【テンプレ付き】MA運用に活用するカスタマージャーニーの作成方法

読了時間 9

カスタマージャーニーマップをMA運用に活用する企業が多い中、「作成したものの活用できていない」「本当に必要なのか疑問に感じる」といった声も少なくありません。

そこで本記事では、MA運用におけるカスタマージャーニーマップの効果的な作成方法から、テンプレート配布、実際のMAツールへの反映手法など、実践的な観点から詳しく解説していきます。

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本田正憲

合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。中小企業を中心に100社以上のBtoBマーケティング戦略設計や施策実行を支援。MA構築・運用とコンテンツ企画制作による商談数拡大の支援が得意。

「カスタマージャーニーは意味がない」と考える企業が見落としている3つの原因

「カスタマージャーニーは意味がない」と考える企業が見落としている3つの原因

カスタマージャーニーマップを作成しても成果につながらず、「意味がない」と感じる企業は少なくありません。しかし実際には、カスタマージャーニーという概念が無意味なのではなく、カスタマージャーニーという概念そのものではなく、MAの運用前提を欠いた設計や誤った活用方法にあります。

ここでは、カスタマージャーニーマップが「MAで使えない」と誤解される3つの原因について解説します。

原因①窓口担当だけをバイヤーとして捉えているから

MA運用でカスタマージャーニーが機能しない企業の多くは、ペルソナ設定の段階から誤っているケースが多いです。というのも、MAの配信リストやスコアリング設計が“窓口担当者”一人の行動前提になっているのです。

しかし、B2B購買は一人では完結しません。実際には「購買関与者グループ(DMU)」が存在し、技術部門・経営層・財務担当・現場責任者など、複数のステークホルダーが異なる立場・目的で意思決定に関わります。

たとえば、MA上で資料ダウンロードをしたリードが必ずしも意思決定者とは限らず、顧客社内にいる他の人物との議論を必ず行います。その議論で正しい意思決定がされてはじめて問い合わせにつながります。つまり、その行動データだけをもとにスコアを上げて営業連携しても、十分な情報を提供できているとは言えないということです。

こうした実態を無視して担当者一人のジャーニーを描くと、購買決定の全体像を見誤ります。結果として、営業やMA施策がピント外れになり、「せっかく作っても使えない」という評価に陥るのです。

原因②購買プロセスを直線的だと捉えているから

MA運用の多くは、「リード→MQL→SQL→商談→受注」という直線的なファネルモデルを前提にしています。しかし実際のB2B購買プロセスは、そんなに単純ではありません。リードは一度興味を示しても再検討に戻ることがあり、比較段階で別の製品に関心を移したり、社内議論で対立してしまい、検討が一時停止することもあります。

実際に、ガートナー社の調査によれば、現代のB2B購買は「動的で反復的」であり、買い手は購買決定の途中で何度も行き来を繰り返すとされています。それにもかかわらず、MAで「検討→決定」と一本道のシナリオを設定すると、実際の行動とズレが生じ、タイミングの悪いメール配信や誤ったスコア加算が発生します。

原因③自社コンテンツだけの接触を前提としているから

また、多くの企業は、カスタマージャーニーマップを作成する際に「自社コンテンツだけで顧客が動く」という前提で設計してしまいます。 しかし実際のB2B購買では、見込み顧客は意思決定前に他社が制作した4〜5種類のコンテンツ(比較記事、業界レポート、事例動画など)を閲覧し、社内の平均6〜10名がその情報を共有しながら検討を進めています。

つまり、見込み客が自社のホワイトペーパーをダウンロードした時点では、すでに他社の資料を複数読んでおり、「自社以外の情報も含めて意思決定が形成されている」という前提に立たなければなりません。にもかかわらず、自社メール・サイト・ウェビナーといった“自社発信のみ”を基点にジャーニーを描くと、顧客の購買行動の大半を見落とすことになります。

MA運用で考えるカスタマージャーニーマップの3つの作成目的

MA運用で考えるカスタマージャーニーマップの3つの作成目的

カスタマージャーニーがMA運用で「意味がない」と誤解される理由を整理しましたが、では、MAを効果的に活用するために、カスタマージャーニーマップはどのような目的で作成すべきか。

ここでは、MA運用におけるカスタマージャーニーマップの3つの実践目的を解説します。

目的①MAシナリオ・配信設計の精度を向上させる

カスタマージャーニーマップの第一の目的は、MAシナリオと配信設計の精度を高めることです。MAの自動化フローは、顧客の検討ステージに応じて「どんな情報を、どの順で届けるか」で成果が大きく変わる有効な機能であり、その設計を支えるのがジャーニーマップです。

たとえば、「課題解決を検索している潜在層には教育コンテンツを」「事例を見た層には比較資料を」「検討に入った層には導入ROIや営業接点を」というように、リードの行動シグナルに基づいて配信シナリオを組み立てられます。

MAツール上では、これを「ステージ×行動条件」として設定し、トリガー配信に落とし込むことで、“誰に・いつ・何を・どう届けるか”を定義したナーチャリング設計が可能になり、リードの購買プロセスを前進させることができます。

目的②離脱ポイントの原因を特定する

カスタマージャーニーマップは、見込み顧客がどこで離脱しているのかを特定するための分析にも活用できます。MAツールでは、メールの開封、クリック、フォーム送信、サイト閲覧などあらゆる行動データが取得できますが、それだけでは「なぜ離脱したのか」までは見えません。

ここで、定量データとカスタマージャーニーマップを重ねることで、定量データに“文脈”が生まれます。

たとえば、資料DL後に行動が止まっている場合、提供した資料が意思決定に必要な情報を満たしていない、あるいは営業からのフォローが早すぎた、というように離脱の要因を仮説化できます。

その上で、「どのステージで停滞しているのか」「どの接点がボトルネックか」をマップ上で可視化し、改善施策をMAに反映します。具体的には、「検討段階→意思決定段階の移行率が低いなら、価格比較や導入効果資料を追加する」「営業連携の遅れがあるなら、自動通知条件を変更する」などが挙げられるでしょう。

