営業事務の効率化はどこから手をつける?5つの作業の分け方と任せ方の基準

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営業事務の効率化とは、受注の入力や見積の作成といった作業を、待たせている相手ごとに分け直し、人が持つ範囲と仕組みへ渡す範囲を決めることです。営業事務の担当者を抱える立場で見ると、どれも止められない作業ばかりが並び、どこから手をつけるかを決めきれないまま時間が過ぎていないでしょうか。なお、本記事に書いたのは2026年9月時点の考え方で、Agentforceのような製品の設定手順には立ち入りません。

営業事務の効率化は、件数の多い作業ではなく、ほかの人の待ちを作っている作業から始めます。件数が多い作業ほど手順が固まっていて、すでに速く回っていることが多いためです。逆に、件数は少なくても営業や顧客を待たせている作業は、短くしたぶんがそのまま次の行動につながります。

そこで本記事では、営業事務の作業を5つに分ける見方から、手をつける順番の決め方、人と仕組みへの振り分け、そしてAIへ任せられる範囲までを解説します。

目次
  1. 営業事務の効率化の対象になる5つの作業
    1. 作業①受注の入力と確認
    2. 作業②見積と請求の書類づくり
    3. 作業③商談に使う資料の準備
    4. 作業④顧客からの納期と在庫の照会
    5. 作業⑤社内への報告と集計
  2. どれから減らす?待ちを作っている3つの作業
    1. 待ち①営業が動けなくなる作業
    2. 待ち②顧客を待たせる作業
    3. 待ち③月末に集中する作業
  3. 件数の多い作業から手をつけると外れる3つの理由
    1. 理由①件数が多い作業ほど手順が固まっているから
    2. 理由②減らしても他の人の時間が空かないから
    3. 理由③効果が数字で見えにくいから
  4. 作業を人・仕組み・外注へ分ける4つの線引き
    1. 線引き①判断が入るかどうか
    2. 線引き②毎回同じ形かどうか
    3. 線引き③例外がどれだけ出るか
    4. 線引き④間違えたときに戻せるか
  5. 効率化で変わる3つのこと
    1. 変化①営業が待つ時間が短くなる
    2. 変化②事務の担当が例外の対応に回れる
    3. 変化③月末の残業が平らになる
  6. 何で測る?営業事務の効率化を測る4つの数え方
    1. 数え方①依頼から完了までの時間
    2. 数え方②1件あたりの処理の時間
    3. 数え方③差し戻しの件数
    4. 数え方④月末に寄る件数の割合
  7. AIに任せられる営業事務の作業3つ
    1. 任せ方①型の決まった書類の下書き
    2. 任せ方②納期と在庫の照会への回答
    3. 任せ方③記録からの集計と要約
  8. 営業事務の効率化でつまずく3つの場面
    1. つまずき①作業を洗い出す前にツールを選ぶ
    2. つまずき②例外の処理を決めずに動かす
    3. つまずき③担当者が1人で抱えたまま進める
  9. 自社で進めるか外へ頼むかを分ける3つの打ち手
    1. 打ち手①手順を書き直して人で回す
    2. 打ち手②既存のシステムの設定で組む
    3. 打ち手③AIに任せる範囲を設計から決める
  10. 効率化の前に答える3つの問い
    1. 問い①誰の時間を空けたいのか
    2. 問い②空いた時間で何をするのか
    3. 問い③やめてよい作業はどれか
  11. 【一問一答】営業事務の効率化に関するよくある質問
  12. 営業事務の効率化は、待ちを作っている作業から始める
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本田正憲

合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援と、Agentic CRM設計支援を提供している。Salesforce認定アドミニストレーター・Sales Cloudコンサルタント・Marketing Cloud Account Engagement スペシャリスト。

営業事務の効率化の対象になる5つの作業

計測機器の輸入商社では、従業員140名のうち営業が11名、営業事務が4名、技術サポートが5名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。営業事務の4名が受注の入力と見積の作成を抱えており、件数の多い受注の入力から営業事務の効率化に手をつけたものの、効果が出ないまま3か月が過ぎていました。そこでここでは、この会社を例に、営業事務が抱える作業を5つに分けて整理します。

手をつける順番を決められなかったのは、作業の多さによるものにはなりません。営業事務の作業は、必要な判断も待たせている相手も違う5つの集まりで、まとめて速くすることはできません。

作業月の件数待たせている相手
①受注の入力320件社内の後工程
②見積と請求150件営業と顧客
③資料の準備都度営業
④納期と在庫の照会毎日顧客
⑤報告と集計月次管理職

作業①受注の入力と確認

1つ目は「受注の入力と確認」で、5つのなかでもっとも件数の多い作業にあたります。取引先から届いた注文書を受け取り、数量と単価と納期を確かめたうえで、システムへ登録するまでがひとまとまりです。

この作業が量の中心になるのは、取引の件数がそのまま作業の件数になるためです。1件あたりの手順は決まっており、慣れた担当者であれば確認する項目に迷う場面はほとんど入りません。件数が多いぶん合計の時間は大きくなるものの、1件ずつを見れば短い時間で処理できています。

計測機器の輸入商社では、この作業が月320件あり、1件8分で回っていました。合計すると月42.7時間になるため、5つの作業のなかでもっとも大きな塊に見えていたことになります。

件数と1件あたりの時間を掛け算にする前に分けて数えておかないと、合計の大きさだけで作業が並び、もっとも動かしにくい作業が先頭に来てしまいます。

作業②見積と請求の書類づくり

2つ目に挙げるのは見積書と請求書を作る作業で、営業と顧客の両方を待たせている点に特徴があります。営業から届いた依頼を受け、単価と数量と支払条件を確かめながら、決まった様式の書類に起こしていきます。

