商談で決めた書き方を後の2つへ適用する順番にしました。小さく始めたい場合は、この1業務からのスモールスタートが、範囲を絞ったまま進め方を確かめる形になります。

移す業務の順番は、参照の頻度が高いものから決めましょう。頻度の高い業務ほど、切り替えた効果が早く数字に出ます。

切り方③新しい案件から先に移す

3つ目は「新しい案件から先に移す」切り方です。移行の日から発生する案件を新しい仕組みで扱い、既存の案件は旧のまま完了させます。

この切り方の利点は、過去のデータを移す作業を最小にできることです。欠点は、両方の仕組みを見る期間が案件の長さだけ続く点にあります。商談から受注まで半年かかる商材なら、半年は両方が動きます。

先ほどの商社は、この切り方を検討して見送りました。進行中の商談が常時400件以上あり、半数以上が半年を超える案件だったためです。最も長い案件が完了するまで旧を止められないため、1年近く両方が動く見込みでした。

案件の期間が短い商材なら、この切り方が最も負担が小さくなります。期間を確かめてから選んでください。

並行はいつまで?CRMの移行期間の3つの決め方

前章で示した3つの切り方は、どれを選んでも旧と新の両方が動く期間を生みます。この期間の設計が甘いと、二重入力が長引いて現場の負担だけが残ります。負担が残ったまま切り替えを終えると、新しい仕組みへの評価まで下がりかねません。期間を短く保つ手立ては、始める前にしか用意できません。そこでここでは、CRMの移行で並行して動かす期間の3つの決め方を整理します。

期間は結果として決まるものにはなりません。並行して動かす期間は、旧を止める条件をあらかじめ書いておくことで終わります。

決め方①旧の仕組みを読むだけに変える時期

最初に決めるのは、旧の仕組みへの入力を止める時期です。読み取り専用へ切り替えれば、二重入力はその時点で終わります。

読むだけに変える判断が要るのは、入力を許したままにすると新旧のどちらが正しいか分からなくなるためです。両方に書ける状態が続くと、担当者は使い慣れた旧のほうへ書き続けます。

先ほどの住宅設備の商社の項目の設計でも、旧の欄への入力を止める日を先に決めています。営業41名へ2週間前に通知し、その日以降は旧の22個の欄が読み取り専用になる形にしました。移行ではありませんが、考え方は同じです。

旧への入力を止める日は、移行の計画を作る段階で日付まで書き込みましょう。決めなければ、二重入力は自然には終わりません。

決め方②二重に入力する期間の上限

2つ目に挙げるのは、二重に入力する期間の上限です。どうしても両方へ入力する期間が必要な場合、その長さを先に決めます。

上限を決める理由は、延びる方向に力が働くためです。移行の途中で問題が見つかれば、安全のために旧も残そうという判断になります。上限がなければ、その判断が繰り返されます。

この会社では、旧の欄と新しい欄の両方へ書く期間を2週間に限定しました。担当者は、この2週間で入力の質が下がることも想定に入れ、期間中の記録は検証の対象から外しています。2週間という長さは、営業が新しい欄の書き方を覚えるまでにかかる日数から決めました。

上限は、営業と情報システム部の双方が見える場所に書いて共有しましょう。口頭で伝えただけの上限は、問題が1件見つかるたびに延びていきます。

決め方③旧を止める条件をあらかじめ書く

3つ目は「旧を止める条件をあらかじめ書く」決め方です。何が確認できたら旧を止めるかを、移行を始める前に文章にします。

条件を先に書く意味は、止める判断を感覚で行わないためです。「問題がなさそうだから止める」という進め方では、誰も責任を持てません。確認する項目を並べておけば、判断は事実の確認になります。

先ほどの商社が書いた条件は3つです。新しい欄に必要な内容が入っている商談が9割を超えること、旧の欄を参照した回数が週5回を下回ること、営業から未解決の指摘が残っていないことを並べました。この3つが揃った時点で、旧の欄を読み取り専用へ切り替えています。