こうした“マップ×MAデータ”のPDCAサイクルにより、離脱の原因を特定し、コンバージョン率を継続的に高める運用設計が可能になります。

目的③社内の共通認識を形成する

MAを運用するうえで、最も多い課題が「マーケティングと営業の認識ズレ」です。マーケティング側は「まだ育成中」と判断しているリードを、営業側は「もう商談化していい」と判断してフォローしてしまう──このようなギャップが起きることで商談化率が低下してしまいます。

このズレを解消するために、カスタマージャーニーマップは部門間の共通言語として機能します。

マップを用いて、「このステージは何をもってMQLとするのか」「SQL移行の判断基準は何点のスコアか」といった定義を明確にすることで、MA上のスコアリングや営業通知ルールが統一され、リードのハンドオフがスムーズになります。

たとえば、「比較検討ステージに入り、スコア80点以上のリードは48時間以内に営業が接触」といったSLA(サービスレベルアグリーメント)を設定すれば、部門間の責任範囲が明確になり、リード対応の精度と速度が向上するでしょう。

このように、カスタマージャーニーマップは単なる可視化ツールではなく、MAツールを軸にマーケティングと営業をつなぐ“連携基盤”として機能するというわけです。

本当に必要?MA運用でカスタマージャーニーマップが不要なケース4選

本当に必要?MA運用でカスタマージャーニーマップが不要なケース4選

MA運用でカスタマージャーニーマップを作成する「目的と活かし方」について整理しましたが、すべての企業が同じようにマップを作るべきとは限りません。むしろ、MA活用の成熟度や組織環境によっては、マップ作成を一旦見送る方が成果につながるケースも存在します。

ここでは、MA運用において「カスタマージャーニーマップを今は作らない方がいい」代表的な4つのケースを紹介します。

ケース①マーケティング部・営業部間で協力できない

MA運用は、マーケティングと営業の連携によるリードの育成・引き渡しも重要な要素ですが、両部門の協力関係が構築されていない段階でカスタマージャーニーを作っても、実行フェーズで機能しないでしょう。

営業がマーケティング施策に不信感を抱いていたり、マーケが現場の声を聞かずに机上でマップを作ったりする状態では、MAで設計したシナリオも動かず、結局“作って終わり”になります。

このような組織環境では、まず共同運用の基盤整備を優先すべきです。定例ミーティングの設置、共通KPI(例:MQL→SQL転換率)の共有、営業ログのMA連携など、連携の土台を整えてからマップを設計する方が期待効果を得られるでしょう。

ケース②顧客の声を取り入れられない

カスタマージャーニーの項目を作成する際、社内の仮説の寄せ集めでは意味がありません。ところが、顧客調査や顧客の声などの情報収集体制がない状態でマップを作成すると、社内目線の思い込みマップが完成してしまいます。

たとえば、「顧客は価格を最重視している」と思い込み、割引メールを配信しても、実際の失注理由が“導入サポートへの不安”だった場合、MA施策のキャンペーン効果は期待できません。つまり、MAの自動化ロジックをどれだけ精緻に設計しても、入力される顧客理解が誤っていれば、出力も誤るということです。

このような場合は、マップ作成よりも先に顧客情報を収集できる体制を整えることが先決です。たとえば、営業ヒアリングや既存顧客アンケート、MAの行動ログ分析など、事実ベースのデータを集める仕組みを優先することです。

ケース③ABM戦略を導入している

ABM(アカウントベースドマーケティング)を中心に展開している企業では、汎用的なカスタマージャーニーマップの効果は限定的です。なぜなら、ABMはターゲットアカウントごとに購買プロセスも関係者も異なり、「顧客ごとに購買行動が違う」ため、共通マップが成り立たないからです。

ABMでは、重点アカウントの構造分析(DMUマッピング)やキーパーソンとのエンゲージメント施策の策定が重要であり、汎用マップに時間を費やすより、アカウント個別設計に集中する方が成果が出やすいです。

たとえば、特定企業のCIOを起点にした技術テーマ別アプローチ、経営層向けROI提案、購買部向けコスト削減資料など、複数ラインの並行アプローチが前提になります。

したがって、ABM企業におけるジャーニーの最適解は「共通マップ」ではなく、「アカウントごとの関係進展図」や「ペルソナ別接点設計表」であり、ABM連携ツール(Demandbase、6senseなど)を活用し、アカウント単位でスコアリングやシナリオを管理するのが実務的なアプローチになるでしょう。

ケース④作成マップを実行に移すリソースがない

どれだけ優れたカスタマージャーニーマップを作成しても、それを実行に移すためのリソースが不足している場合、マップは単なる「絵に描いた餅」に終わってしまいます。しかし、実際にマーケティング担当者が一人だけで他の業務と兼任している場合や、コンテンツ制作の予算が確保できない場合など、実行リソースが明らかに不足しているケースも少なくありません。

こうしたリソース不足の状況では、まず最も重要な一つの顧客セグメントに絞り、簡易版のマップと最小限のシナリオから始めることを検討すべきでしょう。あるいは、マップ作成よりも先に、顧客からの苦情やフィードバックなど身近なデータから直接改善策を導出するフローを整備する方が実践的かもしれません。

【テンプレート付き】MA運用に使えるカスタマージャーニーマップの作成7ステップ

【テンプレート付き】MA運用に使えるカスタマージャーニーマップの作成7ステップ

ここまでで、カスタマージャーニーマップの目的や、作成を見送るべき条件について整理してきました。では実際に、MA運用で成果を出すための「使えるジャーニーマップ」をどのように作ればよいのか。

そこで本章では、MA運用の実務に直結するジャーニーマップ作成の7つのステップを紹介します。

※テンプレート・サンプルはこちらからダウンロードできます。

【サンプル】MA運用に使えるカスタマージャーニーマップ

ステップ①カスタマージャーニーマップの活用方法を決める

まず最初にすべきことは、マップを「どのように使うか」を決めることです。目的が曖昧なままでは、必要な情報も関係者も定まらず、”実務で使われない”マップになってしまうからです。

たとえば、MA運用での主な活用シーンにおいては、メール配信の設計に活用するのが一般的です。それに付随して、ライフサイクルステージの設定や、営業への引き渡し条件の定義、コンテンツ制作の優先順位づけなども考慮して、マップに盛り込む項目の粒度や範囲をコントロールしていきます。

