提案のレビューはなぜ遅いのか?プロンプトの前に解く待ち行列の設計と手順

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提案書のレビューを頼んでから返ってくるまでに、数日かかっていませんか。提案のレビューとは、提出前の内容を第三者が確かめる工程で、遅さを決めるのは指示の書き方ではありません。確認できる人が何人いるかで決まります。 なお、解決の手段として本記事で扱うAgentforceの機能と提供状況は更新が続くため、記述は2026年9月時点の情報にもとづいています。

そこで本記事では、提案のレビューが商談を止める場面から、プロンプトで解けない理由、任せる範囲を決める4つの基準、人が担う例外までを解説します。

目次
  1. 提案のレビューが商談を止める3つの場面
    1. 場面①レビュー待ちで提出が遅れる
    2. 場面②指摘の内容が人によって変わる
    3. 場面③指摘が次の提案に残らない
  2. 提案のレビューをプロンプトで解けない3つの理由
    1. 理由①観点を書き出せていないから
    2. 理由②指摘の根拠が案件ごとに違うから
    3. 理由③直した結果を誰も確かめないから
  3. 提案のレビューをAIに任せる範囲を決める4つの基準
    1. 基準①正解を1つに決められる観点に絞る
    2. 基準②案件の情報だけで判断できるか見る
    3. 基準③間違えたときの影響が小さいか
    4. 基準④指摘の件数を数えられるか確かめる
  4. 提案のレビューで見る4つの観点
    1. 観点①相手の課題に対応しているか
    2. 観点②決裁に必要な情報がそろっているか
    3. 観点③自社の条件から外れていないか
    4. 観点④過去の失注の形になっていないか
  5. 提案のレビューをAIに任せる3つの線引き
    1. 線引き①自動で指摘してよい範囲
    2. 線引き②人が確かめてから返す範囲
    3. 線引き③指摘せず記録だけ残す範囲
  6. 提案のレビューを1観点から始める4つのステップ
    1. ステップ①指摘の多い観点を1つ選ぶ
    2. ステップ②その観点の判断基準を書く
    3. ステップ③指摘の形を決める
    4. ステップ④直した記録を残して広げる
  7. 提案のレビューの自動化でつまずく3つの落とし穴
    1. 落とし穴①全観点を一度に任せる
    2. 落とし穴②指摘の量を成果とみなす
    3. 落とし穴③人のレビューを完全になくす
  8. 提案のレビューが効いたかを測る4つの指標
    1. 指標①提出までにかかった日数
    2. 指標②人が直した指摘の割合
    3. 指標③差し戻しの回数
    4. 指標④同じ指摘が繰り返された件数
  9. 提案のレビューを人が担う3つの例外
    1. 例外①条件を新しく作る案件
    2. 例外②過去に例のない相手
    3. 例外③価格の判断が要る案件
  10. 提案のレビューに外部支援を使う4つの判断軸
    1. 判断軸①どの観点から始めるかを決められるか
    2. 判断軸②業務設計から入ってくれるか
    3. 判断軸③小さく始める形を示せるか
    4. 判断軸④営業の商談を理解しているか
  11. 【一問一答】提案のレビューに関するよくある質問
    1. 質問①提案のレビューはどこから始めますか?
    2. 質問②提案のレビューはAIに全部任せられますか?
    3. 質問③提案のレビューの効果はどう測りますか?
    4. 質問④提案のレビューの観点は誰が決めますか?
    5. 質問⑤提案のレビューはどのくらいで効きますか?
  12. 提案のレビューは、待たせない仕組みで決まる
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目次
  1. 提案のレビューが商談を止める3つの場面
    1. 場面①レビュー待ちで提出が遅れる
    2. 場面②指摘の内容が人によって変わる
    3. 場面③指摘が次の提案に残らない
  2. 提案のレビューをプロンプトで解けない3つの理由
    1. 理由①観点を書き出せていないから
    2. 理由②指摘の根拠が案件ごとに違うから
    3. 理由③直した結果を誰も確かめないから
  3. 提案のレビューをAIに任せる範囲を決める4つの基準
    1. 基準①正解を1つに決められる観点に絞る
    2. 基準②案件の情報だけで判断できるか見る
    3. 基準③間違えたときの影響が小さいか
    4. 基準④指摘の件数を数えられるか確かめる
  4. 提案のレビューで見る4つの観点
    1. 観点①相手の課題に対応しているか
    2. 観点②決裁に必要な情報がそろっているか
    3. 観点③自社の条件から外れていないか
    4. 観点④過去の失注の形になっていないか
  5. 提案のレビューをAIに任せる3つの線引き
    1. 線引き①自動で指摘してよい範囲
    2. 線引き②人が確かめてから返す範囲
    3. 線引き③指摘せず記録だけ残す範囲
  6. 提案のレビューを1観点から始める4つのステップ
    1. ステップ①指摘の多い観点を1つ選ぶ
    2. ステップ②その観点の判断基準を書く
    3. ステップ③指摘の形を決める
    4. ステップ④直した記録を残して広げる
  7. 提案のレビューの自動化でつまずく3つの落とし穴
    1. 落とし穴①全観点を一度に任せる
    2. 落とし穴②指摘の量を成果とみなす
    3. 落とし穴③人のレビューを完全になくす
  8. 提案のレビューが効いたかを測る4つの指標
    1. 指標①提出までにかかった日数
    2. 指標②人が直した指摘の割合
    3. 指標③差し戻しの回数
    4. 指標④同じ指摘が繰り返された件数
  9. 提案のレビューを人が担う3つの例外
    1. 例外①条件を新しく作る案件
    2. 例外②過去に例のない相手
    3. 例外③価格の判断が要る案件
  10. 提案のレビューに外部支援を使う4つの判断軸
    1. 判断軸①どの観点から始めるかを決められるか
    2. 判断軸②業務設計から入ってくれるか
    3. 判断軸③小さく始める形を示せるか
    4. 判断軸④営業の商談を理解しているか
  11. 【一問一答】提案のレビューに関するよくある質問
    1. 質問①提案のレビューはどこから始めますか?
    2. 質問②提案のレビューはAIに全部任せられますか?
    3. 質問③提案のレビューの効果はどう測りますか?
    4. 質問④提案のレビューの観点は誰が決めますか?
    5. 質問⑤提案のレビューはどのくらいで効きますか?
  12. 提案のレビューは、待たせない仕組みで決まる
本田正憲

