「うちはデータが足りないから、まだ早い」と言われて止まっていませんか。AIエージェントに必要なデータ量とは、学習に使う件数のことではありません。いま参照できる形で記録が残っている範囲のことです。 解決の手段として本記事で扱うAgentforceの機能と提供状況は更新が続くため、記述は2026年9月時点の情報にもとづいています。
そこで本記事では、データ量が足りないと感じる状態から、増やしてから始めても解けない理由、使えるデータかを判断する4つの条件、少ないデータで使い始める手順までを解説します。
当社はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、 ソリューション営業に特化したAgentforce導入・定着支援を 行っています。
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- 設定は完了したが現場に定着しない
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この記事を書いた人
合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。現在はSalesforce公式コンサルティングパートナーとして、ソリューション営業の業務プロセスに特化したAgentforce導入・定着支援と、Agentic CRM設計支援を提供している。
CRMのデータ量が足りないと感じる3つの状態
精密測定機器の商社では、従業員96名のうち営業が12名、営業事務2名という体制で事業を続けてきました。この企業は説明のための架空の設定であり、実在の企業ではありません。CRMには4,800件の商談が登録されています。件数だけを見れば十分に思えますが、担当者ごとに入力の粗さが違い、過去の案件を探しても目当てのものが出てきません。社内では「データが足りないから、まだ早い」という言葉が繰り返されてきました。そこでここでは、この会社を例に、データ量が足りないと感じる3つの状態を整理します。
登録が4,800件まで増えたあとも、必要な案件にたどり着けない状況は変わっていません。件数を増やす方向で考えている限り、この状況は続きます。足りないのは件数ではありません。どこを見ればよいかが決まっていない状態です。
状態①商談の記録の粗さが担当者ごとに違う
1つ目は「商談の記録の粗さが担当者ごとに違う」状態です。同じ項目に、まったく違う量の情報が入っています。
粗さが揃わないのは、何をどこまで書くかが本人の判断に委ねられているためです。ある担当者は打ち合わせの内容を数行で残し、別の担当者は日付だけを入れますが、どちらも入力としては成立しているため、システム上は「入力済み」と数えられます。集計すると入力率は高く出るのに、中身を開くと使えない状態が生まれます。
この精密測定機器の商社では、直近12か月に動いた1,150件のうち、直近30日の記録が入っていたのは38%でした。営業事務の担当が全件を開いて数えたもので、残る62%は30日以上前の記録で止まっています。件数はあっても、いまの状況を追えるのは一部でした。
粗さの判定は入力率では足りません。担当者ごとに数件ずつ開き、書かれている量にどれだけの開きがあるかを確かめるところまでを、最初の点検にします。
状態②過去の案件を探しても見つからない
2つ目に挙げるのは、過去の案件を探しても見つからない状態です。似た商談があったはずなのに、たどり着けません。
見つからないのは、探すための手がかりが記録に残っていないためです。商材名や業種が自由入力の欄に散らばっていると、検索の語がひとつ違うだけで出てきません。担当者は結局、記憶を頼りに「あの案件を担当したのは誰か」と社内で聞いて回ります。この状態では、記録が増えても探せる件数は増えません。
先ほどの会社でも、過去の類似案件を探す作業に1件あたり20分ほどかかっていました。営業事務の担当が記録したところ、探して見つからずに諦めた回数は月に9回です。4,800件という登録数は、探せない限り数字としてしか存在しませんでした。
探した回数と、たどり着けた回数を並べて記録しておくと、改善の効果を後から比べられます。月9回という水準が続くようなら、記録の探しやすさから手を入れる番になります。
状態③件数はあるが、どこを見ればよいか決まっていない
3つ目は「件数はあるが、どこを見ればよいか決まっていない」状態です。同じ情報が複数の場所に入っています。
決まっていないと困るのは、同じ問いに対して違う答えが返るためです。金額が商談の欄と見積の添付の両方にあり、更新されたのが片方だけということが起きます。人が見れば新しいほうを選べますが、機械は指定された場所を読みます。どちらを正とするかを決めていない状態では、正しい答えを返しようがありません。
この会社では、金額・期日・段階・次の予定・担当・最終接触という6項目について、参照する場所が定まっていませんでした。営業事務の担当が洗い出したところ、金額は3か所、期日は2か所に入力されていたことが分かっています。
