メールマーケティングは、BtoB企業にとって費用対効果の高いマーケティング手法の一つです。しかし、多くの企業が「とりあえずメルマガを配信している」状態で、売上や商談につながるよう戦略的にメール配信を活用できていないのではないでしょうか。
そこで本記事では、メールマーケティング戦略の本質的な考え方から、実務で活用できるように10ステップの策定プロセスを解説します。マーケティングオートメーションツールの有無にかかわらず活用できる内容となっていますので、自社の状況に合わせてぜひ参考にしてください。
当社はBtoB中小企業の商談化支援を中心とした、メールマーケティングやMA導入・運用、マーケティング戦略設計に強い会社です。
「商談数が増えない」「コンテンツ案が思いつかない」「どう改善すればいいか分からない」というお悩みがあればお気軽にご相談ください!無料の壁打ち相談も受付けております。
この記事を書いた人
合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。中小企業を中心に100社以上のBtoBマーケティング戦略設計や施策実行を支援。MA構築・運用とコンテンツ企画制作による商談数拡大の支援が得意。
【誤解されがち】メールマーケティング戦略の概念と位置づけ

「定期的にメルマガを配信すること」や「MAツールでステップメールを設定すること」がメールマーケティング戦略だと考えている企業は少なくありません。
そこでここでは、誤解されがちなメールマーケティング戦略の定義と、マーケティング全体におけるメールマーケティング戦略の位置づけについて解説していきます。
メールマーケティング戦略は「メールを活用した売上づくりに資源をどう使うか」
メールマーケティング戦略とは「メールという手段を使って売上をつくるために、限られた経営資源をどこにどのように配分するか」を決定することです。つまり、個別のメール施策やテクニックではなく、メールを活用してどう商談や売上をつくるか全体的に設計することで指します。
具体的には、限られた人員、予算、時間をどのターゲットセグメントに、どの購買ステージで、どのような目的のために投下するかを明確に定義します。例えば、新規リード獲得に注力するのか、既存顧客のアップセルに重点を置くのか、あるいは休眠顧客の掘り起こしを優先するのかといった「選択と集中の判断」が戦略といえるでしょう。
「競合がやっているから」「無料だから」という理由でMAツールやメール配信ツールを導入して実施した結果、「とりあえずメルマガ配信」という、戦略性がない施策に終わってしまうケースは少なくありません。売上インパクト、実行可能性、投資対効果といった複数の評価軸から各施策を評価し、最も成果が期待できる領域から段階的に実装していく必要があります。
メールマーケティング戦略はメルマガだけじゃない
メールマーケティングと聞くと、多くの人がメルマガ配信を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、メルマガ配信はメールマーケティング施策の一部に過ぎません。
実際のメールマーケティング施策では、主に以下6つの配信手法を状況に応じて使い分けています。
- 一斉配信(メルマガ配信)
- セグメント配信
- トリガー配信
- リターゲティング配信
- ステップ配信
- シナリオ配信
メルマガ配信は、全リストへの継続的に情報発信して接点を維持するのに適している一方、たとえばトリガーメールは個々の行動をトリガーにして個別最適化したメールを配信します。
またメールマーケティングは、メール単体で完結するものではなく、ウェブサイト、SNS、オフラインイベント、営業活動など他のマーケティングチャネルと連携することで相乗効果を生み出します。メール単体での最適化ではなく、顧客接点全体の中でメールの役割を定義し、他チャネルとの相乗効果をどう最大化するかを考えることも、メールマーケティング戦略の設計で求められるわけです。
【テンプレ付き】メールマーケティング戦略の策定10ステップ

メールマーケティング戦略の定義を解説したところで、具体的にどのように戦略を策定すればいいのか。ここでは具体的な設計イメージを持ってもらうために、商談獲得をゴールとした設定で、サンプルシートを用いながら10ステップで解説していきます。テンプレートは、以下より個人情報なしで閲覧・ダウンロードできます。
ステップ①メールマーケティングのゴールを設定する

最初のステップは、メールマーケティングで何を達成したいのかというゴールを具体的な数値で定めましょう。
例えば「6か月以内に営業へのリード送客数を5件から15件に増やす」「メール施策経由のMQL→SQL転換率を10%から25%に改善する」といった形で、期間と起点・目標値を明確にすると、これから設計する戦略策定全体の筋が通るようになります。
単に「リード獲得数を効率化したい」「開封率を上げたい」といった抽象的な目標にしてしまうと、現場の優先順位が決めにくく、振り返りの際にも良し悪しが判断できません。「いつ」「何を」「いくら」まで解像度を上げて設定するようにしましょう。
ステップ②セグメントごとに機能/便益を整理する