時間がかかる原因は、作業の難しさではなく確認する相手の多さにあります。単価が過去と違えば営業へ、在庫の状況によっては技術サポートへ、支払条件が特殊であれば経理へと確認が回るためです。入力そのものは短い時間で終わっても、確認の往復が重なれば日をまたぐことが起こります。

計測機器の輸入商社では見積の作成が月150件あり、依頼を受けてから完了までは平均2日かかっていました。そのあいだ、依頼を出した営業は見積書が届くのを待つほかなく、次の訪問へ動けずにいたことになります。

ここで持っておきたいのは依頼から完了までの日数で、1件あたりの作業時間とは別の数字として記録しておけば、あとで手をつける順番を決めるときの材料になります。

作業③商談に使う資料の準備

3つ目は商談に使う資料を準備する作業で、件数が読めないまま依頼が届きます。過去の提案書を探し出し、価格表や納入実績を差し替えたうえで、印刷して営業へ渡します。

読みにくいのは、件数が月ごとに大きく動くためです。展示会の前や期末には依頼が集中する一方、閑散期にはほとんど発生しません。依頼のたびに求められる内容も違うため、手順を決めきれないまま、その都度の対応になりがちです。

計測機器の輸入商社でも、この作業の件数を誰も数えていませんでした。営業11名がそれぞれ口頭で依頼しており、いつ誰が何を頼んだのかという記録が残っていなかったためです。

件数の分からない作業は、減らす計画にも仕組みへ渡すかどうかの検討にも乗せられないため、まずは1か月だけでも記録を取りましょう。

作業④顧客からの納期と在庫の照会

4つ目に挙げるのは顧客からの納期と在庫の照会に答える作業で、回答を待っているのは社内の人ではありません。電話やメールで届いた問い合わせの内容を調べ、分かった時点で折り返して回答します。

負担になる理由は、答えが手元にそろっていない点にあります。在庫の数量はシステムで見られても、輸入品の入荷予定は仕入先へ確認しないと分かりません。1件の照会に対して、調べる時間と折り返す時間が別々に発生することになります。

計測機器の輸入商社では、この照会が毎日届いており、件数は日によって差がありました。営業事務が手の空いた人から順に対応する形になっていたため、誰が何件受けたのかも記録されていません。

顧客が直接待っている作業であるため、照会の件数と答えるまでにかかった時間を記録しましょう。記録の無いまま置くと、遅れが取引の判断に影響したことにも気づけません。

作業⑤社内への報告と集計

5つ目は社内への報告と集計で、月末の数日にまとめて発生する作業にあたります。月次の売上や受注の件数を集計表にまとめ、管理職へ提出するところまでがこの作業に含まれます。

この作業が月末に寄るのは、締めの後でなければ数字が確定しないためです。月初から少しずつ進めることができず、決まった数日へ集中することになります。集計の元になるデータが複数の場所にあれば、転記の手間もそこへ上乗せされます。

計測機器の輸入商社では、月末の5営業日に受注の入力の4割が寄っていました。同じ時期に集計の作業も重なるため、営業事務の残業はこの数日へ集中していたことになります。

平らにできる作業が残っているかどうかはこの割合を見るまで判断できないため、月末に寄っている件数の割合をまず出しておきましょう。

以上が、営業事務の効率化の対象になる5つの作業でした。

どれから減らす?待ちを作っている3つの作業

営業事務が抱える5つの作業を整理してきましたが、次に決めるのは手をつける順番です。5つすべてを同時に軽くすることはできないため、どれか1つを選ぶことになります。ここで合計の時間の大きさだけを見て選ぶと、数か月かけても何も変わらないという結果になりかねません。判断の材料になるのは、その作業が終わるのを誰が待っているのかという一点です。そこでここでは、ほかの人の待ちを作っている作業を3つに分けて整理します。

手をつける作業を選ぶ基準は、作業の大きさにはありません。手をつける順番は、その作業が終わるまで誰かが動けずに待っているかどうかで決まります。

待ち待っている相手短くしたときに起きること
①営業が動けない営業担当訪問の件数が増える
②顧客を待たせる顧客失注が減る
③月末に集中する事務の担当残業が平らになる

待ち①営業が動けなくなる作業

1つ目は、その作業が終わるまで営業が次へ進めない作業です。営業事務が抱える5つのうち、見積の作成と商談に使う資料の準備がここに入ります。

この待ちが重いのは、営業の時間が止まっているあいだ、商談そのものが進まないためです。事務の側では短い時間で終わる作業でも、依頼から完了まで2日かかれば、営業はそのぶんの動きを失うことになります。作業時間ではなく、待ち時間のほうが大きな損失になります。

計測機器の輸入商社では、見積の依頼から完了まで平均2日かかっていました。営業11名がそれぞれ複数の見積を依頼しており、その待ち時間が訪問の予定を組みにくくしていたことが、記録をたどって分かっています。

待たれている作業は事務の側に残る記録よりも営業の記憶のほうにはっきり残っているため、「どの依頼を待っているか」を営業に聞いてみましょう。

待ち②顧客を待たせる作業

2つ目に挙げるのは、取引先である顧客を待たせている作業です。5つの作業のうち、納期と在庫の照会への回答がそのままここに当たります。

顧客の待ちが効く理由は、回答の速さがそのまま取引の判断に関わる点にあります。同じ製品を扱う会社が複数あるとき、先に答えが返ってきたほうへ発注が流れることは珍しくありません。社内の効率だけを見ているかぎり、この損失は数字に出てきません。

