- 営業のAI活用事例とは、自社の営業でAIに任せた業務と、使う前と後の変化を示した記録です。
- 当社が自社の営業でAgentforceに任せているのは、引合い・顧客の現状の整理・試行の設計の3業務です。
- 当社の営業でAgentforceを使い始めてから、商談前に材料をそろえる準備の作業がいちばん大きく変わりました。
- 当社の営業では、提案書の骨子・見積の工数・契約の範囲をAgentforceに任せず、人が決めています。
- Agentforceに営業の業務を任せる前に、データの置き場所と人が判断する所を決めておく必要があります。
営業のAI活用事例を探すと、大企業が公表した成果の要約や活用例を並べた一覧は多く見つかりますが、自社の営業に当てはめたとき、どの業務から任せればよいのかまでは書かれていないのではないでしょうか。営業のAI活用事例とは、AIに任せた業務と人に残した判断を、使う前と後の変化とあわせて示した記録のことです。当社は、SalesforceのAgentforceを2026年の初めから自社の営業で使っています。
そこで本記事では、代表の本田が自ら行っている当社の営業でAgentforceを使ってわかったことを、使う前と後の変化と人に残した判断に分けて解説します。なお、料金や提供の条件は変わりやすいため、本記事は2026年11月時点で確認できた公式の情報にもとづいています。
- 営業のAI活用事例|自社のAgentforceでわかった3点
- 営業のAI活用事例を読む前の3つの前提
- 引合いの対応はAgentforceでどう変わった?3つの変化
- 顧客の現状の整理で起きた3つの変化
- 試行の設計で起きた3つの変化
- 営業のAI活用事例でAgentforceに任せない3つの業務
- 営業のAI活用事例で人が持ち続けた3つの判断
- 営業のAI活用事例でつまずいた3つの落とし穴
- 何で測る?営業のAI活用事例の効果3段階
- 営業のAI活用事例を再現しやすい3つの条件
- 営業のAI活用事例を再現しにくい3つの条件
- 手順4選|Agentforceで営業のAI活用を始める
- Agentforceを営業に入れる費用3内訳
- 営業のAI活用を外部に頼むときの3つの見極め方
- 【一問一答】営業のAI活用事例に関するよくある質問
- 営業のAI活用事例|当社はAgentforceに材料集めを任せ、判断を人に残した

営業のAI活用事例|自社のAgentforceでわかった3点
営業のAI活用事例として本記事で書くのは、当社の営業でAgentforceを使う前と後に起きた変化です。当社の営業でAgentforceのエージェントに任せているのは、引合いへの対応、顧客の現状の整理、試行(PoC:概念実証)の設計の3つの業務で、提案書や見積といったほかの業務には使っていません。効果を測った数字はまだ無いため、ここで書く変化は代表の本田の感覚にもとづいています。そこでここでは、自社の営業でAgentforceを使ってわかった3点を、先に結論として解説します。
| 業務 | エージェントに出させるもの | 人に残すこと |
|---|---|---|
| 引合いへの対応 | 相手企業の要約・課題の仮説 | 何を聞くか・受けるか |
| 顧客の現状の整理 | 記録と議事録からの下書き | 顧客固有の事情の確認 |
| 試行の設計 | 検証範囲と成功基準の案 | 成功基準の顧客との合意 |
点①商談前の準備がいちばん変わった
1つ目は「商談前の準備がいちばん変わった」点です。以前は、引合いが届くたびに代表の本田が相手企業のWebサイトを読み、自社のCRMから似た案件を探し、初回の打ち合わせで聞くことを手で書き出していました。
いまは、相手企業の要約と課題の仮説、過去の類似案件、初回ヒアリングの質問項目の下書きを、Agentforceのエージェントが先に出します。代表の本田はその下書きを読み、使う仮説と質問を選ぶところから準備を始めています。自社の営業でAgentforceを使ってみると、商談前に材料をそろえる準備が大きく変わり、商談の中身を決める判断は人に残りました。
準備の時間がどれだけ減ったかは測っていませんが、引合いが届くたびに、材料を探す作業から始めなくてよくなったと感じています。
点②材料集めを任せると顧客固有の事情を聞く時間が残る
2つ目は「材料集めを任せると、顧客固有の事情を聞く時間が残る」点です。商談前の材料がそろっていると、代表の本田は打ち合わせの時間を相手企業の公開情報の確認に使わずに済みます。空いた時間は、Webサイトや社内の記録には出てこない、その会社だけの事情を聞くために使えるようになりました。

たとえば顧客の現状を整理する場面では、エージェントが商談と取引先の記録、議事録、Web調査で集めた情報から現状の下書きを作ります。下書きに並ぶのは公開情報と過去の記録から分かることまでで、社内の決まりごとや過去のいきさつ、数字の根拠は、打ち合わせで顧客から聞くしかありません。代表の本田は、その聞くべき点を下書きの空白から見つけて、次の打ち合わせの質問にしています。
下書きの空白をそのまま聞くべき点として使えるのは、エージェントに読ませる記録がそろっている業務に限られます。
点③任せる前にデータの置き場所と人の判断を決める
3つ目は「任せる前に、データの置き場所と人が判断する所を決める」点です。当社がAgentforceを使い続けられているのは、エージェントに任せる業務を小さく区切り、それぞれで参照するデータの置き場所と人が決める所を、任せる前に決めたからだと考えています。
使い始めた頃は、引合いの対応から提案の準備までを1回の指示でまとめて任せようとしましたが、この使い方は当社の営業には合いませんでした。どの記録を読めばよいかが業務ごとに違ううえ、出てきた答えのどこまでを人が確かめるのかも決まっていなかったからです。そこで、引合い・現状の整理・試行の設計の3つに分け、業務ごとに参照する記録の置き場所と、人が判断する所を書き出してから任せる形に変えました。
1回の指示で任せた答えのどこが誤っているかを人が指摘できないときは、業務の分け方がまだ粗いと判断できます。
営業のAI活用事例を読む前の3つの前提