ゴールが定まったら、次はマーケティング戦略で定義したターゲット/提供価値をメール戦略の単位に落とし込みます。「誰に」「どの課題を」「どの情報で解決するのか」を、メールコミュニケーションの視点から再整理していきましょう。
前提として、マーケティング戦略として策定したコアターゲット/サブターゲットと、そのターゲットが抱える課題、そしてそれに対応する機能と便益(PoP/PoD)を把握し、そのマーケティング戦略とメールマーケティング戦略で整合性を保つようにする必要があります。
たとえば、MA運用支援サービスであれば、コアターゲットは「MAツール導入済みの中堅〜大企業」、サブターゲットは「これからMA導入を検討している企業」といった形で整理されているはずです。そのうえで、「1人でもMAを運用できる体制をつくりたい」「営業に渡すリードの質を安定させたい」といった課題候補を洗い出し、それぞれに対してどのようなサービス機能をもって同質的な便益(PoP)と差別化的な便益(PoD)を提供できるか整理していきます。
メールマーケティング戦略では、この課題×状況で整理したターゲットセグメントとそれぞれに対する機能と便益を、そのままセグメント戦略とコンテンツ設計の土台として扱っていきます。なので、マーケティング戦略で策定したターゲット/提供価値を、メールという手段に合わせて再分解しておくと、後述するカスタマージャーニーやワークフローの設計に一貫性が出ますので、ぜひマーケティング戦略との整合性は意識してください。
ステップ③カスタマージャーニーを作成する

ターゲットセグメントと機能/便益の整理ができたら、次はその顧客が、どのようなステップを経てサービス契約に至るのかを、カスタマージャーニーマップとしてステージ別に細分化していきます。先ほど定義したターゲットセグメントごとに「どんな状態からスタートし、どの順番で何に悩み、どの情報に触れて、最終的にどの結論にたどり着くのか」を一枚で俯瞰するのがカスタマージャーニーマップです。
本記事では、MA運用支援サービスを例にしたサンプルのカスタマージャーニーを掲載していますが、実際に自社用のカスタマージャーニーマップを作成する際には、解決したい課題や、DMUごとの役割、必要情報やタッチポイントなど、セグメントごとに内容を修正する必要があります。具体的な作成プロセスやテンプレートについては、「【テンプレ付き】MA運用に活用するカスタマージャーニーの作成方法」にてまとめていますので、ぜひご参考ください。
ステップ④顧客導線にカスタマージャーニーをマッピングする

カスタマージャーニーが言語化できたら、次はそれを自社の実際の顧客導線に重ね合わせ、どの接点でどのステージの課題を支援していくのかを整理します。スライドのように、左から「認知」「検討タスクの解消」「面談実施」「商談実施」といった大枠のプロセスを描き、その下にLP、資料請求フォーム、ウェビナー、比較資料、オンライン面談、見積提示など、実際のタッチポイントを配置していきます。
このとき重要なのが、「どの接点で顧客のメールアドレスを取得しているのか」「フォーム送信後にどのページへ遷移させているか」「どのタイミングで営業担当が登場するのか」といった現状の導線を見える化して、カスタマージャーニー上のどのタッチポイントにまだメール配信の余地があるかを確認することです。
例えば、認知フェーズのフォーム送信後にいきなり商談依頼のメールを飛ばしてしまっている場合、十分な検討タスクを解消できていないため、相手の検討ペースにあわない提案にネガティブな印象を持たれるかもしれません。こうした顧客の検討状況と提供コンテンツを比較して必要な情報を提供できているかのギャップを見つけることが重要です。
カスタマージャーニマップで作成したステージ別の顧客の感情や必要な情報を踏まえて、タッチポイントそれぞれの行動意図からどのような情報をメールを使って提供すべきか。この視点をもつことで、後述するトリガーメールポイントと企画内容が固まってきます。
ステップ⑤トリガーメールポイントを選定し、配信メールの企画する