合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援と、Agentic CRM設計支援を提供している。

提案のレビューが商談を止める3つの場面

高圧ガスの供給会社では、従業員185名のうち営業が22名、営業推進の担当1名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。提案書のレビューは営業部長1名が担っており、依頼してから返ってくるまでの待ちは中央値で4.2営業日ありました。急ぎの案件ではレビューを飛ばして提出することが常態化し、その割合は34%に達しています。そこでここでは、この会社を例に、提案のレビューが商談を止める3つの場面を整理します。

止まるのは提案書を書く速さの問題にはなりません。提案が遅れるのは書く速さの問題ではありません。確認する工程を1人が抱えているためです。

比較の観点指示の書き方を磨く場合待たせない仕組みを作る場合
解こうとしている対象指摘の中身の質提出までの待ち時間
効果が出る範囲使った人の1件だけ依頼の全件
続けられるか書いた人が異動すると止まる記録が残って続く
測る対象指摘の件数提出までの日数
人の出番全件に残る判断が要る案件に絞れる

場面①レビュー待ちで提出が遅れる

1つ目は「レビュー待ちで提出が遅れる」場面です。書き上がった提案書が、確認を待つ列に並んだまま数日が過ぎます。

待ちが生まれるのは、確認できる人の数が依頼の件数に追いついていないためです。この会社では月に47件の依頼があり、それを1名で受けています。1件あたり20分で見たとしても、月に16時間近くを確認だけに使う計算になります。実際には他の業務が入るため、着手できるのは数日後です。

先ほどの高圧ガスの供給会社では、営業部長がレビューに使っていた時間が月18時間ありました。営業推進の担当が依頼の記録を集計したところ、待ちの中央値は4.2営業日です。相手から「今週中に」と言われた案件では、営業が待たずに提出していました。

まず月あたりの依頼件数を、確認できる人数で割ってみましょう。1人あたり47件という数字が出た時点で、待ちの長さは体制の側で決まっています。

場面②指摘の内容が人によって変わる

2つ目に挙げるのは、指摘の内容が人によって変わる場面です。同じ提案書でも、誰が見るかによって直す箇所が違います。

内容が変わるのは、見る観点が言葉になっていないためです。経験のある人ほど自分の中の基準で判断しており、その基準が本人の外に出ていないと、受け取った側は何を直せばよいのかを毎回推測することになります。若手ほど、この推測に時間を使います。

この会社では、営業部長が不在の週に営業推進の担当が代わりに見た案件がありました。指摘された箇所が普段と違い、営業から「どちらに合わせればよいのか」という質問が出ています。同じ社内でも基準が揃っていませんでした。

指摘が揺れる理由には、機械に任せた場合の推論の揺れと共通する構造があります。人が見るか機械が見るかにかかわらず、判断の条件を文字にした範囲までしか揺れは収まりません。

場面③指摘が次の提案に残らない

3つ目は「指摘が次の提案に残らない」場面です。直した内容が本人の記憶にしか残らず、次の案件で同じ指摘が出ます。

残らないのは、指摘のやり取りが個別の連絡で終わっているためです。口頭やチャットで伝えた内容は、その案件が終われば見返されません。組織としては同じことを繰り返し教えていることになり、確認する側の負担も減りません。

先ほどの会社では、営業推進の担当が過去半年の指摘を分類しました。同じ内容の指摘が月に31件出ており、そのうち約6割は決裁に必要な情報の抜けです。特定の営業に偏らず、22名のほぼ全員に発生していました。

同じ指摘が何件出ているかを数えましょう。数えると、教える対象が個人ではないことが分かります。

提案のレビューをプロンプトで解けない3つの理由

ここまで挙げた3つの場面は、いずれもレビューを機械に任せたくなる動機になります。実際に多くの記事が、生成AIへの指示文を工夫する方法を勧めています。観点をまとめたテンプレートを配る記事も少なくありません。ところが指示文を整えても、待ちは短くなりません。そこでここでは、提案のレビューをプロンプトで解けない3つの理由を整理します。

解けないのは指示文の完成度によるものにはなりません。プロンプトを磨いても、見る観点が言葉になっていなければ指摘は揺れ続けます。

理由①観点を書き出せていないから

1つ目は「観点を書き出せていないから」です。何を見て良し悪しを判断しているのかが、確認する本人にも説明できません。

説明できない状態で指示文を書くと、一般的な観点しか入りません。実際、論理構成や説得力といった言葉は、どの提案書にも当てはまるぶん、自社の商談で効く指摘にはなりません。その結果、出てきた指摘を人が選び直すことになります。

この高圧ガスの供給会社でも、営業推進の担当が最初に試したのは市販の指示文でした。返ってきた指摘は「根拠を補強しましょう」といった一般論が中心で、営業部長が普段見ている点とは重なりません。担当者は、この時点で観点を書き出す作業から始める判断をしています。

