初年度から売上167%アップ !マーケティング戦略設計~施策運用のプロジェクトを全公開​

某ベンチャー企業(社名非公開)
事業 :農業系のフランチャイズ事業
従業員:30~50名
課題 :事業売上目標を達成したい
    ゼロからマーケティング戦略を構築したい
    初年度から事業目標を達成させたい

クロスコムでは、中小企業を中心に累計100社以上のマーケティング支援を行ってきました。今ではMA/CRM導入・運用支援に軸足を置いていますが、それまではWeb広告やLP制作、オウンドメディア立ち上げなど、集客施策も長く行ってきました。

そんな中「マーケティング戦略がないから1から作りたい」「人が足りないから、制作も施策運用もやってほしい」とご相談いただいたのが、今回ご支援しました農業系の某ベンチャー企業様です。

この記事では、企業様の課題背景から実際にクロスコムがどのように支援し成果を出したのかについて、具体的に書いていきます。

農業系のフランチャイズ企業(社名非公開)

今回ご紹介する企業様(社名非公開、以下A社と呼ぶ)は、日本の「農業従事人口の減少」という社会課題の解決に向けて、農業に特化したフランチャイズ事業を展開する会社です。

新規就農は「儲からない」「重労働でしんどい」「知見がないと難しい」という高いハードルがあり、参入障壁が高い分野ともいえます。そこでA社は、農業従事人口を増やして日本の食料自給率を上げるべく、国内で栽培・収穫する農業事業のフランチャイズ事業を立ち上げました。

そこで今回は、このフランチャイズ事業の新規顧客拡大に向けて、弊社がマーケティング戦略の設計から運用施策まで一貫支援した具体的な支援内容をお伝えしていきます。

課題と背景

プロジェクト参画前の事業体制として、A社は広告や展示会などオンライン・オフラインで集客した見込み顧客をスプレッドシートで管理し、営業担当がメールや電話でアプローチしていました。

しかし、高単価商材で認知の少ないサービスだったため、営業時には明確な価値提供を伝える必要があったのですが、設定していたターゲットが「売上を増やしたい中小企業の経営者」と解像度も粗い状態。また、数千件の見込み顧客リストに対して営業が片っ端からアプローチしている非効率さが目立ち、リソース的にこれ以上数字を伸ばすには限界があるような状態でした。

これらの状態からわかるように、A社は「マーケティングに関して知見がないため、やり方は任せる」スタンスでしたので、マーケティングに関してはほぼ担当者に丸投げ。とにかく成果を出せばいいという状態でした。

そこで弊社では、メンバー間の認識をそろえるためにまずターゲットの課題定義から入り、マーケティング戦略を1から設計し直すことにしました。

ここからは、プロジェクト参画後に具体的にどのような支援を行ったかを、施策別にご紹介します。

【短期改善】広告・LPのクリエイティブ制作

まずは戦略設計から取り掛かろうと思っていましたが、戦略設計の工数を考えると効果が表れるのは数か月先の話。それまで目に見える成果がないのは、周囲からの理解が得難く十分なサポートが得られなくなると考え、まずは現行施策の短期改善へ着手することに。それが、Facebook広告の運用でした。

別のプロジェクトでFacebook広告運用を担当していたこともあり、広告運用の改善はできる自信がありました。実際には、カスタムオーディエンスから類似オーディエンスの1本化(類似度別で合計5本)、またバナー・コピーを1広告1メッセージに統一して、訴求軸別に分けて20広告ほど作成。さっそく広告設定を変更して運用開始。

結果、2か月目からサービス資料請求の平均CPAを7,000円近くまで下げることができました。

バイヤーペルソナの設計

ペルソナが課題に感じる「状況」に着目

まず行ったのが、企業・意思決定者それぞれのバイヤーペルソナを「状況」に着目して1つ決めることでした。当初は、これらのペルソナがドキュメント化されておらず、また「売上を増やしたい中小企業の経営者」という解像度の粗い設定だったからです。

ちなみにこのバイヤーペルソナ設定の根拠については「フランチャイズ事業だから、成功モデルを用いて新しい収益軸が確立できる点は誰にとっても魅力的だから」という理由があったからだったそうです。

しかし、売上を増やしたい課題の解決策は、経営コンサルティングや他社との協業など他にもやり方はあるわけです。もし社員数に余裕がなくて、新しい事業にヒトを回す余裕がない、初期資金を支払う余裕がない「状況」での課題だった場合、果たしてフランチャイズ事業は全経営者の解決策になりそうでしょうか?