顧客導線とカスタマージャーニーの対応関係が見えてきたら、「どの行動が起きた瞬間に、どんなメールを送ると解決すべき検討タスクが解消できるか」を決めていきます。スライドでは例として、「課題の特定」「解決サービスカテゴリの特定」「サービス契約における条件定義」といった、購買ステージごとにトリガーイベントとメールの目的、配信コンテンツを設定していますが、それぞれのタッチポイントにあわせて設定しましょう。
例えば「業界動向レポートの資料請求」が確認できたら、その直後には「同じテーマを扱った記事やチェックリスト」をメールで提供することで、顧客の潜在的な問題に目を向けてもらうように仕組みます。ほかにも、「MA活用セミナーへの参加」が確認出来たら、「セミナー内容の振り返りや、次に取り組むべきアクション」をスライドにまとめて案内することで、解決に向けた行動を具体化していきます。さらに、商談実施後であれば、「提案内容の要点と社内で説明するための要約資料」「よくある懸念とその回答」をまとめることで、顧客社内の合意形成を後押しできるでしょう。
このように、各ステージで「なぜそのメールが必要なのか」「送ることでどんな行動変化を期待するのか」を明確にしながらトリガーメールを設計していくことが重要です。
ステップ⑥リードステータスの定義と移行ルールを営業と決定する

トリガーメールの設計ができたら、今度はリードステータスの管理と営業への受け渡しルールを決めていきます。スライドの「NEW/MQL/SQL」といったリードステータスは、顧客の検討度合いをラベリングするマーケティングと営業の責任ラインを明確にするためです。
たとえば、NEWはフォーム送信や資料請求などで新たに獲得したばかりのリード、MQLはターゲット条件を満たし、かつホワイトペーパーの複数回ダウンロードやセミナー参加など「購買に関わる行動」が一定以上確認できた状態、そしてSQLは営業が接触し、商談候補としてフォローすることに合意した状態、というように、それぞれの定義を明確にします。
あわせて、「どの行動が確認できたら、リードステータスを昇格させるか」「営業は何営業日以内にMQLへアプローチするか」「営業が接触した顧客が一定回数連絡しても反応がない場合は、どのリードステータスに戻すか」といった移行条件も、営業と一緒に決めるようにしましょう。というのも、マーケティング側が「このリードは十分ホットだ」と思って送客しても、営業側では優先度が低く扱われるといった齟齬が生まれることが多いからです。リードステータスの定義と移行ルールを文書化し、双方が納得できる形で運用すると、効率的に商談化数を獲得できるようになるでしょう。
ステップ⑦カスタマージャーニーに基づきワークフローを設計する

ここからは、ツール上でメール配信シナリオに落とし込んでいきます。MAツールやメール配信ツールのワークフロー機能を用いて、これまで策定したトリガーメールポイントやリードステータスの定義などを設定する作業です。
たとえば、資料請求があったリードには、登録直後にサンクスメールと資料送付を行い、数日後に「資料の補足解説」と「関連する成功事例」を送信、さらに一定期間内に価格ページを閲覧した場合は「料金体系の詳細とROI試算ツール」を案内する、といった流れをワークフローとして設定していきます
このようなメール配信シナリオに関しては、「【テンプレ付】初級~中級 マーケティングオートメーションシナリオ9選」にてすぐに使えるシナリオとしてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ステップ⑧セグメントごとに配信リストを作成する