前章では、自社の営業でAgentforceを使ってわかった3点を先に示しました。営業のAI活用事例は、誰が、いつから、どの業務で使った話なのかが分からないまま読むと、自社に当てはめるときに読み違えやすくなります。とくに当社の場合は、Agentforceを使っているのが自社の営業に限られ、エージェントで動かしている業務も一部だけです。そこでここでは、本記事の営業のAI活用事例を読む前に押さえておきたい3つの前提を整理します。
前提①当社の営業は2026年の初めからAgentforceを使う
1つ目の前提は「当社の営業は2026年の初めからAgentforceを使っている」ことです。本記事で書くAgentforceの経験は、すべて合同会社クロスコムの営業での利用で、営業は代表の本田が自ら行っています。使い始めたのは2026年の初めで、本記事を書いている2026年11月の時点では、使い始めてから1年に満たない段階にあります。
あわせて、当社はAgentforceの導入・定着支援をサービスとして提供していますが、Agentforceを導入した顧客の例はまだありません。
使っている期間が1年に満たないため、本記事では、使い始めてから気づいた変化とつまずきを中心に書いており、長く使い込んだ結果は書けていません。
前提②Agentforceで動かしているのは3つの業務である
2つ目は「Agentforceで動かしているのは3つの業務である」ことで、業務ごとにエージェントが出すものは次のとおりです。
- 引合いへの対応・・・相手企業の要約と課題の仮説、過去の類似案件、初回ヒアリングの質問の下書きを出します
- 顧客の現状の整理・・・商談と取引先の記録、議事録、Web調査の情報から現状の下書きを作ります
- 試行の設計・・・検証範囲と成功基準の案を出し、関係者とほかのエージェントへの影響を確かめます
3つの業務はどれも顧客と話す前に材料をそろえる業務で、顧客に出す文面や金額を決める業務は入っていません。提案書の骨子、見積の工数の積算、契約とSOW(作業範囲記述書)の調整は人が行い、追加提案の材料集めには別の生成AIを使っています。

前提③効果の数字は測っておらず書かない
3つ目は「効果の数字は測っておらず、本記事には書かない」ことです。当社では、Agentforceを使う前と後で準備にかかった時間や件数を測っていないため、本記事で書く変化は代表の本田が自ら営業をするなかで感じたことにもとづいており、何割減った、何倍になったといった数字は載せていません。
営業のAI活用事例では成果の数字が目を引きますが、測っていない数字を書くと、読者が自社の見込みを立てるときに誤った基準になってしまいます。効果の測り方そのものは、後半の「何で測る?営業のAI活用事例の効果3段階」で、試す・広げる・続ける時期ごとに整理しました。
本記事では、どの業務で何をエージェントに出させ、何を人に残したかを具体的に書き、効果の数字の代わりに、自社に当てはめるときの材料として使えるようにしています。
引合いの対応はAgentforceでどう変わった?3つの変化
前章で本記事の前提を整理したので、ここからはエージェントに任せた3つの業務を1つずつ見ていきます。最初の業務は、問い合わせや紹介で届いた相談に応える引合いの対応で、当社の営業では、商談前の準備のうち最も多くの作業がここに集まっていました。Agentforceのエージェントは、指示とアクションを組み合わせて動く仕組みで、当社では相手企業の情報とCRMの記録を読ませ、引合いへの対応に使う材料を出させています。そこでここでは、引合いの対応がAgentforceでどう変わったのかを、3つの変化に分けて解説します。
変化①相手企業の要約と課題の仮説が先にそろう
1つ目の変化は「相手企業の要約と課題の仮説が先にそろう」ことです。使う前は、引合いが届くと、代表の本田が相手企業のWebサイトや公開されている資料を読み、事業の概要と、相談の背景にありそうな課題を手で書き出しており、相談の文面が短いときほど、相手企業を調べるのに長い時間がかかりました。
いまは、エージェントが相手企業の要約と、相談の内容から考えられる課題と解決の仮説を先に出します。代表の本田は、並んだ仮説のうちどれを初回の打ち合わせで確かめるかを選ぶところから準備を始めるようになりました。
仮説はあくまで下書きで、相手企業が本当にその課題を抱えているかは、打ち合わせで聞くまで分かりません。そのため、課題の仮説は、変化③で書く初回ヒアリングの質問を下書きする材料にも使っています。
変化②過去の類似案件が先に見つかる
2つ目は「過去の類似案件が先に見つかる」変化です。引合いの相談を読むとき、代表の本田がまず確かめたいのは、似た業種や似た課題の案件を当社が過去に扱っているかどうかでした。以前は、自社のCRMを業種や商談名で何度も検索し、近い案件の商談記録を開いて読み比べていました。
Agentforceを使うようになってからは、エージェントが自社のCRMから似た案件を探し、相談の内容と並べて示します。似た案件が見つかれば、そのときに顧客から出た質問や、提案で論点になった点を先に読んだうえで打ち合わせに臨めます。
似た案件が見つからないときは、当社にとって経験の少ない相談だと早い段階で分かります。その場合は、引き受けるかどうかを判断するための確認事項を増やしてから、打ち合わせの準備に入るようにしています。
変化③初回ヒアリングの質問が先に決まる
3つ目は「初回ヒアリングの質問が先に決まる」変化です。初回の打ち合わせで何を聞くかは、引合いの対応のなかで代表の本田が最も時間をかけて考えていた部分でした。相手企業の状況が分からないまま質問を並べると、相手がすでに公開している情報を聞いてしまい、限られた時間を確認だけで使ってしまうからです。
使い始めた後は、相手企業の要約と課題の仮説、類似案件をもとに、エージェントが初回ヒアリングの質問項目を下書きし、代表の本田がその下書きから公開情報で分かるものを外して、顧客固有の事情と数字の根拠を聞く質問を足し、当日の質問の一覧にしています。
当社の引合いの対応でAgentforceに任せたのは初回ヒアリングの質問の下書きまでで、何を聞くかは人が決めています。
顧客の現状の整理で起きた3つの変化
