メールマーケティングで配信成果を出す上で、「誰に、いつ、何を届けるか」は非常に重要です。見込み顧客はサービス契約まで一直線に進むわけではなく、自社に最適な課題や解決方法を特定するまで様々な議論を行うからです。それにもかかわらず、一斉配信で誰にとっても同じメッセージを送り続けると、期待する情報が提供できず開封もクリックも伸びません。
そこで有効なアプローチが、特定の共通項で分類したリストへ配信するセグメント配信です。本記事では、メールマーケティングにおけるセグメント配信について、よくある落とし穴やセグメントの見つけ方、具体的なセグメント方法まで広く解説していきます。
- メールマーケティングにおけるセグメント配信とは?
- 【まず見て】セグメントメール配信における3つの落とし穴
- メールマーケティングにおける有効なセグメントの見つけ方
- メールマーケティングで活用できる主なセグメント配信6選
- 【実践から分かった】商談化率を高めるセグメントの3つの条件
- セグメントメールの配信が有効な利用シーン3選
- 【具体例付き】セグメントメール配信の本文はどう工夫すべき?
- メールマーケティングにおけるセグメントメールの分析方法
- 【実績あり】クロスコムが実践したメールマーケティングのセグメント施策
- セグメント配信で効果を上げたメールマーケティング事例3選
- 【一問一答】メールマーケティングにおけるセグメント配信のよくある質問
- セグメントメール配信はまず関連性が必須
当社はBtoB中小企業の商談化支援を中心とした、メールマーケティングやMA導入・運用、マーケティング戦略設計に強い会社です。
「商談数が増えない」「コンテンツ案が思いつかない」「どう改善すればいいか分からない」というお悩みがあればお気軽にご相談ください!無料の壁打ち相談も受付けております。
この記事を書いた人
合同会社クロスコムの代表|専門商社にて7年間のBtoB営業を経て、マーケティング業界に参入。中小企業を中心に100社以上のBtoBマーケティング戦略設計や施策実行を支援。MA構築・運用とコンテンツ企画制作による商談数拡大の支援が得意。
メールマーケティングにおけるセグメント配信とは?

メール配信で成果が伸びない原因に、内容の良し悪し以前に、受信者との関連性があります。では、その関係がある状態をどう設計すればいいのでしょうか。
ここでは、セグメント配信の考え方を整理しつつ、混同されやすい手法との違いまで解説します。
セグメント配信とは
セグメント配信とは、顧客リストを条件に応じて分け、グループごとに最適化したメールを届ける手法です。言い換えるなら、同じメールを全員に送るのではなく、同じテーマでも、受け手の文脈に合わせてメッセージや伝え方を変えるための設計だといえます。
この考え方が効く理由は、受信者がメールを読むかどうかを、瞬時に自分事化で判断するからです。たとえば、BtoBは論理的に検討される一方で、接触時は直観的に判断されるため、自分と関係が薄いと感じた時点で読まれません。だからこそ、セグメント配信は文章テクニックではなく、受信者の関心ごとを理解し運用に落とすことが重要になります。
たとえば、同じ導入事例の紹介でも、製造業の経営層には投資対効果やリスク低減の切り口が刺さりやすく、一方で現場担当者には運用負荷や手戻り削減の具体像が響きます。IT部門が関与するサービスなら、要件やセキュリティの話が早い段階で必要になる場合もあるでしょう。こうした違いを前提にメールを「届け分ける」ことができるのが、セグメント配信の特徴です。
セグメンテーションとステップメールの違い
セグメンテーションとステップメールは、似ているようで役割が違います。結論から言うと、セグメンテーションは「誰に送るか」を決める設計であり、ステップメールは「いつ、何を、どういう順番で送るか」を決める設計です。
たとえば、製造業の経営層というセグメントを決めたうえで、初回は課題の整理、次に投資対効果の考え方、最後に導入事例と社内説明資料のテンプレートへ、という流れをステップメールとして設計するイメージです。
つまり、セグメンテーションは配信対象を設計し、ステップメールは配信順番を設計します。両方をうまく組み合わせることで、検討プロセスに沿ったメール配信が可能になります。
セグメンテーションとクラスタリングの違い
また、セグメンテーションとクラスタリングも異なります。簡単に言えば、クラスタリングはデータが持つそれぞれの類似性に基づいてデータを複数のグループに仕分ける処理のことを指します。クラスタリングは統計学の世界で用いられるデータの仕訳方法の一種で、マーケティングの領域ではよく耳にする言葉でしょう。最近では機械学習の領域でもクラスタリングは行われる機会が多く、AIがデータごとの差異を理解する際にクラスタリングが実行されています。