もし目的を決めづらいのであれば、関係部門を巻き込んだワークショップ形式で目的を決める方法がおすすめです。マーケ、営業、カスタマーサクセスの担当者を集め、それぞれの課題を出し合い、「このジャーニーマップで何を解決するのか」を議論することで、関係部門全体が実務で使えるマップに仕上げるので、ぜひ検討してみてください。

ステップ②ターゲットセグメントを作成する

次はどのターゲットセグメントをマップ化するかを決めます。すべての顧客に一枚のマップで対応しようとすると、結局誰にも当てはまらない「抽象的な図」になってしまいます。

MA運用では、最も獲得効率の高いセグメントから優先的にマップ化するのが現実的です。たとえば「形骸化するMA運用をプロの知見を取り入れて活性化させたい現場リーダー」といったように、条件を具体的に絞り込みます。

ステップ③DMU視点で購買ステージを決定する

次に、受注獲得までのカスタマージャーニーを購買ステージに分類してそれぞれ定義していきます。一般的なファネル(認知→検討→意思決定→導入)をそのまま使う企業もありますが、BtoBビジネスでは、6つの購買ジョブ(問題認識・解決策調査・要件定義・ベンダー評価・懸念検証・社内合意形成)を行き来しながら、意思決定を進める前提で構築すると有効なマップになります。

特にMA運用で重要なのは、DMUの視点を取り入れることです。なぜなら、窓口担当者やサービス利用者、経営層など、意思決定にかかわる人たちがそれぞれ求める情報や判断基準が異なるからです。このDMUの視点でステージごとで関与する人物と議論される内容を想定し、どのタイミングでどのようなコンテンツが必要か洗い出すことで、顧客側の意思決定プロセスに即したマップとして機能するでしょう。

ステップ④カスタマージャーニーマップの項目を決定する

ターゲットが決まったら、カスタマージャーニーマップに盛り込む項目を設計します。ここで重要なのは、MAで実装できるレベルの具体性を持たせることです。

たとえば、上図でいうと購買ステージごとに以下を明確化しています。

購買ステージごとに決めるべきこと
  • 顧客の目的(何のために行動するか)
  • 心理(何を思って行動しているか)
  • 必要な情報(次ステージへの移行に必要な情報はなにか)
  • 接触する情報媒体(どの媒体から情報を得るか)
  • ステージごとのゴール(何が決まれば次のステージへ移行できるか)
  • 主な関与者(誰が意思決定に関わるか)

特にB2Bでは、「社内説得の負担」「導入後の運用不安」「費用対効果の根拠不足」など、顧客の心理的障壁を把握しておくことが重要です。それぞれをリスト化し、解消するための資料・メール・セミナーなどをMAで自動化することで、購買ステージを促進させることができます。

ステップ⑤タッチポイントを洗い出す

カスタマージャーニーマップの項目が決まったら、次は顧客と企業が接触するあらゆるタッチポイントを漏れなく洗い出します。ここで重要なのは、自社が管理するタッチポイントだけでなく、第三者の情報源や競合他社との接点も含めて、顧客の情報収集行動全体を捉えることです。

大半の顧客は検索エンジンで課題の解決方法を調べたり、SNSで他社事例を見たり、比較サイトや業界メディアを参考にして選定を進めます。こうしたオンラインの接点に加え、展示会・セミナー・営業訪問・顧客紹介などのオフライン接点も購買行動の一部として発生するかもしれません。そのうえで、各タッチポイントをMAのデータ基盤に結びつけていきます。

たとえば、SEO経由の流入はフォーム連携でMAに登録し、SNSキャンペーンからの流入はUTMパラメータでトラッキング。展示会での名刺情報はMAへインポートし、メール配信・広告リターゲティング・ウェビナー参加などのアクションを同一リードの行動履歴として統合します。こうした「全チャネルをMA上で一元的に把握できる状態」をつくることが、タッチポイントを洗い出すゴール設定となります。

ステップ⑥セグメントごとに項目内容を埋めていく

ここまでのステップで準備した枠組みに基づいて、実際にカスタマージャーニーマップの内容を埋めていきます。この作業は一人で行うのではなく、複数の関係者を巻き込んで行うとより解像度の高い内容が書けるようになります。

例えば、マーケティング担当者の視点だけでは見えない部分を、営業担当者や既存顧客へのインタビューから補完していきます。各ステージについて、「このステージの顧客は何を考えているか」「どんな情報を求めているか」「どんな不安を抱えているか」「どんな行動を取るか」といった問いに答えていく形で、具体的な内容を記入していくと、精度の高い項目内容が出来上がります。

また、DMUの役割(窓口担当者、財務担当者、経営層など)ごとに異なる視点や関心事項も反映させるといいでしょう。完成したマップは関係者全員で共有し、フィードバックを得て修正を加えることで、より精度の高いものに仕上げていきましょう。

ステップ⑦MAツールの設定に反映させる

カスタマージャーニーマップが完成したら、最後にMAツールの具体的な設定へ内容を落とし込んでいきます。ここで重要なのは、マップで定義した購買ステージを「MAのライフサイクルステージ」として再現することです。

たとえば、「問題認識→課題特定→解決策検討→要件定義→候補選定→社内合意形成」の6ステージを、MA上ではスコアリングと行動条件で管理します。資料ダウンロード・セミナー参加・比較表閲覧・提案依頼などのトリガーを設定し、閾値を超えた時点で自動的にステージを更新すると、それぞれのステージに位置するリードを1つのリストとしてメール配信ができるようになります。

このようにステージごとの心理や接触する情報をメール配信に反映して、顧客行動に即したコミュニケーションを実現しましょう。

MAツールにカスタマージャーニーマップを反映させる4つの設定

MAツールにカスタマージャーニーマップを反映させる4つの設定

ここまでで、カスタマージャーニーマップの作成プロセスを段階的に整理してきましたが、次に、そのマップを実際のMAツールでどう活用し、成果を生む仕組みとして動かすのかを解説します。

設定①リストセグメントへの反映

まず最初に行うべきは、マップで定義した購買ステージやペルソナを、MA上のリスト設計に落とし込むことです。MAツールでは、属性や行動履歴をもとに自動的にリードを分類できるため、マップで整理した「誰に・どんな状態で・何を届けるか」を実装することができます。