止める条件は3つほどに絞り、数えられる形で書きましょう。数えられなければ、確認は主観になります。

CRMの移行でつまずく3つの落とし穴

ここまで示した区分と切り方と期間の設計を飛ばして進めると、決まった形の失敗が起こります。3つの失敗はいずれも、担当者の力量に原因があるわけではありません。決める順番を省いたことが原因です。この住宅設備の商社も、最初の計画では1つ目に当たるところでした。そこでここでは、CRMの移行でつまずく3つの落とし穴を整理します。

失敗の多くは、持っていく範囲を決めなかったことから生まれます。全部のデータを持っていこうとした時点で、期間と費用は見積りの範囲を超えます。

落とし穴①全部のデータを持っていこうとする

1つ目は「全部のデータを持っていこうとする」という落とし穴です。過去の記録を残したいという要望は、どの部署からも出ます。誰も反対しないため、範囲を決めずに全件が対象になります。

全件が対象になると、移せない記録のために追加の作業が発生します。自由記述や添付ファイルは形が揃っておらず、1件ずつ確認する工程が要るため、件数に比例して期間も費用も増えます。

先ほどの商社が受けた見積りも、当初は9年分の全件が前提でした。情報システム部の担当者が参照の記録を数え、直近2年で全体の9割が説明できると分かった時点で、対象の考え方が変わっています。この数字がなければ、全件で進めていました。

反対の出ないまま全件が決まるのを避けるには、要望を聞く前に参照の記録を数えておくことです。数え終える前に各部署へ意見を求めると、全件を残す案しか集まりません。

落とし穴②現場の運用を変えずに道具だけ替える

2つ目に挙げるのは、現場の運用を変えずに道具だけを替える落とし穴です。新しい仕組みに、旧と同じ項目を同じ形で作ります。

同じ形で作れば移行は簡単に見えますが、前提①で分けた「運用の側の課題」はそのまま残ります。自由記述の欄が22個ある状態を新しい仕組みで再現すれば、AIに読ませられない状態も再現します。

この会社が入れ替えを見送った理由の1つがこれでした。見積りを取った2社のいずれも、現行の項目をそのまま移す前提の提案です。情報システム部の担当者は、それでは目的が達成できないと判断しています。移したあとで欄を減らす手も検討しましたが、稼働の直後に入力の形を変えると現場が混乱するという結論でした。

移す前に、項目の設計を見直しましょう。見直さないなら、入れ替える意味は費用の面にしか残りません。

落とし穴③並行して動かす期間を決めずに始める

3つ目は「並行して動かす期間を決めずに始める」落とし穴です。切り替えの日は決めても、旧を止める日は決めないまま進めます。

止める日が決まっていないと、二重入力が続きます。続くほど新しい仕組みへの入力は形だけになり、記録の質は旧のほうが高いという状態が生まれます。この状態になると、旧を止める判断はさらに難しくなってしまうのです。

先ほどの住宅設備の商社は、項目の設計をやり直す際にこの経験を持っていました。3年前に別の仕組みを入れたとき、旧の表計算ソフトを止める日を決めずに始め、結果として1年以上両方が使われています。今回は止める条件を先に書いて対処しました。

止める日か止める条件のどちらかは、最初の1件を新しい仕組みへ入れる前に文章にしておきましょう。両方を書かずに始めると、終わりが来ません。

成功した?CRMの移行を測る4指標

移行を終えたあと、あるいは代替案を実施したあと、それが効いたかどうかは数字で確かめます。切り替えが完了したこと自体は成功にはなりません。前章までに挙げた落とし穴を避けられたかどうかも、指標を見なければ分からないままです。測る項目を先に決めておけば、次に同じ判断をするときの材料が残ります。そこでここでは、CRMの移行が成功したかを測る4つの指標を整理します。