計測機器の輸入商社では、仕入先への確認が必要な案件で、担当者が手を離せないときに回答が翌日まで滞っていました。顧客の側から見えているのは、返事が来ないという一点だけです。

社内の作業時間には表れない待ちがここにあるため、顧客からの問い合わせにいつ答えたのかを記録しておきましょう。

待ち③月末に集中する作業

3つ目は、月をならすと同じ量でも特定の時期に集中する作業です。受注の入力と報告のための集計が、どちらもこの型に当たります。

集中が問題になるのは、合計の量が同じでも、人の負担は平らにならないためです。月末の数日に作業が寄れば、その期間だけ残業が発生します。月全体で見れば処理できている量でも、担当者の疲労と入力の間違いは、寄った時期にまとめて出ます。

計測機器の輸入商社の残業も、受注の入力が寄る月末の数日に集中していました。1ユースケースからのスモールスタートで小さく始めたい場合は、この寄りを平らにする作業を最初の1つに選ぶと、効果が数字で見えやすくなります。

月の前半と後半に分けて件数を数えておけば、寄りが数字で見え、どの日の作業をどこへ移すのかという手が打てます。

以上が、待ちを作っている3つの作業でした。

件数の多い作業から手をつけると外れる3つの理由

待ちで選ぶという基準をここまで示してきましたが、実際の現場では件数の多い作業から手をつけることがほとんどです。合計の時間が大きく、減らせば効きそうに見えるためで、判断としては自然に映ります。ところが、この選び方で始めた取り組みは途中で止まり、数字も残りません。止まる理由を先に知っておけば、同じ3か月を使わずに済みます。そこでここでは、件数から入ると外れる理由を3つ整理します。

取り組みが外れるのは、担当者の努力の量によるものにはなりません。件数の多い作業ほど手順が固まっており、すでに速く回っているため、短くできる余地が残っていません。

理由①件数が多い作業ほど手順が固まっているから

1つ目の理由は、件数が多い作業ほど手順が固まっているからです。毎日繰り返すうちに、担当者が迷う場面は自然に減っていきます。

固まった手順が速いのは、判断を挟まずに手が動くためです。受注の入力を1件8分で処理できるのは、確認する項目が決まっていて、迷いが入らないからにほかなりません。ここからさらに短くするにはシステムの入れ替えか、入力そのものをなくす仕組みが必要になり、手間の割に短くできる時間は小さくなります。

計測機器の輸入商社が3か月かけたのも、この受注の入力でした。入力画面の項目を並べ替え、よく使う値を初期表示にしたものの、1件あたりの時間はほとんど変わらないまま終わっています。

速い作業をさらに速くする取り組みはかけた手間に対して戻ってくるものが小さいため、1件あたりの時間がすでに短い作業は後回しで構いません。

理由②減らしても他の人の時間が空かないから

2つ目に挙げる理由は、その作業を減らしても、ほかの人の時間が空かないからです。社内で完結する作業には、その終わりを待っている相手がいません。

待たれていない作業を短くしても、変わるのは担当者の作業時間だけです。受注の入力が少し速くなればそのぶんの時間は空きますが、空いた時間で何をするかを決めていなければ、別の作業が埋めるだけになります。営業の訪問件数も、顧客への回答の速さも、そこでは変わりません。

計測機器の輸入商社でも、3か月の取り組みで空いた時間は、ほかの作業の遅れを吸収して消えていきました。営業事務の残業も、月末の集中も、取り組みの前と後で変わっていません。

行き先を決めていない削減は月末の集計にも管理職へ出す報告にも数字として残らないため、減らした時間を誰がどう使うのかを先に決めましょう。

理由③効果が数字で見えにくいから

3つ目の理由は、取り組みの効果が数字として見えにくいからです。わずかな短縮は、担当者にも営業にも気づかれないまま終わります。

見えない改善が続かないのは、次へ進む判断ができなくなるためです。数か月かけて数字が動かなければ、別の作業へ手を伸ばす根拠がなく、効率化そのものが止まります。逆に、依頼から完了までが2日から4時間になれば、その違いには営業も顧客もすぐ気づくはずです。最初の1つで見える変化を作れるかどうかが、2つ目へ進めるかどうかを決めます。

計測機器の輸入商社でも、3か月が過ぎた時点で取り組みが止まりかけました。数字を出しても、現場の担当者から「速くなった」という声が返ってこなかったためです。

最初に手をつける作業は、変化が誰かに伝わるものを選びましょう。伝わらない改善は、次の予算や人を社内で認めてもらう場面で必ず弱くなります。

以上が、件数の多い作業から手をつけると外れる3つの理由でした。

作業を人・仕組み・外注へ分ける4つの線引き

件数から入ると外れる理由をここまで見てきましたが、手をつける作業が決まったら、次はその作業をどう軽くするかです。人の手順を変えるのか、いまのシステムに任せるのか、外へ出すのかで、必要な準備も費用も変わります。まとめて「効率化」と呼んだまま進めては、どれを選ぶかの議論が空回りしてしまうのではないでしょうか。作業を工程まで分解し、どちらに向くのかを1つずつ決めるところが出発点になります。そこでここでは、作業を振り分ける線引きを4つ整理します。

振り分けの基準は、作業の難しさや担当者の慣れにはありません。作業を人と仕組みに分ける線は、判断が入るかどうかと、例外がどれだけ出るかで引きます。

線引き仕組みに向く人が持つ
①判断入らない入る
②形毎回同じ都度違う
③例外ほとんど出ないよく出る
④戻せるか戻せる戻せない

線引き①判断が入るかどうか

4つの線引きで最初に見るのは、その作業に判断が入るかどうかです。判断が入らない工程は仕組みに向き、判断が入る工程は人が持ち続けます。

判断で分けるのは、仕組みが得意なのが「決まったとおりに動くこと」だからです。注文書の数量を転記する作業に判断は入りませんが、単価が過去と違うときに承認を取るかどうかは判断にあたります。この2つを同じ作業として扱うと、仕組みに載せられない部分が残って途中で止まります。