たとえばリード分類の条件式を設定して、「職種=経営層」「業種=製造業」「ステージ=要件を定義する」といった複数条件に一致したリードを自動的に抽出することで、「今、購買意欲が高い層」「情報収集中の層」といった該当するリードだけに最適なシナリオを実行することができます。

実際に江崎グリコ社の法人向け事業の事例では、MA導入前にペルソナマトリックスを作成し、ターゲットを「地域毎のトップ広告代理店」と「中規模IT企業」の2種類に明確化しました。そして各ターゲット別にカスタマージャーニーを設計し、それに基づくコミュニケーションフロー(メール配信シナリオ)をMAツール上に実装しています。

このようにセグメントごとにシナリオを分けることで、配信対象を適切に絞り込み、内容も相手の業種や地域に合わせて出し分ける運用を実施できるようになります。

設定②コンテンツ企画・制作

リストセグメントの設計が完了したら、各ステージごとのニーズを洗い出し、それに沿ったコンテンツを企画・制作します。購買プロセスの各段階において、かならずDMUの各役割も考慮したうえで、提供すべきコンテンツと最適な提供タイミング・手段を設計していきます。

たとえば、以下のようなコンテンツ例が挙げられます。

購買ステージごとの適切な提供コンテンツ例
  • 「課題を特定する」段階・・・課題提起や教育的なコンテンツ(How-toブログ、業界ガイド、ホワイトペーパー)
  • 「解決方法を探す」段階・・・課題の解決策にフォーカスしたコンテンツ(ハウツー、ケーススタディ、事例集)
  • 「要件を定義する」段階・・・予算や支援範囲などの要件定義に役立つコンテンツ(ROI計算シート、比較表)

このようにステージに合わせて「いつ何を送るか」を設計することで、リードが次のステージに進むようコンテンツで背中を押せるのです。

実践例として、前述の江崎グリコ社ではMA導入に合わせて、ナーチャリング用コンテンツを拡充しました。具体的には、まず認知段階向けに「米国IT・ソフトウェア企業に聞くノベルティ成功談」や「企業名・製品名を継続して覚えているノベルティとは?」といったホワイトペーパー資料を制作し、その翌年には業界別のアンケート調査レポートを公開、さらに顧客事例コンテンツも多数用意しています。

蓄積したコンテンツはウェブサイトで公開し、ダウンロード時に見込み客情報を取得して以降のシナリオ配信に活用しています。これによりリードは自分のペースで理解を深め、自然に自社ソリューションの検討へと進む仕組みを提供できているわけです。

設定③ライフサイクルステージ定義

続いて、購買ステージをMAのライフサイクル設定に反映させます。ここでは、リードがどの段階にいるのかを可視化することが肝で、自動でステージを更新するルールを設定していきます。

BtoB購買では、複数のタスク(課題定義・解決策検討・要件構築・サプライヤー選定)をDMUが分担・共有しながら進めることで、同一企業内での複数人の動きを加味してステージを判断する必要があります。

また各タスクは単独の担当者ではなくDMUによって分担・共有されるため、従来型の一人ひとりのリード視点だけでは購買全体の温度感を測りにくくなっています。こうした背景から、海外B2B企業では、単純な段階区分だけでなくPQL(Product Qualified Lead)スコアリングやAIによる機械学習でのステージ判定をする手法が主流になっています。

さらにDMU(複数人の意思決定者グループ)への対応もライフサイクルステージの定義に組み込まれています。従来型ではリード個人単位でスコア計測・ステージ管理していたため、同じ企業内で複数担当者が別々に情報収集していても全体像を掴みにくい問題がありました。そのため、企業単位や購買グループ単位でスコアやステージを管理するアプローチが有効とされています。

こうしたDMU視点を踏まえ、ペルソナ設計時にも企業(アカウント)と人物の両面から理想像を定義し直し、スコアリングやステージ条件も「決裁者が含まれているか」「関連部署から複数名のエンゲージがあるか」等を加味する企業も増えています。

設定④ワークフロー設計

最後に行うのが、ジャーニーと連動したMAワークフローの設計です。ワークフローとは、予め設定した条件(トリガー)に該当するリードに対して、自動で特定のアクション(メール送信やスコア更新など)を実行するMAの仕組みです。ジャーニーマップで描いた理想的な顧客の動きに沿って、「誰に(ターゲットセグメント)」「いつ(どのタイミングで)」「何を(提供するコンテンツ)」「どのように(メールや広告など手段)」送るかを決め、MAツール上でワークフローを組んでいきます。

たとえば、資料ダウンロードをトリガーにお礼メールを配信し、3日後にフォローメールを送り、その後、料金ページを閲覧したリードには競合比較に関する資料を案内し、閲覧後一定時間で営業担当にアラートを出す――といったシナリオを組み込むなどです。MAが自動的に“最適なタイミング”で顧客を動かします。

江崎グリコ社では、カスタマージャーニー上の主要接点(資料DL、セミナー参加、メール開封など)をすべてMAのトリガーとして設定し、それぞれに対応する自動メールや営業通知を仕組み化しました。この取り組みにより、フォローの遅延がなくなり、商談化率が大幅に改善。MA導入前に比べ、営業がリードへ接触するまでの平均時間が半分以下に短縮されたといいます。

MAのワークフロー設定は、こうしたマップで定義した「顧客の行動パターン」と「理想的な対応」を一致させる工程として、設計したジャーニーマップを活用する重要な取り組みです。

失敗しないためのカスタマージャーニーマップ作成のコツ6選

失敗しないためのカスタマージャーニーマップ作成のコツ6選

カスタマージャーニーマップをMAツールに反映する具体的な設定方法を解説しましたが、いくら理論やツール設定を学んでも、実際のマップ設計段階でつまずく企業は少なくありません。その理由は、多くのマップが“見栄えの良い資料”にとどまり、実務で使えない状態のまま終わってしまうからです。