ワークフローの設定ができたら、次に「どのリストに対してメールを配信させるか」を整理していきます。基本的にメールは毎日送っても問題ありません。ただし基本的にはお役立ち情報に絞り、4回に1回でサービスに関するメールを配信するといいでしょう。
たとえば、メルマガ配信リストは、会社全体に向けたニュースレター的な役割を持ち、最新記事の紹介やイベント案内、マーケティングに役立つトレンド情報など、幅広いテーマを扱います。一方で、ホワイトペーパー Aダウンロード者リストは、そのテーマに強い関心を示したリードの集まりなので、ダウンロードした資料の深掘り解説や関連事例、次に読むべき資料の推薦などのコンテンツを中心に設計していきます。
このように、リストごとに「このセグメントに共通することは何か」「届けるべき情報は何か」を把握しておくと、送るべきメールの方向性が定まってきます。
ステップ⑨コンテンツとメール本文を企画・作成する
配信リストが整理できたら、いよいよ各リストへ届けるコンテンツとメール本文を具体的に作っていきます。このステップでは、ステップ③で描いたカスタマージャーニーと、ステップ⑤で整理したトリガーメールの目的を踏まえながら、「どのステージでどのコンテンツを読んでもらうか」「そのコンテンツに誘導するためにメール本文をどう構成するか」を決めましょう。
たとえば、認知段階では、業界トレンドを伝える記事やアンケート調査の結果、入門ガイドブックなどを中心に、メール本文は「問題提起→新しい視点の提示→詳細コンテンツへの誘導」という流れで構成します。また検討段階では、比較表や導入事例、機能解説ウェビナーなどを用意し、「共感→解決策の提示→次のアクションの提案」という骨格で文章を組み立てます。選定・意思決定段階では、ROI 計算シートや導入ステップガイド、よくある懸念への回答集などを活用し、「価値の再確認→差別化ポイントの強調→社内説得に使えるツールの提供」という流れにもっていくのが有効でしょう。
また、経営層向けにはビジネスインパクトとリスク低減を重視したフォーマルなトーン、現場担当者向けには具体的な操作イメージが湧く実務寄りのトーン、技術担当者向けには仕様や連携方式など専門的な内容を中心としたトーン、というように、読み手のロールごとに言葉遣いや訴求ポイントを調整すると、高い反応率が期待できます。
ステップ⑩測定指標と検証ルールを決定する
最後のステップでは、ここまで設計してきたメールマーケティング戦略を継続的に改善していくための「ものさし」と「見直しルール」を決めます。メールマーケティング戦略では、実装してからがスタートで、配信結果から学習し、ジャーニーやワークフロー、コンテンツをアップデートしていく必要があります。
たとえば「6ヶ月以内にメール経由の商談数を15件にする」というゴールを掲げたのであれば、少なくとも「メール起点の商談数」「メール経由MQL→SQL転換率」「メール経由のパイプライン金額」といった指標は継続的に追いかける必要があります。そのうえで、各ワークフローやキャンペーンごとの開封率・クリック率・コンバージョン率、ステージ移行率、配信停止率などをモニタリングし、「どの部分がボトルネックになっているか」「どの施策が特に効いているか」を把握しましょう。
メールマーケティングの効果測定の考え方や重要指標、改善のための具体的な分析手順については、「メールマーケティングの効果測定|重要指標と改善のための完全ガイド」にまとめていますので、ぜひご参考ください。
以上が、メールマーケティング戦略策定の10ステップでした。テンプレートは、以下より個人情報なしで閲覧・ダウンロードできます。
【コピペで使える9選】目的・ターゲット別メールマーケティング例文を紹介

メールマーケティング戦略の策定プロセスを解説してきましたが、実際にどのようなメール文章を作成すればいいのでしょうか。いざメールを書こうとすると「どのような構成で、どんな言葉を使えばいいのか」と悩むマーケターは少なくありません。
そこで、購買ステージとターゲットに応じた、9つの具体的なメール例文テンプレートをご紹介します。すぐに実践で活用できる内容なので、ぜひご参考ください。
【現役運用者が語る】メールマーケティング戦略の実践で分かったこと

