重点ターゲットは業種・規模ではなく「課題」で決める|Agentforceで受注企業と失注企業を比べる方法

営業責任者向け 重点ターゲットの決め方のBefore/After。Before:人力で1レコードずつ商談レコードの文章を分析する時間がなく、業種・規模から重点ターゲットを判断している。After:AIエージェントが商談レコードのテキスト情報まで分析し、抽出された具体的な課題をもとに重点ターゲットを決める。

「受注した企業は、どんな困りごとを抱えて契約してくれたのだろう?」。営業戦略でターゲットを見直しているとき、営業責任者なら一度はこう考えたことはありませんか?

受注企業の業種や規模は、レコードの詳細を見ればすぐに分かります。しかし、その企業が初回面談で何に困っていると話していたのかは、商談レコードの活動記録や商談メモのテキスト項目、個別メールの送受信まで見に行かないとわからない場合があります。人が1件ずつ文章を読む時間は現実的に確保できないので、結果として受注企業の業種・規模をもとに重点ターゲットを判断している企業も少なくないでしょう。

そこで本ユースケースでは、AgentforceのAIエージェントに商談レコードの活動履歴やテキスト情報まで分析させ、受注企業と失注企業における課題傾向の違いからターゲットを提案させる方法をご紹介します。

※本記事の画面や数値は、SalesforceのSandboxに用意した架空の商談データのものです。

この記事の結論・要点
  • 利用シーン:営業責任者が、半期・四半期の計画や営業戦略の見直しでターゲットを決めるとき。
  • 想定課題:受注企業の課題は商談レコードの文章にしか書かれておらずレポートで集計できない。そのため、重点ターゲットを業種・規模と担当者の説明内容で決めている。
  • エージェントがすること:期間内の受注・失注の商談を対象に、活動履歴・メール・商談メモなどのテキスト項目・メモの文章から顧客の課題を分類。受注企業と失注企業の割合を比較した上で、差分がある課題と属性だけを根拠つきで説明する。
  • 設計方法:Agentforceのエージェント・サブエージェント・アクション機能と、件数や割合を計算するApexで設計する。データはSalesforceの標準オブジェクトと、商談のテキスト項目だけを使う。
  • 期待効果:営業責任者が、受注企業の具体的な課題をもとにターゲットを選定できる。

ユースケース:AIエージェントがテキストデータから課題を抽出してターゲット候補を提案する

UC01 受注企業に共通する課題の特定の全体図。受注・失注それぞれの商談レコードの文章情報を比較し、受注企業に多い課題と属性を根拠付きで示す。課題・解決方法・効果と、営業責任者の業務フロー、Agentforceの裏側の処理を示す。

営業責任者は、半期の計画会議や営業戦略の立案などの前にエージェントへ分析を依頼し、受注企業に多い課題の傾向を把握することで、重点ターゲットを見直します。そして四半期後には、重点ターゲットに選んだ企業とそれ以外の企業の受注率を比べて、選び方を見直します。

このときSalesforceの裏側では、エージェントが期間内の受注・失注の商談の文章を課題ごとに分類し、受注と失注の割合とその根拠となる文章を集計して、ターゲットの候補を提示します。

デモ動画:AIエージェントが受注企業の共通課題を分析して、重点ターゲットの候補を返すまで

本ユースケース用に作ったエージェントの動きを、約100秒にまとめました。動画では次の3つの場面をご覧いただけます。

  1. 受注・失注の商談詳細と、課題が書かれた初回面談の活動履歴を確認する
  2. 営業責任者がエージェントに、受注企業と失注企業の比較を依頼する
  3. エージェントが、受注企業に多い課題と属性を根拠つきで提示して重点ターゲットの候補を提案する

想定シーン:営業責任者が半期の計画や営業戦略の見直しで重点ターゲットを決める

ユースケースの登場人物と利用シーン。営業責任者が半期の計画や営業戦略の見直しで、AIエージェントに受注企業と失注企業の課題の比較を依頼する。営業責任者とAIエージェントそれぞれの役割、利用シーン、依頼する内容を示す。

