【2025年最新】国内・海外のメールマーケティング成功事例10選

読了時間 8

現代のBtoBマーケティングにおいて、顧客との継続的な関係構築は企業成長の生命線といえます。SNSや動画コンテンツが注目される中でも、メールマーケティングは依然として最も高いROI(投資対利益)を誇る施策として位置づけられています。

本記事では、国内外の企業が実践したメールマーケティングの10つの成功事例を詳細に分析し、メールマーケティングで成果を出すための戦略的アプローチを解説します。

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本田正憲

合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。中小企業を中心に100社以上のBtoBマーケティング戦略設計や施策実行を支援。MA構築・運用とコンテンツ企画制作による商談数拡大の支援が得意。

【国内・海外】メールマーケティングの成功事例10選

【国内・海外】メールマーケティングの成功事例10選

優れたメールマーケティング施策には、必ず明確な戦略設計と顧客視点でのコンテンツ企画が存在します。

ここでは、実際に定量的な成果を上げた企業事例を通じて、成功に必要な要素を導出していきます。

事例①株式会社BKU|教育コンテンツで4ヶ月で商談数300%

1つ目は、ミャンマー人材の送り出し事業を手掛ける株式会社BKU様です。

BKU社は、マーケティングと営業を1人で兼務し、外部サイトから入手した企業リストに対してテレアポ営業やサービス販促を中心としたメルマガ配信を行っていましたが、MAツールの導入とあわせて、教育コンテンツのメルマガを継続的に配信することで、4ヶ月で商談数300%を達成しました。

この改善策の成功要因は、厚生労働省のような公的機関が掲載している情報をわかりやすく解説したコンテンツに加えて、サービス販促のメールを数カ月間止めていたことでしょう。特に人材送り出し事業では、ニーズの発生時期がバラバラで、ピンポイントでバーニングニーズが発生しない限り、サービス販促による商談獲得は難しいからです。

ほかにも、MAを使った行動データの集計と有意差判定を用いたABテストで、メール配信の目的を「サービス販促」から「ブランド想起」に切り替えたことが、功を奏したのでしょう。

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事例②JBサービス株式会社|放置リストの再活用でセミナー申込を創出

2つ目は、企業のセキュリティ対策を支援しているJBサービス株式会社様の事例です。

JBサービス社は、展示会や営業活動で集めた名刺リスト約7,000件をMAツール(マーケティングオートメーション)上で一元管理し、セグメント化してメール施策に再活用しました。結果として、資料請求とセミナー申込を獲得し、顧客との継続的な関係構築に貢献しました。

この改善策の成功要因は、役職タグを使ってセグメントごとに最適なメッセージを構築したことでしょう。セグメント配信は、1to1コミュニケーションによる個別最適なコンテンツ提供において重要な施策です。

もし仮にこれらのリードを放置したまま、営業が新規開拓にリソースを割いていたとすれば、顧客の検討フェーズに寄り添うアプローチは実現できなかったでしょう。

既存リードの棚卸しとタグを用いたセグメント化が、「今すぐ客」だけでなく「再育成できる顧客層」も含めた個別最適なコミュニケーションとして、商談創出の新たな土壌を掘り起こしたと当社は考えます。

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事例③株式会社ビッグビート|イベント案内メールのセグメント配信で反応1.5倍

3つ目は、BtoBマーケティング支援を手がけるビッグビート株式会社様の事例です。

ビッグビート社は、リードの関心度や行動履歴に合わせてメッセージを最適化することで、特設サイトへのアクセス数を1.5倍以上に向上させました。その成功要因は、参加履歴や興味関心ごとにリストを細分化し、セグメントに応じた訴求コンテンツへ最適化したことでしょう。

イベント案内メールの成果を高めるためには、「誰に」をより解像度高く、個々の関心に合わせて「どう伝えるか」という要素を丁寧に設計し、顧客ごとの検討段階に合わせたメッセージに最適化していくことが不可欠です。ビッグビート社の事例は、配信戦略の粒度を一段階上げるだけで、BtoBイベントの集客成果が目に見えて変わることを証明しています。