確かめるのは項目の単位で、金額のように3か所へ散っているものから先に手を付けます。1か所に決まっていない項目は使えません。
データを増やしてから始めても解けない3つの理由
ここまで挙げた3つの状態は、いずれも「まずデータを整えてから」という判断につながります。実際、多くの解説が必要な件数の目安を示し、足りなければ集めるよう勧めています。ところが件数を積んでも、先ほどの3つの状態は変わりません。そこでここでは、データを増やしてから始めても解けない3つの理由を整理します。
この会社でも「1万件は要るのではないか」という見立てが出ていました。集め終わるまで着手できないと考えれば、判断は先送りになります。件数を増やしても始められません。増やす作業に終わりが来ないからです。
| 比較の観点 | 件数を増やしてから始める場合 | 参照できる形にしてから始める場合 |
|---|---|---|
| 手を入れる対象 | 全件の記録 | 1つのユースケースに要る項目 |
| 対象にする期間 | 過去すべて | 直近の一定期間 |
| 終わりの判定 | 目安の件数に届いたら | 6項目の参照先が決まったら |
| 現場に求めること | 入力の量を増やす | 決めた項目だけを埋める |
| 着手までの期間 | 数か月から年単位 | 6週間ほど |
理由①学習に使う件数が要るわけではないから
まず、業務で使うAIエージェントは、自社のデータで学習させる仕組みではありません。そのため、学習に使う件数を基準に置いても、始められるかどうかの判断にはつながりません。
学習と参照は別の話です。モデルを自分で作る場合は、正解を付けた大量の記録が要ります。一方、業務用のAIエージェントは質問を受けたその場でCRMの記録を読みに行き、読んだ内容から答えを組み立てるため、読む対象が1件でも、その1件が読める形にあれば答えは返ります。社内データの扱いについても、入力した内容が学習に使われない設計です。
Salesforceが公開しているAgentforce Privacy FAQ(2025年6月公開)でも、顧客のデータはモデルの学習には保持されず、使用されないと書かれています。
※参考記事はこちら
この精密測定機器の商社でも、当初は「1万件は要るのではないか」という話が出ていました。実際に対象としたのは直近12か月に動いた1,150件です。4,800件のうちの一部でしたが、応答は成立しました。
検討を始める前に、使う仕組みが学習型か参照型かを確かめてください。参照型であれば、1万件という見立ては判断の材料になりません。
理由②増やす作業に終わりが来ないから
学習の前提を外しても、件数を増やす計画には終わりが来ません。目安の件数に届いても、次の不足が見つかります。
終わらないのは、判定の基準が外から与えられないためです。「何件あれば十分か」という問いには、用途を決めない限り答えが出ません。用途を決めないまま件数だけを追うと、届いた時点で「項目が足りない」「期間が足りない」と条件が増えていきます。整備の計画は延び、着手はそのぶん遅れます。
先ほどの会社では、以前に全件のデータ整備を計画したことがありました。着手から3か月で対象の4分の1まで進んだところで、優先度の高い案件対応が入って止まっています。残りに手を付けないまま、1年が過ぎていました。
終わりの条件を先に紙へ書いておけば、中断したあとで再開するかどうかも決められます。決まらない計画は途中で止まります。
理由③件数が増えるほど参照先が散らばるから
さらに、件数を増やす作業には副作用があります。記録を足すと、同じ情報の置き場所も増えます。
散らばるのは、新しい記録が既存の様式に従うとは限らないためです。営業が増えれば書き方の癖が加わり、商材が増えれば専用の欄が追加されます。件数が2倍になったとき、金額の入力先が3か所から5か所へ増えていれば、答えの正確さはむしろ下がります。量を追う施策は、この副作用を計算に入れていません。
この会社では、過去3年で商談の登録数が2,900件から4,800件へ増えていました。同じ期間に、案件の情報を入れる欄は4つ追加されています。件数が増えるほど、どこを見るべきかは分かりにくくなっていました。
件数と参照先の数を、同じ期間で並べて見ましょう。両方が増えていれば逆効果です。
AIエージェントが使えるデータかを判断する4つの条件
前章の3つの理由は、いずれも「量では判定できない」という一点に行き着きます。では何を基準に判定すればよいのでしょうか。使えるかどうかは、記録の状態を4つの条件に当てて確かめられます。判定に要るのは集計の作業ではありません。対象の案件をいくつか開いて、条件に当てはまるかを見るだけです。そこでここでは、AIエージェントが使えるデータかを判断する4つの条件を整理します。
この会社が最初につまずいたのも、4つのうち1つ目の条件でした。使えるデータかどうかは4つの条件で決まります。参照先・直近・根拠・意味の揃いです。
条件①参照先が1つに決まっているか
1つ目は「参照先が1つに決まっているか」という条件です。同じ情報を読む場所が、項目ごとに定まっているかを見ます。