セグメンテーションとクラスタリングの違いは、分類するグループがはじめから存在するのか、全体の属性の傾向から自然とグループが生まれるのか、という点です。セグメンテーションはデータの属性を把握した上でデータを分類するため、事前に複数のグループを用意して、そこにデータの属性にあわせ、関連度が高いもの同士でグループ化したデータをカテゴリごとにそれぞれのリストへ格納していきます。
一方のクラスタリングは、セグメンテーションとは異なり分類のためのグループをはじめから設けません。データを分析して自然とグループが生まれていくようなデータ処理のため、分析を通して新しい発見や意図していなかったグルーピングが生まれる可能性もあります。
このように、クラスタリングはデータの類似性から新しいセグメントを発見する手段としても活用できますが、セグメンテーションはヒトがあらかじめ定めたセグメントを行う点で異なります。
【まず見て】セグメントメール配信における3つの落とし穴

セグメント配信は相手に合わせて届ける分、成果が伸びやすい一方で、設計を間違えると「合わせたつもりがズレている」状態にもなりやすい手法です。
ここでは、メールマーケティングの実務で特につまずきやすいセグメント配信の落とし穴を3つに絞って整理します。
落とし穴①リーチ数が減少して有意な結果が得られにくくなる
「精度を上げよう」と細かくセグメントを分けすぎると、一つ一つのセグメントが小さくなりすぎて有意な結果が得られなかったり、配信数自体が減って効果測定が難しくなったりします。
実際に、セグメントを絞り込みすぎてデータが溜まらず効果検証できないという失敗も聞きます。「広すぎず狭すぎず」のバランスを取ることが大切で、セグメント設定の目安としては、反応率や売上への寄与を測定できるだけのボリュームを確保する必要があります。
例えば、アクティビティが少ない層をすべて配信対象から除外してしまうと十分なリーチ数が確保できません。過剰に除外条件を設定せず、重要なセグメントには多少広めでもリーチするようにしましょう。
落とし穴②人的ミスによる誤配信のリスクが高まる
セグメント条件の誤りや顧客データの古さが原因で、間違った相手に間違った内容を送ってしまうと、かえってブランドの信頼を損ねる恐れがあります。
例えば、「関西限定キャンペーン」を関東在住の顧客に送ったり、主婦層にビジネス向け商材の案内を送ったりすると、「自分には関係ない」と判断され開封もされず、最悪の場合配信停止(オプトアウト)につながります。こうしたミスマッチは、「この会社は自分のことを理解していない」という悪印象を与え、せっかくの施策が台無しになりかねません。
対策としては、定期的なデータクレンジングと属性情報のアップデートを行うことで、古い顧客情報に基づいて誤った役割のコンテンツを送り続けないよう予防する必要があります。また、配信前のテストメール送信でセグメント抽出条件を検証し、想定外の受信者が含まれていないかチェックすることも有効です。
落とし穴③過剰なパーソナライズで不快感を与える
セグメント配信は基本的にパーソナライズを強める方向に作用しますが、過剰なパーソナライズはかえって逆効果になる場合があります。それは、受信者が「ここまで個人情報を把握されているのは気味が悪い」「しつこく感じる」と捉えると、メールをブロックされたり購読解除されるケースです。
例えば、閲覧履歴や行動履歴を逐一メールで突きつけるような内容(「○○の商品を〇月〇日にご覧いただいたと思いますが、、、」など)は、煩わしさよりも気味悪さを感じさせる典型的なケースです。実際に、マーケティングオートメーションの失敗例でも「パーソナライズのやり過ぎでリードにネガティブな印象を与えた」ケースが紹介されています。適切なパーソナライズとは、受信者に気味悪さを抱かせず、心地よい有用性を実感させる範囲内で行うことが妥当だと言えます。
このように、データ活用の範囲を考える際は、「この情報を伝えることがユーザーの役に立つか?」を基準にし、単に可能だからといって細かすぎる個人情報まで盛り込まない慎重さも必要ではないでしょうか。
メールマーケティングにおける有効なセグメントの見つけ方

落とし穴を理解した上で、次に気になるのは「じゃあ、何で分ければいいのか」という話になります。言い換えると、有効なセグメントとは、グループごとに「届けるべき情報」と「刺さる言い方」が変わり、結果として開封やクリック、商談化が動く分類だと考えます。
ここでは、有効なセグメントを見つけるための代表的な4つのアプローチを整理します。
見つけ方①策定したペルソナ分析
有効なセグメントの起点として、まず取り組みやすいのがペルソナ分析です。ペルソナは「属性の羅列」ではなく、「その人が何を不安に思い、何で背中を押され、どんな言葉に反応するか」を物語として言語化する作業だと捉えると、セグメント配信に直結します。メールは文字で意味を伝える媒体のため、相手の状況が見えるほど、件名も本文もズレにくくなるからです。