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事例④株式会社Kaizen Platform – コンテンツ×メールで商談数と受注率向上

4つ目は、DX支援事業を展開しているKaizen Platform社様の事例です。

Kaizen Platform社はコンテンツとメールを掛け合わせた戦略によって、商談数を約2倍に伸ばし、受注率も大幅に改善しました。この改善策の成功要因は、これまで接点を持っていなかったリードへ定期的にメールと有益なコンテンツを通じて関係構築をしたことでしょう。

MAツールを用いたマーケティングの体系的な取り組みとして、Kaizen Platform社はメールマーケティング施策によるコンテンツを利活用したことが、商談数と受注率の工場を実現したと考えます。

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事例⑤金属加工メーカー|技術情報メルマガで新規顧客4倍に

5つ目は、大型金属や板金加工の製造を行っている、とある老舗の金属加工メーカーです。

この老舗金属加工メーカーは、自社サイトの改善やYouTubeでの情報発信だけではなく、専門技術に関する情報をメルマガで定期的に発信。課題であった「新規リードの獲得」と「営業案件の創出」を継続的に生み出すことで、毎月新規リードの獲得、そして数年間で新規顧客数を4倍にまで伸ばすことができました。

この改善策の成功要因は、現場レベルの具体的な技術情報や最新の技術情報も含めて、自社の高い技術力をアピールした独自性のあるコンテンツだと推測できます。

専門性ある知見をメルマガという“習慣メディア”で発信し続けることは、潜在顧客との信頼構築において極めて効果的です。BtoB製造業においては、製品スペックよりも“技術支援できる企業かどうか”が、発注先の重要な選定基準になります。そうした選定フェーズ以前の段階から「技術的で有益な情報」を届けることが、新たな商談を呼び込む下地になったと伺えます。

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事例⑥ InfoShare Academy|自律型コンテンツで1ヶ月で1200人のコンタクト獲得

6つ目は、プログラミングの学習サービスを提供する InfoShare Academyの事例です。 InfoShare Academyは、IT業界でのキャリアを始めたいと考えているFacebookユーザーを引きつけ、プログラミングの学習方法に関するコンテンツを用いて、1ヶ月で1200人の新規コンタクトを獲得しました。

この成功要因は、ターゲットに最適化された電子書籍「初心者向けのコーディング用語 125 選」を、自律的コンテンツとしてリードマグネットに活用したことでしょう。

実際にInfoShare Academyのデジタルマーケティングスペシャリスト は、以下のコメントを残しています。(英語を和訳しているため、違和感のある解釈はご容赦ください)

コーディングを学び始めたばかりの人たちにリーチし、教育を提供したいと考えました。私たちの競争上の優位性は、卒業生からも認められている質の高いコースにあります。提供するコンテンツの質の高さがそれを反映しています。」 – シルウィア・トカルスカ、デジタルマーケティングスペシャリスト 

いきなりプロダクトを売り込むのではなく、「顧客が自分のペースで学習できる」コンテンツを提供することが、単なるリード獲得ではなく“自社ブランドを好きになってもらう”リード獲得につながるわけです。

事例⑦Cisco|動画活用メールでクリック率200~300%向上

7つ目は、ネットワーク機器大手Ciscoの事例です。Ciscoはメールに短尺動画を組み込むことで、クリック率を従来比200〜300%向上させることに成功しました。

その成功要因は、「ネットワーク製品」というテキストでは伝わりづらい機能や価値を、動画によって“体験的に”理解させることで、興味喚起とアクション喚起の両方を同時に実現できたことでしょう。

具体的な施策として、以下3つの戦略をとりました。

  • 製品のデモンストレーション、顧客の声、教育コンテンツなどを特集したビデオを電子メールに組み込み。
  • クリックを促すために埋め込みビデオプレビューを使用。
  • エンゲージメントを最大化するために、短くて価値の高いコンテンツに重点を置く。