これを最初に置くのは、決まっていなければ答えが安定しないためです。金額を3か所から読める状態では、どれを返すかで結果が変わります。1か所に決めておけば、返る答えは常に同じになります。決めるのは統合の作業ではありません。どこを正とするかの取り決めです。
この精密測定機器の商社では、金額・期日・段階・次の予定・担当・最終接触という6項目について、参照する場所を1つずつ決めました。作業としては1週間で終わっています。データを移す作業は行わず、読む場所を定めただけです。
参照先を決める項目は、手を動かす前に書き出しておきます。移す作業より先に、決める作業です。
条件②直近の記録が入っているか
2つ目に挙げるのは、直近の記録が入っているかという条件です。古い記録がいくらあっても、いまの判断には使えません。
直近を見るのは、営業の状況が動き続けているためです。半年前の段階のまま止まっている案件を根拠に答えを返せば、内容は誤ります。逆に、直近の記録が入っていれば、過去のすべてを整えていなくても答えは成立します。判定は期間で区切るのが分かりやすく、直近30日という基準がひとつの目安になるでしょう。
先ほどの会社では、対象とした1,150件のうち、直近30日の記録が入っていたのは当初38%でした。入力の導線を整えた3か月後には86%へ変わっています。対象を広げず、期間で区切ったことによる変化です。
直近30日の記録が入っている割合を測りましょう。全期間の入力率よりも実態に近い数字です。
条件③元の記録を開けるか
3つ目は「元の記録を開けるか」という条件です。返ってきた答えの根拠を、その場でたどれるかを見ます。
開けることが要件になるのは、疑われた時点で使われなくなるためです。営業は自分の案件について、返ってきた内容が正しいかを瞬時に判断します。違和感を持ったときに元の記録へ数秒で移動できれば、確かめて先へ進めます。開けなければ、その回答は使われません。根拠を示せる形で情報を渡す考え方はナレッジ設計の記事でも扱っています。
この会社では、3か月の応答612件のうち、元の記録を開けたのは575件でした。割合にすると94%です。開けなかった37件は、複数の記録をまたいで集計した回答でした。
根拠を開けなかったのが集計をまたぐ回答だけであれば、この条件は満たしています。個別の案件で開けない回答が出ているなら、参照先の決め方から見直します。
条件④同じ項目が同じ意味で使われているか
4つ目は「同じ項目が同じ意味で使われているか」という条件です。欄の名前が同じでも、入れている中身が揃っているとは限りません。
揃っていることが要るのは、機械が言葉の意味を推し量らないためです。「段階」の欄に、ある担当者は提案中と入れ、別の担当者は見積提出と入れます。人が読めば近い状態だと分かりますが、集計すると別のものとして数えられるため、選択肢を絞るか、判定の条件を文章で決めるかのどちらかが必要になります。
この精密測定機器の商社では、段階の選択肢を8つから5つへ絞りました。使われていなかった3つを外したもので、営業事務の担当が1年分の入力を数えて判断しています。絞った後は、同じ段階に入る案件の性質が揃いました。
手順としては、選択肢ごとの件数を1年分数えるところから始めます。使われていない選択肢は迷いを生みます。
ユースケースごとに要る3種類のデータ
前章の4つの条件は、どのデータに当てるかを決めてから使います。当てる対象は用途によって変わり、すべての記録を同じ水準に揃える必要はありません。何に使うかが決まれば、要るデータの範囲も決まります。何から始めるかはユースケースの選び方の記事で扱っているため、あわせて確認してください。そこでここでは、ユースケースごとに要る3種類のデータを整理します。
同じCRMの記録でも、次の打ち手を尋ねる用途と、条件を確かめる用途では要る範囲が変わります。要るデータはユースケースで変わります。すべてを揃える必要はありません。
種類①商談の状況を示す記録
1つ目は「商談の状況を示す記録」です。いまその案件がどこにあるかを示す情報を指します。
この記録が要るのは、状況を前提にしないと答えが的外れになるためです。次の打ち手を尋ねられたとき、提案前の案件と見積提出済みの案件では返すべき内容が違います。金額・期日・段階・次の予定という4つが揃っていれば判断の材料としては足り、過去の全案件に揃っている必要はありません。いま動いている案件に入っていれば成立します。
この精密測定機器の商社では、対象を直近12か月に動いた1,150件に絞りました。全4,800件のうちの一部です。営業事務の担当が範囲を決め、それ以外の案件には手を付けていません。
対象を決める基準は、直近12か月に動いたかどうかの1点です。止まった案件は後から足せます。
種類②社内で使う手順の文書
2つ目に挙げるのは、社内で使う手順の文書です。商材の仕様、価格の条件、対応の手順といった資料が該当します。
文書が要るのは、記録だけでは判断の理由を示せないためです。「この条件は通るか」という問いに答えるには、条件を定めた文書が要ります。ただし社内の資料をすべて入れる必要はありません。参照させる文書を絞るほど、返る内容は安定します。複数の情報源を横断して扱う仕組みについてはData 360の記事で扱っています。