つまり、今のペルソナの解像度が粗いことが原因で、自社サービスが実際に課題を解決できる「最適な解決策」なのか分からなくなります。解像度の粗いペルソナ設定では、十分な成果は期待できません。

「企業」「意思決定者」それぞれのペルソナを作成

そこで、企業と意思決定者それぞれのペルソナをつくりました。BtoBビジネスでは、個人ではなく企業がサービスを購入し利用するので、最終的な購買決定は企業が行います。なので、企業の意思決定フローを設定するために、企業のペルソナもつくることとしました。当時のペルソナシートが、上図の通りです。

あと、ペルソナシートを作成する上で重要なことは、先述した「状況」に着目することです。「年齢40歳で東京在住の会社員、趣味はスポーツで….」のような属性項目から設定しても、訴求内容が定められません。後述しますが、バリュープロポジションの対象者が属性に関係ないケースもあり、ムダにターゲットを狭めてしまう可能性があるからです。

なので、「商談化率の課題を解決するために、テレアポ代行業者へ外注している。しかし成果が芳しくなく、改善案もふんわりしていて目標達成に陰りが見えてきた..」のような行動から状況を特定することで、顧客がこの状況で感じる価値は何か?と推察することが重要です。

課題を感じる状況をさっそく特定するために、シンクタンクやWebメディアが掲載している新規事業立ち上げの調査データを調べて、課題状況をいくつかピックアップ。ペルソナを2~3つ作成し、シートへ落とし込みました。

そして、作成したペルソナシートの内容で問題ないことを営業担当と合意形成し、A社としてどのペルソナに向けて一貫したコミュニケーションを取るかの「WHO」を定めることができました。

バリュープロポジションをつくる

次に行ったのが、選ばれる理由を言語化することでした。

当時はあまり理解できていなかったのですが、バリュープロポジションがこの「選ばれる理由」に該当すると考えます。バリュープロポジションとは「競合が模倣できない、自社だけが提供できる顧客価値」のことです。

当時クライアントは、収益軸の訴求を強く推していました。具体的な数値は控えますが、他のフランチャイズ事業より高収益が売りだったので、広告・LP・メール配信でも「高収益」「安定利益」の訴求でコピーライティングしていました。

しかし、私が作成したペルソナの「状況」では、高収益へ関心を持つ前に、新規事業立ち上げに割く人がほぼいないという設定にしていました。また、高収益訴求は一見関心を惹くものの、どの企業も推すような「既視感強めのコピー」に感じられていたので、読み手もおそらくこのコピーに飽きている・疑っているとも推測していました。

そこでペルソナの状況を踏まえて、いくら収益訴求してもリソース的に立ち上げがそもそもできないのでは?という問いを立て、自社の提供価値を見直すことにしました。そしてその状況に限定して、自社が選ばれる理由として考えたのが、上図のバリュープロポジションでした。

他社には模倣困難だと当時は手ごたえを感じていたので、早速この選ばれる理由をもとに、広告・LP・メール配信のコピーを改修していきました。

ここで大事なことは、選ばれる理由を必ず「言語化」することです。なぜなら、言語化できないメッセージを施策運用の実務に落とし込むことは難しいと考えていたからです。

「だいたい雰囲気で伝わる」ようなフワっとした言葉は、だいたいが抽象的です。抽象的なコトバは現場からすると解釈に大きな余地が生まれるため、メッセージ性が分かれてしまうと考え、とにかく言語化していました。

備考)バリュープロポジションの作成方法として、クロスコムでは以下の手順を推奨しています。

①自社サービスの特徴から「購入される理由」を考える
②顧客が最も課題に感じる「状況」を決める
③顧客のベネフィット(実現したい状況)を決める
④ベネフィットを手に入れる上で重要な購買決定要因を考える
⑤購買決定要因に必要な自社の機能を洗い出す
⑥同じベネフィットを提供できる競合の機能と比較する
⑦自社だけが提供できる「独自の価値」を生み出す

このようにして、ペルソナ・バリュープロポジションの設計を行い、次の顧客導線の設計を進めていきました、

CRMツールの導入

Hubspot Marketing Hubの導入

ペルソナ・選ばれる理由の設計と同時に行っていたのが、CRMツールの導入でした。マーケティング担当は1人だけですし、企業担当それぞれのニーズへ個別最適するにはリソース的に無理だったからです。そして(詳細は後述しますが)、このCRMツールを導入したから、商談数を30%に引き上げることができました