もし、これらの訴求をすべて文章やPDFのリンクで行っていた場合、技術的ハードルの高さや文章理解への負担から、多くの読者が途中で離脱し、クリック率は伸び悩んでいたでしょう。特にIT管理者のような多忙な層にとって、「文章より映像で要点を素早く理解できる」体験は圧倒的なメリットとなります。

このように、Ciscoの事例は、メールマーケティングにおける「可視化された理解」の重要性を示しています。動画という視覚コンテンツは、説明コストを大幅に下げながら、導入イメージや製品の強みを直感的に伝える手段として、有効でしょう。

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事例⑧ECS Publishing Group|セグメンテーションで開封率とクリック率が増加

8つ目は、音楽出版社のECS Publishing Groupです。合唱曲を中心に、様々なジャンルの楽譜の制作を専門としていますが、当時はブランド認知度が高まらず、売上に苦戦していました。しかし、2,000人以上の新規購読者(メールリスト10%増)と開封率は50%、クリック率は3%を獲得することに成功。

この成功要因として、ECS Publishing Groupは以下4つの戦略をとりました。

  • MagentoストアをGetResponseと統合
  • 店舗訪問者にウェブプッシュ通知を送信
  • 顧客の購入履歴と好みに基づいてオーディエンスをセグメント化
  • メールリストの拡大と効率化に注力

仮にこれらの施策を行わず、単なる製品リストや割引情報だけを一斉配信していたとすれば、ECS Publishingの楽譜は「どれを選べばよいかわからないもの」になっていたはずです。選択肢が多い中で購入を決断してもらうには、「その商品を“選ぶ理由”」を伝える必要があります。

BtoBでもBtoCでも、情報の多い時代に読者が求めているのは「要点の一覧」ではなく、「自分と関係がある理由」です。メールはその理由を届ける最初の接点になり得ることがこの施策から伺えます。

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事例⑨TechSoup Polska|メール経由の年間受注総額が1200%増加

9つ目は、非営利団体TechSoup Polskaの事例です。TechSoup Polskaは、加盟団体の活動分野・地域・関心テーマごとに柔軟なメールセグメントを設計し、的確なニュースレターを配信したことで、膨大な非営利組織との接点を効果的に維持しながら、受注総額を前年比1200%増という驚異的な結果に導きました。

この成功要因は、対象読者に対して「私達のメールには、役立つ情報が掲載されている」ことを、コンテンツを通して伝えたことでしょう。

実際にTechSoup Polska プロジェクトコーディネーターは、以下のコメントを残しています。(英語を和訳しているため、違和感のある解釈はご容赦ください)

私たちのメールマーケティングコミュニケーションの主な目的は、TechSoupを通して組織が利用できる製品やサポートについてお知らせすることです。ニュースレターには、新しいオファー、トレーニングへのご招待、リモートワークに最適なツールを選ぶためのヒントなど、様々な情報が掲載されています。」 – Liza Nema、TechSoup Polska プロジェクトコーディネーター 

リスト数の多さや対象層の多様性に悩む企業・団体にとって、「誰に送るか」ではなく、「誰にとって価値があるか」を起点に設計することだと、この事例が明確に教えてくれます。

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事例⑩Crowe Horwath|7ヶ月でROIが133%を達成

10つ目は、公認会計士・コンサルティング事業を展開するCrowe Horwath社の事例です。

Crowe Horwath社は、銀行業界向けのリードナーチャリングプログラムをゼロから設計し、シナリオ配信とスコアリング、営業との情報共有を徹底したことで、7ヶ月で投資回収を完了。営業現場からも「リードの質が根本的に違う」と高く評価される施策となりました。

この成功要因は、単なる情報配信ではなく、購買プロセスを細分化し、それぞれに最適化された48通のメールコンテンツで段階的に関係構築を行ったことでしょう。

たとえば「規制対応トラック」では、初期段階で「金融庁による直近の監督方針まとめ」、中期で「自社のギャップ分析チェックリスト」、後期には「対応支援サービス導入事例集+導入コスト比較表」といった流れで配信。すべてのメールにはCTA(資料DLや相談予約)を設け、行動データをMAで収集しました。