たとえば、同じ「MAの運用支援」というテーマでも、リスクを避けたい担当者は「失敗しない手順」や「やってはいけない設定」に反応しやすい一方で、攻めたい担当者は「成果が出る型」や「打ち手の優先順位」に惹かれやすい傾向があります。この差が見えてくると、同じ資料案内でも、入口の言い方と出すべき具体例が変わります。
また、ペルソナを作ったら、そこで止めずに「購買のどの局面で、何が決まらず止まるのか」まで描くと、セグメント仮説の精度が上がります。ペルソナ×購買段階の組み合わせで、「この段階ではこの資料が効く」という当たりが付きやすくなるでしょう。
見つけ方②顧客データ・行動ログ
ペルソナが「仮説を立てるための材料」だとすると、顧客データと行動ログは「顧客データに基づいた材料」といえます。BtoBでは、CRMやMAに蓄積されたデータを使って、コンテンツに対する反応の濃淡でセグメントすることが可能です。
しかしここで注意すべきは、属性データだけで答えを出そうとしないことです。というのも、開封率が高い属性と、商談化する属性が一致するとは限らないからです。
たとえば、あるホワイトペーパーをダウンロードした層が、その後の事例メールに強く反応し、かつ商談化率も高いなら、「資料Aを読んだ層」として、十分にセグメントする理由があります。逆に、業種でセグメントしても反応差がほとんど出ないなら、その軸は「運用コストのわりに意味が薄い」として判断できます。こうした判断ができるのも、行動ログがあるからです。
行動ログが強いのは、こうした顧客データに基づき受信者の意図や温度感を推測できるところにあります。価格ページや導入事例を繰り返し見ている、特定テーマの記事を連続で読んでいる、メールは開くがクリックしない、といった反応の違いは、「今どの情報が必要か」を示す手がかりとして、かなり有用な情報です。
見つけ方③クラスター分析などのデータマイニング
データが増えてくると、人間の仮説だけでは見落としが出てきます。そこで活きるのが、クラスタリングなどのデータマイニングです。クラスタリングは、あらかじめグループを用意して分類するのではなく、データの似たもの同士が自然にまとまるようにグループをつくる方法です。つまり、こちらの想定外の切り口で似た行動パターンの集団が見つかる可能性があるというわけです。
クラスタリングを活用するには、そのグループに意味づけをして、「この集団は何を求めているのか」「どのメールなら前に進むのか」を言語化する工程が必要になります。ここで、営業やCSの現場知見と照合しておくと、データ上は似ていても、商談の場では違う理由で動いている実態に基づいた、機能するグルーピングになります。
だからこそ、クラスタリングは単独で完結させず、ペルソナ分析と往復させるのが現実的です。データで当たりをつけ、現場の言葉で意味づけし、次の配信で検証する。この循環ができたとき、クラスタリングが勝ち筋を見つける武器になると考えています
見つけ方④継続的な効果検証による分析データ
最後は、少し泥臭いですが、配信結果を起点にセグメントを磨いていきます。どんなに綺麗な仮説でも、実際に送ってみないと「刺さるかどうかはわからないからです。
たとえば、同じコンテンツでも、セグメントAはホワイトペーパーに反応し、セグメントBは事例記事に反応する、といった差が出ることがあります。この差が出た瞬間に、「分ける理由」が生まれます。次回は、Aには深掘り資料、Bには導入プロセスの具体を出す、といった形でメールの中身を変えるなど、反応差に基づきセグメントを改良していくと、成果が出るようになります。
メールマーケティングで活用できる主なセグメント配信6選

では実務では、どんなセグメントから始めるのが効果的なのか。いきなり複雑にせず、まずは現場で扱いやすい軸から入り、反応差が出たところを深掘りするのが現実的です。
ここでは、特にBtoBメールマーケティングでよく使われ、かつ成果につながりやすい6つのセグメント軸を紹介します。
セグメント①属性(個人・企業)
属性のセグメントは、最も作りやすい切り口です。職種や役職などの個人属性は、業務内容を軸にグルーピングできるので、メールの訴求点を切り替えるだけでも効果が出やすくなります。たとえば同じサービス紹介でも、経営層には投資対効果やリスク低減の話が刺さりやすい一方で、現場担当者には「何が楽になるのか」「どう数値改善するのか」という現場課題に対する訴求が効きやすい、という違いがあります。
また、企業属性も業界や企業規模によって論点が変わります。製造業なら品質や現場定着、ITサービスなら運用負荷や連携要件などでしょう。ただし注意したいのは、属性は分けやすい反面、「分けても中身が変わらない」状態に陥りやすいことです。業種で分けたのに本文が同じなら、手間だけ増えて成果が動きません。属性を使うなら、まず「この属性には何を変えるのか」の課題をセットで決めるのがコツです。
セグメント②行動履歴