そこで本章では、MA運用で「成果を生み出すマップ」を作るために避けるべき失敗と、その回避策を6つのコツとして整理しました。

コツ①活用ゴールから逆算して作成する

カスタマージャーニーマップは目的ではなく成果を出すための手段なので、「マップを作ること」自体をゴールにしてしまうと、結局は使われずに終わります。したがって、最初に明確にすべきは、「このマップを使って何を改善したいのか」という活用ゴールです。

たとえば「ライフサイクルステージのMQL→SQL転換率を20%改善したい」「営業連携のタイミングを標準化したい」など、定量的な目的などが挙げられます。ほかにも定性的な目的としては、顧客が離脱するポイントを仮説立てする材料として活用したいなどです。

目的を設定せずに作成を始めると、情報過多で焦点のぼやけたマップになり、誰も活用しなくなるので、「どんな成果を出すために作るのか」から逆算する思考をもつことが、実務で使えるジャーニー設計の第一歩と言えるでしょう。

コツ②顧客の声を反映させる

MA運用におけるカスタマージャーニーでありがちな失敗が、“社内の仮説だけで作るマップ”です。顧客調査を行わず、営業やマーケターの感覚に頼って設計してしまうと、実際の購買行動とズレが生じやすくなるので、顧客の声を反映できる体制を構築しましょう。

たとえば既存顧客へのインタビューを行い、「どんな情報が役立ったか」「いつ不安を感じたか」「どの段階で比較対象を決めたか」を聞き出したり、営業担当者やカスタマーサクセスから営業・面談の現場データを集め、MAツールの行動履歴(開封・クリック・滞在時間など)と照らし合わせて分析するのも有効です。

このように、顧客データと現場の知見を掛け合わせてマップを設計することで、MAシナリオに直結する実践型のジャーニーが完成します。反対に、顧客の声を無視して作成したマップは現場では使われず、成果を生まない形骸化したジャーニーに終わるでしょう。

コツ③「点」を抑えにいく

カスタマージャーニーは、顧客と企業のあらゆる接点――つまり「点」の積み重ねで構成されます。したがって、良いマップを作るための第一歩は、この“点”を網羅的に洗い出すことです。

たとえば、Webサイトやメール、SNS、ウェビナーといったオンライン接点だけでなく、展示会、営業訪問、口コミサイトなどのオフライン接点まで含めて整理します。これらを網羅的にリストアップしないまま進めると、「顧客がどこで離脱したのか」「なぜ検討が止まったのか」が特定できず、MA上の改善策も打ちようがなくなります。

洗い出しの際は、マーケティング部門だけでなく、営業やカスタマーサクセスなど、実際に顧客と接している部門にもヒアリングを行うことが重要です。彼らは現場で得た“非デジタルな接点”――たとえば、電話対応時の印象や展示会での反応――など、ツールのデータでは拾えないリアルな情報を持っています。

このようにして、顧客がどこで情報を得て、どこで迷い、どこで行動したのかという“接点の地図”を明確にすることで、MAシナリオ設計やスコアリングの精度が飛躍的に高まります。

コツ④マーケティング部・営業部で一緒につくる

カスタマージャーニーマップは、マーケティング部門だけの設計図ではありません。MA運用の最終目的は「リードを商談・受注につなげること」であり、そのプロセスの後半は営業部門の行動によって左右されるからです。

たとえば、マーケティングが「MQLとして営業に渡したリード」を、営業が「まだ検討レベルが低い」と判断して追わないケースは珍しくありません。このズレを放置すると、MAでいくらシナリオを改善しても成果は出ません。

そのため、マップは必ずマーケティングと営業が共同で設計すべきです。たとえばワークショップ形式で両者が同席し、「どの段階で営業へ引き継ぐのか」「営業はどの情報をもとにアプローチするのか」を明確化することが有効でしょう。

こうした協働設計により、マーケティングは“リードの質を高めるための施策”に集中でき、営業は“アプローチの確度を上げる活動”に専念できるようになります。

コツ⑤重要なジャーニーパターンだけに絞り込む

多くの企業が失敗する原因の一つは、「すべての購買パターンを一枚のマップに詰め込もうとすること」です。確かに顧客の行動は多様ですが、マップが複雑になりすぎると、誰も理解できず、誰も使わなくなります。したがって、成果に直結する主要なセグメントを優先的に設計することが重要です。

たとえば、「展示会で獲得したリードの商談化プロセス」や「既存顧客のアップセル経路」など、ビジネスインパクトの大きい2~3パターンに絞り込むなどです。また、限られたリソースの中でPDCAを素早く回すためにも、まずは最も再現性の高い購買パターンを優先的にマップ化するのが現実的です。マイナーな例外ケースまで作り込むより、ひとつの成功パターンを磨き上げた方が、MA全体のROIが向上しやすくなるからです。

このように、カスタマージャーニーマップは、すべてではなく、“成果が出るセグメントを優先的に作成する”発想をもつといいでしょう。

コツ⑥正しい意思決定を支援する姿勢でつくる

最後に最も重要なのは、「自社が売るため」ではなく「顧客が正しい判断をするため」にマップを設計するという姿勢です。

BtoBの購買単価は高額で、複数の部門や上層部の承認が必要となるため、社内議論や検証に必要な情報がたくさんあります。したがって、MAのシナリオ設計も「顧客の課題を解決する情報提供」に重きを置くべきです。たとえば、「要件定義」段階ではROI試算ツールや導入事例資料、社内説明用スライドなどを提供し、顧客が社内で承認を得やすくするサポートを行います。

このように、売り込みではなく、顧客が自信を持って選べるよう導く発想に立てば、MAの成果は確実に変わります。

【2025年最新】カスタマージャーニーマップ作成に使える3つの統計データ

【2025年最新】カスタマージャーニーマップ作成に使える3つの統計データ

カスタマージャーニーマップは「理論」ではなく「実態」に基づいて設計することが重要であることを解説してきましたが、最新の市場調査データや統計情報をあらかじめ理解しておくと、より効果の高い施策が打てるようになります。

ここでは、2025年時点での最新の統計データから、カスタマージャーニーマップ作成に特に有用な3つの知見について解説します。

統計①BtoBバイヤーの77%は、自身の購買体験に苦労している

ガートナーの調査によると、BtoBバイヤーの77%が「購買プロセスは非常に複雑、または困難だ」と回答しています。購買行動が単に情報収集や価格比較の積み重ねではなく、社内調整・合意形成といった“内部プロセスの重さ”が障壁になっていることを示しています。