ここまでメールマーケティング戦略のステップを整理してきましたが、実際に手を動かしてみると「理論どおりには動かない瞬間」が必ず出てきます。きれいなフレームワークだけでは、「何から始めるか」「どこは割り切っていいか」「どこだけは絶対に外してはいけないか」といった現場の判断ができないからです。
そこでここでは、実際にクロスコムがメールマーケティング施策を運用する中で見えてきた4つの学びを共有します。
①スコアリング設定はマストではない
まず1つめに伝えたいことは、「最初から高度なスコアリングモデルを作り込む必要はない」というのが現場での実感です。なぜならスコアリングはリード数や案件数がある程度のボリュームに達しないと活用する意義があまりないからです。
スコアリングの目的の1つに、マーケティング部署・営業部署間で「誰を優先して追うべきか」を定量的に判断するのがあります。とはいえ、月に数十件程度のリードであれば、Excelやスプレッドシートで「既存顧客」「過去商談あり」「過去一度でも反応あり」「半年以上完全休眠」といったラフな区分だけでも、優先順位付けという意味では十分機能します。
逆に、リード数がまだ少ない段階で複雑なスコアリングルールを組んでしまうと、「点数は付いているが母数が少なすぎて検証できない」「営業に説明できるほどの根拠がない」という状態に陥りやすくなります。このように、スコアリングは MA運用の必須条件というより、「月間リード数が数百件を超え、営業が全件フォローできなくなった頃に着手すれば十分な機能」だと捉えた方が、現実的で無理のない設計になるでしょう。
実際、「価格ページを見た」「導入事例を読んだ」「デモページを 2 回開いた」といった明らかな高意欲シグナルだけをツール上で確認し、そのリードだけに比較表やROIシートなどのコンテンツを送るだけでも、商談化率が改善することは十分に期待できます。
②過去180日間アクティビティがないリストは手放す
「せっかく集めたリストだから、できるだけ長く持っていたい」と考えがちですが、180日以上一切反応のないアドレスを抱え続けるほうが、メリットよりもデメリットの方が大きいと考えます。
その理由のひとつは、配信到達率とドメイン評価への悪影響です。エンゲージメントの低いリストに送り続けると、送信ドメインがスパム判定されやすくなり、本当にメールを読んでほしいアクティブな見込み客にすら届きづらくなってしまいます。
もうひとつは、指標の「見かけ上の悪化」です。非アクティブなアドレスが分母に大量に含まれると、開封率やクリック率は実態よりも低く見えてしまい、うまくいっている施策を誤って「失敗」と判断してしまうリスクが高まります。
とはいえ、即削除するのではなく「最後の一押し」として、再エンゲージメントメールを一度だけ送り、それでも180日以上動かなければ削除するというフォローアップをしてみてはいかがでしょうか。例えば、「現在○○のテーマにご関心はありますか?」という確認メールを送り、反応のあった人だけを残し、それ以外は潔くリストから外すイメージです。
このように、リストの数を追い続けるのではなく、「メールに反応し続けてくれる人たちとの健全な関係」を優先するほうが、メールドメイン評価や指標の信頼性においてメリットだと考えます。
③MAツール導入は「戦略の前提条件」ではない
「メールマーケティングをやるなら、まずMAツールを入れよう」という考え方をまず捨てましょう。ツールはあくまで戦略を達成する手段であり、戦略そのものを代替するわけではないからです。
実際、月間の新規リードが50〜100件程度であれば、スプレッドシートと一般的なメルマガ配信ツール(あるいはCRMに付属するメール機能)だけでも、戦略的な運用は十分に可能です。例えば、「既存顧客」「失注顧客」「過去に一度でも反応した見込み客」「完全新規」という4つのステータスをスプレッドシートで管理し、それぞれに違うメッセージを送るだけでも成果はでます。
また、「価格ページ閲覧」「導入事例ページ閲覧」「フォーム入力画面への複数回アクセス」など、意欲の高いWeb行動だけをトラッキングで拾い、そのリストだけを営業と共有して手動フォローするやり方でも、MAの自動スコアリングに負けない商談化率が出ることも珍しくありません。
④営業部門と連携しないと商談化率に影響が出る
メールマーケティング戦略を策定する際は、マーケティング部署だけで考えるのではなく「営業とどう連携するか」も、商談化率向上に大きく影響します。
典型的な失敗パターンは、マーケティング側だけで営業への送客基準を決め、「スコアが高いから」という理由で実際に送客しているケースです。営業から見ると、「まだ検討レベルが低いのに、ホットリードとして渡されている」「課題的にそもそもターゲット外」とストレスが溜まるやりとりが増えるだけなので、マーケティング部署から送客されるリードに期待しなくなってしまいます。その結果、せっかくのホットリードも、フォローアップが遅れてしまう危険もあるわけです。
これを避けるために、送客リードの定義段階から営業を巻き込み、「どのような状態なら本当に話を聞いてみたいと思えるか」をヒアリングして擦り合わせしましょう。例えば、「ターゲット業種かつ担当者の役職が課長以上で、事例ページを2回以上閲覧している」「フォームに具体的な課題と導入時期を書いている」といった条件を定義できると、営業の肌感覚を反映した条件になりやすく、納得感も得やすくなります。
【2025年最新】国内・海外のメールマーケティング成功事例

メールマーケティング戦略の策定ステップやコツをご紹介してきましたが、とはいえ、「理論はわかったけれど、実際にどんな企業がどんな工夫をしているのか」を具体的にイメージできないと、自社への落とし込みが難しく感じられるかもしれません。
国内外の企業が、実際にどのようなメールシナリオやコンテンツ設計で開封率・クリック率・商談化率を伸ばしているのかを、「【2025年最新】国内・海外のメールマーケティング成功事例」にまとめましたので、ぜひご参照ください。
【開封率向上に役立つ】メルマガ件名の例文46選を紹介

またメールマーケティング戦略において、件名はメールを読んでもらうための重要な要素であり、戦略の成否を左右するといっても過言ではありません。
開封される件名には、明確な「型」と「ルール」が存在します。数字を使って具体的なメリットを示すパターン、読者の好奇心や不安を刺激するパターン、期間限定や残数などで緊急性を演出するパターン、あるいは業種・役職・行動履歴に合わせたパーソナライズ型のパターンなど、それぞれに適した使いどころと注意点があります。
こうした件名の具体例と設計ロジック、開封率を高めるための実践的なテクニックについては、「例文46選|思わず開いてしまうメルマガ件名作成ガイド~開封率を高める実践的なテクニックと考え方~」の記事で詳しく解説しています。自社のターゲットや商材に合わせてそのまま使えるテンプレートも多数紹介していますので、「いつも件名に悩んでしまう」「毎回ネタが尽きてしまう」という方はぜひ参考にしてみてください。
おしゃれなHTMLテンプレート|無料でダウンロードできるメルマガサイト9選