前章で見た引合いの対応で材料がそろい、初回の打ち合わせが終わると、次に必要になるのが顧客の現状の整理です。当社の営業では、顧客が今どのような流れで業務を進めているかを提案の前に整理する作業をこう呼んでおり、2つ目にAgentforceのエージェントへ任せたこの業務では、引合いの対応と違い、顧客から聞いた話と社内の記録、公開されている情報を突き合わせる作業が中心です。そこでここでは、顧客の現状の整理をAgentforceに任せて起きた3つの変化を解説します。
変化①商談と議事録から現状の下書きが出る
1つ目の変化は「商談と議事録から現状の下書きが出る」ことです。使う前は、打ち合わせのあと、代表の本田が議事録を読み返し、顧客の業務の流れと困っている点を手で整理していました。打ち合わせが2回、3回と続くと、どの話がどの回で出たのかを追う作業に時間を取られることも少なくありませんでした。
いまは、エージェントに商談と取引先の記録、議事録を参照させ、顧客の現状の下書きを作らせています。下書きには、顧客が話した業務の流れと困っている点が、整理された形で並びます。
議事録が複数の回に分かれていても、エージェントが同じ下書きの中にまとめるため、代表の本田は下書きを読んで足りない点を探すところから始められるようになりました。エージェントは議事録に残っていない話を下書きに書けないため、下書きの中身は議事録に何を書いたかで変わります。
変化②Web調査の情報が同じ下書きに並ぶ
2つ目は「Web調査の情報が同じ下書きに並ぶ」変化です。顧客の現状を整理するときは、顧客から聞いた話に加えて、顧客が公開している事業の説明や採用の情報、業界の動きも材料になります。以前は、こうした情報を別に調べてメモにまとめ、議事録の整理とは別の資料として持っていました。
Agentforceに任せてからは、Web調査で集めた情報もエージェントに参照させ、商談の記録や議事録と同じ下書きに並べています。顧客が打ち合わせで話した内容と、公開されている情報が食い違っている点も、同じ下書きの中で見つけやすくなりました。
Web調査で集めた情報には、古いものや、顧客の実態と合わないものも混じります。下書きに並んだ公開情報は、代表の本田が出どころを確かめてから使い、場合によっては打ち合わせで顧客に確かめる質問に変えています。
変化③顧客固有の事情を聞く時間に回せる
3つ目は「顧客固有の事情を聞く時間に回せる」変化です。現状の下書きが打ち合わせの前に出ていると、代表の本田は、次の打ち合わせで何を聞けばよいかを下書きの空白から決められます。記録と公開情報で分かる範囲はエージェントがまとめているため、打ち合わせの時間を、記録に出てこない話に使えるようになりました。
ここでいう顧客固有の事情とは、たとえば社内の決まりごとや、過去に別の取り組みがうまくいかなかったいきさつ、担当者ごとの考え方の違いです。こうした事情は議事録にも公開情報にも残っておらず、顧客に聞かなければ分かりません。
顧客の現状の整理では、Agentforceの下書きを記録と公開情報のまとめに限り、顧客固有の事情は代表の本田が打ち合わせで聞いて確かめています。
試行の設計で起きた3つの変化
前章で見た顧客の現状の整理が終わると、提案の前に、小さく試して確かめる段階に進むことがあります。当社の営業では、この試行(PoC)の設計を3つ目にAgentforceのエージェントへ任せており、何を確かめ、何をもって成功とするかを顧客と決める前の材料づくりに使っています。試行の設計は、範囲を広げすぎると何を確かめる試行なのかが分からなくなるため、営業の業務のなかでも人が判断する場面の多い業務です。そこでここでは、試行の設計をAgentforceに任せて起きた3つの変化を解説します。
変化①検証範囲と成功基準の案が先に並ぶ
1つ目の変化は「検証範囲と成功基準の案が先に並ぶ」ことです。使う前は、代表の本田が顧客の現状の整理をもとに、どの業務で何を試すかと、どうなれば成功とみなすかを一から書き出していました。
いまは、エージェントが現状の整理と過去の記録をもとに、検証範囲の案と成功基準の案を出します。範囲の案は複数並ぶため、代表の本田は、どの範囲が顧客の課題に近いかを比べて選ぶところから考えられ、広げすぎた案と絞りすぎた案も見比べられるようになりました。
エージェントは、顧客の数字の根拠を知らないまま成功基準の案を作ります。どの数字で成功とみなすかは顧客の社内の事情によって変わるため、案はそのまま顧客に出さず、打ち合わせで顧客と決めるための材料として使っています。
変化②関係者の顔ぶれが先に分かる
2つ目は「関係者の顔ぶれが先に分かる」変化です。試行には、営業の担当者に加えて、情報システムの担当者や、結果を見て判断する立場の人が関わります。誰が関わるかを試行の設計の段階で分かっていないと、成功基準を決めたあとで別の部署から条件が出て、設計をやり直すことになりかねません。
Agentforceに任せてからは、エージェントが商談と取引先の記録から、試行に関わりそうな関係者を洗い出しています。代表の本田は、その一覧を見て、まだ話を聞けていない立場の人を確かめ、次の打ち合わせで誰に同席してもらうかを顧客と相談するようになりました。
記録に名前の無い決裁者がいることもあるため、エージェントが出した関係者の一覧は、最後に顧客に確かめるようにしています。
変化③ほかのエージェントへの影響を先に確かめる
3つ目は「ほかのエージェントへの影響を先に確かめる」変化です。試行でエージェントを1つ加えると、顧客がすでに使っている仕組みや、ほかのエージェントの動きに影響が出ることがあります。使う前は、こうした影響を確かめる作業が試行の設計の終わりのほうに回り、確かめ漏れが残ることがありました。
いまは、試行の設計の段階で、ほかのエージェントへの影響の有無をエージェントに確かめさせています。影響がありそうな点が先に分かるため、代表の本田は、試す範囲を広げすぎずに済むようになりました。影響があると分かった場合は、試す範囲から外すか、顧客の情報システムの担当者に先に相談するかを、設計の段階で決めています。
試行の設計でAgentforceを使うと、検証範囲と関係者、ほかのエージェントへの影響を、顧客と決める前に確かめられます。
営業のAI活用事例でAgentforceに任せない3つの業務