現代のBtoB購買は、複数の関係者が情報を持ち寄り、意見をすり合わせながら進む“組織的な決定行為”です。そのため、購買プロセスの各段階で「何が分からず止まるのか」「どんな不安が残っているのか」をマップ上で特定し、MAシナリオでそれを解消する導線を組み込むことが重要です。

統計②BtoBバイヤーの75%は、個別最適化されたオファーを期待している

最新の調査では、BtoBバイヤーの75%が「自社の状況や課題に合わせた個別提案を受けたい」と回答しています。これは、もはやパーソナライゼーションが“付加価値”ではなく、“標準的な期待値”になっていることを意味します。

特にMA運用においては、リストセグメントや動的コンテンツを活用し、業種・規模・導入目的別に最適な情報を届ける仕組みを整えることが必須です。たとえば、製造業向けには「技術革新」「コスト削減」などのキーワードを、IT企業向けには「スピード」「データ連携」といった訴求軸を中心にメッセージを設計するなどです。

カスタマージャーニーマップを作成する際も、この“個別最適化の前提”を踏まえることが重要で、全体設計ではなく、「どのペルソナに」「どの課題解決を」「どの順番で」届けるかというレベルで描き分けることで、MAシナリオが具体的に動き始めます。

統計③BtoBバイヤーの44%は、営業なしの購買体験を望んでいる

近年、BtoBバイヤーの購買行動は「営業を介さず自分で調べ、自分で決めたい」という方向にシフトしています。実際、44%のバイヤーが「理想は営業担当とやり取りせずに購入を完了したい」と回答しており、この傾向は特にデジタルリテラシーの高い層で顕著です。

こうした“セルフサーブ志向”の台頭は、MA運用におけるコンテンツ設計にも大きな影響を与えており、営業が介在しなくても購買検討を完結できるだけの情報環境を整備することが求められていると解釈できます。

ただし一方で、完全なセルフサービスモデルにはリスクもあります。情報を自己判断で整理できないまま購買を進めた顧客ほど「導入後に後悔する割合が高い」と、ある調査で報告されています。そのため、MAシナリオ設計では、セルフサーブ+人の支援(ハイブリッドモデル)を前提にすることが重要です。

「活用できるカスタマージャーニーマップ」に有効なMAツールの機能5選

「活用できるカスタマージャーニーマップ」に有効なMAツールの機能5選

これまで、カスタマージャーニーマップの設計方法や分析指標、活用ステップについて解説してきました。では、実際にMA運用で成果を出す「仕組み」としてマップを機能させるには、どのツール機能をどう使えばよいのか。

ここでは、MAツールの中でも特にジャーニー活用に直結する5つの機能を取り上げ、それぞれがどのようにマップ運用を支えるのかを解説します。

機能①ライフサイクルステージ

ライフサイクルステージは、見込み顧客の現在位置を明確にし、適切なアクションを自動で振り分けるための中核機能です。カスタマージャーニーマップで定義した「問題認識→解決策調査→要件定義→サプライヤー選定」の流れを、MAツール上では「リード→MQL→SQL→問い合わせ」といったステージとして可視化します。

たとえば、「資料ダウンロードでMQLに昇格」「製品比較ページの滞在時間が一定を超えたらSQLへ移行」といった条件を設定すれば、MAが自動的にステージを進行させることが可能です。さらに、各ステージに応じたアクションを紐づけることで、「比較段階では導入事例を配信」「意思決定段階ではROI資料と営業接点を通知」といった自動化シナリオを実現できます。

このように、ライフサイクルステージは単なる管理指標ではなく、MAの全シナリオの成果を支える重要な指標です。

機能②CRM連携

CRM連携は、マーケティングと営業の間で「ジャーニーを共有する」ための重要な機能です。MAで蓄積された行動履歴(閲覧ページ、クリック、イベント参加など)をCRMに連携することで、営業担当者はリードがどんな情報に反応し、どんな課題意識を持っているかを把握できます。

たとえば、「比較ページを3回以上閲覧したリード」を営業が確認できれば、提案時に競合比較を意識したアプローチが可能になります。また、営業がCRMに記録した商談メモやヒアリング内容をMAに戻すことで、「課題整理が未完→検討段階に戻す」など、マーケティング施策の再設計にも活かせます。

CRM連携の目的は、単に情報を同期することではなく、顧客の購買プロセスを部門間で一貫して理解するためです。この仕組みを整えることで、マーケと営業が同じジャーニーを共有し、リードから顧客化までの体験を一つの流れとして改善できるようになります。

機能③カスタム項目

カスタム項目は、企業ごとの実情に即した「精度の高いセグメント設計」を可能にする独自の項目追加機能です。MAツールの標準項目(企業名・職種・メールアドレスなど)だけでは、購買背景や課題の深さを捉えきれないので、課題テーマや検討時期、予算感、決裁権の有無といった独自の項目を追加し、顧客理解の粒度を高めます。

たとえば、「業務効率化目的のリード」と「新規事業拡大目的のリード」では、訴求すべきコンテンツやタイミングが異なるため、それぞれに異なるCTA(行動喚起)やメールシナリオを割り当てるために、既存の項目では管理できない独自の項目を追加していくことが有効です。

また、営業がCRMに入力した情報(課題、導入背景など)をMAと同期すれば、カスタム項目をもとに自動でシナリオ分岐を行うこともできます。このように、カスタム項目は自社固有の顧客情報を反映させることで、セグメンテーションに活用できるようになります。

機能④ワークフロー

ワークフローは、カスタマージャーニーをMAで自動的に“動かす”ための仕組みです。あらかじめ設定したトリガー(資料DL・サイト訪問・メールクリックなど)をもとに、シナリオ配信やスコア更新、営業通知などの一連のアクションを自動実行します。

たとえば、「セミナー申込→当日参加→フォローメール→営業通知」といったフローを一度設計すれば、以降はMAが自律的に稼働します。また、1人のリードが複数のジャーニー(例:製品A検討+業界別ナーチャリング)に同時に属することも可能です。