戦略やコンテンツの中身に加えて、メールの「見た目」もエンゲージメントに大きく影響します。本文がどれだけ優れていても、レイアウトが崩れていたり、スマホで読みにくかったりすると、読了率やクリック率はどうしても下がってしまいます。
そこで役に立つのが、無料で使える高品質なHTMLメールテンプレートです。ここでは、おしゃれなHTMLテンプレートを提供している代表的な9つのサイトを取り上げ、それぞれの特徴や向いている用途を整理していきます。
サイト①Dyspatch.io
Dyspatch.ioは、モバイルファースト時代に対応したレスポンシブHTMLメールテンプレートを豊富に提供しているプラットフォームです。PC・タブレット・スマートフォンなど、閲覧環境がばらつくBtoBメールにおいても、レイアウト崩れを抑えつつ統一感のある見た目を保ちやすい点が強みといえます。
テンプレートはドラッグ&ドロップで編集できるビルダーに対応しており、CSSやHTMLの詳細に踏み込まなくてもレイアウト調整が可能です。シンプルで落ち着いたBtoB向けデザインから、ビジュアルを前面に出したプロモーション向けテンプレートまで幅があるため、「まずはきれいに見えるHTMLメールを素早く用意したい」というケースで特に使いやすいサービスです。
サイト②ZURB
ZURBは、「Foundation for Emails」というメール専用フレームワークで知られており、技術的な堅牢性を重視する開発者やマーケターに支持されています。複雑なメールクライアント環境でも崩れにくいHTML構造を前提に設計されているため、OutlookやGmail、Apple Mailなど主要クライアント間の表示差を最小限に抑えたいときに有効です。
提供されるテンプレートはカスタマイズ性も高く、ブランドカラーやタイポグラフィの設定を変えることで、自社らしいトーンへと調整できます。開発チームと連携しながら、長期的に自社標準のメールデザイン基盤をつくっていきたい企業に適した選択肢といえるでしょう。
サイト③Cerberus
Cerberusは、シンプルで軽量なメールテンプレートを配布しているオープンソースプロジェクトです。「多機能さ」よりも「確実に動く・扱いやすいコード」を重視している点が特徴で、HTMLメールの基本形を理解したい場合の学習素材としても優れています。
テンプレートはレスポンシブ、フルイド、ハイブリッドといった複数のレイアウト方式で用意されており、プロジェクトの要件に合わせて選択可能です。コードが読みやすく、余計な装飾も少ないため、「まずは安定したベーステンプレートを持ちたい」「必要な装飾だけ自分たちで足したい」というケースで特に扱いやすいでしょう。
サイト④colorlib
Colorlibは、さまざまなカテゴリのメールテンプレートを幅広く提供しているサイトです。ニュースレター、キャンペーン告知、サンキューメールなど用途別にテンプレートが用意されているため、「どの場面でどんなレイアウトにすべきか」のイメージを掴みやすい点が魅力です。
デザインは総じてモダンで視覚的に華やかであり、若年層やデザイン感度の高いターゲットを相手にする企業と相性が良いといえます。無料で試せるテンプレートも多く、複数のメールキャンペーンでデザインバリエーションを持たせたい場合にも活用しやすいサービスです。
サイト⑤Beefree
Beefreeは、直感的なドラッグ&ドロップエディタとテンプレートライブラリが一体になったツールです。ブラウザ上でブロックを組み立てる感覚でメールを構築できるため、「HTMLは苦手だが、ある程度細かくデザインを調整したい」というマーケ担当者にとって心強い存在です。
テンプレートは、色・フォント・ボタン・カラム構成などを柔軟に変更できるよう設計されており、ブランドガイドラインに合わせた調整も容易です。複数ブランドやサービスを扱う企業が、それぞれのトーンに合わせたメールを効率的に作成したい場合にも適しています。
サイト⑥Canva
Canvaは、もともとグラフィックデザインツールとして認知されていますが、メールテンプレートについても豊富なバリエーションを備えています。ドラッグ&ドロップで画像や図形、テキストを配置していくUIは初心者にも扱いやすく、デザイン未経験者でも直感的にレイアウトを組みやすい点が特徴です。
視覚的にリッチなデザインが得意なため、プロダクト写真やイラストを活用したストーリーテリング型のメールに向いています。一方で、生成されたHTMLの構造には制約もあるため、既存のMAツールや配信プラットフォームへ取り込む際の互換性は事前に確認しておくと安心です。
サイト⑦Campaign Monitor
Campaign Monitorはメールマーケティングプラットフォームとして知られていますが、同社のサービス利用有無にかかわらず使えるテンプレートギャラリーも公開しています。実際のキャンペーン運用を前提に磨かれたデザインが多く、「そのまま使っても破綻しにくい」構成になっている点が実務上の利点です。
業種別・目的別にテンプレートが分類されているため、「BtoB SaaS向けニュースレター」「イベント告知メール」といった具体的なユースケースからテンプレートを探せます。すでに配信基盤は持っているが、デザイン部分だけ外部の知見を取り入れたい、というケースで特に相性が良いでしょう。
サイト⑧Email on Acid
Email on Acidは、マルチクライアントテストツールとしてよく知られていますが、テスト前提で設計されたレスポンシブメールテンプレートも提供しています。表示崩れを事前に検証するワークフローと組み合わせることを想定しており、「作る→テスト→修正」のサイクルを効率化しやすい点が特長です。
テンプレートは主要なメールクライアントでの互換性を意識して作られており、とくにレイアウト崩れの起こりやすい古いOutlook環境などでも見た目が破綻しにくい構造になっています。技術リスクを抑えながらHTMLメールを展開したい企業にとって、実務的な安心感のある選択肢といえるでしょう。
サイト⑨99designs