加えて、プログレッシブプロファイリング(段階的な情報収集)も導入されており、初回DLではメールアドレスのみ、2回目には企業規模、3回目では課題項目など、フォームの内容を自動的に切り替える設計により、リードにストレスを与えずに高精度な顧客情報を取得することに成功しました。

もし、こうした段階的なナーチャリングがなかったとすれば、リードに一律で営業が接触し「まだ検討前だった」という温度感のズレが生じ、営業リソースの浪費につながっていたことでしょう。

このように、Crowe Horwathの施策は、「一度の配信で売る」のではなく、「48通かけて信頼を築く」ことに注力したナーチャリングの理想形といえます。

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【考察】成功するメールマーケティングに共通する4つの要因

【考察】成功するメールマーケティングに共通する4つの要因

10の事例を振り返ると、成功を収めた企業はいずれも単発的な施策ではなく、体系的かつ持続可能なアプローチを実行していました。中でも、成果に直結していたのは「誰に・何を・いつ・どう届けるか」の設計精度と、その改善を継続するための仕組みです。

ここでは、10社の取り組みから見えてきた4つの成功要因を抽出し、それぞれの本質を深掘りします。

成功要因①トリガーメール中心のライフサイクル設計

成功企業の多くは、顧客の行動や状況変化をトリガーとした自動メール配信システムを構築しています。単発のキャンペーンメールではなく、顧客のライフサイクル全体を見据えた一連のメールシーケンスが設計されているのです。

例えばJBサービス社では、メール開封やクリック反応に応じて自動的に関連コンテンツを送信する仕組みを確立し、継続的なナーチャリングを実現しました。

このアプローチが効果的な理由は、顧客の関心や検討段階に応じてタイムリーな情報提供ができるためです。ウェルカムメール、行動トリガーメール、リエンゲージメントメールなど、各段階で適切なメッセージを自動送信することで、人的リソースの制約を乗り越えながら個別最適化されたコミュニケーションが可能となります。

重要なのは、単なる製品宣伝ではなく顧客の課題解決に資する情報を段階的に提供し、信頼関係を構築していくことです。実践においては、まず顧客の典型的な購買ジャーニーをマッピングし、各段階で必要な情報や抱える課題を明確化することから始めましょう。

成功要因②マーケ部署と営業部署のハンドオフルールを策定

多くの成功事例で共通して見られるのが、マーケティング部門と営業部門の明確な役割分担と連携体制です。特にCrowe Horwath社の事例では、行動データから質的評価を行い、一定基準を満たしたリードのみを営業に引き渡すルールが確立されていました。

個々で重要なポイントは、従来の「マーケが集めたリードを営業が追いかける」という単純な分業から、「マーケが育成した質の高いリードを営業が確実にクロージングする」という協働関係への転換です。

実際の運用では、リードの質を定量的に評価するスコアリング基準を両部門で合意し、定期的な振り返り会議でプロセス改善を図ることも有効です。また、営業からのフィードバックをメールコンテンツや配信タイミングの改善に活かす仕組みも重要となります。

成功要因③購買意図を捉えたセグメンテーション

すべての成功事例において、画一的な一斉配信ではなく、顧客の属性や行動履歴に基づく精緻なセグメント配信が実施されています。ビッグビート社では、イベント参加履歴や関心テーマによってセグメント分けを行い、1.5倍の反応向上を実現しました。

重要なのは、単なる属性分けではなく、購買意図や検討段階を反映したセグメント設計を行うことです。効果的なセグメンテーションには、明確な仮説と継続的な検証が必要で、ECS Publishing社のように購買履歴データを活用した行動ベースのセグメンテーションも、高い成果を上げる手法として注目されます。

実践的には、まず既存顧客の購買パターンを分析し、共通する特徴や課題を抽出することから始めます。その上で、見込み客を類似パターンでグループ分けし、各グループに最適化されたメッセージを設計します。重要なのは、セグメントごとの成果を継続的に測定し、効果の低いセグメントについては分割方法を見直すことでしょう。