ここまでの3つの章では、当社の営業でAgentforceのエージェントに任せている業務を見てきました。当社の営業には、エージェントに任せていない業務もあります。どの業務にAIを使わず、なぜ使わなかったのかを知っておくと、自社の営業でAIの使い方を決めるときに、任せない業務の候補を挙げやすくなるはずです。そこでここでは、当社の営業でAgentforceに任せていない3つの業務と、その理由を解説します。
業務①提案書の骨子は決まった型で手で作る
1つ目は「提案書の骨子は決まった型で手で作る」業務です。当社の提案書は、代表の本田が決まった型に沿って、骨子を手で組み立てています。骨子には、顧客の課題をどう定義するか、どの範囲から始めるかという、提案の中心になる判断が入るからです。型は章の順番と、各章で書くことを決めたもので、顧客ごとに変わるのは中身の判断だけになるようにしています。
引合いの対応や現状の整理でエージェントが出した材料は、提案書の骨子を組み立てるときにも使います。材料のどれを採り、どの順で並べて顧客に示すかは、顧客固有の事情を聞いた代表の本田が決めています。
提案の中身にかかわる判断を人に残す考え方は、次の見積の工数でも同じです。
業務②見積の工数は人が積み上げる
2つ目は「見積の工数は人が積み上げる」業務です。当社の営業では、見積の工数の積算をAgentforceに任せず、代表の本田が作業ごとに積み上げています。見積の金額は顧客との約束になり、その責任と顧客との合意は人が持つものだからです。
工数の積算では、過去の案件でかかった作業の記録も参考にしますが、今回の顧客で同じだけかかるかどうかは、顧客の体制や記録の状態によって変わります。こうした数字の根拠を顧客に説明できるのは、積み上げた本人だけです。契約の内容とSOWの調整も、同じ理由で人が行っています。
当社では工数の積算と金額の判断を人に残しており、見積作成のAIに任せられるのは書式の整備や転記のような作業だと考えています。
業務③追加提案の材料は別の生成AIで集める
3つ目は「追加提案の材料は別の生成AIで集める」業務です。受注のあとに次の提案を考えるとき、当社の営業では、材料集めにAgentforceとは別の生成AIを使っています。生成AIには、納品した仕組みの使われ方や、顧客の業界で起きている変化といった、次に何を提案するかを考えるための情報を集めさせます。
材料が集まったあと、いつ何を提案するかは代表の本田が決めます。追加の提案は、顧客が今の仕組みを使いこなせているかどうかによって、出してよい時期が変わるため、追加提案の設計を考えるときも、材料を集める作業と時期を決める判断は分けておく必要があります。
当社の営業では、提案書の骨子と見積の工数を代表の本田が作り、追加提案の材料集めには別の生成AIを使っています。
営業のAI活用事例で人が持ち続けた3つの判断
前章ではAgentforceに任せていない3つの業務を見てきました。ここでは、Agentforceを使い始めてからもエージェントに任せずに人が持ち続けた判断を取り上げます。当社では、営業AIエージェントに任せる範囲を決めるときに、顧客に出すもの、金額にかかわるもの、案件を受けるかどうかの3つを人に残しました。そこでここでは、当社の営業で人が持ち続けた3つの判断を、任せなかった理由とあわせて解説します。
判断①顧客に出す文面の最終版は人が直した
1つ目は「顧客に出す文面の最終版は人が直した」ことです。Agentforceのエージェントが出す相手企業の要約や質問の下書きは社内で使う材料で、そのまま顧客に送ることはしていません。顧客に送るメールや打ち合わせの案内、提案の文面は、代表の本田が最後に読み直してから出しています。
最終版を人が直すのは、エージェントの下書きには、顧客がまだ口にしていない課題を、すでに決まったことのように書いてしまう箇所があるからです。仮説のまま顧客に送ると、相手に「まだそこまで話していない」と受け取られかねません。
顧客に出す文面は人が直すと決めておいたことで、エージェントには遠慮なく仮説を出させられるようになりました。
判断②価格と値引きは人が決めた
2つ目は「価格と値引きは人が決めた」ことです。見積の金額や値引きの有無は、当社の営業ではAgentforceに任せず、代表の本田が決めています。工数の積算も人が行っており、金額の根拠を顧客に説明する責任も人にあります。
価格の判断には、顧客との関係や、今回の案件のあとに次の取引があるかどうかといった、記録に残りにくい事情が入ります。エージェントが過去の金額を参照できても、今回の顧客にその金額を出してよいかまでは判断できず、値引きをするかどうかも、顧客の予算や次の取引の見込みを聞いたうえで決めるため、記録だけで判断できる材料はほとんどありません。
価格のように記録の外にある事情で決まる判断かどうかは、ほかの業務をエージェントに任せるかを決めるときの目安にもなります。
判断③その案件を受けるかは人が決めた
3つ目は「その案件を受けるかは人が決めた」ことです。引合いの対応でエージェントが類似案件や課題の仮説を出しても、その相談を当社が引き受けるかどうかは、代表の本田が決めています。引き受けるかどうかの判断には、次の3つの条件が入ります。
- 課題・・・当社がその課題に応えられるかを見ます
- 体制・・・顧客が求める時期に体制を用意できるかを見ます
- 範囲・・・提案の範囲が顧客の予算と合いそうかを見ます
似た案件が見つからない相談は、経験の少ない領域かもしれないと分かる材料にはなりますが、それだけで断る理由にも、受ける理由にもなりません。経験の少ない相談でも、顧客の課題が当社の得意な業務に近ければ、引き受けることがあります。以上が、当社の営業で人が持ち続けた3つの判断でした。
営業のAI活用事例でつまずいた3つの落とし穴
前章で見た、人が持ち続ける判断を決めるまでには、当社の営業でもいくつかのつまずきがあり、Agentforceを使い始めてから最初の数か月は、記録の書き方と任せ方を決め直すことに、エージェントの設定より多くの時間を使いました。これから営業でAIを使う会社が同じところでつまずかないよう、当社で起きたことを、起きた順にそのまま書いておきます。そこでここでは、当社の営業のAI活用事例でつまずいた3つの落とし穴を解説します。
落とし穴①記録をAIが読める形にそろえる手間が大きかった