本ユースケースを使うのは、どの企業を重点的に狙うかを決める営業責任者です。使う場面は次のとおりです。

想定シーンエージェントへの依頼
半期・四半期の計画会議の前受注企業に共通する課題と属性を、失注企業と比べて出して
受注が伸びず、狙う企業の選び方を見直すとき重点ターゲットの候補と、初回面談で確認すべき課題を出して
営業戦略を見直すとき直近1年の受注企業と失注企業で、課題の違いを教えて

営業責任者が知りたいのは、1件ずつの商談の内容ではなくこれまでの受注企業と失注企業それぞれの課題傾向です。エージェントは期間内の受注・失注の商談内容をまとめて読み込み、その課題傾向を提示してくれます。

課題:受注企業の課題は商談レコードのテキスト情報にしか書かれておらず、集計できていない

営業責任者が抱える問題とその原因。業種・規模で重点ターゲットを決めても受注につながるか分からない原因は、課題が商談の文章にしか書かれていないこと、受注企業だけを見て特徴を探していること、課題の把握が担当者の経験談に頼っていることの3つ。

営業責任者は、業種・規模で重点ターゲットを決めてもその企業が受注につながるかどうかが分からないことに悩みを持っています。そして業種・規模でしか重点ターゲットを選べないその原因は、大きく3つあると当社は考えています。

原因①商談レコードのテキスト情報にしか課題が書かれていない

顧客との面談でヒアリングした課題は、活動履歴のコメント、メールの本文、商談メモや問い合わせ内容など、テキスト情報としてSalesforce内に残っています。標準項目の選択リストや数値の項目には記載されていないので、レポートやダッシュボードでは特定できません。

原因②受注企業だけを分析して特徴を探している

受注企業の多くが挙げている課題でも、失注企業も同じくらい挙げていればその課題は受注の条件になりません。受注企業だけを見ていると、この違いに気づけません。

原因③課題の把握が、担当者の経験談に頼っている

文章を読む時間がないと、受注企業の課題は担当者に聞いて把握することになります。聞く相手によって挙がる課題が変わるため、組織として同じ条件を持てません。

つまり、受注企業の課題が分からないのは、課題を気にしていないからではなく、課題が書かれている文章を読んで比べる手段がないからということです。

実装内容:AIエージェントが文章から課題を分類し、受注と失注の差分を抽出する

課題の解決方法。受注企業の割合から失注企業の割合を引いた差を課題・属性ごとに示したグラフ(架空データでの出力例)。差が30ポイント以上の課題と属性だけを重点ターゲットの候補にする判定の基準を示す。

AIエージェントは、人が時間をかけられなかった「文章を読んで、分類して、比べる」作業を代わりに行えます。つまり、これまで手が回らなかった、受注企業と失注企業の課題の比較ができるようになります。エージェントは次の3つの機能で、営業責任者が重点ターゲットを選定するための判断情報を生成してくれます。

実装①商談レコードの文章から、顧客の課題を分類する

期間内に受注・失注した商談について、活動履歴のコメント、初回面談のあとに顧客から届いたメール、商談メモなどのテキスト項目、商談に紐づくメモの文章を読み、決めておいた課題の分類(例:営業情報の属人化、引き継ぎの失敗、管理者の業務負荷、費用の制約)に振り分けます。

そうすることで、営業責任者は文章を1件ずつ読まなくても、受注企業がどんな課題を話していたかを一覧で確認できるようになります。

実装②受注企業と失注企業の割合を並べ、差がある課題と属性だけを取り出す

課題や属性ごとに、受注企業と失注企業の割合を出し、あらかじめ決めた基準で判定します。

判定基準例重点ターゲットにするか
受注企業に多い受注企業の割合が、失注企業より30ポイント以上高い候補にする
受注と関係が弱い差が30ポイント未満候補にしない
判断できない該当する商談が少ない(例:合計3件未満)初回面談で確かめて活動履歴に残し、次回に再分析する

商談の件数が多い会社でも、すべての商談を読む必要はありません。対象期間に受注・失注した商談がそれぞれ400件を超える場合、エージェントは受注と失注からそれぞれ400件を無作為に選んで分析します。