99designsは、世界中のデザイナーと企業をマッチングするプラットフォームとして知られていますが、メールデザインのインスピレーション源やベースとなるテンプレートも提供しています。テンプレート集を眺めるだけでも、「自社ブランドに合うメールの雰囲気はどんなものか」を具体的にイメージしやすくなります。
さらに、テンプレートを起点にしつつ、コンペ形式で完全オリジナルのメールデザインを依頼することも可能です。「最初は無料テンプレートでスモールスタートし、成果が見えてきたタイミングで専用デザインを発注する」といった段階的なレベルアップ戦略との相性も良いサービスです。ブランドの世界観をメールのビジュアルにも強く反映させたい企業に適した選択肢と言えるでしょう。
【2025年2月最新】メールマーケティングに使える配信ツール
ここまでで「何を、誰に、どう届けるか」という戦略やコンテンツ設計の考え方を整理してきましたが、実装するための配信ツールを選ぶのも重要なテーマです。
メール配信ツールと言っても、シンプルなメルマガ配信に特化したサービスから、スコアリングやシナリオ設計まで一気通貫で行えるMAツールまで、選択肢は非常に幅広く、それぞれ価格帯も導入難易度も大きく異なります。自社のビジネス規模、運用に割けるメンバーのスキル・工数、必要な機能(ステップメール、スコアリング、CRM連携、レポート機能など)を事前に要件定義しておくといいでしょう。
プロダクトごとの特徴については、別記事「メルマガ配信に有効なおすすめMAツールとメール配信ツール」でご紹介しています。これからツール選定に着手される方や、既存ツールの見直しを検討している方は、ぜひそちらもあわせてご覧ください。
メールマーケティング戦略に関するよくある質問