1つ目の落とし穴は「記録をAIが読める形にそろえる手間が大きかった」ことです。当社はAgentforceを使い始めたとき、エージェントが読める形に記録をそろえる作業に、エージェントの設定より多くの手間をかけました。
使い始めた頃の商談記録には、一言だけのメモや、打ち合わせの日付しか書いていないものが多く、エージェントに読ませても、相手企業の課題や話の経緯を読み取れませんでした。そこで、商談の記録に残す項目を決め、議事録の置き場所を1か所にまとめ、過去の記録も読める形に書き直していきました。
商談の記録に残す項目が最初から決まっている会社なら、記録を書き直す手間の多くは、Agentforceを使い始める前に済んでいます。
落とし穴②1回の指示で全部を任せようとした
2つ目は「1回の指示で全部を任せようとした」ことです。使い始めた頃、代表の本田は、引合いの相談を読ませてから提案の準備までを、1回の指示でまとめてエージェントに任せようとしましたが、この使い方は当社の営業には合いませんでした。
1回の指示で全部を任せると、エージェントが参照する記録が多くなりすぎ、どの答えがどの記録にもとづいているのかを確かめにくくなります。答えに誤りがあっても、どの段階でずれたのかが分からず、直す場所も決められませんでした。
そこで、業務を引合い・現状の整理・試行の設計の3つに分け、1つの業務で1つのことを任せる形に変えたところ、答えを確かめやすくなり、使い続けられるようになりました。
落とし穴③AIの答えが言い過ぎになった
3つ目は「AIの答えが言い過ぎになった」ことです。エージェントが出す課題の仮説や成功基準の案には、顧客の状況を確かめていないのに、言い切った表現で書かれているものがありました。言い切った文は、仮説として書かれた内容でも、読む人が確かめた事実と取り違えるおそれがあります。
当社では、エージェントの答えは社内の材料として扱い、顧客に出す前に代表の本田が読み直す形にしました。あわせて、仮説や案であることが分かる書き方で出すよう、エージェントへの指示を直しています。どこまでの言い過ぎなら社内で許せるかは、誤答の許容範囲を業務ごとに決めておくと判断しやすくなります。
以上が、当社の営業でつまずいた3つの落とし穴でした。
何で測る?営業のAI活用事例の効果3段階
つまずいた点を直したあとも使い続けるには、効果をどう測るかも決めておく必要があります。前提で書いたとおり、当社ではAgentforceを使う前と後で時間や件数を測っておらず、本記事に効果の数字は載せていません。これから営業でAIを使う会社が効果を確かめるなら、使い始めてからの時期ごとに測るものを変えるとよいと考えています。そこでここでは、営業のAI活用の効果を、試す・広げる・続けるの3段階に分けて測る方法を解説します。
段階①試す時期|AIの下書きを直さず使えた割合
試す時期には、まずAIの下書きを直さずに使えた割合を測ります。営業でAIに任せる業務の多くは下書きを出す業務で、下書きがそのまま使えるか、直す手間がかかるかによって、営業の担当者が使い続けるかどうかが決まります。
測り方は、下書きが出るたびに「そのまま使えた」「一部を直した」「使わなかった」の3つに分けて記録するだけです。1つの業務で1か月ほど記録すれば、エージェントへの指示や参照させる記録を直すべきかどうかを判断できます。「一部を直した」が多いときは、どこを直したかも一言添えておくと、エージェントへの指示のどこを直せばよいかが分かります。
当社はこの記録を取らずに使い始めたため、変化を感覚でしか語れていません。いまから始める会社であれば、試す時期のうちにこの3つの区分で記録を付けておくことを勧めます。
段階②広げる時期|AIを使った業務の数
試す時期で下書きの使える割合が分かったら、次の広げる時期には、AIを使った業務の数を数えます。1つの業務で使える形になったあとは、同じ考え方をほかの業務にも使えるかどうかで、AIに任せられる作業の量が変わるからです。
業務の数だけを増やすと、業務ごとに参照する記録や人が確かめる所を決めないまま任せることになりがちです。業務の数を数えるときは、その業務で参照する記録の置き場所と、人が判断する所が決まっているかも一緒に確かめておきます。
当社でエージェントに任せている業務が3つに留まっているのも、この2つが決まった業務だけを任せているからです。広げる時期には、条件のそろった業務を1つずつ足せているかを見て、業務の数を増やすこと自体は目標にしないのがよいでしょう。
段階③続ける時期|受注後に追加提案へ進んだ件数
続ける時期に入ったら、受注後に追加提案へ進んだ件数を見ます。商談前の準備にAIを使うと、空いた時間で顧客固有の事情を聞けるようになり、顧客の課題を深く聞き取れたかどうかは、受注した顧客に次の提案を出せたかどうかに表れると考えます。
追加提案へ進むまでには、納品した仕組みが顧客の社内で使われ、次の課題が見えてくるまでの時間がかかるため、この指標は半年から1年の単位で見るもので、使い始めて数か月で件数が増えないからといって効果が無いと判断するのは早すぎます。追加提案の件数とあわせて、打ち合わせで顧客固有の事情を聞けた回数を記録しておくと、件数が増える前の変化も確かめられます。
以上が、営業のAI活用の効果を測る3段階でした。
営業のAI活用事例を再現しやすい3つの条件
効果の測り方まで見てきましたが、営業のAI活用事例は、読む側の会社の条件によって再現しやすさが変わります。AIが読む記録が無い会社や、同じ種類の案件が少ない会社では、AIに任せる業務が決まっていても、同じ使い方で下書きの質がそろわないからです。再現しやすいかどうかは、記録の残り方、案件の種類、営業の業務の分け方の3つで見当を付けられます。そこでここでは、営業のAI活用事例を再現しやすい3つの条件を解説します。
条件①過去の提案書と見積が1か所に残っている
1つ目の条件は「過去の提案書と見積が1か所に残っている」ことです。営業でAIに任せやすいのは、過去の記録を参照して材料を出す業務で、参照する記録が1か所にまとまっているほど、AIが出す下書きの質は安定します。