成功要因④ROI訴求コンテンツで購買意思決定を後押し

単なる製品紹介ではなく、顧客の投資対効果(ROI)や課題解決効果を具体的に示すコンテンツも有効です。売り込み色を抑えながらも、確実に購買意欲を喚起するコンテンツ設計として、このROI訴求は重要なコンテンツになります。

例えばTechSoup Polskaの事例では、年間受注総額1200%増という驚異的な成果を実現していますが、これはメール内容が読者にとって直接的な価値(無料ソフトウェア情報や研修案内)を提供していたからです。

効果的なROI訴求コンテンツには、具体的な数値データ、同業他社の成功事例、導入効果のビフォーアフター比較などが含まれます。重要なのは、自社都合の情報発信ではなく、受信者が社内で意思決定を行う際に活用できる客観的で説得力のある材料を提供することです。

メールマーケティングはメルマガだけじゃない?

メールマーケティングはメルマガだけじゃない?

多くの企業がメールマーケティングと聞いて想像するのは、定期的に配信される一斉送信のメールマガジンではないでしょうか。しかし、真に効果的なメールマーケティングは、メルマガという単一の手法に留まらない包括的な顧客コミュニケーション戦略です。

「メールマーケティング=メルマガ」という誤解

従来の企業におけるメール施策は、月1回程度の定期配信メルマガが中心でした。商品情報やキャンペーン告知を全登録者に一斉送信し、開封率やクリック率を測定する程度の運用が一般的だったのです。しかし、この画一的なアプローチでは、受信者一人ひとりの関心や購買段階を無視した情報発信となってしまい、結果として低いエンゲージメントに留まることが多くありました。

実際のメールマーケティングには、トリガーメール、リエンゲージメントメール、セグメント配信、ステップメールなど多様な手法が存在します。Crowe Horwath社の事例では、4つの関心テーマ別に12本ずつ、合計48本のコンテンツを用意した段階的配信プログラムを構築しましたが、7ヶ月でROI133%という目覚ましい成果を達成したのは、さまざまな配信手法を用いたからでしょう。

現代の顧客は、自分に関係のない情報には見向きもしません。むしろ、自社の課題解決に直結する情報や、検討段階に応じた適切なタイミングでの情報提供を求めています。

メールマーケティングの目的は態度変容

また、メールマーケティングの目的は、受信者の態度や行動を段階的に変化させることにあります。単に商品情報を伝達するのではなく、無関心→関心→検討→決定という購買プロセスにおいて、各段階で適切な情報提供を行い、次のステップへと導くことが重要なのです。

そこで、態度変容を促進するためには、受信者の現在の状況や関心レベルを正確に把握する必要があります。JBサービス社では、メールの開封やクリック反応をトラッキングし、反応度に応じて異なるフォローアップメールを送信する仕組みを構築しました。このデータドリブンなアプローチにより、放置されていたリストからも具体的な商談機会を創出することに成功しています。

効果的な態度変容には、論理的な情報提供と感情的な共感の両方が必要です。人間味のあるコミュニケーションは、機能的価値だけではプッシュできない新しい価値を見出し最終的な購買決定につながる重要な要素となるわけです。

メールマーケティング施策を成功させる2つの戦術

メールマーケティング施策を成功させる2つの戦術

成功事例の分析から、特に重要な2つの戦術が浮かび上がってきます。それは「継続的な接点創出」と「Web行動に基づくコンテンツフォロー」です。

この2つの戦術を組み合わせることで、顧客との関係性を段階的に深化させ、最終的なコンバージョンへと導くことが可能となります。

戦術①継続的に接点をつくる

多くの企業が陥りがちな失敗は、初回コンタクト後のフォローアップ不足です。JBサービス社の事例では、展示会で獲得した7,000件の名刺が放置されていましたが、継続的なメール配信により多数のセミナー申込を創出しました。重要なのは、一度の接触で諦めるのではなく、定期的に価値ある情報を提供し続けることです。