先ほどの会社では、参照させる文書を11本に絞りました。商材の仕様書が6本、価格の条件が3本、対応の手順が2本です。社内の共有フォルダには200本以上ありましたが、更新が続いているものだけを選んでいます。
絞り込みは更新の有無で判断でき、200本のうち11本まで落としても運用は成立しました。古い資料は誤りの元になります。
種類③相手とのやり取りの履歴
3つ目は「相手とのやり取りの履歴」です。訪問の記録、メールの往復、問い合わせの内容が含まれます。
履歴が効くのは、経緯を踏まえた答えを返せるようになるためです。同じ質問でも、過去に一度断られている相手と、初めて話す相手では前提が違います。ただしこの種類は、揃っていなくても始められます。状況の記録だけで成立するユースケースは多く、履歴は後から足す順番で構いません。
この会社では、着手の時点で履歴を対象に含めませんでした。訪問の記録が担当者ごとにばらついていたためです。3か月の運用を経て、記録の形が定まってから追加する計画にしています。
履歴は後回しにしてよい種類です。訪問の記録の書き方が担当者のあいだで定まってから足すほうが、手戻りが出ません。
データが足りない範囲をAIに任せる3つの線引き
前章で要る3種類が決まりました。次に決めるのは、揃っていない部分をどう扱うかです。足りない範囲まで自動で答えさせると誤った内容が現場へ届くため、Agentforceでできることの範囲を押さえたうえで、任せる線を引く必要があります。そこでここでは、データが足りない範囲をAIに任せる3つの線引きを整理します。
この会社が最初に応答の対象としたのは、1,150件のうち38%の案件だけでした。記録が揃っていない範囲は、候補の提示までに留めます。
線引き①記録が揃っている範囲だけ任せる
1つ目は「記録が揃っている範囲だけ任せる」ことです。答えを言い切らせるのは、条件を満たした範囲に限ります。
限る理由は、揃っていない範囲で言い切ると誤りが混ざるためです。次の予定が空の案件について「進捗はありません」と返せば、実際には動いているのに止まって見えます。参照先が決まり、直近の記録が入っている案件だけを対象にすれば返る内容は事実に沿い、対象を絞ることが精度を高める作業にもなります。
この精密測定機器の商社では、直近30日の記録が入っている案件だけを応答の対象にしました。当初は1,150件のうち38%です。残る案件については、記録が入っていない旨をそのまま返す形にしています。
言い切らせる範囲を、条件で区切りましょう。外れた案件は件数として残るので、どこから手を付けるかの順番も決められます。
線引き②足りない範囲は候補の提示までにする
2つ目に挙げるのは、足りない範囲は候補の提示までにすることです。断定させず、確かめる相手を人にします。
提示までに留めるのは、判断の責任を人に残すためです。記録が不十分な案件でも、似た条件の案件を並べることはできます。「この3件が近い状況です」と示せば、担当者は自分の記憶と突き合わせて判断できます。断定した答えより、候補のほうが役に立つ場面は少なくありません。
先ほどの会社では、履歴が揃っていない案件について、類似の案件を3件まで並べる形にしました。営業からは、探す手間が減ったという反応が出ています。以前は月に9回あった「探して見つからない」が、3か月後には月2回へ変わりました。
並べる件数は3件までに決めておくと、担当者がその場で比べきれます。選ぶのは人が行います。
線引き③根拠を開けない範囲は任せない
3つ目は「根拠を開けない範囲は任せない」ことです。元の記録をたどれない答えは、返させません。
任せない理由は、確かめる手段がないためです。複数の案件をまたいで集計した数字は、どの記録から来たのかを示しにくくなります。示せなければ、営業は内容を確かめられません。集計の結果を返す必要があるなら、対象とした案件の一覧を添える形にします。
この会社では、3か月の応答612件のうち根拠を開けなかった37件が、いずれも複数の案件をまたぐ集計でした。この37件については、対象の案件を一覧で添える形へ改めています。
一覧を添えられない問いは、応答の対象から外します。外した問いを記録しておけば、次に整える範囲を選ぶ材料になります。
少ないデータで使い始める4つのステップ
ここまでで、判断の条件、要る3種類、任せる範囲がそろいました。あとは着手の順番です。全件を整えてから始めようとすると、着手はいつまでも来ません。対象を絞り、期間で区切れば、いまの状態からでも始められます。4つのステップは、いずれも営業事務の担当1名で進められる範囲です。そこでここでは、少ないデータで使い始める4つのステップを整理します。
この会社が着手までに使ったのは6週間で、営業事務1名の工数は計36時間でした。最初に決めるのは件数ではありません。1つのユースケースに要る項目です。
ステップ①1つのユースケースに要る項目を書き出す
まず取りかかるのは、用途を1つ決めることです。決めた用途に必要な項目だけを書き出して並べます。