計測機器の輸入商社の見積では、価格表から単価を引く工程と、値引きの可否を決める工程が混ざっていました。前者は仕組みで処理できる一方、後者は営業か管理職の判断が要ります。どこまでを自社で持ちどこから外部に頼むかという自社でやる範囲と頼む範囲の切り分けも、工程をこの粒度まで割ってから決めることになります。

割る前に手を打つと人にも仕組みにも中途半端な形が残るため、1つの作業を判断のある工程と無い工程に割りましょう。どちらの側が責任を持つのかも、割ってからでなければ決められません。

線引き②毎回同じ形かどうか

次に見るのは、その作業で作る成果物が毎回同じ形かどうかです。様式が決まっている書類であれば、判断を挟まずに仕組みへ渡せます。

同じ形かどうかで分ける理由は、型が決まっていればデータを差し込むだけで作れる点にあります。請求書のように様式が固定された書類は、必要な値がそろえば生成できます。一方、商談に使う資料のように、相手や場面で構成が変わるものは、型そのものを決めきることができません。

計測機器の輸入商社では、請求書は完全に同じ形で、見積書も大半は同じ形でした。特注品の場合だけ仕様の説明を書き足す必要があり、同じ形の部分とそうでない部分を分けて数えたことが、振り分けの判断につながっています。

直近の成果物をまとめて並べ、同じ部分と違う部分を数えてみてください。ほとんどが同じ形なら仕組みに載せられますが、相手ごとに構成が変わる資料は、型を決める段階で止まります。

線引き③例外がどれだけ出るか

3つ目に見るのは、その作業を進めるなかで例外がどれだけ出るかです。例外の多い作業を仕組みに載せると、かえって人の手間が増えます。

例外が問題になるのは、仕組みから外れた案件を人が拾うことになるためです。例外がまれにしか出ないなら、大半を仕組みで処理して残りを人が扱えば済みます。ところが例外が頻繁に出ると、どれが例外かを判断する工程が新しく生まれ、全体の時間は減りません。

計測機器の輸入商社の受注では、特殊な支払条件の案件が月320件のうちごく一部にとどまっていました。仕組みで処理して例外だけを人が扱う形が取れると判断できたのは、この割合を数えた後のことになります。

過去1か月の件数から例外の割合を出し、例外が多いと分かったなら、仕組みに載せる前に例外そのものを減らす手を先に打ちます。

線引き④間違えたときに戻せるか

最後に見るのは、その作業が間違ったときに戻せるかどうかです。顧客に届いたあとで戻せない作業ほど、仕組みに任せる範囲は狭くなります。

ここで効いてくるのは、自動で処理した誤りが気づかれないまま先へ進むという性質です。社内の集計であれば、誤りに気づいた時点で作り直せます。顧客へ送った見積書の単価が違っていれば、訂正の連絡が必要になり、取引の条件にも影響します。

計測機器の輸入商社では、顧客へ出す書類について人が最終確認する工程を残しました。仕組みが下書きを作り、担当者が単価と納期を確認してから送るという分け方にしています。

外へ出る成果物かどうかで線を引き、社内で完結する作業なら確認を省いて構いませんが、顧客に届く作業には人の確認を1つ残します。

以上が、作業を人・仕組み・外注へ分ける4つの線引きでした。

効率化で変わる3つのこと

ここまで4つの線引きを示してきましたが、振り分けが決まったら、次は実行に移す段階です。ここで社内の合意を取るために必要なのが、何がどう変わるのかを先に言葉にしておくことです。時間の削減だけを目標に置くと、減った時間の行き先が決まらないまま、取り組みが続かなくなります。管理職や営業にも同じ絵を見せておけば、途中で止まりにくくなるはずです。そこでここでは、営業事務の効率化で変わることを3つ整理します。

効率化で変わるのは、営業事務が使う作業時間だけではありません。営業事務の効率化で変わるのは、営業が待つ時間・事務が担う仕事の中身・月末の負担の3つです。

変化①営業が待つ時間が短くなる

1つ目に変わるのは、営業が事務の作業を待っている時間の長さです。依頼から完了までの日数が縮み、営業が次の行動へ移るまでの間隔も短くなります。

この変化が効くのは、営業の行動量がそのまま増えるためです。見積の完了を待っていた営業が、依頼した日のうちに受け取れるようになれば、その週のうちに次の訪問を組めます。事務の作業時間が変わらなくても、待ち時間さえ短くなれば商談は前に進みます。

計測機器の輸入商社では、見積の依頼から完了までが平均2日から4時間になりました。1日を8時間として計算すると、1件あたり1日半の待ちが消えたことになります。

削減した作業時間の合計より営業にも管理職にもはっきり伝わるため、依頼から完了までの日数を取り組みの前後で比べましょう。

変化②事務の担当が例外の対応に回れる

2つ目に挙げるのは、事務の担当が例外の対応に回れることです。決まった処理から手が離れ、判断の要る仕事へ時間を振り向けられます。

事務の担当が回る先である例外の処理こそ、人にしかできない仕事にあたります。特殊な支払条件の確認、仕入先への納期の交渉、顧客からの込み入った質問への回答には、いずれも判断と交渉が入るためです。決まった転記に時間を取られているあいだ、こうした仕事は後回しになっていきます。