次に、行動履歴です。行動はその裏にある意図を含んでいるため、行動内容からどんな情報を探しているのかを推測しやすいからです。メールの開封やクリックだけでなく、サイトの特定ページ閲覧、資料ダウンロード、イベント参加、面談の有無など、行動の種類によって意味が変わります。
たとえば、価格ページや導入事例ページを繰り返し見ている場合、サービス検討の要件が具体化している可能性が高いので、比較表や導入ステップ、稟議で使える情報を提供するほうが自然です。逆に、開封はするのにクリックがない場合は、「関心はあるがまだ決めきれない」状態かもしれません。
そうであれば、いきなり営業色を強めてアプローチするより、課題の整理や選び方の方法を提供するほうが意思決定がしやすいでしょう。行動履歴をもとにしたセグメントは、こうした「行動から求めている情報を推測しやすい」利点があります。
セグメント③興味関心
行動履歴と似ていますが、興味関心は「何に関心があるか」に焦点を当てたセグメントです。チャネル別、請求資料別、参加ウェビナー別、サービス別などで分類すると、受信者が求める情報でセグメントしやすくなります。「無関係な情報を送らない」ためのセグメントとして有用でしょう。
たとえば、入門ガイドを請求した人と、詳細な比較資料を請求した人では、同じサービスでも知りたい情報が違います。前者には全体像や失敗しない進め方が効きやすい一方で、後者には要件整理やROI、導入の現実ラインを渡したほうが喜ばれます。また複数サービスを扱う企業なら、興味のあるサービス以外の案内はノイズになりやすいので、関心領域で分けるだけでも配信停止率の抑制につながります。
セグメント④リードステータス
続いては、MQLやSQLといったリードステータスです。営業側も「このリードを、今は誰がフォローすべきか」というアプローチ管理にも効くため、BtoBでは特に重要なセグメントです。
MQLは関心が高まってきた状態なので、啓蒙や意思決定を前に進める情報を渡す局面である一方で、SQLは営業が具体的に動く段階なので、サービス資料やROIシートなど要件定義の詰めに役立つ情報が求められます。こうしたリードステータスをセグメントに活用する場合、「MQLは比較軸を作る」「SQLはサービス関連を揃える」といったように、情報提供後の行動が変わる設計にするほうが成果が出ます。
セグメント⑤購入履歴
BtoBでも既存顧客と関係性を維持するために、購入履歴によるセグメントは有用です。新規獲得と違うコミュニケーションが求めてるからです。購買頻度、最終購買日、累計購買金額といった情報を使うと、関係性の深さに合わせて出す情報が変えられます。
最近購入した顧客には効果的な活用方法やTipsのほうが自然ですし、長期間反応がない顧客には再アプローチのきっかけが必要になります。ここで重要なのは、単に「買ってください」と言うのではなく、「使い続けるとこういう成果が出る」「次はここを広げると楽になる」という支援の文脈を最初に作ることです。
セグメント⑥アカウントベースドマーケティング
最後は、アカウントベースドマーケティング、いわゆるABMです。これは「重要アカウントに集中投下する」前提のセグメントで、対象企業を絞るほど効果が出やすくなる一方、運用負荷も上がるアプローチになります。
たとえば、従業員数や業界などでアプローチすべき対象企業を決めたら、その企業内の複数の関与者に対して、経営層には投資の妥当性、ITには連携やセキュリティ、現場には定着のしやすさ、といった具合に切り口を変えてアプローチするのが有用です。企業単位での検討を前に進めるために、「個人最適」ではなく「アカウントの合意形成」を支援する視点でアプローチできると効果が期待できます。
ここまで6つの軸を見てきましたが、どれが正解という話ではありません。「分けたことで何を変えるのか」を先に決めることが重要で、セグメントした企業全員が共通しておなじ関心ごとを持っているか意識して取り組みましょう。
【実践から分かった】商談化率を高めるセグメントの3つの条件

セグメントの切り口を6つ紹介しましたが、私たちが現場で運用して痛感したのは、「分け方を知る」だけでは商談は増えないということです。むしろ、分けたのに商談が増えないときは、セグメントの設計思想がズレていることがほとんどでした。
そこでここでは、クロスコムが支援・運用の現場で再現性が高いと確認できた、商談化につながるセグメントの条件を3つに絞って整理します。
条件①関連性があること
最も重要な条件として、受信者が自分事化できる「関連性がある」ことです。メールは、開封する前に「そもそも開封する理由があるか」で読んでもらえるかどうか分かれます。私たちも過去に、同じ内容を同じ頻度で送り続けたのに、セグメントを切り替えた途端に開封とクリックが増えた経験があります。つまり、内容を大きく変えたというより、「誰に送るか」を定めてセグメントしただけで反応が変わりました。