まず自社の指摘を集めて分類しましょう。分類した結果と市販の指示文を見比べれば、書き足すべき観点が差分として現れます。

理由②指摘の根拠が案件ごとに違うから

2つ目に挙げるのは、指摘の根拠が案件ごとに違うからです。同じ観点でも、案件の条件によって正解が変わります。

条件で変わる観点は、指示文だけでは判断できません。たとえば納期の書き方は、在庫のある標準品と受注生産では前提が違います。案件の情報を参照せずに文面だけを読むと、正しい提案書に誤った指摘が付き、それが数回続けば営業はその機能を使わなくなります。

この会社では、扱う製品が標準品と特注品に分かれていました。営業推進の担当が指摘の記録を見ると、特注品の案件で誤った指摘が出やすいことが分かっています。担当者は、機械に任せる観点を条件で変わらないものに絞りました。

観点ごとに、案件の条件で変わるかどうかを確かめましょう。変わる観点は、後回しにして構いません。

理由③直した結果を誰も確かめないから

3つ目は「直した結果を誰も確かめないから」です。指摘が出た後、実際に直ったかどうかを記録していません。

確かめる工程がないと、効いたかどうかを判定できません。指摘の件数は増えても、提出の質が上がったのかは誰にも言えない状態が続きます。判定できなければ、観点を増やすべきか減らすべきかも決められません。場面③で挙げた同じ指摘の繰り返しは、この確認がないことから起きています。

先ほどの高圧ガスの供給会社では、指摘に対して直した記録を残していませんでした。営業推進の担当が着手にあたって最初に決めたのは、この記録の残し方です。指摘と、直した結果と、提出後の結果を1件ずつ紐づける形にしました。

直した記録を残す設計を、着手の前に決めましょう。後から足すと、それまでの期間が測れません。

提案のレビューをAIに任せる範囲を決める4つの基準

前章の3つの理由は、いずれも「どの観点を任せるかを決めていない」という一点に行き着きます。決めるには、任せる候補になる観点を1つずつ点検し、条件を満たさないものを外していきます。全部を任せる前提で考えると、条件で変わる観点に引きずられて着手できません。そこでここでは、提案のレビューをAIに任せる範囲を決める4つの基準を整理します。

範囲は機械の性能では決まりません。任せてよいのは、正解を1つに決められる観点だけです。

基準①正解を1つに決められる観点に絞る

1つ目は「正解を1つに決められる観点に絞る」という基準です。社内で見解が割れる観点は、最初の対象から外します。

割れる観点を選ぶと、指摘の内容を確定できません。「提案の筋がよいか」は経験のある人ほど違う答えを出します。一方、決裁に必要な情報が入っているかは、必要な項目を並べれば判定でき、判定の形が決まる観点から始めるほうが着手は速くなります。

この会社では、営業部長と営業推進の担当が観点を4つに整理し、そのうち社内で答えを確定できるものを1つに絞りました。残る3つは、担当者によって答えが分かれるか、案件の条件で正解が変わるか、照らし合わせる記録が足りないものでした。参照させる資料の作り方はナレッジ設計の記事で扱っています。

観点ごとに、社内で答えを確定できるかを確かめましょう。確定できない観点は、人が見る範囲に残します。

基準②案件の情報だけで判断できるか見る

2つ目に挙げるのは、案件の情報だけで判断できるか見る基準です。提案書の文面と案件の記録があれば判定できる観点を選びます。

外の情報が要る観点は、参照の設計から作ることになります。相場と比べて価格が妥当かという観点は、外部の市況を持ってこなければ判断できません。着手の段階でその設計まで抱えると、期間が延びます。手元の情報で完結する観点なら、数週間で動かせます。

先ほどの会社が選んだ観点は、案件の記録に入っている顧客の区分と、提案書の本文だけで判定できます。営業推進の担当が確かめたところ、外から持ってくる情報は不要でした。この見通しが立ったことで、着手の判断が早まっています。

その観点の判定に何を参照するかを、資料の名前まで書き出してみましょう。社外から取り寄せる資料が並ぶなら、着手はもう1つの観点に譲ります。

基準③間違えたときの影響が小さいか

3つ目は「間違えたときの影響が小さいか」という基準です。誤った指摘が出た場合に、何が起きるかを先に考えます。

影響を先に見るのは、機械の判定が必ず外れるためです。抜けを指摘して実際には入っていた場合、営業は数秒で確認して先へ進めます。一方、価格の判断に誤りが混ざると、直した結果が相手に届いてから問題になるため、戻せる範囲に限って任せるほうが判断は速くなります。

この高圧ガスの供給会社では、誤った指摘が出た場合に営業がその場で無視できる形にしました。指摘には該当箇所を添えており、開いて数秒で判断できます。運用の6か月で、誤った指摘が原因の手戻りは発生していません。

誤ったときに誰が困るかを1文で書いてみましょう。書けない観点は、まだ任せる段階にありません。

基準④指摘の件数を数えられるか確かめる

4つ目は「指摘の件数を数えられるか確かめる」という基準です。効いたかどうかを後から判定できる観点を選びます。

数えられる形にする意味は、続ける根拠を最初から組み込むことにあります。理由③で止まった状態は、この設計を後回しにしたことから生まれました。指摘の件数、直された割合、同じ指摘の再発数のいずれかが取れる観点であれば、四半期で判断できます。

この会社では、決裁に必要な情報の抜けが月31件出ていました。母数が十分にあり、減ったかどうかを月単位で読めます。営業推進の担当は、この件数の多さを選定の理由に挙げ、次点の観点との差を営業部長へ示しています。