たとえば、提案書が営業の担当者ごとのフォルダに分かれ、見積は経理の表計算に残っている会社では、AIに読ませる前に記録を集め直す作業から始めなければなりません。商談ごとに提案書と見積がCRMに添付されている会社なら、その記録をそのまま参照させられます。
過去の提案書と見積が同じ場所に残っているかどうかは、営業のAI活用をすぐに始められるかを見分ける最初の条件です。まずは自社の提案書と見積がどこに何件あるかを数えてみると、集め直す手間の見当が付きます。
条件②同じ種類の案件が毎月くり返し来る
2つ目は「同じ種類の案件が毎月くり返し来る」ことです。案件の種類がくり返すかどうかで、AIが出す下書きの質は大きく変わります。AIが過去の記録から類似案件や質問の下書きを出せるのは、似た案件が過去に何件も残っているからです。同じ種類の引合いが毎月くり返し届く会社ほど、AIが参照できる記録は増えていきます。
具体的には、同じ業種の顧客から、似た課題の相談が定期的に届く会社が当てはまり、こうした会社では、相手企業の要約や課題の仮説を出す業務で、AIの下書きをそのまま使える場面が多くなります。
毎回まったく違う業種から相談が届く会社では、AIが参照できる似た記録が少なく、下書きの質がそろいにくくなります。毎月くり返し来る種類の案件が1つでもあれば、案件の種類が多い会社でも、まずはその種類の引合いからAIに任せてみるとよいでしょう。
条件③営業の段階ごとに担当者が決まっている
3つ目は「営業の段階ごとに担当者が決まっている」ことです。引合い、ヒアリング、提案、見積といった段階ごとに、誰が判断するかが決まっていると、AIの下書きを誰が確かめるかもはっきりします。
段階が分かれていれば、担当者が1人の会社も同じ条件を満たします。どの段階で何を判断するかを決めないままAIに任せると、下書きが出ても誰も確かめないまま顧客に届いてしまうおそれがあります。
営業の段階と判断する人が決まっている会社なら、AIに任せる業務と人に残す判断を、段階に沿って分けられます。段階ごとの判断する人は、手順①の業務の書き出しの中で一緒に書いておくと確かめやすくなります。以上が、営業のAI活用事例を再現しやすい3つの条件でした。
営業のAI活用事例を再現しにくい3つの条件
再現しやすい条件を見てきましたが、営業のAI活用事例をそのまま持ち込んでも同じ結果になりにくい会社もあり、そうした会社が先にAIの設定を進めると、下書きの質がそろわないまま現場の担当者が使わなくなり、記録を整える作業に戻ることになります。先に手を付けるべきことが分かれば、条件に当てはまる会社でも、AIを使う進め方は決められるはずです。そこでここでは、営業のAI活用事例を再現しにくい3つの条件を解説します。
条件①過去の商談がCRMの外に散らばっている
1つ目の条件は「過去の商談がCRMの外に散らばっている」ことです。商談の記録が担当者の手帳やメール、表計算のファイルに分かれて残っている会社では、AIが参照できる記録がほとんどありません。
たとえば、引合いの相談はメールで受け、ヒアリングの内容は担当者のノートに書き、見積は表計算で作っている会社では、AIに類似案件を探させても、CRMに残った一部の記録しか見つかりません。その結果、下書きの質が担当者の記録の残し方によって大きく変わってしまいます。
この条件に当てはまる会社は、商談の記録をCRMに集める作業をAIの設定より先に始める必要がありますが、すべての記録を一度に集めなくても、AIに任せたい業務で参照する記録から集めれば足ります。
条件②年に数件の大型案件だけを扱っている
2つ目は「年に数件の大型案件だけを扱っている」ことです。案件の数が少ないと、AIが参照できる過去の記録も少なくなり、類似案件や課題の仮説の下書きが出せる場面が限られます。
年に数件の大型案件では、1件ごとに顧客の事情が大きく異なり、提案の中身も一から組み立てることになります。こうした案件では、担当者が顧客と話す時間を増やすほうが、AIに材料をそろえさせるより提案の中身を決めやすいでしょう。
大型案件だけを扱う会社がAIを使うなら、議事録の整理のように、案件の数が少なくても使える業務から試すことを勧めます。1件の商談で打ち合わせの回数が多い大型案件では、議事録をまとめる作業だけでも、担当者が記録を探す時間を減らせます。
条件③営業の業務が段階に分かれていない
3つ目は「営業の業務が段階に分かれていない」ことです。引合いから受注までを1つの流れとして扱い、どこで何を判断するかを分けていない会社では、AIに任せる範囲も決められません。
段階が分かれていないままAIを使うと、1回の指示で引合いから提案までを任せる使い方になりがちです。当社も使い始めた頃に、この使い方でつまずきました。答えのどこが誤っているのかが分からず、直す場所も決められなくなります。
この条件に当てはまる会社は、AIを入れる前に、営業の業務を段階ごとに書き出すところから始めましょう。段階に分けるだけで、どこにAIを使えばよいかの候補を挙げられることも少なくありません。以上が、営業のAI活用事例を再現しにくい3つの条件でした。
手順4選|Agentforceで営業のAI活用を始める
再現しやすい条件と再現しにくい条件を見てきたので、次は始め方です。Agentforceで営業のAI活用を始めるときは、当社がつまずいたように最初から多くを任せず、1つの業務を選び、その業務で参照する記録と人が判断する所を決めてから始めるのが確実です。とくに小さく始めたい場合は、試す業務と期間を、始める前に決めておく必要があります。そこでここでは、Agentforceで営業のAI活用を始める4つの手順を解説します。
| 手順 | やること | 押さえる点 |
|---|---|---|
| ①書き出す | 営業の業務を段階ごとに並べる | 判断する人も書く |
| ②選ぶ | 人の判断が少ない業務を選ぶ | 選ぶのは1つだけ |
| ③集める | 記録を1か所に集める | 任せる前に行う |
| ④試す | 1業務を1四半期試す | 終わりに数え直す |
手順①営業の業務を段階ごとに書き出す
最初の手順では、営業の業務を段階ごとに書き出します。引合いへの対応、初回のヒアリング、顧客の現状の整理、提案書の作成、見積、契約、受注後の提案といった段階を並べ、段階ごとに何の作業があり、誰が何を判断しているかを書いていきます。