400件ずつ選んで数えた割合は、全件を数えた場合の割合とほとんど変わりません。たとえば、2万件の受注企業のうち70%が「営業情報の属人化」を話していた場合、400件を選んで数えても、ほぼ65〜75%になります。受注企業と失注企業で割合の差がはっきりある課題は、全件を読まなくても同じように見つけられます。

ただし、受注企業と失注企業の差が30ポイント前後の課題は、選ばれた400件によって判定が変わることがあります。そのため回答には、分析した件数と期間内の全件数を必ず示します。

Agentforceのエージェントの回答画面。分析の対象として、期間内の受注・失注の件数と、分析した件数を示している。

実装③課題ごとに根拠となる文章を提示し、重点ターゲットの候補を提案する

Agentforceのエージェントの回答画面。受注企業に多い課題の根拠として、商談名、記載箇所(面談・商談メモ)、該当する文を示している。

示した課題ごとに、根拠となる文(商談名・どこに書かれていたか・該当する文)を付けます。あわせて、属性と課題を組み合わせた重点ターゲットの候補(例:従業員50〜299名 × 引き継ぎの失敗)を、受注率の高い順に3つ示します。

Agentforceのエージェントの回答画面。重点ターゲットの候補(属性と課題の組み合わせ)を受注率の高い順に3つと、初回面談で確認すべき課題を示している。

活用データ:取引先・商談レコードの項目と、商談に紐づく文章

ユースケース実装に必要なデータ。エージェントが読むのは取引先・商談の項目と、商談に紐づく文章(商談のテキスト項目、活動履歴、メール、メモ)。受注理由・失注理由の項目と添付ファイルは読まない。

エージェントが読むのは、Salesforceの標準オブジェクトと商談のテキスト項目だけです。新しい項目を足して入力してもらう必要はありません。

データ分析項目使い方
取引先業種・従業員数・地域・決算月項目の値で比べる
商談受注/失注・完了予定日・流入経路(リードソース)項目の値で比べる
商談のテキスト項目商談メモ・問い合わせ内容・説明など(読む項目は会社ごとに選べる)文章から課題を分類する
活動履歴(ToDo・行動)初回面談などのメモ文章から課題を分類する
メール初回面談のあとに顧客から届いたメールの本文文章から課題を分類する
メモ商談に紐づくメモの本文文章から課題を分類する

ここでは、受注理由・失注理由の項目は読みません。なぜなら、受注理由・失注理由の項目は、受注・失注が決まったあとに、自社サービスを「発注した・見送った」理由が書かれることが多いからです。重点ターゲットを選ぶには、受注・失注が決まる前、つまり初回面談などで顧客が話していた課題で比べる必要があるため、これらの項目は分析に使いません。

人とAIの役割:分析と計算はAIエージェントとプログラム、ターゲット決定は営業責任者

本ユースケースにおける人とAIの役割。決める・読む・計算する・残す・見直すの5つの作業について、営業責任者とAIエージェント・Apexの分担を示す。重点ターゲットを決めるのは営業責任者で、件数・割合の計算はApexが行う。

本ユースケースでは、人とAIの役割を次のように分けます。

作業人(営業責任者)AIエージェント・Apex
決める重点ターゲットを決める決めない。重点ターゲットの候補を提案する。
読むエージェントの回答と、根拠となる文を確認する活動履歴・メール・テキスト項目・メモの文章と、取引先・商談の項目を読む
計算する計算しない件数・割合・受注率は Apex が計算し、AIはその値を使う
記録する初回面談で確認した課題を、面談当日に活動履歴に記載するよう現場に指示する商談データを読むだけで書き換えない
見直す四半期後に、重点ターゲットに選んだ企業の受注率を比べるエージェントへ同じ質問をして、増えた商談レコードもを含めて再分析する