その観点で何件の指摘が出ているかを数えましょう。件数が少なければ、効果は読めません。

提案のレビューで見る4つの観点

前章の4つの基準は、観点を1つずつ点検するためのものです。では点検の対象になる観点は、そもそもいくつあるのでしょうか。会社によって呼び方は違いますが、BtoBの提案書で見ている内容は、業種を問わず4つに整理できます。営業部長が頭の中で通しているのも、この4つの順番です。そこでここでは、提案のレビューで見る4つの観点を整理します。

観点は多いほどよいというものにはなりません。4つの観点のうち、機械に任せられるのは決裁に必要な情報の確認です。

観点①相手の課題に対応しているか

1つ目は「相手の課題に対応しているか」という観点です。提案の内容が、聞き取った課題と噛み合っているかを見ます。

この観点が最も重いのは、外れていた場合に提案が成立しないためです。同時に、判定は最も難しくなります。課題の書き方は担当者ごとに違い、書かれていない前提が商談の場で共有されていることもあります。文面だけを読んで判定できる観点にはなりません。

先ほどの高圧ガスの供給会社では、この観点を人が見る範囲に残しました。営業部長が確認するのはここだけにし、ほかの3観点は別の扱いに分けています。確認する対象が絞られたことで、1件あたりの時間は12分から5分に縮みました。

レビューの担当を決めるときは、その商談に同席した人かどうかを条件にしましょう。ソリューション営業では、ここが提案の中身にあたります。

観点②決裁に必要な情報がそろっているか

2つ目に挙げるのは、決裁に必要な情報がそろっているかという観点です。相手が社内で承認を取るために要る項目が入っているかを見ます。

この観点は、必要な項目を並べれば判定できます。項目を先に列挙しておくと、入っているかどうかは機械でも読めるようになり、抜けやすい項目も決まっているため指摘の件数は多くなります。

この会社で月31件出ていた指摘のうち、約6割がこの観点でした。営業推進の担当は、件数の多さと判定の明確さから、最初に任せる観点をここに定めています。運用の6か月で、この観点の指摘は月9件まで減りました。

決裁に必要な4項目 ①導入の効果・・・使用量あたりの費用がどう変わるか ②費用の内訳・・・初期の工事と月額の供給に分けた金額 ③保安の体制・・・定期点検の頻度と緊急時の連絡経路 ④切り替えの手順・・・既存の設備を止める期間と作業の日程

抜けやすい項目を4つほど書き出しましょう。書き出した項目が変わるのは決裁する相手の立場が変わったときだけで、日々の更新は要りません。

観点③自社の条件から外れていないか

3つ目は「自社の条件から外れていないか」という観点です。値引きの範囲や納期の約束が、社内の基準を超えていないかを見ます。

この観点は判定の形が決まっているように見えて、案件の条件で正解が変わります。たとえば標準品と特注品では納期の前提が違い、取引の実績によって値引きの上限も変わります。条件で変わる観点を文面だけで判定させると誤った指摘が出るのは、理由②で挙げたとおりです。

先ほどの会社では、この観点を人が確かめてから返す範囲に置きました。機械が候補を出し、営業推進の担当が案件の区分と突き合わせてから営業へ返す形です。全件を部長が見ていた頃と比べ、返すまでの時間は短くなっています。

条件で変わる観点は、機械と人で分担しましょう。全部を人が見る必要はありません。

観点④過去の失注の形になっていないか

4つ目は「過去の失注の形になっていないか」という観点です。負けた案件と似た構成になっていないかを見ます。

この観点が効くのは、失注の理由が記録として残っている場合に限られます。理由が「価格」の一語で終わっていれば、照らし合わせる材料がありません。商談の途中で何を残すかを決めているかどうかで、この観点が使えるかが変わります。活用事例の記事でも、記録を後から使う場面を扱っています。

この高圧ガスの供給会社では、失注の記録が区分だけで残っていました。営業推進の担当は、この観点を当面の対象から外しています。記録の粒度が上がった時点で戻す予定です。

失注の記録がどこまで残っているかを確かめましょう。区分だけしか残っていないなら、この観点より先に記録の項目を増やす作業が要ります。

提案のレビューをAIに任せる3つの線引き

前章で観点が4つに整理できました。次に決めるのは、それぞれをどこまで機械に渡すかです。全部を自動にするか人が見るかの二択で考えると、条件で変わる観点の置き場所がありません。ここから先はAgentforceのような業務用のエージェントを前提にした運用の設計になります。そこでここでは、提案のレビューをAIに任せる3つの線引きを整理します。

任せる範囲は精度の高さだけでは決まりません。自動で指摘してよいのは、営業がその場で自分で直せる範囲に限ります。

線引き①自動で指摘してよい範囲

1つ目は「自動で指摘してよい範囲」です。人を通さずに、営業へ直接返してよい指摘を決めます。

自動で返してよいのは、判定が確定していて、誤っても営業がその場で判断できる指摘です。観点②の項目の抜けは、該当箇所を添えて返せば数秒で確認でき、基準③で影響の小ささを見た理由がここに対応します。Agentforceでできることの範囲を先に押さえておくと、任せる線を引きやすくなります。

この会社では、決裁に必要な4項目の抜けを自動の対象にしました。指摘には抜けている項目名と、提案書のどの位置に入れるべきかを添えています。運用の6か月で、この指摘のうち営業が実際に直したのは82%でした。

自動の対象は、最初は1観点に絞りましょう。広げるのは、直された割合を見てからで足ります。

線引き②人が確かめてから返す範囲

2つ目に挙げるのは、人が確かめてから返す範囲です。条件によって正解が変わる観点が、この範囲に入ります。

確かめる人は、案件の条件を知っている担当が向きます。観点③の値引きと納期は、取引の実績と製品の区分を突き合わせなければ判定できません。機械が候補を出して人が確定させる形にすると、確認の対象が絞られるぶん、時間は短く収まります。