書き出してみると、同じ段階の中に、材料を集める作業と判断する作業が混ざっていることに気づきます。当社でも、引合いへの対応の中に、相手企業を調べる作業と、引き受けるかを決める判断が一緒に入っていたため、書き出してから2つを分けました。
書き出すときは、段階ごとに作業の名前と、判断する人の名前を並べるだけで足り、この段階で作業と判断を分けておくと、次の手順で任せる業務を選ぶときの材料になります。
手順②人の判断が少ない業務を1つ選ぶ
業務を書き出したら、その中から人の判断が少ない業務を1つ選びます。最初に任せるのは、材料を集めて並べる作業が中心で、顧客に出す文面や金額を決める判断を含まない業務が向いています。
当社が最初の3つに引合いへの対応、顧客の現状の整理、試行の設計を選んだのも、どれも顧客と話す前の材料づくりが中心の業務だったからです。見積の工数の積算や提案書の骨子のように、顧客への責任を伴う判断を含む業務は、最初の候補から外しました。
選ぶのは1つだけにしておくと、効果が出たのか出なかったのかを、その業務だけで確かめられます。複数を同時に始めると、どの業務で下書きが使えたのかが混ざり、次の手順で記録を集める範囲も広がってしまいます。
手順③過去の提案書と商談メモを1か所に集める
任せる業務が決まったら、その業務でAIが参照する過去の提案書と商談メモを1か所に集めます。当社が最も手間をかけたのもこの手順で、一言だけの商談メモを、相手企業の課題や話の経緯が読める形に書き直す作業が必要でした。
集めるときは、どの記録をどこに置くかと、AIが出した下書きのどこを人が確かめるかを、あわせて書き出しておきます。記録の置き場所と人の判断が決まっていないまま任せると、答えを確かめる人も直す場所も決まりません。集める範囲は、手順②で選んだ1つの業務で参照する記録に絞っておきます。
Agentforceに営業の業務を任せる前に、参照する記録の置き場所と人が判断する所を決めておくと、業務を広げるときにも迷いません。
手順④1業務を1四半期だけ試して数える
記録の準備ができたら、選んだ1つの業務で、1四半期(3か月)だけ試します。期間を決めずに始めると、いつ効果を判断するのかが決まらないまま使い続けることになるため、試す担当者と終わりの時期を先に決めておきます。
試すあいだは、効果3段階の「試す時期」で書いたように、AIの下書きをそのまま使えたか、直したか、使わなかったかを記録します。1四半期が終わったら記録を数え直し、指示や参照する記録を直して続けるか、別の業務に移るかを決めましょう。試した担当者に、どの下書きが使いやすかったかを聞いておくと、次の業務を選ぶときの材料にもなります。
以上が、Agentforceで営業のAI活用を始める4つの手順でした。

Agentforceを営業に入れる費用3内訳
前章の手順で試す業務が決まったら、次に費用を見立てます。Agentforceを営業に入れる費用は、見積もりに出てくる利用料に、AIが読める形に記録を集め直す社内の工数と、業務を書き出す設計の費用を足して考える必要があります。当社の経験では、過去の提案書や商談メモを集め直す社内の工数のほうが、月々の利用料より大きくなりました。そこでここでは、Agentforceを営業に入れる費用を3つの内訳に分けて解説します。
内訳①Agentforceの月々の利用料
1つ目の内訳は「Agentforceの月々の利用料」です。Agentforceの料金には、エージェントが処理を実行するたびにクレジットを消費する考え方があり、Salesforceの価格ページではFlexクレジットは10万クレジットあたり60,000円、Agentforceのアクションは1回あたり20 Flexクレジットと示されています(2026年11月時点)。社内の担当者が使う場合のAgentforceユーザーライセンスも、Flexクレジットが必要なうえで、ユーザーあたり月600円と示されています。
この単価を依頼1回あたりで見ると、依頼ごとに5つのアクションが動く設計なら100クレジット、金額にして60円ほどで、10万クレジットあれば依頼1,000回分をまかなえます。
この金額にはユーザーライセンスや社内の工数が入っていないため、月々の費用の全体は内訳②・③と合わせて見積もる必要があります。
内訳②過去の提案書と見積を集め直す工数
2つ目は「過去の提案書と見積を集め直す工数」です。当社の経験ではこの内訳が最も大きな費用で、見積もりの書類には出てきません。当社でAgentforceを使い始めて一番手間がかかったのは、エージェントが読める形に記録をそろえる作業だったからです。
工数として見込むのは、次の3つの時間です。
- 集める時間・・・担当者ごとに散らばった提案書と見積を1か所に集める時間です
- 書き直す時間・・・一言だけの商談メモを、課題と経緯が読める形に書き直す時間です
- 決める時間・・・これから残す記録の項目と置き場所を決める時間です
この工数は営業の担当者の時間から出ることが多いため、試す業務を1つに絞り、その業務で参照する記録から集め直すと、負担を小さくできます。
内訳③営業の業務を書き出す設計の費用
3つ目は「営業の業務を書き出す設計の費用」です。営業の業務を段階ごとに書き出し、AIに任せる業務と人に残す判断を分ける設計を外部の支援会社に頼む場合は、その費用がかかります。
当社のAgentforce導入・定着支援では、要求定義から本番公開までおよそ3か月で進め、本番公開後3か月から定着の支援を行います。外部に頼むかどうかは、社内に営業の業務を書き出せる人がいるか、記録を集め直す時間を取れるかで決めるとよいでしょう。
設計の費用は、業務の範囲と期間で大きく変わるため、試す業務を1つに絞った段階で見積もりを取ると比べやすくなります。複数の会社に頼むときも、同じ1つの業務で見積もりをそろえておけば、内訳の違いを比べられます。
営業のAI活用を外部に頼むときの3つの見極め方
費用の内訳のうち、設計を外部に頼むと決めたら、次はどの会社に頼むかです。Agentforce導入支援会社を比べるときに、AIの設定ができるかどうかだけで選ぶと、記録の整え方や人が判断する所の決め方が抜け落ちることがあり、当社も自社の営業ではこの記録と任せ方の部分でつまずきました。そのため、支援会社を比べるときは、記録の整え方と任せ方の決め方を支援の範囲に含めているかを確かめます。そこでここでは、営業のAI活用を外部に頼むときの3つの見極め方を解説します。