ただし、設計を複雑にしすぎると運用管理が難しいので、最初は「反応→次の提案→営業通知」といったスモールスタートでのシナリオ構築から始め、効果を見ながら条件分岐を追加するのが現実的です。

機能⑤Webトラッキング

Webトラッキングは、フォーム送信やメールクリックのような明示的な行動だけでなく、Web上のページ閲覧回数・滞在時間などを探知することができる機能です。

たとえば、「価格ページを3回以上閲覧した」「導入事例とFAQを連続で見た」といった行動は、購買意欲の高まりを示すシグナルとして解釈できそうです。そしてこれをトリガーに、MAが自動で営業に通知したり、関連資料を送付したりすることで、最適なタイミングでアプローチが可能になります。

さらに、匿名アクセス段階でもCookieベースで行動を蓄積し、フォーム登録時に履歴を統合すれば、初回訪問から商談化までの完全な行動履歴を追跡できます。このように、Webトラッキングは“顧客の意図を数値で読む”ための機能として有効です。

MA運用におけるカスタマージャーニーマップの作成事例5選

MA運用におけるカスタマージャーニーマップの作成事例5選

これまで、MA運用におけるカスタマージャーニーマップの設計方法や、ツール活用の仕組みについて体系的に整理してきましたが、ここでは、日本企業における具体的なMA導入・運用事例を5つ紹介します。

事例①NEC社|スコアリングによる見込み客育成とグローバルMA基盤統合

NEC社は長年、国内外で複数のMAツールを併用していましたが、国や拠点ごとに運用が分断され、リード情報の一元化や成果の可視化が難しいという課題を抱えていました。

この課題を解消するため、グローバル全体でOracle Eloquaを導入し、統一されたMA基盤を構築。カスタマージャーニーをベースに、スコアリングモデルとセグメント設計を刷新し、見込み客の行動・関心度を定量的に評価する仕組みを整えました。

具体的には行ったことは以下の通りです。

NEC社の具体的な取り組み
  • メールの開封・クリック・サイト訪問などのエンゲージメント指標に加え、役職・業種などの属性データも加味した「複合スコアリング」を採用。
  • スコアが一定基準を超えたリードのみを営業に引き渡す運用に切り替え
  • MA上で蓄積された顧客データをグローバルCRMと連携し、海外拠点でも同一の指標でリードを評価

結果、メールCTRが導入前の約7倍に向上し、ナーチャリング対象の精度も劇的に改善。さらに、国や地域を越えて共通の購買プロセスを可視化できるようになり、マーケティングROIの測定も標準化されました。

事例②近畿日本ツーリスト社|スコアリング×デジタルシフトで営業効率化

近畿日本ツーリスト社では、約1,000名の法人営業担当者が電話・訪問を中心に顧客対応を行っていましたが、DX推進によりデジタル接点が増加。従来の属人的な営業スタイルでは対応しきれない課題に直面していました。

そこでOracle Marketing Cloud (Eloqua)を導入し、カスタマージャーニーに基づいたスコアリング運用を開始。リードの興味関心を「資料ダウンロード」「セミナー参加」「Web滞在時間」などの行動データで可視化し、スコアに応じて自動的に優先度を分類しました。

この仕組みにより、営業は“今アプローチすべき顧客”を瞬時に把握できるようになり、ホットリード中心の営業活動へと体制強化に成功。また、MAのワークフロー機能を活用し、「見込み度の高い顧客にのみ関連情報を配信する」自動シナリオを構築しました。

結果として、営業1人あたりの商談創出数が大幅に増加し、営業効率化と顧客満足度向上を同時に実現しました。

事例③VAIO社|ステージごとのKPI設定とタイミング最適化で成果創出

PCメーカーのVAIO社は2014年にソニーから独立した当初、マーケティング業務をソニーに委託していましたが、「VAIOブランドの確立」「顧客へのダイレクトなアプローチ」「長期的な継続コミュニケーション」の3点が課題でした。

そこでAdobe Marketo Engage(旧Marketo)を導入し、自社でカスタマージャーニーマップを描いてマーケティングプロセスを再構築しました。具体的には、見込み客の興味度合いが高まったタイミングで営業が声をかけるスコアリング&アラート連携の仕組みをスタートさせ、営業プロセスの「見える化」に成功しています。

たとえば、認知段階のリード数や商談創出率など指標を段階別に定義し、これをMA上でダッシュボード化してPDCAを運用。また、マーケティング活動の内製化によって現場エンジニアも含めた部門横断の顧客接点強化が可能となり、チャネル配分や予算投下の最適化も迅速に行えるようになりました。

こうしたジャーニーマップに基づく部門連携強化により、当初掲げていた目標値を大きく上回る成果を達成しています。

事例④Sansan社|データ統合によるシナリオ徹底と自動ナーチャリング

クラウド名刺管理サービスを提供するSansan社は、マーケティング部署立ち上げ当初、複数チャネルから獲得したリード情報が分散・重複する課題を抱えていました。そこで、2016年1月にMAツールを導入し、リードデータベースをクレンジングして「1人=1リード」の統合DBを構築。その上で、優秀な営業担当者ほど保有リード数が少なくフォローを迅速に行っているという社内分析結果に着目し、MA上で見込み度の高いリードをスコアリングで抽出→営業に引き渡しというシナリオを徹底したのです。

この運用により、営業担当者が集中対応する見込み顧客数を絞り込むことに成功し、有効メール配信対象者数も2倍に拡大しています。さらにインサイドセールス(内勤営業)部門との仕組み整備や高速なPDCA実行により、MA本格運用から3ヶ月で新規獲得リード数が約3倍、受注件数も約1.5倍に増加し、受注率も約10%向上しました。営業一人ひとりが見込み客に割ける時間が増え、1件あたり受注金額も伸長するという好循環を実現しています。

事例⑤富士通クラウドテクノロジーズ社|関心軸のコンテンツ提供でリード育成と会員増加

富士通クラウドテクノロジーズ社は、自社サービスとしてスマホアプリ開発者支援サービスを提供していますが、そのマーケティング課題は「会員数の伸び悩み」であり、分析の結果、Webマーケ施策が手つかずだった点でした。