具体的には、業種や役職で分けること自体が目的ではなく、「その人が抱えている課題が揃うか」を基準にします。たとえば、経営層なら投資妥当性やリスク、現場なら運用負荷や手順といった課題に寄せると、同じ事例でも読む理由がつくれます。逆に、製造業の現場担当者に向けて「経営戦略としてのDX」だけを語っても、行動につながりにくいままです。
このように、関連性のあるセグメントは、属性を整えることではなく「読み手の判断軸が共通している状態」だと私たちは捉えています。
条件②意図に沿っていること
2つ目は、受信者の意図、つまり「いま何を進めたいのか」に沿っていることです。同じ関連性があっても、検討内容が提供情報とズレるとノイズに変わります。実際に支援先でも、解決方法を探しているステータスのリードへ価格表や比較表を提供したが「開封はされても次につながらなかった」ケースがありました。
ここで私たちが重視したのは、行動データからうかがえる意図を推測することでした。資料請求やウェビナー参加は「何らかの理解を進めたい」の意図がうかがえますし、料金ページや事例ページを反復して閲覧するは「比較の材料が欲しい」の意図が推測できます。
こうした行動からうかがえる意図をもとに、必要な情報を先回りして提供できると、最終的に商談へ進む確率は上がると私たちは考えています。意図に沿うとは、購買ステージを決め打ちすることではなく、「次に必要な判断材料を渡す」ことだと言えます
条件③CV目的でないこと
3つ目は、「CV目的でセグメント配信しないこと」です。これは綺麗事ではなく、現場で数字を追いかけるなかで分かったことです。実際、売り込み色が強いメールを連投すると、リスト全体の反応が落ちるケースを何度も見てきました。
私たちが成果につながりやすいと感じるセグメントは、受信者が「自分の検討を自分都合で進められる」情報をそれぞれのセグメントへ先に提供することでした。比較の観点を整理するチェックリスト、稟議で使える説明の型、導入ステップの見通し、失敗しやすい項目の注意喚起など、いずれも「買わせるため」ではなく「判断を助けるため」の材料として役立ちます。
こうした判断を助ける情報を提供し続けると、受信者の中で「困ったらここに聞こう」という想起を獲得でき、結果として問い合わせにつながります。BtoBビジネスでは、短期戦ではなく中長期にわたる検討期間を考慮して、CV目的にしないことが重要になります。
セグメントメールの配信が有効な利用シーン3選

商談化率を高めるセグメントの条件を整理しましたが、次にぶつかるのが「じゃあ、いつ送るのが一番効くのか?」です。セグメント配信は、やろうと思えば毎回の配信で使えますが、ただ、私たちが現場で成果が出やすいと感じたのは、顧客の状況が変わるタイミングに絞って出し分けたときでした。
ここではクロスコムの支援・運用の中で、特に反応と商談化が伸びやすかった3つのシーンを紹介します。
シーン①休眠顧客の掘り起こし
1つ目は、休眠リードの掘り起こしは新規獲得よりコストが低い一方で、過去に接点がある分だけ反応が戻った瞬間の商談化が速いからです。私たちが実務でよく使う判断基準として、最後の接点から180日間空いたときに「休眠リード」と定義しています。
このときに絶対にしてはいけないことは、久しぶりの連絡を営業目的にしないことです。私たちは「お久しぶりです」で始めるにしても、「相手のためになる情報」をあわせて提供するようにしています。たとえば、業界に関する動向や、類似企業の最近の事例など、相手が読んで損しない情報を先に出し、返信や資料DLが起きた人だけに継続的にお役立ち情報を提供するようにしています。
シーン②セミナー/ウェビナー終了後
ウェビナー後のフォローも、熱量が高いうちに次の一手を打てるため、セグメント配信の成果が出やすいタイミングです。終了当日〜翌日までに1通目を送り、反応やアンケート回答に応じて2通目以降も配信することがポイントで、時間を空けすぎない、送り過ぎないことです。
内容の作り方として、単なる「お礼+資料送付」だけではなく、アンケートの回答内容でセグメントし、それぞれにあわせた文言にすると反応が上がります。
シーン③高関心シグナルの検知
高関心シグナルは、こちらが「営業すべきリード」を把握するためではなく、相手の検討が進んだサインだと考えると活用できるセグメントです。価格ページ、導入事例、比較表、FAQなど、検討後期のページを短期間に複数回見ている場合は、いま必要なのは「背中を押す情報」推測しやすいため、ここでタイミングよく検討を進めるメールが重要になります。
ただし、ここでやりがちなのが「見てましたよね?」のニュアンスで配信しないこと。これは不快感につながりやすいので、私たちは直接言い当てません。「最近このテーマのご相談が増えているため、比較に使える資料をまとめました」といった自然な入り方をした上で、判断材料を渡します。受信者にとっては「ちょうど欲しかった情報が来た」に見える状態が理想ですね。
【具体例付き】セグメントメール配信の本文はどう工夫すべき?