しかし、継続的な接点創出には、明確なコンテンツ戦略が必要となります。老舗金属加工メーカーでは、技術情報を中心としたメールニュースを定期配信し、新規顧客数を4倍に増加させましたが、業界の専門知識や技術的なノウハウなど、受信者にとって継続的な価値を持つコンテンツを制作し続けるのは大変です。

なので、実践においては、年間を通じたコンテンツカレンダーの作成から始めることを推奨します。季節性のある業界であれば時期に応じた情報、法規制の変更が多い業界であれば最新動向の解説など、業界特性を活かしたコンテンツ企画はメルマガ配信には効果的です。

戦術②Web行動に対してコンテンツフォローをする

現代のメールマーケティングでは、メール配信だけでなく、受信者のWebサイト上での行動を分析し、それに基づいた追加コンテンツの提供が重要となります。

実際には、Web行動分析を通じて、特定のページ閲覧、資料ダウンロード、動画視聴などのアクションを詳細にトラッキングすることから始まります。Cisco社は、動画の視聴完了率に応じて異なるフォローアップメールを送信し、クリック率を200~300%向上させていましたが、このように、行動データに基づく個別最適化されたアプローチは、高いエンゲージメントを生み出すことができです。

他にも例えば、Webサイトのヒートマップ分析、滞在時間測定、離脱ページの特定などを行い、受信者の関心領域を可視化することができます。その上で、関心の高いトピックについてはより詳細な情報を、離脱が多いページについては別角度からのアプローチを行うメールを設計するなど、分析データに応じてフォローコンテンツも変えていくことが有効でしょう

重要なのは、受信者が能動的に求める情報を先回りして提供することで、メールマーケティングがプッシュ型から顧客主導のプル型コミュニケーションへと進化することです。

海外企業の面白いメルマガを勝手に紹介して評価

海外企業の面白いメルマガを勝手に紹介して評価

海外企業のメールマーケティング施策には、日本では見られない創造的なアプローチが数多く存在します。これらの事例を分析することで、自社のメール戦略に新たな視点を取り入れることができるでしょう。

ここでは、特に注目すべき3つの海外企業のメルマガを取り上げ、その戦略的特徴と成功要因を詳しく解説します。

①MORNING BREW

MORNING BREWのメルマガの注目ポイントとして、420万超の購読者・平均開封率42%を維持する「カジュアル×高密度」トーンが特徴的です。毎朝の忙しい時間帯でも読み切れるよう、複雑なビジネス情報を簡潔にまとめながらも、親しみやすい表現で読者との距離感を縮めることに成功しています。

特に、ゲーミフィケーション要素を取り入れた紹介プログラムや、他チャネルからのフィードバックをメールコンテンツに反映させる双方向性の確保が、エンゲージメント最大化につながっています。

また、2020年から2021年にかけて売上を300万ドルから1,300万ドルへと4倍以上に成長させた背景には、精緻に設計された以下5つの戦略要素が存在したとされています。

MORNING BREWが実施した5つの戦略

1.Referralプログラムで紹介数拡大に注力

2.ニュースを「3秒で要点」+「1行ジョーク」のフォーマットに統一し、可処分時間の短いB2Bマーケターでも毎朝読める体験を設計

3.メルマガ外チャネル(TikTok・Podcast・Twitter・Instagram)で”記憶リマインド”をかけたクロスチャネル戦略

4.休眠購読者に対する厳格な管理を実施し、数週間開封していないユーザーを削除

5.件名のA/Bテストを継続実施

②CB Insights

CB Insightsの注目ポイントは、1行データ/グラフで投資家の目を止める構成です。登録者56万8,000人以上を抱え、5%の開封差で8,700人の可視インパクトを試算するほどKPIに本気で取り組んでいます。

CEO兼創設者のアナンド・サンワル氏がほぼ毎日配信する無料ニュースレターは、スタートアップ業界とM&A関連の市場インテリジェンス情報を、エンターテイメント性豊かに提供している点が特徴的です。