測る対象は移行の完了率にはなりません。移行が成功したかは、移した記録が実際に参照された割合で測ります。

指標①移した記録が実際に参照された割合

1つ目は「移した記録が実際に参照された割合」です。持っていった記録のうち、移行後に一度でも開かれたものがどれだけあるかを数えます。

この指標が要るのは、区分の判断が正しかったかを確かめるためです。移した記録の多くが開かれていないなら、区分③や区分④へ回せた範囲が広かったことになり、次に同じ作業を行うときの基準が得られます。

当初の目的は「商談の記録をAIに読ませて、営業が探す時間を減らすこと」でしたが、この住宅設備の商社では整えた項目が6か月後に参照された割合が71%でした。参照されなかった29%は、2年より前に終了した商談に集中しています。区分③の線引きが妥当だったことの裏づけになりました。

参照された割合は、移行から6か月ほど置いてから数えると判断に使えます。直後に数えると、まだ開く機会が来ていない記録まで未参照に含まれてしまうためです。パイプライン管理のKPIの記事では、指標設計の全体像を扱っています。

指標②入力にかかる時間の変化

2つ目に挙げるのは、入力にかかる時間の変化です。営業1件あたりの入力にかかる時間を、前後で比べます。

この指標を見る理由は、現場の負担が実際に変わったかを確かめるためです。項目を減らしても、1つの欄に書く内容が増えていれば入力の時間は変わらず、営業から見た負担も動きません。

先ほどの会社では、22個の欄を6個へ整理した結果、営業1件あたりの入力時間が平均9分から5分へ短くなりました。同じ内容が複数の欄に散っていた商談の割合も、62%から8%へ下がっています。営業41名の合計では、月におよそ90時間の差になりました。

入力の時間は、記録を取り始めれば1週間で比べられます。人手を増やさず個別化へ回す考え方は、ハイパーパーソナライゼーションの記事で整理しています。

指標③二重に入力していた期間の長さ

3つ目は「二重に入力していた期間の長さ」です。旧と新の両方へ入力していた期間が、当初の見込みに収まったかを見ます。

この指標が役に立つのは、次の移行の見積りに使えるためです。見込みより長くかかったなら、その原因を残しておけば次は短くできます。原因は、旧を止める条件が曖昧だったか、新しい欄の書き方が決まっていなかったかのどちらかに寄ります。

この商社の項目の設計では、両方へ書く期間を2週間と決め、実際にも2週間で終わっています。3年前の別の仕組みの導入で1年以上かかった経験があったため、今回は止める条件を先に書いたことが差になりました。

期間は見込みと実績の両方を残しましょう。片方だけでは、次の見積りが作れません。

指標④旧の仕組みを止めるまでの日数

4つ目は「旧の仕組みを止めるまでの日数」です。新しい仕組みを動かし始めてから、旧を読み取り専用にするまでの日数を数えます。

この日数が長いほど、二重の運用にかかる費用と手間が積み上がります。保守の契約が残っていれば、その費用も続きます。旧を残したまま年度をまたげば、使わない仕組みの保守費も翌年度の予算に載ったままです。

先ほどの住宅設備の商社は、旧の欄を読み取り専用へ切り替えるまで、切り替えの日から数えて14日でした。二重に入力する期間として決めた2週間と一致しており、書いた3つの条件がすべて揃った時点で切り替えています。判断に迷った期間はありません。

止めるまでの日数を記録しましょう。条件を先に書いたかどうかで、この日数は大きく変わります。

CRMの移行に外部支援を使う4つの判断軸

ここまで示した工程を社内だけで進められるかは、体制によって変わります。この会社は情報システム部の2名と営業企画の1名で140時間を確保できましたが、専任を置けない企業のほうが多いのではないでしょうか。では、なぜ相談する相手によって結論が変わるのでしょうか。それは、支援会社ごとに出せる案の範囲が違い、その範囲の外にある選択肢は検討の対象にすら入らないからです。そこでここでは、CRMの移行に外部支援を使うときの4つの判断軸を整理します。