先ほどご紹介した効果的なタイミングを例に、ここではクロスコムが現場で使ってきた本文と工夫した内容を、具体例付きで解説します。
本文①休眠顧客の掘り起こし
【件名】 【事例共有】同業界の〇〇社様が、半年で成果を2倍にされたお取り組みについて
【本文】 〇〇株式会社 △△様
ご無沙汰しております。 [自社名]の[担当者名]です。
以前は[展示会・資料など]にてありがとうございました。 その後、貴社の状況はいかがでしょうか。
実は最近、△△様と同じ[業界名]業界の企業様から 「[特定の課題:例:人材不足]」に関するご相談が急増しております。
そこで、似た課題をお持ちだった〇〇社様が、 どのように解決されたかの実例レポートをまとめました。
貴社の今後のご検討のヒントになればと思い、お送りさせていただきます。
▼ 事例レポートをダウンロード(PDF) [URL]
もし現在、具体的に検討されていなければご放念ください。
何かお役に立てることがあれば、お気軽にご返信いただければ幸いです。休眠リード向けは、こちらが「掘り起こしたい」と思っているだけで、相手は何もあなたへ期待していないことがほとんどです。だから、いきなり近況確認だけで入ると「営業再開メール」に見えてしまうでしょう。上記の例文では、冒頭で関係性を丁寧に確認しつつ、すぐに今メールを送る理由を書いています。
ポイントは、「お久しぶりです」では終わらせず、同業界で増えている相談という関連性がある外部情報をフックにしていることです。受信者は「自分たちの業界でも起きている話かもしれない」と感じやすくなり、また、そのうえで事例レポートを提示して、最後は「検討中でなければご放念ください」と一段引くことで、押し売り感を消しています。
本文②セミナー/ウェビナー終了後
【件名】 【講演資料・動画】本日のウェビナーのご視聴ありがとうございました(アンケート御礼)
【本文】 〇〇株式会社 △△様
本日はお忙しい中、弊社ウェビナーにご参加いただきありがとうございました。{自社名}の{担当者名}です。
当日の投影資料をご案内いたしますので、社内での共有にご活用ください。
▼ 資料・動画はこちら
{URL}
また今回集計したアンケート結果について、参加者さまが関心あるテーマは「{アンケート_課題テーマ}」でした。
そのうえで、アンケートで「次に知りたいこと」として挙がっていたのが「{アンケート_知りたいこと}」でした。もし今の検討状況が「{アンケート_検討状況}」に近い場合は、次の一手が取りやすいように、補足資料も用意しています。
必要であれば、このメールに「補足資料希望」とだけご返信ください。折り返し、貴社の状況に合わせてお送りします。ウェビナー後メールは「お礼+資料送付」で終えると、次のアクションにつながりません。そこで当社は、ウェビナー終了後に回収したアンケート回答を起点に、資料リンクを共有した後に触れる本文を作成しました。
上記の例文では、まずウェビナーの投影資料を提供した後、そのうえで「アンケートで何に困っていると答えたか」「次に知りたいことは何か」の回答内容にあわせて、次の一歩を軽く提示する構成にしています。
本文③高関心シグナルの検知
【件名】 [サービス名]の料金・プラン選定に関する参考資料をお送りします
【本文】 〇〇株式会社 △△様
いつも弊社メルマガをお読みいただきありがとうございます。[自社名]の[担当者名]です。
最近、年度末に向けて予算策定やプラン選定のご相談を多くいただいております。
そこで、ご検討中の企業様からよくいただく「費用対効果のシミュレーション」や「プラン別の機能比較表」をまとめた資料を作成いたしました。
もし、現在導入や見直しをご検討中でしたら、 お手元の資料としてお役立ていただけますと幸いです。
▼ 料金プラン・比較表(PDF)
[URL]
具体的なお見積もりが必要な際は、即日発行も可能ですのでお申し付けください。高関心シグナル後のメールは、タイミングが合えば一気に商談が進みます。一方で「見てましたよね?」のように、行動ログを突きつけると監視感が出て逆効果になります。上記の例文は、年度末の相談増という理由を前置きし、自然な流れで参考資料を提示しています。
ここでのポイントは、提供する情報を「費用対効果」と「機能比較」に絞っていることです。サービス検討の人が次に求めるのは、社内説明用の情報なので、その説明に役立つ判断材料として情報を提供しています。見積も即日とすぐにフォローできる体制を強調しているため、強引に押し付けない形で商談へつなげることができます。