書き出しから始めるのは、要る範囲が用途によって変わるためです。次の打ち手を尋ねるだけなら、金額・期日・段階・次の予定・担当・最終接触の6項目で足ります。用途を決めずに整備を始めると、どこまでやれば終わりかが決まりません。書き出した項目の数が、そのまま作業の範囲になります。
この精密測定機器の商社では、営業事務の担当が6項目を書き出しました。所要は半日ほどです。項目を決めた時点で、手を付けない範囲もあわせて決まりました。
書き出した項目が6つを超えるようなら、用途をもう一段細かく決め直します。手を付けない範囲も、同じ紙の上で決まります。
ステップ②直近の期間だけを対象にする
項目が決まったら、次は対象にする期間を決めます。過去のすべてを含めず、直近だけで区切ります。
区切る理由は、古い案件を整えても判断には効かないためです。3年前に終わった商談の段階が正確でも、いまの打ち手は変わりません。直近12か月に動いた案件だけを対象にすれば、作業の量は数分の1になります。範囲を広げるのは、効果を確かめてからで間に合います。
先ほどの会社では、対象を直近12か月の1,150件に決めました。全4,800件のおよそ4分の1です。残る案件はそのまま残し、削除も整備もしていません。
区切りの目安は、商談が動いている期間より少し長い程度で足ります。この会社は12か月にしましたが、商材によっては6か月でも判断できます。残した案件は、そのままで構いません。
ステップ③足りない項目を入力の導線に組み込む
対象が決まったら、足りない項目をどう埋めるかを決めます。あとから埋める作業にはせず、日々の操作の中で埋まる形にします。
組み込む理由は、まとめて埋める作業が続かないためです。過去分の入力を依頼しても、営業の手は動きません。一方、商談を更新する画面で次の予定を求められれば、その場で入ります。項目を増やす手は取りません。既にある項目を通らないと先へ進めない形に変えるのが要点です。
この会社では、次の予定と最終接触という2項目を入力の導線に組み込みました。商談の段階を変更する操作の中に置いたもので、営業への依頼は行っていません。3か月後には、直近30日の記録が入っている割合が38%から86%へ変わりました。
組み込む項目は2つまでにとどめると、営業の操作は重くなりません。38%から86%への変化は、この2項目だけを置いた結果です。
ステップ④3か月で判断できる規模に区切る
最後に、続けるかどうかを判断する期限を決めます。3か月で結果が見える規模に区切ります。
区切る理由は、期限のない取り組みが評価されないためです。効果が出ているかを判断できなければ、次の投資も止まります。1つの用途、絞った項目、区切った期間であれば、3か月で結果が見えるでしょう。規模を小さくすることは、判断を早めるための設計でもあり、中小企業での始め方の記事でも同じ考え方を扱っています。
この精密測定機器の商社では、着手から6週間で運用に入りました。営業事務1名で、要した工数は計36時間です。3か月の運用で、担当者が回答を直した回数は月18回から月4回へ変わりました。
期限を先に置いておけば、続ける根拠も、やめる根拠も同じ数字で示せます。以上が、少ないデータで使い始める4つのステップでした。
データの準備でつまずく3つの落とし穴
前章の4つのステップは、順番どおりに進めば6週間ほどで運用に入ります。ところが実際には、途中で止まる会社が少なくありません。止まり方には型があり、いずれも良かれと思って選んだ手が原因になっています。3つに共通するのは、作業の量を増やしながら、着手を先へ送ってしまう点です。そこでここでは、データの準備でつまずく3つの落とし穴を整理します。
3つのうち最初の1つは、この会社が実際に選んで止まった手です。全件のクレンジングから始めると、着手が3か月遅れます。
落とし穴①全件のクレンジングから始める
1つ目は「全件のクレンジングから始める」ことです。登録済みの記録をすべて正しくしてから使おうとします。
止まる理由は、作業の量が現場の余力を超えるためです。4,800件の記録を1件ずつ確かめれば、1件2分でも160時間かかります。通常の業務と並行して進めるうちに優先度の高い案件対応が入って中断し、戻ったときには整えた記録が古くなって、最初からやり直しになっています。
この精密測定機器の商社でも、以前に全件の整備を計画して止まった経験がありました。着手から3か月で4分の1まで進み、そこから1年動いていません。今回は対象を1,150件に絞り、6週間で運用に入っています。
全件の整備は、運用に入ったあとで必要になった範囲だけ行えば足り、対象を絞れば6週間で判断できます。
落とし穴②項目を増やして入力を求める
2つ目に挙げるのは、項目を増やして入力を求めることです。足りない情報を、新しい欄を作って埋めようとします。
うまくいかないのは、増えた欄が営業の手を止めるためです。商談を1件更新するのに求められる入力が増えれば、更新する手が止まります。結果として、新しい欄も既存の欄も埋まらなくなります。埋めたい情報があるなら、既にある項目のうち通らざるを得ないものに絞るのが順当です。
先ほどの会社では、欄を増やさず、次の予定と最終接触という2項目だけを入力の導線に組み込みました。段階を変更する操作の中に置いたことで、依頼をせずに埋まる形になっています。