年間約100万ドルの収益をメールニュースレターから創出する収益直結型モデルを確立させるために、以下5つの戦略要素が存在したとされています。

CB Insightsが実施した5つの戦略

1.見出しA/Bテストを日次で回す「Great Wall of Opens」文化

2.無料コンテンツで専門性を示しながら、より詳細な分析は有料サービスへと自然に誘導する設計

3.市場分析という真面目な業務を扱いながら、冗談めいた「データビジュアライゼーション」や「大人が仕事の会議中に牛乳を飲んでも大丈夫ですか?」といった突拍子もない質問で読者の注意

4.「愛してます。」という3つの短い単語でほとんどのメールを締めくくる独特のブランディング

5.一緒に冷たいビールを飲みたくなるような親しみやすいトーン

CB Insightsは、有料コンテンツへのコンバートを目指すB2B SaaSに最適なベンチマークになると考えています。データの専門性とエンターテイメント性を両立させることで、「B2Bは必ずしも退屈なものではない」ことを証明し、業界の常識を覆した画期的な事例といえるでしょう。

狙うは30%以上!BtoBメルマガの開封率を高めるタイトル

例文46選|思わず開いてしまうメルマガ件名作成ガイド~開封率を高める実践的なテクニックと考え方~

メールマーケティングの成功を左右する最も重要な要素の一つが、メールタイトル(件名)の設計です。メルマガの開封率は、調査対象となる企業や調査方法にもよりますが、全体で平均すると15~20%前後とされています、効果的なタイトル設計次第では、30%以上の開封率を達成することも十分に可能です。

緊急性の演出方法、数字を活用した訴求、感情に訴えるワードの選択など、効果実証済みのタイトル作成手法については、こちらの記事で包括的に解説しています。自社のメールマーケティング成果を飛躍的に向上させるタイトル戦略をぜひご確認ください。

開封率は信用できない?メールプライバシー保護がもたらす開封数への影響

開封率は信用できない?メールプライパシー保護がもたらす開封数への影響

2021年9月のiOS15リリース以降、メールマーケティングの効果測定において根本的な変化が生じています。Apple Mailで受信したメールに対し、メールを受信した時に画像をはじめとするすべてのスクリプトやコードデータを事前に読み込むようになりました。

この変化により、従来の開封率データの信頼性に大きな影響が出ており、メールマーケティング担当者は新たな効果測定手法への対応が求められています。詳しく見ていきます。

ユーザーが開封しなくても計測される「ニセ開封」

iOS15より「メールプライバシー保護」が新たに搭載され、受信したメールはApple側でキャッシュされてバックグラウンドで保存されてしまうため、その際に「実際の開封の有無に関わらず自動的に開封した」と見なされてしまう仕様となっています。具体的には、ユーザーがメールを読んでいなくても、iPhoneが自動的に画像を取得するだけで「開封」として記録されてしまうのです。

当社が考えるには、メールマーケティングへの影響として「アクセス有無については受信者が開いた場合、またはiPhoneが自動で取得する割合に限り影響を受ける」と推測しています。また、アクセス時間については、受信者が開いたタイミングだったりiPhoneが自動で取得するタイミングだったりまちまちとなるため、従来のタイミング分析も困難になっています。

勝手にメールが開封される仕組み

Appleはメール内のすべての画像をキャッシュし、特定のジオロケーションではなく、一般的な地域に割り当てられたIPアドレスを持つApple Privacy Cache上の新しい場所に画像のコピーを作成します。この処理によって、Appleがメールサービスプロバイダ(ESP)のサーバーに開封トラッキングピクセルを含む画像を要求する必要があるため、ESPはメールが開封されたと認識しています。

メールプライバシー保護機能は既定で「有効」になっている、もしくはメール受信時に「有効になるように促される」仕様となっているため、結果としてiOS15のほとんどのデバイスではメールプライバシー保護機能が有効になっています。

メール配信の集計数値をどう解釈すればいい?