メールマーケティングにおけるセグメントメールの分析方法
ここまでで、当社が現場で「どのシーンで」「どんな本文の型で」セグメントメールを運用しているかを整理しました。その運用が効果的かどうかを判断するために、次に重要になってくるのは分析方法です。セグメントメールは、コントロールグループや他セグメントグループとの指標数値の差分を対象に分析していくので、「どのセグメントが平均より伸びたか」「伸びた理由は何か」をまず押さえるところから始まります。
たとえば同じメールでも、セグメントAはクリックが動くのに、セグメントBは開封止まりになることがあります。このとき重要なのは「Bの件名が悪い」ではなく、「Bの今の意図に対して、提供すべき情報がズレている」可能性を疑うことです。分析は指標の良し悪しではなく、仮説が合っている合っていないを考える作業だと考えています。
より具体的な分析の手順については、当社の詳細記事「【現役運用者が解説】MAデータを活用につなげる分析手順とコツ」でまとめています。ぜひご参考ください。
【実績あり】クロスコムが実践したメールマーケティングのセグメント施策

セグメント配信の設計と分析の考え方をお伝えしましたが、ここでは、当社が現場で伴走した支援の中から、セグメント配信が商談化に直結した2つの施策を紹介します。
施策①「手当たり次第配信」から脱却し、4か月で商談数300%以上UP
まず、外国人材紹介・DX導入支援を行う当社の支援企業様です。Salesforce Account Engagement(旧Pardot)を導入したものの、「とにかくメールを送って、反応があれば電話する」体制で顧客獲得を行っていました。そこで当社が支援して最初に行ったのは、配信本数を増やしたのではなく、まず「誰のどの悩みを解決するか」を決めるために、企業と担当者をそれぞれシート化してペルソナと課題を言語化したことです。言い換えると、セグメント配信の前に「セグメントの意味」を作りにいった形です。
その言語化した課題をもとに、次にコンテンツを企画しました。自社説明を増やしても商談には近づきません。そこで「相手が社内で前に進むための材料」に寄せ、役立つ資料を軸にメールを組み立て直しました。セグメント配信も、属性で細分化するより先に、「いま困っていること」を軸に出し分けるところから始めています。
この立て直しにより、支援開始から4か月で「商談数300%以上UP・粗利約190%UP」を達成。メールを売り込みではなく「お役立ち情報」として意味を変えたことで、今すぐ客ではなく「困った時に相談できる」ポジションをつくりました。
施策②行動・状態別に自動出し分けし、商談数30%へ
つぎに、農業フランチャイズ事業を展開するA社です。A社は広告・展示会で集めた見込み顧客をスプレッドシートで管理し、営業がメールと電話で片っ端から当たっていました。ターゲットも「売上を増やしたい中小企業の経営者」と大枠で、誰に何が刺さるかが曖昧なままアプローチしていたといいます。そこで当社は、まずマーケ戦略側でペルソナと選ばれる理由を作り直した上で、セグメント配信へ着手しました。
実際には、HubSpot Marketing Hubを導入することでスプレッドシートで管理していた顧客データを1つに集めることで、行動データを把握できるように整備。LPに埋め込むフォームもHubSpot製に切り替えることで、顧客の行動別にメールを出し分ける体制を整えました。
その結果、資料請求フォームの送信直後は熱量が高い瞬間として、役立つ情報をフォーム送信日から3日間連続配信したこともあり、商談数を15→30%に引き上げることに成功しました。
セグメント配信で効果を上げたメールマーケティング事例3選

当社の支援事例をお伝えしてきましたが、ここではもう少し視野を広げて、セグメント配信で成果を出した他社事例を3つ取り上げます。
事例①JBサービス株式会社|放置リスト再活用でセミナー申込創出
JBサービス株式会社は、セキュリティ対策・IT運用支援を行うBtoB企業で、営業や展示会で集めた約7,000件の名刺リストを保有していました。施策としては、休眠状態だったリストをMAツールで一元管理し、業種・地域・部署・役職などのタグを付け直し、セグメント別にメルマガや新サービス情報を配信しています。
また、開封やクリックした受信者には、関連サービスの案内や資料請求へ誘導するステップメールを送信。全員に同じメールを送ったのではなく、役職タグを軸にメッセージを組み替えたセグメント配信で、それぞれが関心を持ちやすい情報を提供するようにしました。この結果、放置されていた見込み客リストから資料請求やセミナー申込を獲得することに成功したようです。