計測機器の輸入商社では、受注の入力から手が離れた時間を、納期の照会への回答に充てる形にしました。顧客を待たせていた作業のほうへ、人を寄せ直したという判断です。

「余裕ができる」という言い方のまま置いておくと翌月には別の作業が入り込むため、空いた時間の行き先は作業名まで決めましょう。

変化③月末の残業が平らになる

3つ目は、月末の数日へ寄っていた事務の負担が平らになることです。同じ量の作業を抱えていても、時期による偏りは小さくなります。

平らになることが効くのは、残業が偏った時期に集中して発生するためです。月全体では処理できている量でも、月末の数日に作業が寄れば、その数日だけ長時間の作業になります。仕組みで処理できる部分を増やしていけば、寄りそのものが小さくなります。

計測機器の輸入商社で月末の5営業日に寄っていた4割を下げることが、残業を減らす直接の手になりました。平らにする対象を先に決めたことで、打ち手の順番も決まっています。

月の前半と後半で件数を比べ、偏りが数字で出た月は、平らにする打ち手を先に置くほうが効きます。

以上が、効率化で変わる3つのことでした。

何で測る?営業事務の効率化を測る4つの数え方

変わることをここまで整理してきましたが、次はそれをどう確かめるかです。作業時間の合計だけを見ていると、待ちが短くなったことも、偏りが平らになったことも数字に出ません。測り方を先に決めておけば、続けるかどうかの判断も、次の作業へ進む判断もその場でできます。あとで管理職へ説明するときに使う数字が決まるのも、この段階です。そこでここでは、営業事務の効率化を測る数え方を4つ整理します。

効率化で測る対象は、削減できた時間の合計だけではありません。営業事務の効率化は、作業時間の合計ではなく、待ち時間・差し戻し・偏りの3つを合わせて測ります。

数え方測るもの誰に伝わるか
①依頼から完了まで待ち時間営業・顧客
②1件あたりの処理作業の速さ事務の担当
③差し戻しの件数正確さ全員
④月末に寄る割合偏り管理職

数え方①依頼から完了までの時間

1つ目は、営業や顧客が依頼を出してから完了するまでの時間です。事務の側が作業に使った時間よりも、依頼した側が待っていた時間のほうを測ります。

この数え方が要るのは、営業と顧客に伝わる数字だからです。事務の側では短い時間で終わる作業でも、依頼から完了まで2日かかっていれば、営業が感じているのは2日のほうにほかなりません。取り組みの効果を社内へ説明するときも、この数字がもっとも伝わります。

計測機器の輸入商社では、見積の依頼と完了の時刻を記録するところから始めました。記録を取るまでは、平均でどれだけ待たせているのかを誰も把握していなかったためです。

測っていない作業は短くなったかどうかを誰にも証明できないため、依頼と完了の時刻をまず記録に残しましょう。

数え方②1件あたりの処理の時間

2つ目に挙げるのは、作業1件あたりの処理にかかっている時間です。作業そのものの速さを、月ごとの件数の増減から切り離して測ります。

1件あたりを見ておくと、どの作業に短くできる余地が残っているかが分かります。すでに手順が固まっていて短時間で終わる作業と、確認の往復で長引く作業では、残っている余地の大きさが違うためです。件数を掛けた合計だけを見ていると、この違いは消えてしまいます。

計測機器の輸入商社では、受注の入力のほうが合計の時間は大きい一方、1件あたりの余地は見積の側に残っていました。合計と1件あたりを別々に並べたことで、見積へ切り替えるという判断ができています。

掛け算にしてしまうとどちらに余地が残っているのかが分からなくなるため、件数と1件あたりの時間は別々に持ちましょう。

数え方③差し戻しの件数

3つ目は、書類の作り直しが発生した差し戻しの月ごとの件数です。速さを示す数字と同じ表に並べて、月ごとに数えていくことになります。

差し戻しを見るのは、速さと正確さが逆を向くことがあるためです。処理を速くした結果、確認が浅くなって差し戻しが増えれば、全体の時間はかえって延びます。速さを示す数字と一緒に持つことで、この見落としを防げます。

計測機器の輸入商社では、見積の差し戻しが月18件ありました。単価の確認をひと手順に集約した後は6件まで減っており、12件ぶんの作り直しが消えた計算になります。

片方だけを見ていると改善と悪化を取り違えるため、差し戻しの件数は速さの数字と同じ表に並べ、前の月と比べながら追っていきましょう。

数え方④月末に寄る件数の割合

4つ目は、月全体のうち月末の数日へ寄っている件数の割合です。作業の偏りを数字として持ち、月ごとに並べて比べることになります。

偏りを数字にしておくと、残業がどの数日に出ているのかが見えます。月の合計が同じでも、月末の数日に作業が寄っていれば、その数日の負担だけが大きくなるためです。管理職に伝えるときも、合計より偏りのほうが実態に近い数字にあたります。

計測機器の輸入商社では、月末に寄る割合を下げることを取り組みの目標の1つに置きました。件数を月の前半と後半に分けて数えたことが、その目標を置く材料になっています。

月の前半と後半で件数を分け、その差が縮んだかどうかを毎月見ていきましょう。差が変わらないまま人を足しても、月末の数日には同じ負担が戻ってきます。

以上が、営業事務の効率化を測る4つの数え方でした。

AIに任せられる営業事務の作業3つ

測り方をここまで決めてきましたが、次は実際にどこまでを仕組みへ渡せるかという話になります。近年はAIに任せられる範囲が広がっており、決まった処理だけでなく、文章を作る作業や調べて答える作業も対象に入ってきました。とはいえ、渡す作業と人が持つ作業の線を引かないまま任せると、例外が出るたびに止まります。渡す前に決めておきたいのは、その作業のどこまでを渡すのかという範囲です。そこでここでは、営業事務の作業のうちAIへ任せられるものを3つ整理します。