そこでMAツールを導入し、Web行動・メール反応・広告クリックデータを統合して「顧客がどんなテーマに興味を持っているか」を詳細に分析。その分析結果から、ユーザーの関心領域を「技術支援型」「運用効率型」「コスト削減型」などに分類することができ、それぞれに最適化されたカスタマージャーニーを設計することにしました。

そのあと、「プッシュ通知の実装」に関心を示すユーザーには技術解説ブログや開発事例を配信し、「コスト最適化」を重視する層には導入ROI資料や料金シミュレーターを案内。MAのワークフローでこの配信を自動化した結果、会員登録率・資料DL率・申込率のすべてが向上し、売上UPにもつながりました。

【一問一答】MA運用におけるカスタマージャーニーに関するよくある質問

【一問一答】MA運用におけるカスタマージャーニーに関するよくある質問

カスタマージャーニーマップの作成やMA運用への反映を進める過程で、多くの担当者が共通して抱く疑問や課題があります。ここでは、実務上特に頻繁に寄せられる6つの質問について、実践的な観点から回答します。

質問①カスタマージャーニーマップは企業の誰の視点で作成すべきですか?

カスタマージャーニーマップは、企業側の視点ではなくセグメント視点で設計することが原則です。つまり、営業部門でもマーケティング部門でもなく、「同じ課題をもつセグメント」が主語になります。

ただし、BtoBの文脈では、1社の中に複数の関与者が存在するため、たとえば経営層・現場担当・購買担当など、意思決定にかかわる人の求める情報や意思決定基準を理解したうえで、どう意思決定が行われるかを把握しておくことも重要です。

質問②BtoBで非線形な動きをする場合、どのようにカスタマージャーニーマップを作成すべきですか?

非線形な動きを前提としたマップを設計するには、まずDMUを洗い出し、それぞれがどの段階で・どんな判断をしているかを把握することから始めましょう。

たとえば技術担当者は「性能・仕様の確認」を重視し、財務担当者は「費用対効果」、経営層は「リスクと投資妥当性」を判断軸にします。それぞれの欲しい情報や社内の意思決定プロセスに対応するコンテンツを作成して、最後に企業単位で統合するのが効果的です。

また、ジャーニー上に「戻る矢印」や「再検討フェーズ」を明示的に設けておくと、MA上で“ループ構造”を再現しやすくなります。MAツールのワークフロースコアリング設定も、「前進だけでなく、再評価・停滞を許容する設計」にすることで、現実的な購買プロセスとして反映できます。

質問③カスタマージャーニーマップの必須要素は何ですか?

実践的なマップを作るには、最低でも4つの要素を明確に設定する必要があります。それは「課題セグメント」「ステージ」「タッチポイント」「感情・課題」です。

まず課題セグメントは、顧客の課題やその原因、置かれている状況を定義し、誰の体験を描くのかを固定します。

次にステージは、顧客の購買心理を段階化したものです。「問題認識 → 解決策調査→ 要件定義→ サプライヤー選定」のように分け、各段階で何を求め、何に迷うのかを整理します。

タッチポイントでは、顧客と企業の接点(メール、Web、展示会、口コミ、営業など)を洗い出し、どの接点が購買意欲を左右しているかを可視化。そして最も重要なのが感情で、各ステージで顧客が抱く期待や不安をマップ上に描き、ポジティブ/ネガティブの感情曲線を可視化することで、「なぜ離脱するのか」「どの段階で安心するのか」が見えるようになります。

この4要素を一貫して描けていれば、MAシナリオ設計やスコアリング運用にも自然に落とし込むことができます。

質問④リストをセグメントする際、アクティビティがないリードはどう扱うべきですか?

アクティビティがないリードは、「興味を失った」わけではなく「今はタイミングが合っていない」ケースも考えられます。したがって、すぐに削除するのではなく、再エンゲージメント施策を別ルートで設計すべきです。

まず「最後のアクションから何日間で休眠とみなすか」を定義し(例:90日間反応なし=休眠)、その上で、通常のナーチャリングフローとは別に、「再関心喚起キャンペーン」を設定しましょう。それでも反応がなければ、配信頻度を減らすか、リストから削除しましょう。

質問⑤カスタマージャーニーは一度作成したら終わりですか?

カスタマージャーニーは一度作って終わりではなく、継続的に見直し・更新しましょう。顧客の行動や市場環境は常に変化するため、ジャーニーマップも定期的に現状に合わせてアップデートする必要があります。また、新たに収集した顧客インサイトや定量データを取り入れ、仮説と現実のズレを修正することも有効です。

質問⑥カスタマージャーニー施策の成果はどのように測定すればよいですか?

カスタマージャーニー改善の効果を測定するには、エンドツーエンドで指標を追跡することが重要です。具体的には、ジャーニーの各段階や全体に対してKPIを設定し、定量的・定性的な指標で評価します。代表的な指標には次のようなものがあるでしょう。

  • コンバージョン率:各ステージから次のステージへ進んだ割合(MQLからSQLへの転換率など)
  • リードタイム:初回接点から商談・契約に至るまでの所要時間
  • 顧客満足度(CSAT/NPS):顧客アンケートによる満足度評価やNPSスコア
  • エンゲージメント指標:メール開封率やサイト滞在時間、イベント参加率など、各タッチポイントでの反応指標
  • 売上高や顧客生涯価値(LTV):カスタマージャーニー施策がビジネスにもたらしたインパクト

カスタマージャーニーマップをMA設定に反映させましょう

カスタマージャーニーマップは、作成するだけでは何の価値も生みません。実際のMAツール設定に反映し、自動化されたマーケティング施策として稼働させて初めて、見込み客育成の効率化や営業連携の強化といった具体的な成果につながります。

本記事で解説してきたように、カスタマージャーニーマップの作成には、活用目的の明確化、DMU視点でのステージ設計、顧客の声の反映、そして重要なジャーニーパターンへの絞り込みといった様々なポイントがあります。これらを押さえた上で、MAツールのリストセグメント、コンテンツ企画、ライフサイクルステージ定義、ワークフロー設計といった具体的な機能に落とし込むことで、活用できるカスタマージャーニーに改良していきましょう。