先ほどの高圧ガスの供給会社では、営業推進の担当がこの範囲を受けています。機械が挙げた候補は月に14件ほどで、確定にかかる時間は1件あたり3分でした。営業部長が全件を見ていた頃と比べ、部長のレビュー時間は月18時間から月7時間に減っています。

候補を出す役と確定させる役を分けましょう。分ければ、判断する人の負担は小さくなります。

線引き③指摘せず記録だけ残す範囲

3つ目は「指摘せず記録だけ残す範囲」です。判定の確からしさが低い観点は、営業へ返さずに記録します。

残す選択肢を用意する意味は、営業の信頼を守ることにあります。誤った指摘が続くと、正しい指摘まで無視されるようになります。理由②で挙げた「使わなくなる」状態が起きるのは、この線を引かなかった場合です。記録として残しておけば、後から観点を見直すときの材料になります。

この会社では、観点④の失注との照合を記録だけの範囲に置きました。失注の記録が区分どまりで、判定の材料が足りないためです。営業推進の担当は、四半期ごとに記録を見返して観点を見直す運用にしています。

返さないという選択を、最初から用意しておきましょう。全部を返す前提だと、営業は開かなくなります。

提案のレビューを1観点から始める4つのステップ

ここまでで、観点と任せる範囲がそろいました。あとは着手の順番です。順番を間違えると、観点の定義が正しくても運用までは届きません。4つの観点を同時に動かそうとすると、条件で変わる観点の設計に引きずられて数か月が過ぎます。営業推進に専任を置けない会社ほど、この差は無視できません。そこでここでは、提案のレビューを1観点から始める4つのステップを整理します。

着手の順番は観点の重要度では決まりません。最初に決めるのは観点の数ではありません。指摘の多い1つに絞ることです。

ステップ①指摘の多い観点を1つ選ぶ

1つ目のステップは「指摘の多い観点を1つ選ぶ」ことです。過去の指摘を分類し、件数の多い順に並べます。

件数の多さから選ぶのは、効果を早く読むためです。月に数件しか出ない観点では、減ったかどうかの判断に半年以上かかります。基準④で件数を確かめた理由が、ここに対応します。重要度の高い観点から始めたくなりますが、重要な観点ほど条件で変わり、判定を確定できません。

この高圧ガスの供給会社では、営業推進の担当が過去半年の指摘を分類しました。決裁に必要な情報の抜けが月31件で最も多く、次が納期の書き方で月8件です。担当者は迷わず前者を選んでいます。

指摘を分類するときは、言い回しを整えずに原文のまま残しましょう。分類の作業自体が、観点を言葉にする作業になります。

ステップ②その観点の判断基準を書く

2つ目のステップは、その観点の判断基準を書くことです。何が入っていれば合格なのかを、項目の形で並べます。

項目の形にするのは、機械が読める形にするためです。文章で書いた基準は解釈の幅が残り、判定が揺れます。観点②であれば、必要な4項目を並べて「すべて入っているか」を問う形にすれば、答えは入っているか入っていないかの二択になります。

この会社では、営業部長と営業推進の担当が2時間の打ち合わせを2回行い、4項目を確定しました。過去の受注案件を10件開いて、共通して入っていた項目を拾う進め方です。ゼロから議論するより早く決まりました。

受注した案件を10件ほど開いて、共通する項目を拾いましょう。失注した案件を混ぜると、入っていなかった項目まで基準に並びます。

ステップ③指摘の形を決める

3つ目のステップは「指摘の形を決める」ことです。何を、どこへ、どのように返すかを定めます。

形を決めておく必要があるのは、返し方によって直されるかどうかが変わるためです。抜けている項目名だけを返しても、営業はどこに入れるかを考えることになります。提案書のどの位置に入れるべきかまで添えれば、直す作業は数分で終わり、返す先も営業が毎日開く画面へ寄せられます。

先ほどの会社では、抜けている項目名と、入れるべき見出しの名前を添える形にしました。指摘の件名に案件名を入れており、どの提案書に対する指摘かは一覧で判別できます。営業からは、そのまま追記できるという反応が出ています。直された割合は82%でした。

指摘には、直す場所まで添えましょう。項目名だけでは、直す手間が残ります。

ステップ④直した記録を残して広げる

4つ目のステップは、直した記録を残して広げることです。指摘と、直された結果と、提出後の結果を紐づけます。

記録を最初から組み込むのは、理由③で挙げた「効いたかを追えない」状態を避けるためです。指摘が出た件数だけでは、質が上がったのかが分かりません。直された割合と、同じ指摘の再発数を並べて見れば、観点を広げてよいかの判断ができます。営業での活用を広げる順番も、この記録から決まります。

この高圧ガスの供給会社では、着手から8週間で運用に入りました。営業推進の担当1名で、要した工数は計56時間です。運用の6か月で、待ち日数の中央値は4.2営業日から1.1営業日に、レビューを飛ばして提出した割合は34%から6%に変わりました。

記録を残す設計を、着手と同時に作りましょう。後から足すと、最初の数か月が空白になります。以上が、提案のレビューを1観点から始める4つのステップでした。

提案のレビューの自動化でつまずく3つの落とし穴

前章の4つのステップは、順番どおりに進めば運用まで届きます。ところが途中で元の形へ戻ってしまう会社があり、戻り方には共通した型が3つあります。いずれも運用が始まってから起きるもので、設計の段階では見えません。先に知っておけば避けられるものばかりです。そこでここでは、提案のレビューの自動化でつまずく3つの落とし穴を整理します。