定着まで伴走してほしい場合は、この型を避けられているかを支援先に確かめてください。欄を増やす提案が出てきたら、いったん止めて考える場面です。
落とし穴③件数を目標にする
3つ目は「件数を目標にする」ことです。登録数や入力率を目標に置き、その達成を追いかけます。
目標として機能しないのは、達成しても使える状態になるとは限らないためです。入力率は、日付を1つ入れるだけでも上がります。数字が改善しても、参照先が散らばったままなら答えは安定しません。追うべきは登録の量ではありません。答えが返ったときに根拠を開けた割合です。
Salesforce自身の発信(2025年11月27日公開)でも、量より質を先に置き、最初から全件をそろえなくてよいという進め方が示されています。
※参考記事はこちら
この会社では、以前は入力率を月次で追っていました。数字は80%台で推移していましたが、直近30日の記録が入っていた割合は38%です。同じ記録を別の基準で測ると、見え方が変わりました。
月次で並べる数字は2つに絞ると続きます。入力率は補助として残し、報告の先頭には置きません。
データが使える状態になったかを測る4つの指標
前章の落とし穴を避けたうえで、次に要るのは変化を確かめる手段です。件数を目標から外すなら、代わりに何を見るかを決めなければなりません。指標は運用の中で自然に取れるものに絞ると続きます。4つとも、集計の仕組みを新しく作らずに、応答の記録から月ごとに取り出せる数字です。そこでここでは、データが使える状態になったかを測る4つの指標を整理します。
この会社が月次で見ていた入力率は80%台でしたが、使える状態かどうかはその数字から読み取れませんでした。見るべきは登録の件数より、根拠を開けた回答の割合です。
指標①参照できた案件の割合
1つ目は「参照できた案件の割合」です。問い合わせた案件のうち、答えが返った割合を見ます。
この指標を最初に置くのは、対象の絞り方が適切かを示すためです。割合が低ければ条件を満たす案件が想定より少なく、逆に高すぎる場合は対象を広げる余地があると読めます。運用の初期は、この数字を見ながら範囲を調整します。
この精密測定機器の商社では、運用の初月に参照できた割合が41%でした。分母は問い合わせのあった案件で、動いている案件に偏るため、対象1,150件の全体で見た直近30日の割合よりわずかに高く出ています。入力の導線を整えた3か月後には88%へ変わりました。
参照できた割合を月ごとに見ましょう。低ければ、対象の条件を見直します。
指標②根拠を開けた回答の割合
2つ目に挙げるのは、根拠を開けた回答の割合です。返ってきた答えから、元の記録へたどれた割合を見ます。
この数字が効くのは、使われ続けるかどうかを左右するためです。開けない回答が続けば営業は内容を信用しなくなるため、割合が下がったときは、集計をまたぐ回答が増えていないかを確かめます。答えの正しさとは別に、確かめられるかを独立して測る意味がここにあります。
先ほどの会社では、3か月の応答612件のうち575件で元の記録を開けました。割合にすると94%です。開けなかった37件は、いずれも複数の案件をまたぐ集計でした。
目安として94%を下回った月は、集計をまたぐ回答の本数から先に確かめます。正しさを測る数字とは別の欄に並べておくと、読み違えません。
指標③直近30日の記録が入っている割合
3つ目は「直近30日の記録が入っている割合」です。対象とした案件のうち、最近の記録が残っている割合を見ます。
この指標を置くのは、入力の導線が働いているかを示すためです。依頼で埋めた記録は依頼をやめると止まりますが、導線に組み込んだ項目であれば、割合は運用とともに上がり続けます。下がり始めたときは、操作の流れが変わっていないかを確かめる合図になります。
この会社では、この割合が38%から86%へ変わりました。期間は3か月で、営業への入力依頼は一度も行っていません。段階を変更する操作の中に2項目を置いたことによる変化です。
直近30日の割合を追いましょう。3か月で38%から86%まで動いた後は、同じ水準を保てているかだけを月ごとに見ます。
指標④担当者が回答を直した回数
4つ目は「担当者が回答を直した回数」です。返ってきた内容を人が修正した回数を数えます。
この回数を見るのは、任せる範囲が適切かを判定できるためです。修正が多い領域は、記録が条件を満たしていないか、任せる線を引き違えています。回数を領域ごとに分けて記録すれば、どこを直せばよいかが具体的に見えます。ゼロを目指す数字ではありません。傾向を読むための数字です。
この精密測定機器の商社では、月18回から月4回へ変わりました。残る4回は、価格の条件に関わる回答に集中しています。この領域は人が確かめる範囲へ移しました。
回数は月ごとに並べ、直した内容の種別まで残しておくと、翌月に何を直すかが決まります。集中している領域が、直すべき場所です。
人がデータを確かめるべき3つの場面
前章の指標が示すのは、任せた範囲が適切かどうかです。ただし数字が良くても、人が確かめるべき場面は残ります。記録が揃っていても任せない領域があるのは、判断の重さが正確さとは別の基準で決まるためです。3つとも、金額・文面・基準の変更という、あとから取り消しにくい領域に集まっています。そこでここでは、人がデータを確かめるべき3つの場面を整理します。