支援会社の実績数だけでは、自社に合うかどうかは判断できません。移行を相談する相手は、移行しないという案も出せるかどうかで選びます。

判断軸①移行しない案も出せるかどうか

1つ目は「移行しない案も出せるかどうか」という判断軸です。相談した相手が移行先の製品を扱っている場合、提案は入れ替えの方向にそろいます。

見分け方は、最初の提案に代替案が並んでいるかを確認することです。入れ替えの見積りだけが出てくるなら、入れ替えない選択肢は検討の対象に入っていません。

先ほどの商社が取った2社の見積りは、いずれも入れ替えの前提でした。項目の設計をやり直すという案は、どちらからも出ていません。情報システム部の担当者が自分で数字を出したことで、第3の案が生まれています。

相談する前に、入れ替えない案も出してほしいと伝えましょう。提案を依頼する書面に1行入れておけば、比べる対象に入れ替えない案が並びます。

判断軸②移行後の運用まで付き合えるかどうか

2つ目に挙げるのは、移行後の運用まで付き合えるかどうかです。切り替えた時点では終わらず、旧を止めるまでの判断が残ります。

構築までを請け負う契約と、旧を止めるところまで含む契約では、費用の考え方も期間も違います。契約の範囲がどこで切れるのかを、着手前に確認しておく必要があります。

この会社が3年前に経験した1年以上の二重運用も、契約が切り替えの完了までだったことが背景にありました。止める判断を担う人が決まっておらず、誰も止めると言わないまま続いています。旧を止める判断は、契約に書かれていなければ誰の仕事にもなりません。

定着まで伴走してほしい場合は、旧を止めるところまで契約の範囲に入っているかが判断材料になります。

判断軸③現場の業務を理解しているかどうか

3つ目は「現場の業務を理解しているかどうか」という判断軸です。持っていくデータの区分を決めるには、どの記録が日々の判断に使われるかを知っている必要があります。

知らなければ、参照の頻度で機械的に線を引くことしかできません。頻度は低くても、失うと業務が止まる記録があります。

この住宅設備の商社では、区分を決める作業に営業課長2名と経理の担当者が同席しました。情報システム部の3名だけでは、保存の義務がある記録と日々使う記録の線引きができなかったためです。同席した営業課長からは、年に1度しか開かない図面でも再受注のときには必ず要るという指摘が出ました。また、買い手の購買体験の設計は、バイヤーイネーブルメントの記事でも扱っています。

社内の判断を必要とする工程がどこかを、着手前に洗い出しておきましょう。

ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、商談の進め方を聞き取ったうえで移行の範囲を決められるかを確認してください。

判断軸④設計の確認だけを頼めるかどうか

4つ目は「設計の確認だけを頼めるかどうか」という判断軸です。区分や切り方の案を自社で作れるなら、外部に必要なのは案の確認だけという場合があります。

構築まで一括で請け負う形しか用意していない支援会社では、この頼み方ができません。工程を切り出して依頼できるかどうかは、着手前に確認しておく項目にあたります。

この会社も、項目の設計と対応表の作成は情報システム部の2名と営業企画の1名で進められる見通しでした。判断に迷ったのは、22個を6個へ減らす案が業務に耐えるかという1点だけです。この1点を外部に確認できれば、残りの工程は社内で進められる状態でした。

自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合は、工程を切り出した依頼を受けているかを確認しましょう。

【一問一答】Agentic CRMへの移行に関するよくある質問

ここまで、検討し始めるきっかけから外部支援の判断軸までを整理してきました。実際に判断する段階では、期間の見込みや過去のデータの扱いで手が止まります。とくに経営へ説明する場面では、期間と対象の範囲を短い言葉で答えられるかどうかが問われます。経理や法務への確認は、依頼してから回答が返るまでに日数がかかるものです。部署をまたぐ項目ほど、答えを用意していないと差し戻しになります。そこで最後に、CRMの移行についてよく寄せられる質問を5つ取り上げます。

質問①CRMの移行はどのくらい期間がかかりますか?