つまずくのは技術の難しさによるものにはなりません。指摘の件数が増えても、直された割合が上がらなければ提出の質は変わりません。

落とし穴①全観点を一度に任せる

1つ目は「全観点を一度に任せる」ことです。4つの観点をまとめて機械に渡し、一気に自動化しようとします。

一度に渡すと、条件で変わる観点から誤った指摘が出ます。誤りが混ざった時点で、営業は指摘の全体を疑うようになります。しかも複数の観点が同時に動いているため、どの観点が原因で外れたのかを切り分けられません。切り分けられなければ、直すこともできません。

先ほどの高圧ガスの供給会社でも、当初は4観点をまとめて動かす案がありました。営業推進の担当が誤った指摘の切り分けにかかる工数を見積もったところ、運用の負担が現実的ではありません。1観点に絞る判断へ切り替えています。

1観点で運用に乗ってから、次を足しましょう。同時に動かすと、原因が追えなくなります。

落とし穴②指摘の量を成果とみなす

2つ目に挙げるのは、指摘の量を成果とみなすことです。機械が出した指摘の件数を、導入の効果として報告してしまいます。

件数を成果に置くと、増やす方向にしか動けません。ところが指摘が増えるほど、営業が確認に使う時間も増えます。直されない指摘は、営業の時間を削っただけで終わります。見るべきは、出した件数より直された割合です。

この会社では、報告の対象を指摘の件数から直された割合へ変えました。運用の6か月で、直された割合は82%です。件数を追っていた期間には見えなかった数字で、営業推進の担当はこれを経営会議での報告に使っています。

報告に出す指標を決めるときは、増やせば達成できる数字を外しましょう。判断の向きが変わります。

落とし穴③人のレビューを完全になくす

3つ目は「人のレビューを完全になくす」ことです。機械の判定が安定してきた段階で、人の確認を外してしまいます。

外すと、観点①の判定が誰も見ない状態になります。相手の課題に対応しているかは、文面だけでは判定できません。ここが外れた提案書は、形式が整っているぶん、誤りに気づきにくくなります。そのため、導入したが使われない状態の立て直しで、定着まで伴走してほしい場合にも、人が見る範囲を残しているかが分かれ目になります。

この高圧ガスの供給会社では、営業部長のレビューを残しています。確認する対象は観点①だけに絞り、1件あたり12分から5分へ短くしました。時間は減りましたが、見る工程は残したままです。

人が見る範囲を、最初から決めておきましょう。減らすことと、なくすことは違います。

提案のレビューが効いたかを測る4つの指標

ここまでで、設計と着手の順番、避けるべき形がそろいました。次に必要なのは、効いているかどうかを確かめる方法です。指摘の件数だけを見ていると、落とし穴②と同じ状態になります。ここで挙げる4つは、待ちの長さ、指摘の質、手戻りの量、組織の学習を1つずつ受け持つ指標です。そこでここでは、提案のレビューが効いたかを測る4つの指標を整理します。

見る対象は指摘の多さでは決まりません。見るべきは指摘の件数より、提出までにかかった日数です。

指標①提出までにかかった日数

1つ目は「提出までにかかった日数」です。レビューを依頼してから提出するまでの間隔を測ります。

この指標が最初に来るのは、そもそも解こうとしていたのが待ちだからです。指摘の質が上がっても、提出が遅ければ商談は進みません。場面①で挙げた構造が解けたかどうかは、この日数に表れます。効果測定の指標をどう組むかは効果測定の記事でも扱っています。

この会社では、運用の6か月で中央値が4.2営業日から1.1営業日に変わりました。あわせて、レビューを飛ばして提出した割合も34%から6%へ下がっています。待ちが短くなったことで、飛ばす必要がなくなりました。

平均を避け、中央値で見ましょう。数件の極端な遅れで、全体の姿が歪みます。

指標②人が直した指摘の割合

2つ目に挙げるのは、人が直した指摘の割合です。返した指摘のうち、実際に修正されたものを数えます。

この割合は、指摘の質をそのまま表します。割合が低いときは、誤った指摘が多いか、直す場所が分からない形で返しているかのどちらかです。落とし穴②で報告の対象をここへ変えた理由が、これにあたります。件数を増やしても、この割合が下がれば意味がありません。

先ほどの高圧ガスの供給会社では、直された割合が82%でした。残る18%を営業推進の担当が確認したところ、すでに別の箇所に記載があった案件が大半です。項目名だけで探して見つけられなかったものが混ざっており、判定の条件を調整する材料になりました。

直された割合を毎月見ましょう。下がったときは、指摘の側を疑います。

指標③差し戻しの回数

3つ目は「差し戻しの回数」です。1件の提案書が提出までに何往復したかを数えます。

回数を見るのは、指摘が一度で出し切れているかを確かめるためです。同じ提案書に対して指摘が小分けに出ると、営業は何度も直すことになります。機械の指摘と人の指摘が別々のタイミングで届く設計にすると、この回数が増えます。まとめて返す形にできているかが、そのまま数字に表れる指標です。

この会社では、1件あたりの差し戻しが平均2.4回から1.3回へ減りました。機械の指摘を先に返し、人の確認を1回にまとめた結果です。営業からは、直す作業がまとまったという反応が出ています。