この会社が人の確認へ移したのは、月4回ほど出ていた価格の条件に関わる回答でした。金額の条件は、人が確かめてから外へ出します。
場面①金額の条件を決めるとき
1つ目は「金額の条件を決めるとき」です。価格や支払いの条件を確定する場面が該当します。
人が確かめるのは、誤りの影響が大きいためです。記録に残っている金額が最新とは限らず、口頭で合意した変更が反映されていないことがあります。機械は記録された数字を正しいものとして扱うため、この差を見抜けません。金額に関わる回答は、担当者が元の記録を開いてから使う運用にします。
この精密測定機器の商社では、価格の条件に関わる回答を人の確認の対象にしました。月に4回ほどで、確認にかかるのは1件あたり3分ほどです。3か月で、誤った条件が外へ出た事例は発生していません。
確認の手順は、担当者が元の記録を開いて金額の更新日を見るところまでです。3分で足ります。
場面②社外へ出す文面に使うとき
2つ目に挙げるのは、社外へ出す文面に使うときです。相手へ送るメールや提案の文面が該当します。
確かめる必要があるのは、社外へ出た内容は取り消せないためです。記録の中には、相手に伝えていない社内の判断が混ざっています。過去の値引きの経緯や、社内で共有した評価がそのまま文面に入れば関係に影響するため、外へ出る文面は、担当者が読んでから送る形にします。
先ほどの会社では、案内の文面を作らせる用途は当初から対象外にしました。参照させる文書を11本に絞ったのも、この判断と同じ考え方です。社外向けの文面は、担当者が一から書いています。
社外向けの文面を作らせるかどうかは、送る前に人が全文を読む運用を置けるかで決めます。読む時間を確保できないなら、この用途は対象から外しておくほうが安全です。
場面③判定の基準を変えたとき
3つ目は「判定の基準を変えたとき」です。段階の定義や、対象とする期間の条件を変えた直後を指します。
確かめるのは、変更の影響が想定と違う形で出るためです。段階の選択肢を減らせば過去の案件がどの段階に入るかが変わり、対象の期間を12か月から6か月へ狭めれば、参照できる案件の数も変わります。変更した直後の1週間は、返る内容を人が見て確かめる期間にします。
基準を変えた影響は、作った本人には見えにくいものです。設計した担当者とは別の人が読む1週間を置くと、想定との違いに気づけます。
この精密測定機器の商社では、段階の選択肢を8つから5つへ絞った直後の1週間、営業事務の担当が返る内容を毎日読んでいました。想定と違いが出たのは、提案中と見積提出をまたぐ案件です。
変更の前後で同じ質問を投げ、返る内容の違いを並べておけば、影響の範囲は1週間で見極められます。違いが出ないようなら、変更が効いていないと判断できます。
データの設計に外部支援を使う4つの判断軸
ここまでの内容は、営業事務の担当1名でも進められる範囲です。ただし対象の絞り方や項目の決め方で迷う場面はあり、外部の支援を検討する会社もあります。支援先を選ぶときは、実績の数より判断の作法を見るのが確実です。4つとも、最初の打ち合わせの受け答えから確かめられます。そこでここでは、データの設計に外部支援を使う4つの判断軸を整理します。
この会社は営業事務1名で進めましたが、対象の絞り方では迷う場面が残りました。支援を選ぶ基準は実績の数ではありません。要る項目を業務から決められるかです。
判断軸①要る項目を業務から決められるか
1つ目は「要る項目を業務から決められるか」という軸です。何を使うかを、営業の仕事の側から説明できるかを見ます。
この軸を最初に置くのは、項目の決め方が成果を左右するためです。システムの都合で項目を並べると、現場が使わない情報ばかりが残ります。ツール設定ではなく業務設計から入ってほしい場合は、最初の打ち合わせで営業の1日の流れを聞かれるかどうかで判断できます。選定の進め方は導入支援会社の選び方の記事をご確認ください。
この精密測定機器の商社でも、項目を決める前に営業12名の1日の動きと、商談の段階を変えるタイミングを洗い出しています。その結果として、6項目のうち2つを入力の導線へ回す設計が出てきました。
要る項目を業務から説明できるかを確かめましょう。設定の話から入る相手は、この軸を満たしません。
判断軸②小さく始める形を示せるか
2つ目に挙げるのは、小さく始める形を示せるかという軸です。最初の3か月で何をどこまでやるかを、具体的に示せるかを見ます。
この軸が要るのは、範囲を絞る提案ができる会社が限られるためです。全体の整備計画を出すほうが、支援としては大きくなります。1ユースケースのスモールスタートで小さく始めたい場合は、契約の前に次の3つを数字で示してもらいましょう。
契約の前に確かめる数字 ①対象の件数・・・何件を対象にするか ②対象の期間・・・直近どこまでをさかのぼるか ③扱う項目の数・・・いくつの項目を決めるか
この精密測定機器の商社が自社で決めたのも、1,150件・直近12か月・6項目という3つの数字でした。