対象の規模と持っていくデータの量で変わりますが、全社を入れ替える場合は1年以上を見込む例が多くなります。この記事の例に挙げた住宅設備の商社が受けた2社の見積りも、いずれも移行に1年以上を要する内容でした。入れ替えずに項目の設計をやり直す道を選んだ結果は、11週間・140時間です。期間の差は移すデータの量から生まれるため、区分を先に決めるほど見込みは正確になります。

質問②CRMの移行で過去のデータは全部持っていきますか?

全部を持っていく必要はありません。日々の判断に使う記録から保管だけする記録まで4つに区分し、それぞれの扱いを決めます。この会社では、営業41名が1か月に開いた記録の9割以上が直近2年に集中しており、5年以上前の終了した商談は参照が全体の1%に届きませんでした。参照の記録を数えれば、どこで線を引けるかが数字で分かります。

質問③CRMの移行をせずにAIを使うことはできますか?

入れ替えずに使える場合があります。困っている原因が道具の側になく、入力の設計にあるなら、項目を整えるだけで読める形になります。この会社は、AIに読ませられる商談が31%だった状態から、欄を22個から6個へ整理して84%まで変えました。ただし整っていない記録は外へ出しても読めないため、まず今の記録のうち何割が読める形かを数えてから判断してください。

質問④CRMの移行はどの部署が主導するのがよいですか?

情報システム部が進行を担い、業務の判断は使う部署が持つ形が現実的です。この会社では区分を決める作業に営業課長2名と経理の担当者が同席しており、情報システム部の3名だけでは保存の義務がある記録との線引きができませんでした。保存の義務がある記録については、経理や法務にも確認が要ります。

質問⑤CRMの移行を途中で止めることはできますか?

段階に分けていれば止められます。部署や業務の単位で進めていれば、途中の段階で判断を見直せるためです。この会社は3年前の別の仕組みで止める日を決めずに始め、1年以上も両方が使われた経験から、今回は止める条件を先に文章にしました。全社を一度に切り替える計画では止める判断が難しくなるため、条件を先に書いておくと、続けるか止めるかの判断も事実の確認になります。

Agentic CRMへの移行は、入れ替えずに解ける範囲を先に確かめてから判断する

CRMを入れ替えるかどうかを決めるとき、最初に取り組むのは候補となるツールの比較でも見積りの取得でもありません。ここまで見てきたとおり、いま困っている原因が道具にあるのか運用にあるのかを分け、入れ替えずに解ける範囲を確かめることです。本記事では、検討し始める3つのきっかけから、決める前の4つの前提、踏み切る3つの基準、選ばない3つの代替案、持っていくデータの区分、段階の切り方、並行期間の決め方、つまずく落とし穴、測る4つの指標、外部支援の判断軸までを、一連の流れとして整理してきました。

例に挙げた住宅設備の商社は、2社から入れ替えの見積りを取った状態から、入れ替えを見送って項目の設計をやり直す判断へ変えています。自由記述の欄を22個から6個へ整理し、AIに読ませられる記録の割合を31%から84%へ、営業1件あたりの入力時間を9分から5分へ変えました。かけたのは11週間と140時間です。入れ替えなくても届く範囲が、まだ残っている企業も多いのではないでしょうか。

合同会社クロスコムでは、CRMのデータをAIが横断して読む前提でのAgentic CRM設計支援を行っています。入れ替えるかどうかの判断から入る進め方にも対応していますので、Agentic CRM設計支援までお気軽にご相談ください。本記事で紹介した内容を、ぜひ自社の判断に合わせて活用し、少しでもお役に立てれば幸いです。