では、メール配信の集計数値はどう解釈すべきでしょうか?開封時刻、位置、デバイス情報は不正確になる状況下において、今後は、メール本文のリンクのクリック数や、遷移先のコンバージョンポイントを重点的に計測することが主流になっていくでしょう。

重要なのは、開封数・開封率は実態から離れた数値になることもあると念頭に置き、前回配信からの変化を把握する指標の1つとして活用することです。成功事例企業の多くも、開封率だけでなく最終的なビジネス成果(商談数、受注率等)との相関を重視した運用にシフトしており、この環境変化を機にメールマーケティング戦略の質的向上を図ることが求められています。

【すぐに使える】クリックされる無料メルマガテンプレート5選

【すぐに使える】クリックされる無料メルマガテンプレート5選

効果的なメルマガ作成には、デザイン性と機能性を兼ね備えたテンプレートの活用が重要です。ここでは、無料で利用できる高品質なメルマガテンプレートを提供している5つのサービスを紹介します。。

Canva(キャンバ)

Canvaは、直感的な操作で美しいメルマガデザインを作成できるツールとして多くの企業に利用されています。豊富なテンプレートライブラリーには、業種や目的に応じた多様なデザインが用意されており、ブランドカラーやロゴの追加も簡単に行えます。特に、視覚的インパクトを重視したい企業におすすめのサービスです。

Hubspot(ハブスポット)

HubSpotは、BtoBマーケティングに特化したメルマガテンプレートを多数提供しています。リード獲得やナーチャリングに最適化されたデザインが特徴で、CTAボタンの配置やコンテンツ構成も効果的に設計されています。マーケティングオートメーションとの連携も可能で、包括的なメール戦略を構築したい企業に適しています。

MailChimp(メールチンプ)

世界的に利用されているメール配信サービスMailChimpは、レスポンシブデザインに対応した高品質なテンプレートを提供しています。モバイル表示最適化やA/Bテスト機能も充実しており、データドリブンなメルマガ運用を実現できます。国際的な基準でデザインされたテンプレートは、グローバルな視点でのメールマーケティングにも対応しています。

Benchmark(ベンチマーク)

Benchmarkは、シンプルで読みやすいメルマガテンプレートを豊富に取り揃えています。日本語フォントに最適化されたデザインが多く、日本企業にとって使いやすいサービスといえます。また、テンプレートカスタマイズの自由度が高く、企業の個性を反映したオリジナルデザインの作成も可能です。

Zoho Campaings(ゾーホーキャンペーンズ)

Zoho Campaignsは、ビジネス用途に特化したメルマガテンプレートを提供しています。CRM連携機能も充実しており、顧客データベースと連動したパーソナライズメールの作成が可能です。テンプレートギャラリーでは、業種別やキャンペーン目的別に整理されたデザインを効率的に選択できます。

メールマーケティングに活用できるツール6選

効果的なメールマーケティングには、適切なツール選択が不可欠です。顧客セグメンテーション、自動配信、効果測定など、多岐にわたる機能を統合的に提供するマーケティングオートメーションツールの活用により、成功事例企業のような高い成果を実現することが可能となります。

詳細なツール比較と選定ポイントについては、機能面・価格面・導入のしやすさなど多角的な観点からの分析が必要となるため、専門記事をご参照ください。各ツールの特徴や活用方法、導入事例を含む包括的な情報は、こちらの記事でご確認いただけます。

戦略視点のメールマーケティングが成功する

本記事で紹介した10の成功事例の分析から見えたのは、メールマーケティングの成果は施策の巧拙よりも、戦略設計の質によって決まるということです。単発的なキャンペーンや画一的な一斉配信では、現代の顧客ニーズに応えることはできません。重要なのは、顧客の購買ジャーニー全体を見据え、各段階で最適な価値提供を行う包括的なアプローチです。

今こそ、自社のメールマーケティング戦略を根本から見直し、顧客中心のアプローチへと転換する時期といえるでしょう。本記事で紹介した成功事例の手法を参考に、データドリブンなセグメンテーション、継続的な価値提供、組織横断での連携体制を構築することで、あなたの企業でもメールマーケティングの真の効果を実感できるはずです。