指摘を返すタイミングを、1件につき2回までにしましょう。増えるほど、直す側の負担が増えます。

指標④同じ指摘が繰り返された件数

4つ目は「同じ指摘が繰り返された件数」です。同じ内容の指摘が月に何件出ているかを数えます。

この件数を見る理由は、組織として学べているかを確かめるためです。場面③で挙げたとおり、同じ指摘が減らない状態は、指摘が個人の記憶にしか残っていないことを示します。減っていれば、営業が提出の前に自分で確認するようになっています。

この高圧ガスの供給会社では、月31件が月9件まで減りました。営業推進の担当が内訳を見ると、減ったのは決裁に必要な情報の抜けで、ほかの観点はほぼ変わっていません。任せた観点が効いたことが、数字で切り分けられています。

同じ内容とみなす条件を先に決めてから、観点ごとに数えましょう。合計だけでは、どこが効いたのかが分かりません。

提案のレビューを人が担う3つの例外

ここまで、機械に任せる範囲の決め方を扱ってきました。では人のレビューをどこまで残すのかが、最後に決めることになります。落とし穴③で挙げたとおり、なくす前提で設計すると観点①が抜け落ちてしまいます。残す範囲は、担当者の余力で決めるものではありません。案件の性質で線を引いておけば、忙しい月でも判断がぶれません。そこでここでは、提案のレビューを人が担う3つの例外を整理します。

残す範囲は工数の余裕では決まりません。条件を新しく作る案件は、人がレビューする範囲に残します。

例外①条件を新しく作る案件

1つ目の例外は「条件を新しく作る案件」です。過去にない価格や納期を提示する案件が、これにあたります。

新しい条件には、判定の基準が存在しません。機械が参照するのは過去の案件と社内の基準であり、そのどちらにも当てはまらない提案は判定の対象外になります。無理に判定させると、既存の基準に照らして誤った指摘が出ます。

この会社では、年間で数件、既存の設備を残したまま供給だけを切り替える提案がありました。標準の手順に当てはまらず、営業部長が個別に見ています。営業推進の担当は、この種の案件を判定の対象から外す条件を明示しました。

新しい条件を出す案件は、対象外にする条件を先に書きましょう。書いておけば、判定を止められます。

例外②過去に例のない相手

2つ目に挙げるのは、過去に例のない相手の案件です。業種や規模が既存の取引先と大きく違う場合を指します。

例のない相手では、決裁の流れが読めません。観点②の4項目は既存の取引先の決裁を前提に作られているため、初めての業種では必要な項目が違い、抜けの判定も外れます。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合でも、この例外の置き方は自社で決められます。

先ほどの高圧ガスの供給会社では、食品工場向けの提案が初めての案件でした。衛生管理の基準に関する項目が必要でしたが、既存の4項目には入っていません。営業部長が個別に確認しています。

初めての業種は、人が見る範囲に残しましょう。項目を足すのは、数件たまってからで足ります。

例外③価格の判断が要る案件

3つ目は「価格の判断が要る案件」です。値引きの可否や、条件付きの価格を提示する案件が入ります。

価格を対象から外すのは、間違えたときの影響が戻せないためで、基準③で影響の大きさを見た理由がここに対応します。誤った価格が相手に届けば、社内の基準を後から持ち出しても交渉は不利になります。判定の精度がどれだけ上がっても、この範囲を機械へ渡すことはありません。

この会社では、値引きを伴う案件を機械の判定から外しました。営業推進の担当が案件の区分で自動的に振り分ける形にしており、営業が個別に判断する必要はありません。区分で分ければ、判断の手間は生じません。

価格に関わる案件は、区分で自動的に外しましょう。都度の判断に任せると、抜けます。

提案のレビューに外部支援を使う4つの判断軸

ここまで挙げてきた設計は、営業推進の担当が1名いれば自社で進められる範囲です。とはいえ、観点の選び方や判断基準の粒度で迷う場面も少なくありません。外部の支援を検討する場合、何を基準に選ぶかを整理しておくと判断が速くなります。そこでここでは、提案のレビューに外部支援を使う4つの判断軸を整理します。

選ぶ基準は実績の件数では決まりません。支援を選ぶ基準は実績の数ではありません。どの観点から始めるかを一緒に決められるかどうかです。

判断軸①どの観点から始めるかを決められるか

1つ目の判断軸は「どの観点から始めるかを決められるか」です。観点を絞る段階から関わってもらえるかを確かめます。

この軸を最初に置くのは、判定の仕組みを作る作業より、どの観点を選ぶかの判断のほうが難しいためです。基準①から④に照らして候補を1つに絞る作業を一緒にやってもらえるかどうかで、その後の成果が変わります。指示文の設計から入る提案は、この段階を飛ばしたものです。選定の観点は導入支援会社の選び方でも整理しています。

支援を探す会社の型は、大きく3つに分かれます。開発を主とする総合系、特定のツールの導入を主とする特化系、業務の設計から入る伴走系です。観点の選定から一緒に決められるのは3つ目の型ですが、紹介文だけでは見分けがつかないため、面談で確かめるしかありません。

最初の面談で、観点の選び方の話が出るかを見ましょう。出なければ、絞る作業は自社に残ります。

判断軸②業務設計から入ってくれるか

2つ目に挙げるのは、業務設計から入ってくれるかという軸です。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、この点を最初に確かめます。

確かめる意味は、レビューの設計が業務側の定義に依存しているためです。何をもって合格とするかは、自社の商材と決裁の流れから決まります。ツールの設定はその後の作業であり、順番が逆になると、判定は動くのに使われない状態になります。

先ほどの会社が最初に相談した先は、指示文の設計と実装を提案してきました。どの観点を対象にするかは自社で決める前提だったため、営業推進の担当は判断を保留しています。結果として、観点の整理は自社で行いました。