さいごに、多くの BtoB マーケターが共通して抱きがちな4つの質問に対して、戦略と現場の両面から整理した回答をまとめます。
質問①「メルマガ」と「メールマーケティング戦略」は何が違うんですか?
メルマガはあくまで「個々のメール施策」であり、メールマーケティング戦略は「メールを使って売上をつくるための資源配分の設計図」です。
例えば、「このメルマガは非購買層・購買層それぞれに自社ブランドを記憶してもらうため」「このトリガーメールは特定テーマの関心度合をさらに高めるため」といった形で役割を分けて、互いに連動するように設計します。
このように、メルマガは戦略の1つの手法にすぎず、メールマーケティング戦略とは、そのパーツを組み合わせて「どう売上をつくるのか」を設計する上位概念となります。
質問② MA ツールを導入しないと戦略的なメールマーケティングは無理ですか?
結論から言えば、MA ツール導入は「あると強力だが、初期段階ではマストではない」と考えます。なぜなら、メールマーケティング戦略の初期フェーズにおいては、スプレッドシートと汎用的なメルマガ配信ツールの組み合わせでも、「誰に」「どのステージで」「どんなメールを」届けるかという骨組みは十分に実装できるからです。
例えば、「価格ページを見たことがあるが問い合わせはしていないリード」だけを週に一度洗い出し、それらに比較表や導入ステップ、ROI試算シートといったバイヤーイネーブルメント系コンテンツを個別フォローするだけでも、十分に戦略的なメール運用といえると思います。ここで重要なのは、ツール機能の高度さではなく「どのシグナルをどのように扱うか」という設計思想です。
このように、月間リード数がまだ100件前後の段階では、シンプルなツールと手動運用でも高いROIを出すことが可能です。むしろ、運用フローと戦略の型が固まらないうちに高機能なMAツールを入れてしまうと、コストと運用負荷ばかり膨らむリスクがあります。
質問③ターゲットセグメントを細かく切ると、コンテンツ量が増えすぎて回らなくなりませんか?
この懸念はごもっともで、確かにコンテンツ量は増えるので施策を運用し続けるのは大変です。そこで、「セグメントごとに一本ずつ新しいメールを書く」のではなく、「コンテンツを細分化して再利用する前提で設計する」考え方に変えてみるのはいかがでしょうか。
例えば、ひとつのテーマ(例えばMA導入の失敗要因)について、まず汎用版の本文(課題→原因→解決アプローチ)を一本用意しておきます。そのうえで、マーケ責任者向けには「経営・営業を説得する視点」を1段落だけ追加し、営業マネージャー向けには「商談化率と案件数の改善」にフォーカスした冒頭に差し替える、といったアレンジをします。実務担当向けには「運用負荷の軽減と成果の見える化」という観点で導入を書き換えるだけで済むかもしれません。最終的に本文の7〜8割は共通ブロックを流用し、残りの2〜3割をセグメント別に差し替えるイメージです。
このように、セグメントを細かく理解しつつも、メール本文は「共通コア+差し替えパーツ」で組み立てると、コンテンツ量の増加をコントロールしながらパーソナライズを実現できます。同じテーマのコンテンツをモジュール化して再利用する前提で設計しておけば、「セグメントを増やす=メール本数が倍増する」という事態にはなりにくいはずです。
質問④購買モードに入っていない層には、どんなメールを送るのが正解ですか?
まずは、顧客の業界に関する統計データやアンケート調査の結果などを外部から収集して、メールを送ってみてはいかがでしょうか?いきなり自社サービスの話をするのではなく、「あなたの業界で今どんな変化が起きているか」「同業他社がどんな課題を感じているか」を客観的なデータで示せると、あなたのメールは為になると認識してもらい、定期的にメールを受け取る理由につながります。
ただし、ここで届けたいのは、ただの「お役立ち情報」だけではありません。例えば、「リード数は増えているのに商談にならない企業が増えています。その共通点はどこにあるのか?」といった切り口で、チェックリストや簡易診断を提示し、「本当に困っているポイントはどこか」を整理するのも有用でしょう。抽象的な啓蒙ではなく、業界データと組み合わせることで、「うちも同じかもしれない」という軽い危機感が生まれるかもしれません。
Gartnerの調査でも、B2B 購買の大半は営業接触前に意思決定の方向性がほぼ固まっていると報告されています。だからこそ、「まだ案件化していないから後回し」ではなく、非購買フェーズから一貫したフレームで情報提供することで、最終的に成約率が改善されるのではないでしょうか。
メールマーケティング戦略を起点に顧客との接点づくりを
メールマーケティング戦略は、メルマガの本数やクリエイティブを決めるための計画ではなく、「メールを軸にどの顧客層との接点にどれだけ投資し、どう売上につなげるか」を決める経営判断のフレームワークです。本記事では、その前提となる考え方から、12ステップの策定プロセス、セグメント戦略、ツール選定、さらには現場運用でつまずきやすいポイントまでを一連のストーリーとして整理してきました。
ゴール設定、顧客ジョブの解像度、現状導線の見える化、優先セグメントの選定、ジャーニーマップ作成といった初期ステップを押さえておけば、MAツールがなくとも、精密なスコアリングモデルがなくとも、「誰に・どの順番で・どんな情報を届けるべきか」という筋の通ったメール戦略を組み立てられます。
また、実際の商談化・受注は営業が担うため、MQL/SQLの定義、リード受け渡し条件、フォローのスピードと質について、営業と合意を取りながら進めましょう。両部門で共通のKPIとルールを決め、月次・四半期ごとに「どのメールがどの商談に効いたのか」を振り返るサイクルがつくれると、メールは単発施策ではなく「組織として学習し続ける仕組み」へと変わっていくでしょう。
本記事で紹介した知見を、ぜひ自社の状況に合わせて実践し、少しでもお役に立てれば幸いです。