AIへ任せられるのは、手順の決まった単純な作業だけではありません。AIへ渡せるのは、型の決まった書類の下書き・照会への一次回答・記録からの集計の3つです。

任せ方渡すもの人が残す工程
①書類の下書き過去の書式とデータ送る前の確認
②照会への回答在庫と納期の記録例外の判断
③集計と要約商談と受注の記録数字の解釈

任せ方①型の決まった書類の下書き

1つ目は、見積書や請求書のように型の決まった書類の下書きです。過去の書式と当日のデータを渡し、AIに案を作らせるところまでを任せます。

下書きを任せられるのは、営業事務が作る書類の大半が同じ形だからです。差し替わるのは会社名・数量・単価・納期といった値で、構成そのものは変わりません。値を正しい場所へ入れる作業には判断が入らないため、そのまま渡せます。どこまでを任せてよいかの見極め方は、営業AIエージェントの記事で3つの段階に分けて扱っています。

計測機器の輸入商社では見積書の下書きをこの形にし、特注品の仕様の説明だけを担当者が書き足したうえで、送る前に単価を確かめる工程を残しています。

下書きを渡したからといって送る前の確認まで一緒に渡す必要はないため、この2つは分けて設計しましょう。

任せ方②納期と在庫の照会への回答

2つ目に挙げるのは、顧客からの納期と在庫の照会に一次回答する作業です。システムの記録にある情報を引いたうえで、届いた順に返していきます。

照会の答えは、在庫の数量も標準的な納期も、その大半がすでにシステムの記録へ入っています。仕入先へ確認が必要な案件だけを人が拾えば、届いた照会の多くはその場で返せるはずです。どこから人へ渡すかという人へ渡す線引きは、カスタマーサポートの立ち上げでも同じ考え方で決めます。

計測機器の輸入商社では、在庫がある製品の照会と、入荷待ちの製品の照会を分けました。前者は記録から答えられる一方、後者は仕入先への確認が要るためです。

記録に無い照会まで任せると確かめようのない回答が顧客のもとへ届くため、答えが記録にあるかどうかで渡す範囲を分けましょう。

任せ方③記録からの集計と要約

3つ目は、商談や受注の記録から数字を集計して要約する作業です。管理職へ出す月次の報告について、その下地を作るところまでを渡します。

集計を任せられるのは、元になる数字がすでに入力されており、転記して合計する工程に判断が入らないためです。数字が何を意味するのか、なぜ前月と違うのかという解釈は人が担いますが、そこへ至るまでの整形は渡せます。

計測機器の輸入商社では、月末の集計に使っていた時間のうち転記の部分を減らす形を検討し、数字の動きを管理職へ説明する工程だけを残しました。

集計と解釈を混ぜたまま任せると誰も説明できない報告が上がってくるため、渡せるのは集計までと決めておきましょう。

以上が、AIに任せられる営業事務の作業3つでした。

営業事務の効率化でつまずく3つの場面

任せられる範囲をここまで見てきましたが、進め方を誤ると同じところで止まります。止まる場所には共通の型があり、先に知っておけば避けられるものばかりです。多くの場合、止まる原因は決めておくべきことを決めないまま動き出した点にあります。3か月を使ってから気づくより、着手の前に確かめておくほうが早く済むのではないでしょうか。そこでここでは、営業事務の効率化でつまずく場面を3つ整理します。

取り組みが止まるのは、担当者の力量によるものにはなりません。効率化が止まるのは、作業の洗い出し・例外の扱い・担当の広げ方の3つを決めずに動いたときです。

つまずき①作業を洗い出す前にツールを選ぶ

1つ目は、どの作業を解くかを決める前に、ツールの検討から入る場面です。展示会や広告で見た製品から話が始まると、この順番になります。

この順番が詰まるのは、ツールが解くのは特定の作業だからです。作業が決まっていなければ、どの製品が合うかを判断する基準がありません。結果として機能の一覧を読み比べるだけになり、比較そのものが終わらなくなります。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、この洗い出しを一緒に進められる相手を選ぶことになります。

計測機器の輸入商社でも、最初は入力の支援ツールを探すところから始めていました。5つの作業を書き出したのは3か月が過ぎた後のことで、そこで初めて見積の待ち時間が論点だと分かっています。

書き出す前の比較は判断の材料が無いまま製品を並べているだけで結論が出ないため、1か月ぶんの作業を書き出してから比較に入りましょう。

つまずき②例外の処理を決めずに動かす

2つ目に挙げるのは、例外が出たときの扱いを決めないまま仕組みを動かす場面です。うまく動く案件だけを想定して設計すると、この形になりがちです。

例外は、特殊な支払条件・廃番になった品番・急ぎの納期といった形で、どの作業でも一定の割合で必ず出ます。仕組みがそれを処理できずに止まったとき、誰がどう拾うかを決めていなければ、案件が宙に浮いたまま残ります。

計測機器の輸入商社でも、特殊な支払条件の案件をどう扱うかは、仕組みを動かす前に決める必要がありました。件数こそ多くないものの、放置すれば顧客への回答が止まる種類の案件だったためです。

例外が出たときの受け皿は、担当者の名前まで含めて動かす前に決めましょう。そこまで決めておけば、例外が出た日に案件が止まることはありません。

つまずき③担当者が1人で抱えたまま進める

3つ目は、効率化の検討を1人の担当者が抱えたまま進める場面です。システムに詳しい人へ任せきりにすると、この形になりがちです。

1人で進むと止まるのは、その人が通常の業務も持っているためです。繁忙期に入れば検討は止まり、異動があれば経緯ごと消えます。営業事務の効率化は営業の動き方にも関わるため、営業側の合意も欠かせません。