3つのうち1つでも空欄で返ってくるなら、範囲が定まっていない提案です。件数・期間・項目の3つが埋まっていれば、複数の会社の見積もりを同じ条件で比べられます。
判断軸③自社で構築する前提に対応できるか
3つ目は「自社で構築する前提に対応できるか」という軸です。作るのは自社で、設計だけを見てもらう形に応じられるかを見ます。
この軸を置くのは、体制によって必要な支援が違うためです。社内に情報システムの担当がいる会社では、構築まで任せる必要がありません。自社で構築するので設計レビュー・アドバイザリーだけ頼みたい場合に応じられるかは、支援の形が固定されていないかを示します。項目の設計と判定の条件だけを見てもらう契約は、成立します。
この精密測定機器の商社には情報システムの担当がおらず、営業事務1名で設計まで進めました。社内に担当がいる会社であれば、6項目の決め方と判定の条件だけを見てもらう形で足ります。
設計だけを見てもらう形に応じるかどうかは、初回の打ち合わせで確かめられます。形が固定されている相手は合いません。
判断軸④営業の商談を理解しているか
4つ目は「営業の商談を理解しているか」という軸です。扱っている商材と商談の進み方を、支援先が把握しているかを見ます。
この軸が効くのは、要る項目が商材によって変わるためです。仕様の擦り合わせに数か月かかる商材と、カタログから選んで終わる商材では記録すべき内容が違うため、ソリューション営業に特化した支援がほしい場合は、商談の段階をどう区切っているかを聞かれるかどうかが目安になります。当社のAgentforce導入・定着支援では無料相談も受け付けていますので、詳しくはAgentforce導入・定着支援をご覧ください。
精密測定機器のように仕様の確認が入る商材では、段階の数と定義を先に共有しておくと話が早く進みます。聞かない相手は、商材の違いを踏まえられません。
【一問一答】CRMのデータ量に関するよくある質問
ここまで、データ量が足りないと感じる状態から、使えるかどうかを判断する条件、少ないデータで使い始める手順、支援先の選び方までを整理してきました。最後に、実際の検討でよく出る質問をまとめます。件数の目安、古い記録の扱い、空欄の項目、担当者の決め方、期間の見込みという5つを取り上げ、いずれもこの記事で挙げた精密測定機器の商社の数字に沿って答えています。自社の状況と照らして、判断に迷う場面の目安として使ってください。
質問①データ量はどのくらい必要ですか?
件数の目安はありません。用途を1つ決め、その用途に要る項目が、いま動いている案件に入っていれば始められます。この記事の例では、直近12か月に動いた1,150件と6項目が対象でした。全4,800件のうちの一部です。
質問②古い記録もデータ量として数えますか?
データ量として数えるのは直近の記録だけです。この記事の例に挙げた精密測定機器の商社も、過去3年で登録が2,900件から4,800件へ増えていましたが、対象は直近12か月に動いた1,150件に絞っています。3年前に終わった商談の内容が正確でも、いまの打ち手は変わりません。古い案件は削除も整備もせず、そのまま残しておけば十分です。
質問③データ量はあるが項目が空欄でも使えますか?
使えます。この会社も、対象1,150件のうち直近30日の記録が入っていたのは当初38%で、その38%だけを応答の対象にしました。空欄の案件を対象から外す条件を先に決めておけば答えは事実に沿い、空欄が多い項目を日々の操作の中で埋まる導線に組み込めば、依頼をせずに割合が上がります。
質問④データの整備は誰が担当しますか?
営業事務や営業企画の担当が向いています。この記事の例では1名が6週間・計36時間で進めました。項目を決める作業には営業の意見が要りますが、作業の量は1名で回せる規模です。
質問⑤データはどのくらいの期間で使える状態になりますか?
対象を絞れば6週間ほどです。参照先を決めるのに1週間、項目の書き出しに半日、残りが導線の設定と確認にあたります。全件を整えようとすると、この期間は数か月から年単位に伸びます。
CRMのデータ量は、件数より参照できる形かどうかで決まる
ここまで見てきたとおり、データが足りないという言葉は、多くの場合、件数の話ではありません。参照先が決まっていないか、直近の記録が入っていないか、根拠を開けないかのいずれかが起きている状態を、量の問題として受け取っているだけです。件数を増やす計画は終わりが来ず、増やすほど参照先も散らばります。
先に決めるのは、どの用途に何を使うかです。用途が1つ決まれば要る項目が決まり、項目が決まれば対象の期間も決まります。この記事の例では、4,800件を1件も増やさず、対象を1,150件・6項目に絞って6週間で運用に入りました。直近30日の記録が入っている割合は38%から86%へ、担当者が回答を直した回数は月18回から月4回へ変わっています。
いま手元にある記録から始められるかどうかは、4つの条件に当てれば判定できます。参照先が1つに決まっているか、直近の記録が入っているか、元の記録を開けるか、同じ項目が同じ意味で使われているか。この4つを1つの用途について確かめるところから、着手できます。