つまり、エージェントが担うのは「読んで、分類して、比べる」までで、重点ターゲットを決めるのは営業責任者ということです。

業務変化:業種・規模で判断していた重点ターゲットの選定が、AI分析を使って課題で選定できるようになる

ここまでの機能を使うと、営業責任者の重点ターゲットの決め方は、どう変わるのでしょうか。

業務フローのBefore/After

エージェント実装後の業務の流れ。営業責任者の分析の依頼から、AIエージェントによる課題の分類と比較、重点ターゲットの候補の提示、営業責任者による決定と共有、四半期後の見直しまでの6つの手順を示す。
業務BeforeAfter
受注企業の課題を知る担当者に受注の理由を聞き、経験談から推測するエージェントが商談の文章から課題を分類し、割合と根拠つきで示す
重点ターゲットを決める業種・規模別の受注件数を見て判断する受注企業に多く失注企業に少ない課題と属性の組み合わせで選定する
現場に共有する業種・規模のリストだけを渡す重点ターゲットと、初回面談で確認すべき課題を根拠つきで共有する
初回面談を記録する担当者ごとに書き方がばらばら確認した課題を面談当日に活動履歴へ記録し、次の分析の材料にする
重点ターゲットを見直す見直しのきっかけがない四半期後に、重点ターゲットに選んだ企業とそれ以外の企業の受注率を比べる

導入後に大きく変わることは、重点ターゲットを決める手がかりでしょう。導入前は、営業担当が数えやすい業種・規模と経験談で決めるしかありませんでしたが、本ユースケースのエージェント導入後は、受注企業が実際に話していた課題を失注企業と比べた上で手がかりにできます。また、初回面談で確認した課題を活動履歴に残し、四半期後に同じ依頼で分析し直すことで、重点ターゲットの選定精度がどんどん高まっていくでしょう。

営業責任者が得られること

本ユースケースの導入による業務変化によって、営業責任者は次の4つを得られます。

  • 重点ターゲットを、業種・規模に加えて受注企業が抱えていた具体的な課題で選定できる
  • 失注企業にも同じくらいある特徴を、受注の条件から外せる
  • 根拠に該当する文章つきで、重点ターゲットと初回面談で確認する課題を現場に共有できる
  • 商談が数万件ある会社でも、抽出した商談で同じように傾向をつかめる

特に3つ目は、現場の納得につながります。「なぜこの企業を狙うのか」を、担当者の感覚ではなく、実際の商談に書かれていた顧客の言葉で説明できるためです。

エージェント導入前に確めたいこと

ただし、どの会社でもすぐに同じ結果が得られるわけではありません。エージェントが分析できるのは、Salesforceに残っている商談データだけです。自社で導入する前に、次の3点を確かめてください。

  • 初回面談の活動履歴に、顧客が話した困りごとが文章で書かれているか?:エージェントが課題を分類できるのは、文章に課題や悩みが書かれている商談だけです。「訪問済み」「次回提案」のような行動記録だけでは分類できません。
  • 1年以上前の活動履歴も読めるか?:Salesforceは、活動日が1年以上前のToDo・行動を自動でアーカイブし、通常の検索の対象から外します。したがって、「直近1年」を分析すると対象期間の前半が抜け落ちるため、アーカイブ済みの記録も読む設定(SOQLのALL ROWS)が必要です。
  • 課題の分類方法が、自社の商談データに合っているか?:キーワードの一覧で分類する場合、「属人化はしていない」のような否定の文や、一覧に無い言い回しは正しく扱えません。拾い漏れが多ければ、AIで1件ずつ分類してからApexで数える方法を選びます。

自社の商談データで試したい方へ

クロスコムでは、本ユースケースのようなAIエージェントを当社のSandbox環境で作り、ユーザーテストで検証しています。Agentforceは当社自身の営業でも使っており、その知見をもとにAgentforce導入・定着支援を提供しています。「導入したけど使えなかった!」とならないよう、貴社の業界や業務フローを理解したうえで、本番環境に出す前のSandboxでの検証から一緒に進めます。

たとえば今回の本ユースケースのように、以下の内容からご支援できます。

  • 活動履歴・メール・テキスト項目に、分析に使える情報が書かれているかを診断
  • 自社の商談データを使った、受注企業に共通する課題と属性の分析
  • 営業責任者向けのエージェントの設計と現場への定着フォロー

こうした支援だけではなく、「まず自社の商談データで何が分かるのかを知りたい」という段階からお手伝いできますので、お気軽にお問い合わせください。

支援の内容と進め方は、Agentforce導入・定着支援のページでご紹介しています。