計測機器の輸入商社では、営業事務のうち1名が検討を担っていました。3か月の取り組みが止まりかけた背景には、通常の業務と検討を1人で抱えていたこの体制もあります。

1人に両方を持たせると忙しい時期に検討ごと止まるため、検討する人と決める人は分けておきましょう。

以上が、営業事務の効率化でつまずく3つの場面でした。

自社で進めるか外へ頼むかを分ける3つの打ち手

つまずく場面をここまで挙げてきましたが、避けられるなら、あとは打ち手を選ぶだけです。打ち手は大きく3つあり、どれを選ぶかで必要な体制も費用も変わります。同じ作業に対して複数の打ち手があるため、順に検討していくほうが早く進むはずです。順番を飛ばして最後の打ち手から入れば、要らない投資が生まれかねません。そこでここでは、自社で進めるか外へ頼むかを分ける打ち手を3つ整理します。

打ち手を検討していく順番は、費用の安い順や手軽な順にはなりません。打ち手は、手順を書き直す・既存のシステムで組む・AIに任せるの順で検討すると、要らない投資を避けられます。

打ち手向く場面必要なもの
①手順を書き直す確認の往復が多い決める権限
②既存のシステムで組む転記が多い設定できる担当
③AIに任せる判断と文章が入る任せる範囲の設計

打ち手①手順を書き直して人で回す

1つ目は、作業の手順そのものを書き直して人で回す打ち手です。システムには手を触れずに、確認の順番と担当の持ち方だけを変えます。

この打ち手を最初に置くのは、費用がかからず、効果が早く出るためです。見積の作成に2日かかっている原因が確認の往復にあるなら、確認の回数を減らす取り決めを作るだけで短くなります。単価の決裁の範囲を広げる、在庫の確認を先に済ませておくといった変更は、決めたその日から実行できます。

計測機器の輸入商社では、単価の確認を営業が事前に済ませてから依頼する形に変えました。この変更だけでも、依頼から完了までの日数は目に見えて縮んでいます。

ここで解けるのであればシステムにも外部にも頼まずに済むため、まずは手順の変更だけで解けないかを試しましょう。

打ち手②既存のシステムの設定で組む

2つ目に挙げるのは、すでに契約しているシステムの設定で組む打ち手です。新しい製品を買い足さずに、いまある機能の範囲だけで進めます。

追加の費用がかからない点が、この打ち手の強みにあたります。入力画面の項目を整える、承認の流れを設定する、集計のレポートを作るといった作業は、多くの場合いまのシステムの範囲でできるためです。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合も、この段階が相談の対象になります。

計測機器の輸入商社では、見積の単価を価格表から自動で引く設定を検討しました。転記の工程が消えれば、差し戻しの件数も一緒に減る見込みがあったためです。

契約に含まれているのに使っていない機能が残っていることは珍しくないため、いまのシステムでどこまでできるのかを先に確かめましょう。どこまでを自社で設定し、どこから外へ頼むかは、運用保守の作業の分け方で整理しています。

打ち手③AIに任せる範囲を設計から決める

3つ目は、AIに任せる範囲を設計の段階から決める打ち手です。判断や文章を書く工程が残っている作業が、ここでの対象になります。

この打ち手が最後に来るのは、任せる範囲を決める工程が必要だからです。どの作業のどこまでを渡し、どこから人が確かめるかを設計しないまま動かすと、例外で止まるか、確認されないまま誤りが顧客へ届きます。設計の工程まで含めて考えれば、手順の変更や設定で解ける作業まで抱え込む必要はありません。

計測機器の輸入商社では、見積書の下書きと納期の照会への一次回答を候補にしました。どちらも判断と文章が入る作業で、手順の変更だけでは短くできない部分にあたります。

渡す範囲と人が確かめる工程は、設計の段階で一緒に決めましょう。動かしてから決めることにすると、例外が出た日に手が止まります。

クロスコムでも、ソリューション営業の業務プロセスに絞ってAIの導入と定着を支援しています。定着まで伴走してほしい場合や、ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、Agentforce導入・定着支援で無料相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

以上が、自社で進めるか外へ頼むかを分ける3つの打ち手でした。

効率化の前に答える3つの問い

打ち手をここまで並べてきましたが、あとは実行に移すだけに見えます。ところが取り組みが続く会社と止まる会社の差は、着手の前に答えを出しているかどうかに表れます。どれも短い問いですが、答えを書けないまま進むと、3か月後に数字が残りません。逆にいえば、この3つに答えられる会社は、最初の1つを外しても立て直せます。そこでここでは、着手の前に答える問いを3つ整理します。

着手の前に答える問いは、費用や期間についてのものではありません。着手の前に答えるのは、誰の時間を空けたいのか、空いた時間で何をするのか、やめてよい作業はどれかの3つです。

問い①誰の時間を空けたいのか

3つのうち最初の問いは、誰の時間を空けたいのかという一点です。営業なのか、営業事務なのか、管理職なのかを、着手の前に決めておきます。

対象を決めるのは、手をつける作業がそこで変わるためです。営業の時間を空けたいなら見積と資料の準備、営業事務の残業を減らしたいなら月末に寄る作業、管理職の時間なら集計と報告が対象になります。「全員の負担を減らす」という置き方では、最初の1つが選べません。

計測機器の輸入商社が最初に置いた目的は、営業事務の残業を減らし、月末に寄る作業を平らにすることでした。件数の多い受注の入力から始めたのは、この目的に沿った判断だったことになります。