本プロジェクトでは、シンプルなUIの使いやすさ重視でHubspot Marketing Hubを導入しました。ただ、当時私はHubspotツールを使うのが初めてで、機能や運用知識がありませんでした。

そこで、導入作業と並行して、Hubspotが提供している無料のホワイトペーパーやブログ記事を読んで、CRMツールの使い方や考え方を学びました。他にも同じCRMツールのSalesforceの資料や記事を読んでとにかく知識を蓄積することに注力し、導入後の運用設定に備えていました。

ツール導入の際は、マーケティング・営業・カスタマーサポートそれぞれの業務がどう変化するのか、どう変えたいかをヒアリングしながら進めることが重要です。

当時は企業も「それもマーケティング担当にお任せ」状態でしたので、データ取り込みや外部ツールとの連携をこちらで行い、無事導入完了したところで、どのように組織的に活用していくかのレクチャーを営業担当中心に行いました。

データインポートとフォーム作成

CRMツールの導入が完了したら次は、これまでスプレッドシートにて管理していた企業データをCRMへインポートし、既存の問い合わせフォームや申込フォームをHubspotの作成フォームに切り替えました。

Hubspotには、それぞれの企業担当を商談や契約へ繋げるまでのアプローチを「自動化」するマーケティングオートメーション(=MA)機能が備わっています。BtoBですとメールが最も費用対効果と有効性が高いため、メール配信をベースにMA機能を駆使していくわけです。

広告や展示会で獲得した企業データをすべてCRMツールへインポートし一元管理することで、どの広告でフォーム送信をしてきたか、何月何日何秒に自社のブログ記事ページへアクセスしたか、営業担当がいつ個別でメールフォローを対応したかのあらゆるデータを、企業担当1人1人を識別して確認することができるわけです。

クライアントの保有していたスプレッドシートの企業リストも、営業担当がそれぞれのルールで更新していくので、入力形式がバラバラだったり、リストが重複しているなど、データが整理されていませんでした。

Hubspotには名寄せ機能があったので(Professinal Plan以上が対象?)重複企業リストを抽出し統合することができましたが、ツールによってではできないかもしれません。その場合は、CRMツールへエクスポートする前に、スプレッドシートの状態でクレンジングすることを推奨します。

バイヤージャーニーを設計する

CRMに企業データを取り込んだところで、次は見込み顧客の購買プロセスをつくりました。いくら見込み顧客を獲得しても、全ての見込み顧客がすぐにサービス契約を検討するわけではないので、どうアプローチすれば最終的に購買判断へ至るかを考えることが重要になります

実際に弊社が販売支援していたフランチャイズ商品は、数百万円の高単価で即決できるビジネスではなかったので、購買に対する不安を解消するコミュニケーションが継続的に必要だと考えていました。(実際に、リード化して1年後にご契約いただく企業もいらっしゃいました)

そこで、獲得した見込み顧客の関心度に応じてどんなコンテンツを提供すれば、商談・受注へつなげられるかを整理するために、購買プロセスを見える化しました。それが、上図の通りです。

当時クライアントは、展示会とWeb広告で集客していたので、獲得した見込み顧客それぞれの初回接点は異なっていました。初回接点が異なると、関心事も会話の内容も異なるため、1人1人にあわせたコミュニケーションが本来必要になります

しかしそれでは、1人1人にあわせて毎回購買プロセスをつくらなければならず、かなりの時間がかかってしまいます。そこで、先ほど設計したペルソナをもとに購買プロセスを1つ作成します

初回接点から購買に至るまでのプロセスをドキュメント化しておくことで、各ステージの購買体験を次へ促進させるために必要なコンテンツを明確にできます。ぜひ見込み顧客の認識変化を捉えて、購買プロセスを促進できるようにしましょう。

コンテンツを作り分ける

作成した購買プロセスをもとに、次は各フェーズの見込み顧客へ提供するコンテンツを作り「分け」ました。あえて「分ける」と使っているのは、購買プロセスのステージごとで関心コンテンツが異なる為、状態に合わせてコンテンツを出し分けることが好ましいからです。