見極め①引合いから追加提案までを通して見られるか
1つ目は「引合いから追加提案までを通して見られるか」です。営業のAI活用は、引合いの対応だけ、提案書の作成だけといった単独の業務で考えると、前の段階で集めた材料を次の段階で使えなくなります。引合いで集めた材料が現状の整理や試行の設計にも使われるように、ある段階の記録を次の段階のエージェントが参照できる形で設計できるかを確かめましょう。
ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、最初の打ち合わせで、営業の業務を段階ごとに書き出すところから一緒に進めてもらえるかを聞いておくと判断しやすくなり、設定の手順だけを説明する会社と業務の流れから話を始める会社とでは、出てくる設計が変わります。
段階を通して見られるかどうかは、提案の資料に営業の段階ごとの図があるかで、ある程度見分けられます。
見極め②過去の提案書を探せる形に直す作業から扱うか
2つ目は「過去の提案書を探せる形に直す作業から扱うか」です。営業でAIを使うときに最も手間がかかるのは、AIが読める形に記録をそろえる作業で、ここを社内に任せたままでは、設定が終わっても下書きの質が上がりません。
支援会社を比べるときは、過去の提案書や商談メモを集め直す作業を、支援の範囲に含めているかを確かめておきます。AIエージェント導入支援の会社のタイプによってこの作業を扱う範囲は分かれ、記録の項目の決め方や残す記録の書き方まで一緒に決めてくれる会社であれば、設定のあとに記録の不足で止まることを避けられます。
見積もりの内訳にこの作業の項目が無い場合は、設定が終わったあとに社内で記録を集め直す工数が残ると考えておく必要があります。
見極め③自社でも営業をしている担当がいるか
3つ目は「自社でも営業をしている担当がいるか」です。どの判断を人に残すかという線引きは、営業の現場で顧客と話してきた経験がないと、設計の段階で引くのが難しくなります。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、支援を担当する人が自社でも営業をしているか、どのような営業の経験を持っているかを、打ち合わせの段階で確かめておきましょう。
当社も、代表の本田が自ら行う自社の営業でAgentforceを使っており、本記事で書いた3つの業務の使い方や、人に残した判断、記録をそろえるつまずきは、すべてその経験にもとづいています。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、Agentforce導入・定着支援にご相談ください。無料相談も受け付けています。
以上が、営業のAI活用を外部に頼むときの3つの見極め方でした。

【一問一答】営業のAI活用事例に関するよくある質問
ここまで、当社の営業でAgentforceを使ってわかったことと、効果の測り方、再現しやすい条件、始め方、費用、外部に頼むときの見極め方を見てきました。最後に、営業のAI活用事例を読んだ担当者から出てきやすい疑問をまとめておきます。会社の規模や顧客情報の扱い、効果が見えるまでの期間、社内への説明の仕方まで、検討を進める順に並べました。そこでここでは、営業のAI活用事例に関するよくある質問を6つ取り上げます。
従業員数十名の会社でも参考になり、当社の営業も代表の本田が自ら行っている体制で、引合い・顧客の現状の整理・試行の設計の3つに業務を絞ってAgentforceを使っています。業務を段階ごとに分け、記録の置き場所と人が判断する所を決められれば、人数が少ない会社でも同じ使い方ができます。
扱う範囲と権限を設計すれば読ませられ、社内の担当者が使うエージェントは利用者と同じ権限とセキュリティ設定に従うため、参照できる範囲は権限で絞れます。当社でも、エージェントの答えは社内の材料として扱い、顧客に出す文面は代表の本田が読み直してから送っています。
下書きの使いやすさは1か月ほど、追加提案への効果は半年から1年ほど記録を付けると確かめられます。当社は2026年の初めから使い始め、商談前の準備の変化は早い段階で感じましたが、時間や件数は測っていません。これから始めるなら、試す時期から記録を付けておくことを勧めます。
営業DXの事例は、記録をCRMに集める、承認の流れを電子化するといった仕組みの見直し全般を扱い、営業のAI活用事例は、その記録をAIに読ませて材料を出させる部分を扱います。当社でも、AIに任せる前に記録をそろえる作業に最も手間がかかったため、営業DXで記録を整えてからAIに任せる順番になりました。
使い始めてからの時期によって変えるのがよいでしょう。試す時期は下書きを直さず使えた割合、広げる時期はAIを使った業務の数、続ける時期は受注後に追加提案へ進んだ件数が目安です。当社はこの記録を取らずに始めたため、社内に説明する会社は最初から記録を付けておくと説明しやすくなります。
材料を集めて並べる業務であれば、ほかの生成AIでも同じ考え方で再現できます。当社でも、追加提案の材料集めには別の生成AIを使っています。AgentforceはCRMの記録を直接参照できるため、記録がSalesforceに残っているかで選ぶとよいでしょう。
営業のAI活用事例|当社はAgentforceに材料集めを任せ、判断を人に残した
ここまで見てきたように、自社の営業でAgentforceを使ってみると、相手企業を調べ、記録を読み、質問や案を並べる材料づくりが大きく変わり、商談の中身を決める判断はこれまでどおり人が行っています。材料づくりをAIに任せることで、人は顧客固有の事情を聞き、数字の根拠を確かめ、提案の骨子や金額、案件を受けるかどうかを決める判断に時間を使えるようになります。
そのためには、1回の指示で多くを任せず、業務を小さく分け、任せる前にデータの置き場所と人が判断する所を決めておく必要があります。記録をAIが読める形にそろえ終えた業務から1つずつ任せていけば、AIに任せる業務を少しずつ増やせるでしょう。本記事の内容が、自社の営業でAIに任せる業務を決める材料として、少しでもお役に立てれば幸いです。