決めた相手が待っている作業から選べば順番をめぐる議論はそこで終わるため、空けたい相手は1つに決めましょう。

問い②空いた時間で何をするのか

2つ目の問いは、空いた時間を何に使うのかという行き先の指定です。「別の業務へ」という答えでは足りず、作業名まで決めておきます。

行き先を決めていない時間は、たまっていた別の処理に吸収されます。何をするのかが決まっていなければ、空いた分だけ別の作業が入り込むためです。結果として、数字の上では何も変わらないまま3か月が過ぎます。

計測機器の輸入商社では、受注の入力から手が離れた時間を、納期の照会への回答へ充てる形にしました。顧客の待ち時間が長かった作業へ、人の時間を移したことになります。

空いた時間の使い道は、始める前に作業名で書き出しておきましょう。書き出せないうちは、まだ着手の条件がそろっていません。

問い③やめてよい作業はどれか

3つ目の問いは、やめてしまってよい作業はどれかという見直しです。作業を速くするのではなく、なくしてしまう対象のほうを探します。

やめる対象を探すのは、速くするより効果が大きいためです。誰も見ていない集計表、形だけ残っている確認の工程、過去の経緯で続いている報告は、どの会社にも残っています。速くする前に、そもそも必要かどうかを問い直すほうが短く済みます。

計測機器の輸入商社では、月次の報告のうち1つが誰にも読まれていませんでした。作成に毎月まとまった時間をかけていたもので、やめるという判断が最初に出た打ち手になっています。

作った資料の宛先を確かめ、読む人を書けない資料はやめる候補に入れましょう。やめる作業を先に決めておけば、残った作業を仕組みへ広げる段になっても迷いません。任せる相手を増やすときは、1体に任せるか複数に分けるかという設計の判断が次の論点になります。

当初の目的は「営業事務4名の残業を減らし、月末に寄る作業を平らにすること」でしたが、この会社では手をつける作業を見積の作成へ切り替えた結果、依頼から完了までが2日から4時間になり、差し戻しも月18件から6件へ減りました。

以上が、効率化の前に答える3つの問いでした。

【一問一答】営業事務の効率化に関するよくある質問

ここまで、営業事務の5つの作業の分け方から、手をつける順番の決め方、人と仕組みへの振り分け、AIへ任せられる範囲、そして着手の前に答える問いまでを整理してきました。とはいえ、自社の場合はどこから始めればよいのか、どのくらい変わるのかという疑問が残った方もいるはずです。とくに多いのは、最初の1つの選び方、効果の大きさ、任せられる範囲、ツールの要否、外部への頼み方の5点になります。最後に、着手の前に迷いやすい点を5つの質問にまとめます。

質問①営業事務の効率化は何から始めればよいですか?

1か月の作業を書き出し、そのうち「ほかの人が待っている作業」から始めます。件数の多い作業は手順が固まっていて速く回っていることが多く、短くできる余地が小さいためです。この記事の例に挙げた計測機器の輸入商社は、月320件の受注入力から始めて3か月効果が出ず、月150件の見積の作成へ切り替えて待ち時間を2日から4時間に短くしました。

質問②営業事務の効率化でどのくらい時間が減りますか?

作業の種類によって幅が大きいため、一律の目安として出せる数字はありません。測るべきなのは削減した時間の合計ではなく、依頼から完了までの待ち時間・差し戻しの件数・月末に寄る件数の割合の3つです。例に挙げた計測機器の輸入商社では、見積の待ち時間が1件あたり1日半短くなり、差し戻しが月18件から6件へ減りました。

質問③営業事務の作業はどこまでAIに任せられますか?

型の決まった書類の下書き、記録から答えられる照会への一次回答、記録からの集計と要約の3つが対象になります。いずれも人が残す工程があり、例に挙げた計測機器の輸入商社でも、見積書の下書きはAIに渡す一方で、特注品の仕様の説明と送る前の単価の確認は担当者が持つ形にしました。

質問④営業事務の効率化にツールは必要ですか?

新しいツールを入れることが、着手の条件になるわけではありません。確認の往復が多いことが原因なら、手順と決裁の範囲を変えるだけで短くなります。例に挙げた計測機器の輸入商社も、単価の確認を営業が事前に済ませる形へ変えるところから始めました。手順の変更・既存システムの設定・AIへの委任という順に検討すると、要らない投資を避けられます。

質問⑤営業事務の効率化を外部に頼むことはできますか?

作業そのものを外へ出す方法と、設計を一緒に進める方法があります。前者は手順が決まっていて例外の少ない作業が対象で、後者は任せる範囲を決める工程から支援を受ける形です。計測機器の輸入商社のように営業事務が4名で、検討を1名が抱えている場合は、設計の工程を外部と進めるほうが止まりにくくなります。

営業事務の効率化は、待ちを作っている作業から始める

営業事務の効率化でつまずく原因は、作業の量ではなく、手をつける順番の決め方にあります。本記事では、5つの作業の分け方から、待ちを作っている作業の見つけ方、件数から入ると外れる理由、人と仕組みへ分ける4つの線引き、測る4つの数え方、AIへ任せられる3つの作業、そして着手の前に答える3つの問いまでを整理してきました。

ここで要点になるのは、5つの作業のうちどれから手をつけるかという順番です。1か月の作業を書き出し、誰かが待っている作業を1つ選び、手順の変更で解けるかどうかを試してから仕組みを考えていきます。この順で進めた計測機器の輸入商社では、見積の依頼から完了までが2日から4時間になりました。判断と文章が入る作業が最後まで残るようであれば、Agentforceの導入判断から確かめる段階に進みます。

この記事で紹介した進め方を、ぜひ自社の状況に合わせて実践し、少しでもお役に立てれば幸いです。