業務の話から始まるかを見ましょう。設定の話から始まる相手は、決める作業を自社に残します。

判断軸③小さく始める形を示せるか

3つ目は「小さく始める形を示せるか」という軸です。小さく始めたい場合に、1観点からのスモールスタートを提案できるかを確かめます。

小さく始める形が示せる相手は、着手の順番を理解しています。4観点をまとめて自動化する提案は、落とし穴①と同じ形になりがちです。中堅・中小企業では営業推進に専任を置けないことが多く、1観点で成果を確かめてから広げる進め方のほうが現実的になります。

この高圧ガスの供給会社は、営業推進の担当1名が56時間を使って自社で進めました。1観点に絞ったため、8週間で運用に入っています。4観点を最初から設計していれば、この期間には収まりませんでした。

1つ目に何をやるかを聞いてみましょう。答えが全体の設計から始まる場合、期間は延びます。

判断軸④営業の商談を理解しているか

4つ目は「営業の商談を理解しているか」という軸です。ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、この点が判断の分かれ目になります。

商談の理解が要るのは、観点①が業種と商材で違うためです。定型の商材を扱う営業と、要件を一緒に作るソリューション営業では、提案書で見る点がまったく違います。前者の経験しかない相手に後者の設計を頼むと、観点の粒度が合いません。

当社では、Agentforceの導入定着支援として、ソリューション営業の商談の進み方を前提に観点の設計を扱っています。受注した案件を開いて共通する項目を拾うところから入る形です。

受注案件の分析を提案に含めているかを見ましょう。自社の案件を開かずに一般的な観点表を渡してくる相手では、粒度が商材に届きません。

【一問一答】提案のレビューに関するよくある質問

ここまで、提案のレビューで見る観点から、外部支援の選び方までを整理してきました。実際に着手する段階では、どこから手をつけるか、どこまで任せてよいか、効果をいつ判定するかといった細かい判断で迷う場面が出てきます。観点の数や担当の決め方も、着手の前に決めておくほど後の手戻りが減ります。相談として上がる回数が多いのは、着手の順番と、任せてよい範囲についての質問です。そこでここでは、提案のレビューに関して寄せられることの多い質問に、順に答えていきます。

質問①提案のレビューはどこから始めますか?

過去半年の指摘を分類し、件数の多い観点を1つ選ぶところから始めます。この記事の例に挙げた高圧ガスの供給会社では、決裁に必要な情報の抜けが月31件出ており、そのうち約6割が1つの観点に集まっていました。重要度の高い観点から始めたくなりますが、重要な観点ほど案件の条件で正解が変わり、判定を確定できません。件数が多く、社内で答えを1つに決められて、間違えても営業がその場で判断できる観点を選んでください。

質問②提案のレビューはAIに全部任せられますか?

任せられません。相手の課題に対応しているかは文面だけでは判定できず、価格の判断は間違えたときに戻せません。この会社も、営業部長と営業推進の担当が2時間の打ち合わせを2回行って、任せる4項目を確定しています。任せるのは、必要な項目が入っているかのように判定の形が決まる観点に限ります。人が見る範囲を減らすことと、なくすことは別の話です。

質問③提案のレビューの効果はどう測りますか?

提出までにかかった日数、人が直した指摘の割合、差し戻しの回数、同じ指摘が繰り返された件数の4つで測ります。この会社の運用6か月では、提出までの中央値が4.2営業日から1.1営業日へ、差し戻しが平均2.4回から1.3回へ、指摘は月31件から月9件へ動きました。指摘の件数は成果になりません。件数が増えても直された割合が下がれば、営業の時間を削っただけで終わります。日数は平均を避け、中央値で見てください。

質問④提案のレビューの観点は誰が決めますか?

普段レビューしている人と、記録を集計する人の2名で決めるのが現実的です。ゼロから議論せず、受注した案件を10件ほど開いて共通する項目を拾う進め方が早く決まります。この作業自体が、頭の中にあった基準を言葉にする作業になります。

質問⑤提案のレビューはどのくらいで効きますか?

1観点に絞った場合、運用に入るまでが2か月ほどです。待ち日数は運用の開始直後から短くなりますが、同じ指摘が減ったかどうかは四半期を見なければ読めません。最初の四半期は、観点を増やさずに数字を集める期間と考えてください。

提案のレビューは、待たせない仕組みで決まる

ここまで、提案のレビューが商談を止める場面から、プロンプトで解けない理由、任せる範囲を決める4つの基準、4つの観点、AIに任せる3つの線引き、人が担う3つの例外までを見てきました。共通しているのは、指示文の完成度から話を始めていないという点です。

生成AIへの指示文を磨くところから入ると、指摘の中身は多少よくなります。ところが確認する人が1人のままなら、待ちは1日も縮みません。先に決めるのは、どの観点を人の手から離すかです。観点が1つ決まれば、任せてよい範囲も、指摘の返し方も、効いたかどうかの測り方も順に決まっていきます。

高圧ガスの供給会社の例では、月47件の依頼を減らさないまま、1つの観点を機械に渡しました。待ち日数の中央値は4.2営業日から1.1営業日へ、レビューを飛ばして提出した割合は34%から6%へ変わっています。同じ指摘の繰り返しは月31件から月9件に減り、営業部長がレビューに使う時間は月18時間から月7時間になりました。観点①のレビューは、いまも部長が見ています。

当社では、Agentforceの導入定着支援として、観点を選ぶところから運用に乗せるまでを扱っています。受注した案件を開いて共通する項目を拾い、判断の基準を言葉にするところから入る形です。Agentforceの導入・定着支援では無料相談も受け付けていますので、いまどの観点で指摘が多いのかを一緒に確かめるところから始めてみませんか。

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