事例②株式会社ビッグビート|イベント案内メールのセグメント配信で反応1.5倍
株式会社ビッグビートは、BtoB企業のマーケティング支援会社で、自社イベント「Bigbeat LIVE」を定期開催しています。イベント告知は一斉配信でも回りますが、参加者の関心テーマがばらけるほど「刺さる人だけに刺さる」構造で、全体の反応が鈍りがちだったようです。
そこでビッグビート社は、MAツールを導入し、イベント告知メールをリードの関心度や行動履歴に応じたセグメント配信を実施。従来の全リスト配信から、過去の参加履歴や興味関心テーマ、検討段階ごとに分け、セグメントに合わせて本文も調整しました。その結果、イベント案内メール経由の特設サイトアクセス数が従来の1.5倍以上に増加したとされています。
事例③TechSoup Polska|セグメンテーション施策で年間受注総額1200%増加
TechSoup Polskaはポーランドの非営利団体で、多数の非営利組織を支援しています。加盟団体は活動分野も地域もばらばらで、それぞれの団体が求める情報は異なります。ここで一斉配信をしていると、誰かには役立つ一方、誰かにはノイズになります。つまり「配信すればするほど、関係が薄まる」リスクが出やすい状況です。
そこでTechSoup Polskaは、活動分野・所在地域・関心テーマといった複数軸でセグメントを設計し、該当する団体に合わせたニュースレターを配信するように方向性を変えました。メールの中身も、単なる告知ではなく、各団体に役立つトピックを織り交ぜることで、メール経由の年間受注総額が前年比1200%増と報告されています。
【一問一答】メールマーケティングにおけるセグメント配信のよくある質問

最後は、当社がメールマーケティング施策のセグメント配信について、現場でよく受ける質問について一問一答で回答していきます。
質問①セグメント配信にはどんなツールや仕組みが必要ですか?
継続運用していくなら、メール配信システムかMAツールのどちらかは必要です。最近では、配信総数に応じた従量課金制が多く、一定の配信数であれば無料で使うことができるツールもありますので、ぜひ色々なツールを探してみてください。
参考までに「【メルマガ配信するならどっち?】MAツールとメール配信システムの違いと選定方法とは~7つの企業課題をもとに現役マーケターが解説~」にて、メール配信ツールとMAツールをそれぞれ紹介しています。ぜひ御覧ください。
質問②セグメントは細かく分けるほど良いのでしょうか?
分ければ分けるほど良い、とは考えていません。細分化しすぎると、施策の改善どころか維持すら難しくなるくらい、現実的にリソースが足りないからです。現場では、セグメントを増やした結果、メール作成が追いつかず、結局テンプレを流用して似た内容のメールを別名で送るだけになり、期待した改善が起きないケースを何度も見ました。
当社がよく採る方針として、最初から細かくセグメントせず「獲得チャネル」や「リードステータス」など、明らかに反応が変わるセグメントから優先しておこないます。ぜひ参考にしてみてください。
質問③一斉配信とセグメント配信、どちらを使うべきか迷ったときの判断基準は?
迷ったら、「その情報は誰にとっても同じ価値か」をまず確認しましょう。たとえば、サービスの重要なお知らせや仕様変更など、受け手によって意味が変わらない情報は、一斉配信がいいでしょう。
一方で、テーマによって受け手の反応が変わる情報、たとえば導入検討の材料として事例や費用対効果などは、検討段階にいる受信者に元してセグメント配信したほうがいいでしょう。一斉配信すると、検討段階にいない受信者にとって関係がない情報として受け止められてしまうからです。
セグメントメール配信はまず関連性が必須
ここまで、セグメント配信の考え方から設計手順、本文の具体例、分析の回し方まで一連の流れで整理してきましたが、私たちが現場で実践してきた結論はシンプルです。セグメント配信は、細かく分けるほど成果が出る施策ではなく、受信者にとってまず関連性を抑えることです。関連性がなければ、どれだけ手間をかけても開封されず、クリックされず、当然ながら商談にもつながりません。
この記事で紹介した考え方と具体例をベースに、まずは一つのセグメント、一つの利用シーンから小さく実装してみてください。本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