× コンテンツをペルソナに提供する
○ コンテンツを「ペルソナの状態に合わせて」提供し分ける

基本的に、見込み顧客はサービス自体に興味はありません。最も興味があるのは自分自身ですので、本来サービスを購入する際は、「サービスではなく、サービスを利用した後の”自分の未来”に興味があるから購入する」が正しい表現です。

課題意識がない見込み顧客へいきなりサービス提案しても嫌われるだけですし、サービス検討してる見込み顧客へ消費者インサイトレポート出しても、ニーズとズレた提案になります。当時は上図のように、見込み顧客の状態に合わせてコンテンツ制作を出し分けていました。

また当時はコンテンツ制作に不慣れでしたので、参加ウェビナーや請求資料のスライド構成や視覚情報のデザインで、分かりやすくて伝わりやすいと思ったものをよく取り入れながら自身のコンテンツ制作に活用していました

このように、見込み顧次のステージへ移行できるように(意思決定ができるように)コンテンツを作成することに注力していました。

MAのワークフローを構築

作り分けたコンテンツをそれぞれ適切なタイミングで見込み顧客へ届けるために、次はCRMツールを使ってメール配信の自動化体制を構築しました。具体的には、導入したHubspotのワークフロー機能を使って、見込み顧客の行動や状態に合わせて自動でメールを出し分けていました。上図は、そのシナリオの一部です。

基本的にBtoBビジネスでは検討期間が長く、また高単価商材となれば失敗リスクに対する不安も大きいので、納得して購入決断するために必要なコンテンツを「届ける」ことに注力しました。つまり、一度や二度メールを見落としてもいいように、毎週コンテンツ配信をして開封してもらうよう注力していたということです。

当時のメールの配信頻度は、最低週1日で配信、ウェビナーやイベントを案内する際に都度配信でした。「配信メールの70~80%が開封されない(認知されない)」という統計データを聞いたことがあったので、個人的にはコンテンツさえあれば毎日送ってもいいと思っていました。配信するコンテンツがあれば、、、ですが

あと上図には記載ありませんが、ワークフロー設計のもう一つのポイントとして、熱量が高い行動直後の見逃さないことです。見込み顧客が企業のコンテンツに対して何らかの反応や行動があるには、必ず意図やニーズがあります。その行動直後を見逃さないよう、

実際に当時広告で獲得した見込み顧客には、資料請求のフォーム送信日から3日間連続でメール配信するよう設計を組んでいました。まったくサービスを知らなかった未顧客が、たまたま広告を見てサービス資料を請求する行動をしてくれた瞬間が最も熱量が高いとも言えます。その瞬間を見逃さないよう「初回接触時=熱量が最も高い」という認識のもと、メールを連日配信していました

目標設定

短期改善した広告・LPとHubspotのワークフローを連動させたところで、リード獲得から商談化までを自動化できる体制は構築できました。細かい修正点は適宜修正作業しましたが、走らせる優先でこのまま運用支援を開始することに。その際に、目標管理シートにて広告と商談化・商談成功率までを指標分解して管理しました。

後は担当者として、Facebook・Google広告、バナー制作、LP制作・修正、メール配信、コンテンツ企画・制作など、もう一名のマーケティング担当といっしょに運用改善していきました。

プロジェクト支援後の運用体制の変化

このように、短期改善、マーケティング戦略設計、CRMツール導入など、本事業の全体を1から立ち上げ運用してきました。最初から完璧な成果を出せ続けていたかというとそうでもなく、運用の中でどんどん改善を繰り返し進めていたことが結果的に成果につながったのですが、ある程度仮説を持って検証を繰り返す作業は長いプロジェクト期間の中で必須であることは、最後にお伝えしておきます。

実際にプロジェクト支援を振り返ると、Hubspot導入が最も効果的だったなと感じています。特に、見込み顧客ごとのWebアクティビティの可視化やワークフローの構築によるリード育成の自動化は、営業効率化の面でとても有用だったと思います。

各ステップでの細部まではお伝えしきれていなかったのですが、この記事を通してクロスコムが実際に取り組んだプロジェクトのリアルが少しでも伝われば嬉しいです。

・マーケティング戦略(ターゲットやバリュープロポジション)を一から立ち上げたい
・リード育成やコンテンツ企画をお願いしたい
・まずはざっくり壁打ちから依頼したい

などのご相談もお受けしていますので、お気軽にご相談くださいませ。